興味津々な目でラブホを指差すアーシア。
「さて、この状況をどう打破するか」と呟く渡。
「ん?」
向こうからフードを被った人物がフラフラと歩いてきた。
「アーシア、やっぱり僕達は運命の赤い糸で結ばれているんだね。自分からこんな所にくるなんて。ふふふ、いいよ。僕はいつでも準備万端さ。さぁ、君の美しい体を汚させておくれ」
「お前、一体誰だ?」
渡は警戒してアーシアの前に立つと、
「テメェェェェェエ‼︎‼︎‼︎僕のアーシアに何勝手に触ってんだクズがぁ!消えろぉ!アーシアは僕の物なんだよ!今から僕とアーシアは一つになるんだよ!部外者はすっこんでろゴミがぁ!それとも何かぁ?君ぃ、アーシアを僕から奪おうとしているのかなぁ?ざっけんなぁ!アーシアの瞳も髪も唇も耳も鼻も手も足もア○ルもおま○こも全身全て僕の所有物なんだよ!チュ〜リッヒヒヒヒヒ‼︎‼︎‼︎」
狂ったように笑いながらフードをめくる。
「ウソ………⁉︎」
「お前…ディオドラ・アスタロト!」
そこには目が充血し肌は所々ヒビ割れている、変わり果てたディオドラの姿があった。
「さあアーシア!王子様が迎えに来たよ!こっちへおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいで!」
壊れたように「おいで」を繰り返す。
前にあった時より更に不気味さが増していて、吐き気がする。
「い、イヤです!」
アーシアは渡の服を掴みながらはっきりと断る。
「何で?何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で?僕はカッコいいよ?イケメンだよ?上級悪魔だよ?お金いっぱいあるよ?力だって強いよ?なのに何でアーシアは僕に振り向いてくれないの?あ、そうか。そいつか。そいつがアーシアを惑わしてるのか。ふふふ、仕方ないな〜全く。待っててねアーシア。今すぐそいつを殺して内臓ぶちまけて犬の餌にして君を取り戻してあげるよぉぉぉぉぉお…!ヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ‼︎‼︎‼︎」
「アーシア!一旦逃げるぞ!」
「はい!」
アーシアの手を引っ張り、逃げようとする。
しかし、
「あいどうもお久しゅうごぜぇ〜ま〜っすぅ!」
建物の屋上から更に人影が降りてきて、道を塞ぐ。
「フリード・セルゼン⁉︎」
「いや〜!感動の再会だねぇ!運命的だねぇ!」
ニタニタと、更に不快感が上がったフリードが現れた。
(何でこうもアーシアに関係する奴らばかり!)
前後を挟まれる2人。
渡は意を決する。
「アーシア、建物の陰に隠れてて」
「はい、気を付けてくださいね」
アーシアをひとまず遠ざけて、キバットを呼ぶ。
「行くぞ、キバット!」
「おう!キバって行くぜ!ガブッ!」
「変身」
キバに変身して、2人を前に構える。
「チュ〜リヒヒヒヒヒ!」
「イィッヒヒヒヒヒヒ!」
何がおかしいのか、2人は笑い出す。
すると2人の身体が異様なまでに膨らみ、身体を変えていく。
ディオドラは牙が生え、ボコボコと大きくなり、蜘蛛を彷彿させる怪物に。
フリードは腕が逆を向き、足は人の何倍も太くなっていた。
両腕は鋭い刃を持ち、下半身は太く、背中からはコウモリのような翼が生えていた。
『チュ〜リヒヒヒヒヒ!ビショップに改造されてこんな醜い姿になっちった〜!でも大丈夫!人は見た目じゃなくて心だよね〜!だからアーシアもこの姿でも僕を愛してくれるよね〜!』
『ヒャハハハハハハッハハハハハ!ゴミヴァーリに連れて行かれ、腐れアザゼルに首にされるわ!ビショップの旦那に拾われて気がついたらキメラになっちゃった訳よ!』
どうやら完全に人間、上級悪魔としての誇りも、何もかもを捨てたらしい。
『醜いな』
『『遺言はそれだけかぁ!』』
叫びながら、怪物と化したディオドラとフリードがキバに襲い掛かる。
ディオドラは巨大な鉤爪の生えた腕を振るうが、キバはそれを軽々と避ける。
『お前、格闘素人だろ』
『ベブッ⁉︎』
幾ら見てくれが変わって強くなったとしても、その力を使いこなせなければ何の意味もない。
顔面にカウンターを入れて吹き飛ばす。
『ヒャハハハハ!串刺しぃ!』
背後からフリードが飛びかかるが、刃を回し蹴りで砕き、腹に拳を放つ。
『ウゲッ⁉︎』
『ダァラララララララララ‼︎‼︎‼︎‼︎』
『ブボボボボボ⁉︎⁉︎⁉︎』
更に連打で攻め立て、飛び蹴りで壁に叩きつける。
「一気に決めるぜ!」
フェッスルを取り出して、トドメを刺そうとした瞬間、
ビギギギッッ!
