ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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54話 誤った選択・キバの逆鱗

「いいか渡!五分間だけだぞ!」

 

「ああ!」

 

キバの右腕と額の魔皇石が光る。

すると地面からどんどん水が湧き出し、湖に変化する。

キバはその上に乗り、スケートのように滑り、超感覚でロウドの気配を察しながら次に左腕と額の魔皇石が光る。

 

「ッカ………⁉︎」

 

水の上を滑走するスピードを利用して、ロウドの腹部に拳を叩き込む。

吹き飛ばされるロウドは足腰に力を入れ床に手をつき、止まる。

 

「あの…姿は……」

 

アーシアは心配していた。

今のキバは何か嫌な予感がすると感じているのだ。

 

『ドガバキフォーム』。

全てのフォームの能力を重ね揃えた姿。

しかし、非常に強力な反面、キバという一つの器に3体ものモンスターの力を付与しているため、キバやキバットはもちろん、結菜達への肉体的負担もかなり大きい。

 

『キバット!頼む!』

 

ドッガハンマーがキバの手に出現した。

 

「おう!魔皇力!最大出力!」

 

キバの全身が光る。

キバはそのまま、捉えられない『ガルル』のスピードで走り、

 

ドガンドガンドガンッ!

 

『バッシャー』のテクニックと超感覚で全てを見極め、

 

ドガンドガンドガンッ!

 

『ドッガ』の力でロウドを圧倒する。

 

(力だけならヴァーリの『覇龍』とほぼ互角…だが……)

 

最悪の場合、全身に装着されている魔皇石があり余るパワーを抑えきれず鎧もろとも自壊し、渡とキバットを含めた4人全員の生命を脅かす危険性を持つ。

 

活動限界時間はキバットが魔皇力を制御できる約5分間。

 

(勝機見たり!)

 

ロウドはニタリと笑う。

それを見たキバはガルルセイバーを、ロウドは槍を構える。

数秒、たがいを見つめた後に2人は同時に駆け出し、そして同時に己の刃をぶつけあった。

 

「ハッ!」

 

横から蹴りあげてきたロウドの足を片腕で防ぎ、腹部に膝蹴りを入れて一瞬だけ怯ますと全力でガルルセイバーをロウドの剣に叩きつける。

その衝撃で横にずらし、斜めにガルルセイバーで切り裂く。

今度は突きでロウドの腹部に突き刺そうとするがもう少しという所で鷲掴みにされて受け止められた。

 

「うらぁ!」

 

『ぐっ!』

 

腹部に蹴りを入れられ、バッシャーマグナムを装備して撃ち出す。

 

ドドドドドドドドドドドド!!!

 

撃ち続けながら、ガルルセイバーでロウドに斬りかかる。

それが防がれると同時に、バッシャーマグナムの引き金を引く。

 

「手数が増えようが同じだ!」

 

ロウドが槍に魔力を纏わせ、横一直線に魔の波動を飛ばすと同時に、キバはドッガハンマーを振り下ろし、波動を相殺した。

同時にロウドは跳躍し、斬りかかっていくがそれでも辛うじて防ぐ。

更にバッシャーマグナムの引き金を引くが、同じ手は効かずそれを察知したロウドが後ろに下がった事で一撃も与えられなかった。

 

『「うぉぉ!」』

 

鍔迫り合いを繰り広げながら、互いに横に走る。

 

「うらぁ!」

 

『ぐあぁ!』

 

一瞬の隙で横に切り裂かれ、怯んだ所に腹部に蹴りを入れられ、蹴り飛ばされる。

 

「ッ⁉︎」

 

ドッガハンマーの『トゥルーアイ』で一瞬だけロウドの動きを止めた瞬間にバッシャーマグナムの連続射出を放つ。

しかし、これで終わる相手だとは思わない。

 

『はぁ!』

 

「っせぇぇぇぇあらぁ!」

 

