ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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67話 バトル・皇帝と赤龍帝

その頃、夜の駒王町で悲鳴が上がる。

 

「ギャァァァァァアア!」

 

涙を流し、恐怖に怯えながら逃げるはぐれ悪魔。

はぐれ悪魔と言っても、この男はガラの悪い主に無理矢理、眷属にされて更に主の失態を着せられた無実のはぐれ悪魔である。

 

「た、助けて…!助けてくれ…!」

 

『はぐれ悪魔が。俺が退治してやるぜ』

 

ダウンイクサに変身した匙が、ダウンスピアーを構え。

 

「待ってくれ!俺は無実なんだ!理不尽に眷属にさせられて!それで!」

 

『煩せぇよ、はぐれになったお前が悪いんだよ』

 

ダウンスピアーをはぐれ悪魔の足に突き刺す。

 

「ギャァァァァァアア!痛い!痛い!」

 

『ははははは!泣け!喚け!自分の罪をその身に受け止めて後悔しろ!』

 

「つ、罪なんて……俺は…ただ、家族と一緒に……!」

 

『はぐれの癖に何を言ってんだ?ああん⁉︎』

 

更にグサグサと足に突き刺す。

 

「ヒィィィィイ!」

 

『終わりだ』

 

《ダ・ウ・ン・ナッ・ク・ル・フォ・ー・ル・アッ・プ》

 

ダウンナックルでの必殺技、『ダウン・ファング』を叩きつけ、はぐれ悪魔は消滅した。

 

『凄えぜこのダウンイクサ!もうあんな使えない神器なんて必要ねぇ!』

 

 

 

「匙!」

 

『ああん?』

 

背後を振り向くと、そこには怒りで息を荒くしている駿河が立っていた。

 

『何だよ、駒一つのクセに』

 

「お前、生徒会に戻らないでこんな事してたのか!会長が心配してたぞ!」

 

『その会長の為だよ!』

 

「何?」

 

『俺がこのままはぐれ共を倒して評価されれば、会長の評価も上がるだろう?会長の夢に近づける!』

 

「バカを言え!お前の身勝手な行動で、『下僕の躾もロクにできないのか』と、会長は上の奴らに言われてんだぞ⁉︎」

 

『はぁ?』

 

「それなのに会長は、お前がはぐれにされるのを必死に頭を下げて止めようとしている!分かるか⁉︎お前の行動は寧ろマイナスになってるんだよ!」

 

『それを早く言えよ!老害どもが、俺がぶっ殺してやる!』

 

「何でそういう事になるんだ!いい加減目を覚ませ!今、反省して謝れば会長もはぐれ認定も取消せる!」

 

『バカをいいやがれ!今はそんな風に言われてるかもしれねぇ!しかしだな!俺がこうして活躍すれば、他の奴らは考えを改めるだろうよ!』

 

「そんな訳、ある筈ないだろ!」

 

駿河の言葉に、ダウンイクサは怒る。

 

『おい駒一つ。お前、誰に口きいてんのか分かってんの?』

 

「どうやら無理矢理にでも連れて帰るしかなさそうだな」

 

駿河は腰を低くして構える。

 

『これを見ろ』

 

ダウンスピアーを駿河に見せつける。

 

『これは最上級堕天使と同等の光の力を持ってる。分かるか?この鎧を身に纏えば、俺はこれ程の武器を扱う事ができるんだ!たかが下級悪魔が俺に敵うかぁ⁉︎なぁ⁉︎』

 

「言いたい事はそれだけか?さっさと来いよ」

 

その言葉が合図となり、ダウンイクサはスピアーを振るう。

 

『この駒一つガァァァァァァア!』

 

「フッ!」

 

駿河はスピアーを紙一重で避けて、一瞬にしてダウンイクサの懐に潜り込む。

 

(ハッ!バカが!テメェのパンチがこの鎧に効くとでも………!)

 

ゴッッッ!

 

『は?』

 

刹那、駿河の拳は鎧を素通りして匙本体にダメージを与えた。

 

『ガッッ⁉︎何、だ……こりゃぁ…⁉︎』

 

「中国拳法の一つでな。強固な鎧や強靭な肉体に対抗する為に編み出されたものなんだとよ。直接、内臓にダメージを与える」

 

『コノヤロォ!』

 

「遅い!」

 

駿河の体捌きにスピアーはカスリもせず、肩、腰、腕、横腹と、流れるような攻撃がダウンイクサに炸裂する。

 

『クゾォォォォオ!イテェ!イテェ!チクショウ!』

 

「もう止めろ匙、会長の所に帰ってこい」

 

『煩せぇ!』

 

ダウンスピアーを投げつける。

当然、駿河はそれを避けようとするが。

 

(ッ⁉︎子供⁉︎)

 

偶然、自分の後ろに通し掛かった子供が目に入り、

 

(マズイ、俺が避けたら!)

