ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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60話 急襲・サガの目的

「静香…お前、その姿」

 

『説明は後ですセンパイ。今はあの咬ませ犬2匹を潰すんで♪』

 

キバーラに変身した静香は『キバーラサーベル』を手に取り、その場から跳躍すると先程まで居た場所にフリードの刃が叩きつけられる。

 

『あ゛あ゛ん!糞アマがっ!手足切り取って犯してやんぜぇ!』

 

『私の身体を犯すのは未来永劫、センパイだけですよ。っていうか、口臭いんで閉じてくれません?』

 

ガンッ!

 

キバーラは大口を開けているフリードの顎を蹴り上げ無理矢理口を閉じる。

 

『おっと』

 

背後から糸が放たれるが、キバーラサーベルで切り裂く。

 

『君よく見ると可愛いね。ふふふ、そんなに僕の事が好きなのかい?参ったなぁ、一目惚れ?いいよ。僕は寛大だから、アーシアと一緒に犯してあげるよ。ふふふふふふふふふ!』

 

『ウゲッ、幻聴でも聞こえてるんですか?気持ち悪いです』

 

『誰が気持ち悪いだゴラァァア!その鎧と一緒に服引きちぎって大勢の面前の前で犯してやるよぉ!ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』

 

『ふんっ!』

 

顔面目掛けて放たれた大振りの拳に向かって前進し、僅かに顔を逸らしながら避けて通り過ぎざまに斬り付ける。

 

『効かないよぉ〜〜〜〜〜〜‼︎‼︎』

 

侮って手加減したのが悪かったのか、骨に届きはしたが腕を切断するには至らない。

 

『じゃあ、ちょっと本気だします』

 

背後からくるフリードの刃を避け、腕が伸びきった瞬間に剣を振るう。

 

『ぎゃぁあああっ⁉︎』

 

骨を断ち切り、フリードの手首が宙を舞う。

 

『ちょっと本気出したくらいでこのモロさ。やっぱ、小物は何をしても小物ですね」

 

『糞っ!糞糞糞糞糞糞がぁぁぁっ‼︎』

 

『たかが手の一本程度でギャアギャア喚くなよ』

 

『じゃあ、貴方も』

 

『へ?』

 

やられた仲間を嘲笑っているディオドラの腕を切り落とす。

 

『ヒィィィィィィィイイイ⁉︎⁉︎⁉︎』

 

『貴方も人の事言えないじゃないですか。はぁ、弱い弱い。流石は家の権力に縋って生きてきたボンボンですね』

 

『『犯して殺してやる‼︎‼︎』』

 

『犯す事しか思考が回らないんですか?』

 

キバーラサーベルの刃に紫色のオーラを纏わせ、横に切り裂く。

建物も電柱も、辺り一帯を巻き込んだその一撃。

 

『ギャァァァァァアア‼︎‼︎‼︎』

 

『ヒィィィイエエエエ‼︎‼︎‼︎』

 

2人はどこぞの3人トリオの様に吹き飛ばされる。

 

『ヂグジョウ!ヂグジョウ!ヂグジョウ!』

 

瓦礫を吹き飛ばして起き上がるフリード。

その背後に、キバーラの姿が。

 

『笑いのツボ!……じゃ、な・く・て♪』

 

『え?』

 

キバーラサーベルの柄の部分をフリードの首筋に当てる。

 

『お?おおおおおお!』

 

するとフリードの魔力が何倍にも上がる。

 

『スゲェ!スゲェぞ!力が力が溢れてく《ボゴッ!》るぅ?』

 

キバーラはフリードに柄のから更に魔皇力を注ぎ込む。

 

ボゴボゴボゴボゴボゴボッッッ‼︎‼︎‼︎

 

その魔皇力に耐え切れず、フリードの身体は見る見ると膨らんでいく。

 

『おギュ?む、ちょ…!ま……⁉︎』

 

フリードの身体は風船の様に膨らみ爆発寸前の状態となる。

 

『や、止めっ……これ以上は入らなーーー』

 

『…………ブチ撒けろ』

 

パァァアンッ!

