ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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57話 D×D 真なる赤龍神帝

『■■■■■ーーーー‼︎‼︎‼︎』

 

サガを視界に入れた瞬間、突進してくるキバ。

サガは紅い刀身の剣形態『ジャコーダーロッド』を構え、刺突攻撃を主体としたスピーディーな剣術で、キバの体に火花を散らせる。

 

『■■■!■■■■ーーーー‼︎‼︎』

 

キバはダメージを御構い無しに拳を振るう。

 

サガは魔皇力を注ぐと、ジャコーダーの刀身は、収縮自在の鞭に変形。

鞭形態『ジャコーダービュート』の紅く光る刀身がキバを打ち、絡め取って振り回し、地面や建物の壁に打ち付ける、パワフルな戦法を見せた。

 

『つ、強えぇ』

 

予測不能の攻撃に手も足も出ないキバは一度上空に上がる。

しかしジャコーダービュートにより足を絡まれ地面に叩きつけられる。

 

『■■■⁉︎』

 

『ハッ!』

 

起き上がったキバはサガを真っ直ぐ見据える。

ジャコーダーロッドを振るい、ゆっくりと足を進めるサガ。

 

ヒュッ

 

『■■■!』

 

ビャッ!

 

『■■■■■ーーーー‼︎‼︎‼︎』

 

ヒュルル

 

『■■■■⁉︎』

 

ズドンッ!

 

『■■■■■■■ーーーー‼︎‼︎‼︎』

 

右に払い、左に払い、絡め取り、叩きつける。

獣と化したキバは感激する隙も与えられず、叩きのめされる。

 

『終わりだ、キバ』

 

サガは白いフエッスルを取り出して、サガークに咥えさせた。

 

「Wake up!」

 

サガークがフエッスルを吹くと、周囲が闇に包まれ青い三日月が浮かぶ夜に変化した。

 

「な、何ッ⁉︎」

 

「これは、渡の時と同じ!」

 

魔皇力がジャコーダーに収束され、サガが刀身を天に掲げると、ジャコーダーから溢れだした魔皇力が、紅いキバの紋章を生み出す。

 

「ハッ!」

 

サガが突きだしたジャコーダーの刀身が真っ直ぐ伸びて、キバを突き刺した。

サガは跳躍し、紅いキバの紋章を潜り抜けると、キバを吊し上げる。

 

『スネーキングデスブレイク』

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

ジャコーダーを通じて、強力な魔皇力を注ぎこむと、キバは爆発した。

 

『ヴヴ……ぉ…』

 

『しぶといな』

 

既に虫の息のキバに止めを刺そうとジャコーダーを構えたその時、

 

 

 

 

「そこまでだ」

 

『ッ!』

 

背後にはリリスがサガの手を掴んでいた。

 

「お前がどのような存在かは知らないが……」

 

『グッ………おおお!』

 

サガの頭上に魔法陣が展開され、サガを拘束する。

 

「殺すのは止めてもらおうか」

 

そう言って、リリスはキバの方へとゆっくり歩く。

 

『お゛お゛……オオオ!』

 

「渡……来い」

 

その言葉と共に、キバはリリスに襲い掛かる。

キバの頭部の鎧が開き、牙をリリスの美しい肌に突き立てる。

 

「リリス様!」

 

リアス達が向かおうとするが、リリスは視線で「止めろ」と指示する。

 

「渡………可愛い渡」

 

リリスは肌から血が出ているにも関わらず、気にせずキバの頭を撫でる。

 

「もう大丈夫だ」

 

優しい言葉を送り、撫で続ける。

すると魔法陣から音楽機器を取り出しスイッチを押す。

すると機器からバイオリンの音楽が流れる。

 

「な、何この演奏」

 

「素敵…」

 

機器から流れるバイオリンの演奏の音楽は一瞬にして皆の心を掴んだ。

 

「ほう、久しぶりに聞いたの」

 

『演奏を聴かせろだぁ?バカ言え。俺は男に聴かせる趣味はねぇ』

 

『ほほう。人間風情がワシに逆らうか』

 

『ハッ!俺は誰からも指図されるのが嫌いなんだよ!聴きたいんだったら力尽くでやってみやがれ!』

 