 

子供の盾になり、左腕を前に出してスピアーを受ける。

 

「グッ……うぉぉぉぉぉ…‼︎‼︎」

 

光によって肉が焼け、激痛が走る。

 

『ヒャハハハ!当たった!当たったぞぉ!流石俺!俺ってやっぱり強え!』

 

「クソッ……」

 

『さぁてぇ!さっきのお礼をさせて貰おうかぁ!』

 

(すみません………会長…!)

 

 

**********

 

 

「で?何なんですかこれ?」

 

同時刻。

遺跡の奥にて、渡はサーゼクスに問う。

 

「さっきも言った通り、イッセー君とリアスの試練さ。いやー、思い出すな〜。アリーシェとの婚約前も父上にやらされたっけ」

 

(やったの⁉︎親子2代までこんな下らない事やったの⁉︎)

 

グレモリー家の緩さに目眩がしてきた渡。

 

「渡ちゃんも、いつかネリネちゃんと一緒にこの試練を受けるんだろうな〜」

 

「受けませんから」

 

「お、そろそろ2人が此方へ来るそうだ。準備準備」

 

「フォーベシイさんは何するんですか?」

 

「ん?私は見てるだけだよ?」

 

(本当に魔王って何なんだ?)

 

 

**********

 

 

『よう、待ってたぜ』

 

魔法陣から転移してきたイッセーを、キバに変身して待ち構える。

 

「あれ⁉︎部長は!」

 

「リアス先輩なら、他のエリアで試練を受けてる。試験の内容は簡単だ。俺と戦って認めさせる事だ」

 

キバは聞かされた試練の説明をする。

 

『そしてこの空間は俺とお前の試験の為に作られた特別な空間だ。例え俺とお前が本気で三日間戦っていてもびくともしない』

 

「よ、よく分からんが一つ聞かせてくれ」

 

『何だ?』

 

「…………呼び方は渡かサタンキバーかどっちだ?」

 

『………………好きにしてくれ』

 

元々、隠す必要もない。

 

《Welsh Dragon Balance Breaker!!!!》

 

『ドラゴンショットォ!』

 

『ハァァァ!』

 

ドン‼︎‼︎‼︎‼︎

ブファアアアアアアアアアアアア‼︎‼︎‼︎

 

いきなり二人の技がぶつかりあう。

その威力はすさまじく、互いに相殺しあい大量の蒸気を生み出す。

これにより互いの姿がほとんど隠れる。

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎》

 

イッセーは倍加して煙を吹き飛ばしながら、キバに向かって拳を放つ。

 

『ハッ!』

 

キバはそれを高速で移動して躱す。

 

『ドラゴンショット乱れ打ちぃ‼︎‼︎』

 

『ッ!』

 

多数のドラゴンショットがキバに当たる。

 

(こいつ、こんな技まで⁉︎)

 

意外にも成長している親友に驚く。

 

『ダラァァァァァア‼︎‼︎‼︎』

 

突進してくるイッセー。

キバはイッセーの知覚を超え、背後をとる。

 

『ンヌゥアッ!』

 

ドォォォォンッ‼︎‼︎‼︎

 

腰を掴み、バックドロップで地面に叩きつける。

 

「カハッ!やっぱ、強えな……」

 

頭からイッた為に、頭部の鎧が砕けて顔が露出する。

 

『けどまだまだぁ!』

 

直ぐに頭部の鎧を修復し、突っ走る。

 

ズァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン‼︎‼︎‼︎‼︎

 

互いの攻防により、辺りがクーターだらけになる。

 

『やっぱ……はぁ、強えぇな……お前……はぁ、はぁ』

 

『ふぅ、ふぅ……お前もな……よし』

 

キバは決断する。

 

『タツロット!』

 

全力で行こうと。

 

「ビュンビューン!ドラマティックに行っきましょー!」

 

封印を壊し、左腕に止まる。

 

「変身!」

 

そして黄金の蝙蝠が、キバに集まり背後にマントをひらめかせる。

『エンペラーフォーム』に変身したキバは真っ直ぐにイッセーを見つめる。

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎‼︎》

 

『ど、ドラゴンショットォ!』

 

倍加して巨大化したドラゴンショットがキバに直撃する。

辺りが吹き飛び、煙や石が辺りを舞う。

しかし、その真ん中で威風堂々とキバが無傷で立っていた。

 

『ダアァァ!』

 

一瞬でイッセーの目の前に移動し、強烈な蹴りで吹き飛ばした。

 

「ボホッ⁉︎ゴホッ!」

 