 

瞬間、フリードの体が弾け飛んだ。

周囲に散らばる臓物らしき物体がピクピクと蠢いていた。

 

『さてと』

 

『ヒッ!』

 

キバーラは、腰を抜かしてガタガタと震えているディオドラに視線を向ける。

 

『弾けたいですかぁ?それとも、切り刻まれたいですかぁ?』

 

『ヒィィィィイ‼︎‼︎』

 

恐怖のあまり、地面を這いずりながら逃げ出すディオドラ。

 

『じゃあ、全身形が残る位に切り刻んで膨らませますね♪』

 

紫の斬撃を幾十にも飛ばす。

 

ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!

 

『ギャァァァァ‼︎痛い!痛いよぉお!』

 

『私を犯すんでしょう?やってみて下さいよぉ、ほらほらぁ♪』

 

『痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許して痛い助けて許してぇぇぇぇぇぇえ‼︎‼︎‼︎』

 

『嫌です。死ねば?』

 

のたうち回るディオドラに、キバーラサーベルを突き刺す。

しかし、その時にはディオドラの姿はなかった。

 

『ちぇ〜、転移しましたか。言動、行動全てが咬ませ犬ですね〜』

 

つまらなそうに吐き捨てて、変身を解く。

 

「セ〜ンパイ♪ゴミは掃除しましたよ〜❤︎」

 

「お兄ちゃ〜ん、久しぶりね。元気してた❤︎」

 

「キバット、お前の妹……怖いな」

 

「渡、お前の後輩……怖いな」

 

 

**********

 

 

想像創造(ネバーディング・メイカー)?」

 

「はい、『形のない物を自分の想像力を注ぎ込んで形を与える』神器です!それを使って、キバーラの魔皇力に形を与えて私独自の鎧を作ったんです!」

 

家に帰り、静香はあの姿を説明した。

 

「ほほう、興味深いな。想像創造(ネバーディング・メイカー)にそんな裏技があったとは。ちょっと詳しく見せてくれないか?」

 

「嫌ですよ。私の肌に触っていいのはセンパイだけですよ?死にたいんですか?抉られたいんですか?斬られたいんですか?」

 

目をキラキラさせるアザゼルを、ゴミを見る様な目で言葉の暴力を放つ静香。

 

「久しぶりだな〜キバーラ!心配したんだぞ〜、コンチクショー!」

 

「お兄ちゃ〜〜ん!」

 

「兄妹の感動の再会ですね!」

 

「いいもんだな〜、うんうん」

 

キバットとキバーラの戯れを見て、涙するイッセー達。

 

「”母ちゃん”はどうした?元気か?」

 

「うん!”お母様”ったら、『ダーリンが帰るまでここに残る』って聞かなくて」

 

「”父ちゃん”は誇り高いからな〜。でもサタン裏切ったんだろ?」

 

「ここだけの話、ちょっと事情があって”ある女の人”と一緒にいるのよ」

 

「マジで?母ちゃんに殺されるぞ〜?大丈夫かな父ちゃん」

 

「大丈夫よ〜。お父様はお母様一筋だから」

 

っと、数年振りの兄妹の会話を他所に、渡は気になっている事を問う。

 

 

「何でヴァーリ達がいるんだ?それにオーディン様も」

 

渡の家にはオカルト研究部以外に、ヴァーリチームとオーディンがいた。

 

「お前らがデートしている最中に、面倒な事になってよ」

 

アザゼルによれば、オーディンは日本神話の神と会談を持ちかけ、オカルト研究部はその護衛に当たっていた。

しかし突然、その会談に不満を持つ悪神ロキが現れて襲撃。

戦闘の最中、ヴァーリ達が現れてロキは一時撤退。

そして、ロキの対策をする為に今に至る。

 

「言っておくが渡、お前はこの事態に首を突っ込むなよ?」

 

「え?何で?」

 

リリスの言葉で目を大きく開けて反論する。

 

「忘れたのか?あの時、静香がいなかったらお前はまた暴走していたんだぞ」

 

「ッ⁉︎」

 

「是が非でも行かせないからな」

 