(久しいのう。あの時から、ワシは人間を見下すのは止めたのじゃ)

 

「渡、この音楽は音也の…お前の父親の演奏だ」

 

『父……さ、ん…』

 

「戻って来い、渡」

 

「リリス……ありがとう」

 

変身は解け、渡は涙を流しリリスの胸の中で意識を手放した。

 

 

**********

 

 

「ここは?」

 

渡は暗い空間の中にいた。

その空間の中に、一筋の光が差し込む。

目を凝らして見ると、その光の中心でバイオリンを引いている男性が1人。

 

「父さん?」

 

本能的に感じた。

あれは自分の父、暁 音也だと。

 

「!」

 

音也の方も渡に気づく。

 

「……………」

 

「へ?」

 

何かを喋っているが、何か聞こえない。

 

「………」

 

「何?父さん、聞こえないよ!」

 

「……………………」

 

もっと近くに行こうとするが、これ以上は近づけず、逆に遠ざかる。

 

「待って…父さん!聞きたい事がーーー!」

 

 

**********

 

 

「父さん……」

 

渡はゆっくり目を開けると、最初に瞳に入ったのはリリスだった。

 

「起きたか、渡」

 

膝枕の態勢で微笑みながら渡の顔を覗くリリス。

アーシアも無事でゼノヴィアに抱きつかれている。

 

「暁 渡、目が覚めたか。丁度良かった」

 

「ヴァーリ?お前、何でここに?」

 

バチッ!バチッ!

 

その時、空間に巨大な穴が開き、そこから巨大な何かが姿を現す。

 

「よく見ておけ、あれが俺が見たかったものだ」

 

空中をとてつもなく巨大な生物――――真紅のドラゴンが雄大に泳いでいく。

 

「『赤い龍』と呼ばれるドラゴンは2種類いる。1つは兵藤 一誠に宿るウェールズの古のドラゴン――――ウェルシュ・ドラゴン。赤龍帝だ。白龍皇もその伝承に出てくる同じ出自のもの。だが、もう1体だけ『赤い龍』がいる。それが『黙示録』に記されし、赤いドラゴンだ」

 

「『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』…グレートレッドか」

 

「リリスの言う通り、『真龍』と称される偉大なるドラゴンだ。自ら次元の狭間に住み、永遠に飛び続けている。今回、俺達はあれを確認する為にここへ来た。レーティングゲームのフィールドは次元の狭間の一角に結界を張ってその中で展開している。今回、オーフィスの本当の目的もあれを確認する事だ。シャルバ達の作戦は俺達にとって、どうでも良い事だった」

 

「まさか、あれを倒す事がお前の目標か?」

 

リリスが訊くと、ヴァーリが真っ直ぐな瞳で言った。

 

「俺が最も戦いたい相手―――――『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』と呼ばれし『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド。俺は『真なる白龍神皇』になりたいんだ。赤の最上位がいるのに、白だけ1歩前止まりでは格好がつかないだろう?だから、俺はそれになる。いつか、グレートレッドを倒してな」

 

ヴァーリは自身の夢を語る。

テロ組織に身を置いているのもグレートレッドと言うドラゴンを倒すためだった。

 

「成る程」

 

リリスはクスリと笑い、ヴァーリを見つめる。

 

 

 

「グレートレッド、久しい」

 

「へ?」

 

渡達のすぐ近くに黒髪黒ワンピースの少女が立っていた。

 

「誰だあのチビッ娘?さっきまでいなかったけど」

 

ヴァーリがその少女を確認して苦笑した。

 

「オーフィス。ウロボロスだ。『禍の団』のトップでもある」

 

「なっ!『禍の団』のトップ!?あれが!?」

 

驚きを隠せない渡。

オーフィスは指鉄砲の構えで撃ちだす格好をした。

 

「我は、いつか必ず静寂を手にする」

 

その直後、アザゼルとタンニーンが降ってくる。

 

「先生」

 

「おー、渡を元に戻ったようだな。矢張りお前ならあの曲で暴走から戻るかもなんて思っていたぜ」

 

アザゼルとタンニーンは空を飛ぶグレートレッドに視線を向ける。

 