鎧が半壊し、地面に倒れ込む。

 

「ど、ドライグ!修復を頼む」

 

〈それはいいが相棒。そう何度も修復は出来んぞ〉

 

「そんな事、分かってる!」

 

また鎧を纏い拳を振るう。

その拳は容易くキバに掴まれ、殴り返される。

 

『ドラゴンショット乱れ打ち!』

 

多数のドラゴンショットをキバに向けて撃ち出す。

同時にキバがその場から跳躍して上空に上がり、地面に直撃した瞬間、爆音とともに大量の砂埃が空中に舞い上がり、キバを包み込むようにして拡散した。

 

『チャンス!』

 

背中のブースターを噴射させ、宙へと舞って砂埃に視界を潰されているキバ目掛けて蹴りを打ち込む。

 

ゴッッッ‼︎‼︎‼︎

 

直後に鈍い音が聞こえた。

 

『グァァァ!』

 

ダメージを受けて吹き飛ばされたのはイッセー。

 

『確か、カウンターに弱いんだよな』

 

あの一瞬でイッセーの勢いを利用したパンチを叩き込んだのだ。

 

『うぉっ⁉︎』

 

ガシッ!とイッセー足を掴み、

 

『オオオオオ‼︎‼︎』

 

ハンマー投げのように振り回して投げ飛ばす。

イッセーは翼とブースターを全開で羽ばたかせ、噴射させて何とか勢いを殺して、態勢を立て直した。

 

『ドラゴンショット!』

 

ドラゴンショットを放つが、キバは片手で握り潰す。

 

『今度は俺から行くぞ!』

 

速度でキバがイッセーに迫る。

イッセーはブースターと翼を駆使し、キバの攻撃を避けていくがどれも、ギリギリかわせるような攻撃ばかり。

 

『そろそろ決めるぜ!』

 

「Wake・up!FEVER!」

 

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!フルパワーだ‼︎‼︎』

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎‼︎》

 

『エンペラームーンブレイク』と、極限まで倍加した拳がぶつかる。

 

魔力の渦が発生し、辺りを巻き込み吹き飛ばした。

 

「カッ………は……」

 

イッセーは鎧の破片と共に地面へ落ちていくが、無傷のキバが腕を掴み地面への激突を阻止する。

 

『俺の勝ちだな、イッセー』

 

 

**********

 

 

「合格♪」

 

「「軽⁉︎」」

 

試練が終わり、サーゼクスが結果を言い渡した。

 

「これで君達は正式な婚約者だ。結婚はリアスが大学を卒業してからになるだろうが……リアスをよろしく頼むよイッセー君!」

 

「はい!俺の誇りにかけて誓います!」

 

サーゼクスの言葉に力強く答えるイッセー。

その言葉を聞いて周りが祝福をする。

 

♪〜♪〜〜

 

「あら?ソーナちゃんからだわ☆」

 

セラフォルーが携帯を取る。

 

「は〜いソーナちゃん☆どうしたの?……うん、うん……え?」

 

突如、セラフォルーの顔が青ざめる。

 

「?、どうしたんですか?」

 

「あ…えっと………レイ君が…」

 

「レイ?………レイって、駿河 玲一の事ですか⁉︎一体、あいつに何が⁉︎」

 

 

**********

 

 

ソーナからの連絡を受けて人間界に戻り病室を訪れると、そこには痛々しい包帯姿で横たわり、弱い呼吸を続ける駿河の姿だった。

しかも、包帯からは所々、血が滲みでておりとても見れたものではない。

特に左腕が酷く、機材や何やらで強く固定されていた。

 

「よう……あかつ…き、こんな格好……見せて悪い…な」

 

片目だけを動かして、渡を見つめる。

 

「………………匙か」

 

渡は直ぐに確信した。

 

「ああ、情けねぇよ。暴走した仲間も救えないなんてな」

 

渡は駿河の言葉に驚く。

あんなにも自分勝手で自尊心の塊で、見下し続けた匙を”仲間”と言った。

 

(こんないい奴を、どうやったらこんな風にできるんだよ…!)

 

「あの……駿河さん…」

 

医師が申し訳なさそうに、病室から入ってきた。

 

「何、で……しょう?」

 

「言いにくいのですが……」

 

医師は意を決して、言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方の左腕は……もう、一生動かないでしょう」

 

時が止まったように感じた。

 

1秒が1時間に感じた。

 

夢かと思った。

 

夢であって欲しいと思った。

 

嘘かと思った。

 

嘘であって欲しいと思った。

 

信じられなかった。

 

信じなくなかった。

 

いつの間にか部屋を飛び出していた。

 

頬から熱い何かが流れていた。

 

 

 

 

 

全力で匙を探しに行った。


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