まだ反論しようとしたが、リリスの鋭い眼光に強制的に黙らされた。

 

 

 

そして、早速皆はロキ対策について話し合いを始めた。

 

「単刀直入に訊くぞヴァーリ。俺達と協力するのは何故だ?」

 

アザゼルは皆が思っていた1番の疑問をヴァーリにぶつけ、それに対してヴァーリは淡々と答える。

 

「ロキとフェンリルと戦ってみたいだけだ。美猴達も了承済みだ。この理由では不服か?」

 

それを聞いたアザゼルは怪訝そうに眉を寄せる。

 

「まあ、不服だな。だが、戦力として欲しいのは確かだ。今は英雄派のテロの影響で各勢力ともこちらに戦力を割けない状況だ。英雄派の行動とお前の行動が繋がっているって見方もあるが……お前の性格上、英雄派と行動を共にする訳ないか」

 

「ああ、彼らとは基本的にお互い干渉しない事になっている。俺はそちらと組まなくてもロキとフェンリルと戦うつもりだ。組まない場合は、そちらを巻き込んででも戦闘に介入する」

 

要約すると組むなら共闘、組まないなら無理矢理にでも戦いに割り込んでロキを攻撃すると言う意味だ。

 

「……まあ、ヴァーリに関しては一旦置いておく。さて、話はロキ対策に移行する。ロキとフェンリルの対策をとある者に訊く予定だ」

 

「ロキとフェンリルの対策を訊く?」

 

「そう、あいつらに詳しいのがいてな。そいつにご教授してもらうのさ」

 

「そいつは誰なんですか?」

 

イッセーが挙手して訊く。

 

「五大龍王の1匹、『終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)』ミドガルズオルムだ」

 

「まあ順当だが、ミドガルズオルムは俺達の声に応えるだろうか?」

 

「二天龍、龍王――――ファーブニルの力、タンニーンの力で龍門(ドラゴン・ゲート)を開く。そこからミドガルズオルムの意識だけを呼び寄せるんだよ。本来は北欧の深海で眠りについているからな」

 

「ん?龍王って言ったら匙はどうなんですか?あいつもヴリトラを宿してるし」

 

「ああ、あいつは少し野暮用でな。今はグリゴリにいるよ」

 

「かなり手こずってるけどな」

 

健介の言葉に、アザゼルは気まずそうに頬をかく。

 

「とりあえず、タンニーンと連絡が付くまで待っていてくれ。俺はシェムハザと対策について話してくる。お前らはそれまで待機。バラキエル、付いてきてくれ」

 

「了解した」

 

そう言ってアザゼルとバラキエルは大広間から出ていき、残されたのはオカルト研究部と生徒会、ヴァーリチームとなった。

 

 

**********

 

 

「はぁ」

 

夜、渡はベッドで横になり溜息をつく。

 

「何も変わっちゃいない。俺は迷惑をかけてばかりだ」

 

頭の中に、あの時の涙を流したアーシアの表情が浮かび上がる。

 

「ッ……………俺はどうすればいいんだ?………父さん」

 

渡はブラッディ・ローズに問いかけた。

 

 

**********

 

 

そんな中、窓の外から渡を見つめている男が1人。

 

「見つけたぞ、キバ」

 

タイガは鋭い目つきで寝ている渡を睨む。

 

「サガーク」

 

「£В%×ш¢£@」

 

サガークがタイガの周りを回転しながら浮遊する。

いざ変身、といこうとしたその時、

 

 

 

 

「何してるんですかぁ?」

 

「ッ!」

 

振り向くと、そこには月をバックに静香が立っていた。

 

「誰だ」

 

「貴方が今殺そうとしている人の恋人で〜す。なんちって♪」

 

「邪魔をするつもりか?」

 

「そう言ってるんですよ」

 

静香はキバーラを摘み、サガークはタイガの腰に巻きつく。

 

「変身」

 

「チュ❤︎」

 

「変身」

 

「ヘンシン」

 

互いにキバーラとサガに変身し、構える。

 

『貴方の事は知っていますよ?旧魔王サタンの細胞から造られた、人口生命体第4号』

 

『ッ、何故それを知っている!』

 

サガはジャコーダを振るい、キバーラもそれを迎え撃つ。

激しい斬り合いの中、2人は会話する。

 

『用済みになったから、自分が用済みになった元凶であるセンパイを倒して冥界を見返す…ええ、理解はできますよ』

 

『フンッ!』

 

『ヤァアッ!』

 

ギィィィィンッ!