「懐かしい、グレートレッドか」

 

「タンニーンも戦った事あるのか?」

 

「いや、俺なぞ歯牙にもかけてくれなかったさ」

 

「久しぶりだな、アザゼル。クルゼレイ・アスモデウスは倒したのか?」

 

「ああ、旧アスモデウスはリリスが瞬殺した。まとめていた奴らが取られれば配下も逃げ出す。シャルバ・ベルゼブブの方も渡が片付けたみたいだしな」

 

「お兄様は?」

 

「結界が崩壊したからな。観戦ルームに戻ったよ」

 

リリスがオーフィスに言う。

 

「オーフィス。各地で暴れ回った旧魔王派の連中は退却及び降伏した。事実上、まとめていた末裔共を失った旧魔王派は壊滅状態だ」

 

「そう。それもまた一つの結末」

 

オーフィスは特に驚く様子も無く言った。

1つの派閥が消えたのに痛くも痒くも無いと言った様な感じである。

 

「お前らの中であとヴァーリ以外に大きな勢力は『サタン派』と、人間の英雄や勇者の末裔、神器所有者で集まった『英雄派』だけか」

 

それを聞いたオーフィスは踵を返す。

 

「我は帰る」

 

どうやら戦う気は無いらしい。

 

「今代のキバ」

 

「ん?どわっ!?な、何だよ?」

 

オーフィスがいつの間にか渡の足元にいて、渡を見上げながら言う。

 

「『黄金のキバ』……真なる力」

 

「黄金の………キバ?」

 

渡はその意味をさっぱり理解出来なかった。

そんな渡にオーフィスは更に衝撃的な事を言う。

 

 

 

 

 

 

「『闇のキバ』と相対する時は近い」

 

「「「「「――――っ⁉︎」」」」」

 

全員がその言葉に驚愕した。

オーフィスの言葉に真っ先に反応したのはアザゼルだった。

 

「オーフィス!それは一体どういう事だ!あの『闇のキバ』が…!」

 

「いずれ、分かる」

 

オーフィスは意味深な言葉を言い残して消え去っていった。

 

 

**********

 

 

「………」

 

青年、タイガは雨の中を歩いていた。

 

「ーーーー?」

 

「ああ、構わないサガーク」

 

 

 

『旧魔王サタン様の細胞?ほほう、いいものを手に入れたな』

 

『人口生命体の資料を元に、4号を造ってみては?』

 

『ふむ、我々の”道具”として働いて貰おう』

 

『くれぐれも魔王様には感づかれるなよ』

 

 

 

 

 

『何?レーティングゲームで『キバの鎧』を?』

 

『リリス様が冥界のトップに返り咲いた。我々の研究も危ぶまれるかもしれん』

 

『それに、若手があんな雑種に負ける訳が無い』

 

『だが、ほぼ研究は成功しているぞ?』

 

 

 

『捨てろ』

 

『は?』

 

『捨てろと言っている。『キバの鎧』が冥界に渡れば、もうこいつの必要性は無くなる』

 

 

 

 

 

「………ヴヴッッッぷ!」

 

忌々しい記憶が蘇り、吐き気が込み上げる。

 

「俺が…キバより劣っているから……‼︎」

 

”道具”として生まれ、勝手な理由で破棄されそうになったタイガ。

その憎しみは、計り知れない。

 

「俺はキバを倒し…冥界の奴らに思い知らせてやる……‼︎‼︎」

 

「Иош¨Юясф」

 

「サガーク……こんな俺についてきてくれるのか?」

 

「Ю□£В%×」

 

サガークの言葉は、タイガには理解できていた。

 

「ああ、ありがとう」

 

 

**********

 

 

「ん……ここは⁉︎」

 

サタン派の基地。

そこの一室で、ある男が目覚めた。

 

 

「ようやく目が覚めましたか。ディオドラ・アスタロト」

 

「ちぇ、エックメイトフォーのビショップ⁉︎」

 

圧倒的魔力と存在感を持つビショップを目にし、身構える。

 

「ぼ、僕は死んだ筈じゃ……」

 

「死んでませんよ。我々には貴方が必要ですからね。間一髪の所を救出したんですよ」

 