飛びあがってガルルセイバーをロウドに叩きつけようとするが、ロウドの巨大な鎧が腕を豪快に振るい、弾き返す。

そして2、3度キバを斬り裂き、蹴り飛ばした後に鎧の額からの魔力弾を放つ。

 

『ぐあぁぁ!うぁぁ!』

 

連続で放たれる魔力弾がキバを何度も襲う。

 

「これで、フィナーレだな」

 

『悪いが、諦めが悪いモンでね…!』

 

「渡、あと2分だ!」

 

制限時間が刻一刻と迫り、早急に終わらせなければと地面を蹴る。

互いの武器をぶつけ合う。

交差するたびに互いの武器がぶつかり合い、火花と金属音が鳴り響く。

 

「『バッシャーバイト』!」

 

『はぁ!』

 

「ぬぁ!うぅぅらぁぁぁ!」

 

『バッシャー・アクタトルネード』を放つが、ロウドの槍に遮られ、掻き消されると同時に鎧の額からの魔力弾が幾つも飛んでくるのを見て、『ガルル』の力で避けていく……が、一発だけ当たってしまった。

 

『おおあおぉぉぉぉ!』

 

「ぐあぁ⁉︎うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

魔力弾に当たった際の爆風を煙幕代わりに使い、猛スピードでロウドに突き進みガルルセイバーを突き刺す。

 

「ガハッ!」

 

(これが最後のチャンス!)

 

ガルルセイバーを抜き、一回転してドッガハンマーをロウドに叩きつけて空高く上げると、そのまま地面に着地する。

 

「Wake up!」

 

キバットがフェッスルを奏でる。

 

右足のヘルズゲートが開放され、強大な魔皇力が放出される。

 

『はぁぁぁぁぁ!だぁぁぁぁぁぁ!』

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

『ダークネスムーンブレイク』をロウドにぶつけると、その衝撃でロウドは大きく飛んでいき、壁に叩きつけられた。

 

「ガハッ!はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」

 

「渡さん!」

 

変身が解け、膝を付く渡の元へアーシアが駆け寄る。

 

「無茶しすぎよ」

 

「私達も渡君の事、言えないけどね」

 

「眠い〜疲れた〜」

 

「流石はダーリンだな」

 

「聞き捨てならないにゃ」

 

「けど、勝ったんだよね」

 

結菜、リーヤ、紫水、ヘル、黒歌、エリカが渡を賞賛する。

その時、

 

 

 

「あ〜、いって〜…」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

ボロボロの体のロウドが、瓦礫から出ていた。

 

「お前……まだ!」

 

「あ〜、そう警戒しなくていいよ。もう体動かないし」

 

立ち上がろうとする渡に向かって言う。

 

「しかし、予想以上のダメージだな…

 

 

 

 

所詮、『()』の俺じゃあこの程度しか力を引き出せないか」

 

ロウドの体は段々と粒子化していく。

 

「お前⁉︎」

 

「また会おうぜ。俺は一足先にトンズラさ」

 

そう言い残して、ロウドは消えた。

 

「最後の最後にしてやられたわね」

 

「まあいいや。アーシア、帰ろう」

 

「はい!」

 

アーシアは笑顔で渡の元へ走り寄る。

 

 

 

 

 

 

カッ!

 

突如、まばゆい光が渡達を襲う。

視線を送るとアーシアが光の柱に包まれていた。

光の柱が消え去った時、そこには……

 

「……アーシア?」

 

誰もいなかった。

 

あまりの光景に唖然としていると空中に魔法陣が描かれ、見知らぬ男が現れる。

男はこちらに向けて憎しみの籠った言葉と視線を投げかける。

 

「お初にお目にかかる、忌々しき偽りのキバよ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。ロウド・ビフロンス、実力を認めて機会を与えてやったというのに、このザマとは」

 

嘲笑い、吐き捨てるように言う。

 

