ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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61話 発進・パワードイクサー

夜、決戦の時は近づいていた。

イッセー達はオーディンが日本の神と会談の場所である都内の高層高級ホテルの屋上にいた。

シトリー眷族は回りのビルの屋上で各々待機をしている。

匙とエリカは事情で来れないらしい。

 

今この場所にいるのはグレモリー眷族とヴァーリチーム、鎧を着て戦闘態勢をとっているロスヴァイセ、アザゼルの代わりのバラキエルと健介、シトリー眷族代表の駿河、そしてキバーラ。

遙か上空にタンニーンが飛んでいた。

 

「時間ね」

 

リアスが会談が始まる時間を告げる。

 

「小細工なしか。恐れ入る」

 

ヴァーリが空を見ながら苦笑する。

空を見ると空間が歪み大きな穴が開いて、そこからロキとフェンリルが現れた。

 

「目標確認。作戦開始」

 

バラキエルが合図を出すとホテル一帯を包み込むように巨大な魔法陣が現れる。

そして光が収まると、転移した場所はどこかの古い採石場跡地で周りには岩肌しかなかった。

 

「逃げないのね」

 

結菜が皮肉げに言う。

そう、ロキは逃げなかったのだ。

 

「逃げてもお前らは追ってくるのだろう?ならここでお前達を倒し、ホテルに戻ればいい事だ。会談をしてもしていなくてもオーディンには退場してもらうだけだ」

 

「貴殿は危険な発想をしているな」

 

「危険な発想をしているのはそちらだろう。各神話の協力など……元はと言えば三大勢力が手を取り合った事から歪んだのだ」

 

「話し合いは無意味か」

 

バラキエルは手に雷光を纏わせ始めた。

背中には十枚もの黒い翼が展開していく。

 

イッセーもちょうどカウントが終わったので『女王』に昇格と同時に禁手化した。

 

《Welsh Dragon Balance Breaker‼︎‼︎》

 

赤い閃光を放ちながら赤い全身鎧が装着される。

 

《Vanishing Dragon Balance Breaker‼︎‼︎》

 

ヴァーリも禁手化状態の白い全身鎧を装着した。

 

「これは素晴らしい!二天龍がこのロキを倒す為に手を組むとは!」

 

それを見ても、ロキはただただ嬉しそうだった。

 

「して、奴も貴様らの仲間か?」

 

ロキの視線の先には、鎧を纏い少し高い岩の上に立つサガがいた。

 

『あいつ、いつの間に⁉︎』

 

「何が目的なのかしら……」

 

全員が警戒する。

そんな視線に目もくれず、サガはただ呆然と立っているだけだ。

 

(敵意は無い……と、思っていいのだろうか)

 

「しかし、流石にフェンリルだけでは多勢に無勢だな。ここは……」

 

するとロキの左右の空間がゆがむ。

 

「スペックは多少劣るが……スコルッ!ハティッ!」

 

こから灰色の毛並みに鋭い爪。

感情のこもっていない双眸。

さらに大きく裂けた口。

少しサイズは小さいものの、それは紛れもないフェンリルだった。

 

『何でだ⁉︎フェンリルは一匹じゃないのか⁉︎』

 

「巨人族の女を狼に変えて、フェンリルと交わらせた。その結果生まれたのがこの2匹だ。親よりも多少スペックは劣るが牙は健在だ。十分に神、そして貴殿らも屠れるだろう……更に!」

 

すると今度はロキの後ろから真っ黒な細長い蛇、いやドラゴンが10匹も現れる。

 

「ミドガルズムも量産していたのか⁉︎」

 

大きさは違うが、前にイッセー達にロキとフェンリルの対抗策を教えてくれた五大龍王の一角、ミドガルズムにそっくりだ。

 

するとスコル、ハティと量産型ミドガルズムが一斉にリアス達に飛び掛る。

 

『まずい!』

 

「こちらに構うな赤龍帝!お前らはロキをやれ!」

 

助けに行こうとしたがバラキエルに止められる。

イッセーはそれを聞いてロキの方に向き直ると、ロキは北欧の魔術の光を幾重にも出してきた。

 

『ポーンの騎士形態よりかはマシだな』

 

ヴァーリはそれを縫うように躱しながら前に進む。

イッセーは真っ直ぐにしか進めないので、強化した腕で弾きながら前に進む。

それを見たロキが魔法陣らしきもので防御しようとする。

 

『無駄だ!』

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎》

 

強化して殴ると魔法陣はあっさり砕けた。

その隙を狙いヴァーリが近づき、手には新しく覚えた北欧の魔術のらしき魔法陣が展開されていた。

 

『とりあえず、初手だ』

 

そう言って一斉に掃射した。

ヴァーリの攻撃はロキにぶつかり一気に爆発を起こした。

 

『あ、あいついつの間にこんな魔術を⁉︎』

 

相変わらずの才能とスペックの差を思い知らされるイッセー。

しかしロキがまだ生きていると察し、煙に紛れて攻撃しようとミョルニルのレプリカをだして煙の中のロキに叩きつける。

 

「何⁉︎」

 

ロキは慌てて躱す。

ハンマーはそのまま地面に叩きつけられ、大きなクレーターを生み出す。

 

『あれ?』

 

しかし雷が全く出なかった。

 

「ハンマーを振るえば雷が出るって言ってたのに」とイッセーが不思議に思っていると、

 