『ッ!グァァァァア⁉︎』
「渡さん!」
肩の封印の鎖・カテナがヒビ割れ、ドス黒い魔皇力が噴き出す。
それと同時に激痛と負の感情がキバを襲い、倒れ込む。
「ヤベェ、あの時暴走した影響で封印が脆くなっちまったんだ!」
珍しくキバットが焦る。
それ程、マズイ状況なのだ。
『ヒャアッ!』
起き上がったディオドラは口から糸を吐き出し、キバを捉える。
『ヒヒヒヒヒ!』
そして身動きの取れないキバをフリードが攻め立て、キバは成す術もなく追い詰められる。
『グ……あ゛あ゛!……がはっ!』
何とか立ち上がり反撃しようにも、肩から漏れ出した魔皇力の所為で上手く力が入らない。
「渡さん……渡さん!」
『ッ、アーシア!』
いつの間にかアーシアはキバの側で回復の光を当てていた。
しかし、
「そんな、治らない……!」
噴き出す魔皇力の勢いは止まらず、キバも回復しない。
『アーシア……逃げろ…!』
「イヤです!渡さんを置いていくなんて!」
『ヒヒヒ!』
『ヒャハハハ!』
気づけば、ディオドラとフリードが直ぐそこまで近づいてきていた。
『ア〜〜〜〜〜〜〜シ〜〜〜〜アちゃ〜〜〜〜〜〜ん』
「ヒッ!」
手をワキワキと気持ち悪い動きをさせながら、荒い息を吐くディオドラ。
『ああ、もう我慢できないよ。今ここで犯すよ?いいよね?やったぁ、ありがとう!じゃあさっそくその可愛いお服を脱ごうか!さぁ君のその美しい裸体を僕に見せておくれ!』
『独り占めはダメだせぇ?俺も混ぜろよぉ!処女ア○ルは俺が貰うぜ?ブチ抜いてヒィヒィ言わせてやるよぉぉぉ!』
『化物2匹に犯される聖女…いいねぇ!興奮してきたよよよよよよよよよよよ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』
『アーシア逃げろ!』
キバは突撃して、2人を止めようとする。
『邪魔なんだよぉ!愛し合っている夫婦を引き離してそんなに楽しいかぁぁぁぁい⁉︎』
力の出ないキバは簡単に放り投げられる。
『クソ…………アー……シア…!』
キバの意識が飛びかけたその時、
「セェ〜ンパイ♪」
『ッ⁉︎』
「え?はひゃ!誰ですか⁉︎」
いつの間にか、そこには静香がいた。
(何でここに……いや、マズ…)
『何で……俺がキバだと…⁉︎』
「知ってますよぉ?取り敢えず、取っちゃいましょう」
ガキ!
『え?』
「お?おおおおおお⁉︎」
静香は簡単にキバットをベルトから外す。
すると変身が解け、魔皇力の噴出が止まった。
「静香……お前は、一体…」
「センパイ、見ていて下さいね♪」
『なぁんだよ〜君ぃ〜!次から次へとぉ!僕とアーシアの恋を邪魔するなぁよぉぉぉぉぉ……‼︎』
『テメェも犯して汚してやんぜぇ!ヒャヒャヒャヒャヒャ!』
「あーあ、ヤダヤダ。身も心も醜いなんて吐き気がしますね。やっぱり男といったセンパイですよ。咬ませ犬はさっさと殺されてご退場願いますよ。キバーラ!」
「はぁ〜い、うふふ〜。久しぶりの戦闘ね♪」
静香の側に、キバットより少し小さめの白い蝙蝠が現れる。
「き、キバーラァ〜〜〜〜⁉︎⁉︎⁉︎』
「久しぶりね、お兄ちゃん♪」
「お兄ちゃん⁉︎」
「キバットさん…妹さんがいたんですか?」
一番長い付き合いの渡でさえ知らない事実だった。
「そんな事はまた後で。行くよ!」
静香はキバーラを摘み、
「変身」
「チュ❤︎」
と、呟く。
するとキバーラは光の粒子になって静香に纏わりつく。
粒子は形を成し紫と白を特徴とし、赤い複眼とかなり露骨に表現された胸の谷間や大きめの腰回りのある装甲の鎧姿となった。
『仮面ライダーキバーラ!なんてね♪』