「まあいい。下賤な人間の混ざり合い風情よ。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然、『キバの鎧』。それは然るべき者が身につける物なのだ」

 

冷淡な声。

瞳も憎悪に染まっている。

 

対する結菜達は怒りで今にでもシャルバに飛びつきそうだ。

リーヤと黒歌も顔を怒りで歪め、水と仙術を身にまとい始めた。

紫水とエリカは拳を握り過ぎて血が出ており、ヘルに至ってはケルベロスの姿になっている。

そんな中、

 

「アーシア?アーシア?」

 

渡はフラフラそこらを歩くようにアーシアを探しだすように歩いていた。

 

「アーシア?どこ行ったんだ?何処に……何処に…」

 

その光景を見て、リーヤとエリカが嗚咽を漏らしていた。

黒歌とヘルも顔を背け、紫水は頬に涙を伝わせている。

結菜は渡をやさしく抱いていた。

 

「……許さない。許さないッ!斬るっ!斬り殺してやるっ!」

 

叫びながらエリカは変身せずにイクサカリバーでシャルバに斬りかかる。

 

「無駄……ッ⁉︎」

 

シャルバはイクサカリバーを防御障壁で防ごうとしたようだが、防御障壁は一瞬で切り裂かれる。

「……アーシアを返せ……!私の……友達なの、……初めての…友達…!誰よりも優しかった……どうして……!」

 

「くっ……下劣なる人間風情が!あの娘は次元の彼方に消えていった。すでにその身も消失しているだろう。死んだ「黙れ」ッ!」

 

聞くに堪えない言葉を、キバットが遮る。

その声はいつも通りの愉快な声でなく、威厳のある威圧的な声だった。

 

「お前ら、今直ぐこの場を離れろ。死にたくなければ直ぐにな」

 

キバットの声が響き渡る。

見ると渡の視線はシャルバを見つめたまま視線を外さない。

 

「そこの魔王擬き……シャルバと言ったか?」

 

渡が結菜を振り払い立ち上がる。

 

「……お前は」

 

死人のようなゆっくりとした足取りでシャルバの方に向かっていく。

シャルバの真下に来た時、キバットは吸い込まれるように渡のベルトに止まる。

 

「選択を間違えた」

 

それは何も詰まっていないただひたすらまでの、無感情の一声。

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

神殿が大きく揺れ、渡が血より真っ赤なオーラを発していく。

結菜達は本能的に肌に伝わるこのオーラを感じて思った。

 

『危険だ』

 

いつの間にか、渡はキバの姿になっていた。

 

『殺してやる』

 

「ば、バカな!魔皇力を注入されていない筈!」

 

バギィ!バギィ!

 

「「「「「ッ⁉︎⁉︎⁉︎」」」」」

 

封印されていた魔皇力が溢れだし、肩の部分が開いて、大きな漆黒の翼が広がった。

 

 

**********

 

 

「ッ⁉︎」

 

その頃、旧魔王派を一掃していたリリスが血相を変える。

 

「ん?どうした、リリス」

 

「ヤバイ、渡の奴まさか!」

 

「リリス様?」

 

「クソッ、無理矢理にでも止めればよかったか!渡の奴………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タツロット無しで封印を解いた(・・・・・・・・・・・・・・)!!」

 

 

**********

 

 

『お゛……お゛お゛!』

 

漆黒の翼から現れた数え切れない程の黒い蝙蝠が、キバに集約されていく。

 

『「変身」』

 

渡とキバットの言葉と共に、背中に漆黒のマントが現れる。

収まった時、そこには恐ろしく悍ましい漆黒の皇帝が立っていた。

 

魔皇力暴走形態

『ブラッドエンペラーフォーム』




オリジナルフォーム『ブラッドエンペラーフォーム』はどうだったでしょうか?
『もしもタツロット無しでエンペラーフォームになったら』と、原作を見た時から思っていたのでやってみました。
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