ディオドラは驚愕した。

それと同時に歓喜した。

サタン派は禍の団でも特に大きい派閥。

はぐれ悪魔に堕ちた自分を、その派閥が必要としてくれているのは夢のようだった。

 

「さっさと着替えてついてきてください。早速、貴方にはやって貰わなければならない事がある」

 

「あ、ああ!分かった!」

 

ディオドラは焦りながら着替えて、ビショップの後を追った。

 

 

 

「シャルバの計画はどうなったんだ?」

 

廊下を進みながら、前方のビショップに問う。

 

「失敗しましたよ。余計な事をして、キバの逆鱗に触れたのです。今はほら、この通り」

 

「へ?……………………ッッッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

ビショップの視線を追い、それを見た瞬間、ディオドラは息を飲んだ。

 

 

 

「あ゛あ゛………ゔ……お゛ぅ……」

 

両手両足を杭で壁に貼り付けられ、全身を鞭で叩かれた見る影も無い痛々しいシャルバの姿があった。

 

「しゃ、シャルバァ⁉︎」

 

「この男は任務を他所に計画を立てていたのでね。しかも誰1人、被害者も出す事はできなかった。当然の罰ですよ」

 

酷い有様に腰を抜かしたが、その顔は直ぐにニヤリと笑う。

 

ガンッ!

 

「ヴヴォ……!」

 

ディオドラは魔力を込めた足で容赦なくシャルバを蹴る。

 

「このグズが!よくも僕を見捨てて、あんな奴を選びやがったな!だからこうなったんだ!僕だったら作戦は成功していたんだ!なぁにが真の魔王だ!威張るしか能の無い偽魔王が!」

 

ガスガスと蹴り続け、あの時の怒りをぶつける。

 

「はぁ、はぁ。さてと、さぁ僕は何をすればいい?実は欲しい女の子がいるんだけど、僕が君達に協力する代わりにその女の子を僕のモノにさせてくれないかい?」

 

「ええ、いいですよ」

 

それを聞き、ディオドラは飛び上がる。

 

「シャルバより話しが早いね!じゃあ何をすればいい⁉︎何でもやってあげるよ!」

 

「では……」

 

ビショップは懐から注射器を取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「”モルモット”になって頂く」

 

「………………………………………へ?」

 

暫く放心状態となるディオドラ。

 

「ちょ、ちょっと待って?へ?モルモット?モルモットって動物の事だよね?」

 

「いえ、実験台の事です」

 

「何で⁉︎」

 

「ポーンとナイトが猫又を取り逃がしてしまいましてね。”代わり”を探していたんですよ」

 

「そ、そんな!じゃあ僕が必要だって言ったのは⁉︎」

 

「これの為です」

 

「い……イヤだぁぁぁぁぁああ‼︎‼︎‼︎」

 

ディオドラは翼を出して、飛び上がる。

しかし、

 

「ウゲッ!」

 

翼は機能せず、そのまま地面に激突する。

 

「貴方が寝ている最中に逃げられないよう少し改造したのですよ」

 

「ひ、ヒィィィィイ!」

 

地面を這いずり逃げるディオドラ。

 

「ガッ……………………………⁉︎」

 

しかし、一瞬で移動したビショップに踏みつけられる。

 

「御覚悟を」

 

「イヤだ!イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!絶対にイヤだ!頼むゴメンなさい!許してください!それ以外なら何でもします!だからそれだけは!シャルバ助けて!さっきは悪かった!僕の眷属達は何処だ⁉︎兄さん助けてぇぇぇぇぇぇえええ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

プス

 

「アッーーーーーーー!」

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チュ〜〜〜〜〜〜リッヒヒヒヒ!アーシア〜、アーシア〜!僕のアーシア〜、今行くからニェ〜!キバなんて敵じゃ無いシャ〜!あんなクズ僕が倒して開放してあげリュからニェ〜!なんせ僕達は運命の赤い糸で結ばれているんだコリャさ〜!チュ〜〜〜〜〜リッヒヒヒヒ‼︎‼︎‼︎チュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜リッヒヒヒヒヒヒヒ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

ディオドラは壊れた。


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