 

((強い!))

 

互いの実力を見定め、一旦距離を取る。

 

『この世界には理不尽が多すぎる』

 

『ええ、よく知ってます。貴方も理不尽の被害者……だからと言って』

 

紫のオーラを刃に纏わせ、突撃する。

 

『愛しのセンパイを傷つける事は許さない!』

 

全身全霊の刺突を放つ。

しかし、

 

 

ギュル!

 

『ッ、ウソ……⁉︎』

 

『愛か、俺には理解できないな』

 

ジャコーダービュートで刃を巻きつけ止める。

そのまま振り回し、地面へ叩きつける。

 

『ガハッ!………ッう!矢張り、神器で作ったパチモンより、本物の魔皇石で作った鎧の方がスペックは上ですね‼︎』

 

ジャコーダービュートの不規則な攻撃を紙一重で避ける。

 

『流石は旧魔王のクローン…!』

 

サガの刺突がキバーラに当たり、屋敷に吹き飛ばされる。

 

ガシャァァァァァァンッッッ‼︎‼︎‼︎

 

壁や家具を撒き散らして、キバーラは勢いを止める。

 

『ク………』

 

『終わりだ』

 

ジャコーダーの先がキバーラの首に突き立てられる。

 

そのまま突き刺そうとした瞬間、

 

「待て!」

 

『『ッ⁉︎』』

 

奥から渡が現れる。

渡はこの光景を見て直ぐに状況を理解した。

 

「キバット!」

 

キバに変身しようと、キバットを呼ぶが………

 

「あれ?」

 

来ない。

 

辺りを見回すと、そこにはガタガタと揺れている鳥かごがあった。

 

「渡〜!リリスに閉じ込められちまった!」

 

『変身禁止』と書いてある紙の貼ってある、鳥かごの中にキバットがいた。

 

「さ、流石リリス…………容赦ない」

 

刹那、ジャコーダーが渡の肩を突き刺す。

 

「グァァァァアッ!」

 

『センパイ!』

 

「渡ーーー!」

 

肩を押さえて倒れる渡を、踏みつけて押さえつける。

 

「お前は…………一体何なんだ…⁉︎」

 

『答える必要はない』

 

サガがジャコーダーを振り上げる。

 

ガシッ!

 

『ッ!』

 

「前にもこんな事があったな」

 

その腕をリリスが掴み、押さえつけていた。

 

「お前か。オーディンの言っていた、若い頃のサタンというのは」

 

「え⁉︎」

 

渡はリリスの言葉に驚愕する。

 

『…………来い』

 

「?……………ッ!」

 

ドオオオオオオオオオンッ‼︎‼︎‼︎

 

サガの言葉と共に、コブラに酷似した魔獣が天井を突き破って入ってきた。

 

「【ククルカン】⁉︎こんな怪物を従わせているのか!」

 

リリスが驚愕した瞬間に、サガはククルカンの背に乗る。

 

『…………………キバ』

 

「お前は………一体…」

 

サガと渡は暫く見つめ合う。

 

『いずれまた』

 

そう言い残して、サガは消えていった。

 

 

 

 

 

「静香、大丈夫か?」

 

「はい、かすり傷程度ですが」

 

変身を解いて、渡に歩み寄る。

 

「静香、奴の事………しっているか?」

 

「…………いいえ、知りません」

 

リリスの問いに、静香は薄っすらとした笑みを浮かべて答えた。

 

「……………そうか」

 

「リリス?」

 

「渡、もう休め」

 

「あの〜、リリス?いい加減、俺様をここから出して欲しいんだが」

 

「ダメだ」

 

「ですよね〜」


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