「ふはははっ!」

 

ロキが再び笑い出した。

 

「ミョルニルのレプリカか?それにしても危険な物を持っているな。オーディンめ、それ程までに会談を成功させたいか?だが残念。その槌は、力強く、そして純粋な心の持ち主にしか扱えない。貴殿は邪な心があるのだろう。だから雷が出なかったのだ。本来ならばハンマーも、重さもなく羽根のように軽いと聞くぞ」

 

『うぐ……』

 

『確かに兵藤 一誠は邪な心の持ち主だからな』

 

『うるせぇ!俺が使えって言われたから使ったのに何でそんな事言われなくちゃならねんだよ!泣くぞ俺⁉︎』

 

「こちらもそろそろ本格的に攻撃させてもらおう……」

 

すると一瞬で大量の弾幕が降り注ぐ。

それはイッセー達だけじゃなく、リアス達の方にも降り注いだ。

 

『クッ、まるで雨じゃねぇか!』

 

 

 

 

盾音符(シールド・ギター)‼︎』

 

すると一瞬にして音符の形をした盾が防御する。

 

『ナイスだ健介』

 

「ほう……俺の技を全て防ぐとは……厄介な神器だな」

 

『俺も混ぜろや。最高のライブにしたる!』

 

『ありがたいぜ!』

 

「ふむ……それは少々困るな……組まれると厄介だ」

 

すると再びロキの後ろから数匹のミドガルズムが現れる。

 

「ゆけ!」

 

ロキの指示で一斉に向かっていく。

 

『チィ、鬱陶しい……!』

 

流石の健介もこの数相手にはつらいのか、その場にとどまる。

 

「これでこっちにはこれまい。その間に貴様らを始末するか」

 

『舐めるな‼︎‼︎』

 

そう言ってヴァーリがロキに向かう。

 

「……相手が神格だと半減の力が上手く発動できないからな。少しずつでもその力を削らせてもらう!」

 

ヴァーリの手元から幾重にも魔力の攻撃を北欧の術式と混ぜながら撃ちだしていた。

その悉くがロキの魔術でなぎ払われるが、全部が打ち消される訳でもなく、何発かロキの体に当たっていた。

 

「さすがは白龍皇!短期間で北欧の魔術を覚えたようだが……甘い!」

 

7色に黒く輝く強大な魔術の波動が幾つも放たれヴァーリの攻撃を消し去っていく。

それに対してヴァーリは迎え撃つように背中の光の翼を大きく展開した。

 

《DividDividDividDividDividDividDividDividDivid‼︎》

 

『……これぐらいの攻撃ならば触れなくとも半減の力は発動できる。が消耗が激しいのでね』

 

『食らえ!ドラゴンショット‼︎‼︎』

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎》

 

鋭く向かっていくイッセーの一撃だが、ロキは不適に鬼気迫る表情を浮かべて真っ正面からイッセーの攻撃を片手で受け止め、ヴァーリの方へいなす。

ヴァーリは高速で動いてなんとか避ける。

 

『神格は伊達じゃねぇな…!』

 

「赤と白の競演も十分楽しんだ。だが面倒になってきたな。赤龍帝!倍加した力を譲渡されるのは面倒極まりない!貴様から先に殺してくれる!」

 

ロキはイッセーに狙いを定めたのか此方に向かう。

 

『俺を無視するな!』

 

ヴァーリが瞬時に動いて、イッセーに攻撃の矛先を向けていたロキの背後を捕らえた。

しかし、

 

「ウォォォォォォン!」

 

『がは⁉︎』

 

いつの間にか移動していたフェンリルにヴァーリが噛まれた。

 

「ふははははっ!まずは白龍皇を噛み砕いたぞ!」

 

『ヴァーリィィィィィ‼︎‼︎』

 

メキメキメキメキ………‼︎‼︎‼︎

 

『グァァァァァアアア‼︎‼︎‼︎』

 

フェンリルの牙がヴァーリの鎧を砕き、肉を抉る。

 

「殺れ、フェンリル!」

 

ロキの言葉と共に、更に力を込めようとしたその時、

 

 

 

 

 

 

 

ボオオオオンッ‼︎‼︎‼︎

 

『『「ッ⁉︎⁉︎」』』

 

突然、放たれた砲弾がフェンリルに当たる。

 

たまらずフェンリルはヴァーリを落とす。

イッセーは慌ててフェニックスの涙を傷口に塗る。

すると傷がどんどん治っていった。

 

『一体、誰が……』

 

邦題が放たれた方を見ると、そこには…

 

『遅くなってゴメン!』

 

イクサに変身したエリカが恐竜のような巨大な重機に乗ってきた。

 

『何じゃありぁぁぁぁぁぁあ⁉︎⁉︎⁉︎』

 

思わず叫ぶ。

 

『【パワードイクサー】。協会が発明したイクサ専用の、新しい力よ!』

 

そう言いながら、パワードイクサーはフェンリルに突進する。

突然、体当たりされてフェンリルはそのまま押し倒される。

 

「な⁉︎フェンリルを押し倒す程の馬力だと⁉︎」

 

流石のロキもパワードイクサーに驚愕する。

 

『ふ、フフフ…エリカ……矢張り、君は最高…だ……』

 

『死にかけてたんだから無理すんなよ』


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