ハイスクール KIVA   作:寝坊助

5 / 76
3話 判決・王の処刑と白の登場

「き……キバ……」

 

堕天使ドーナシークは目の前のキバに狼狽える。

 

「ヒッ!」

 

キバが一歩、前に進むと同時にドーナシークが一歩下がる。

 

「クゥ………ッ!……ふふ」

 

恐怖で塗られた表情が途端にニヤリと笑う。

 

(いや待て!今ここでキバを倒せば、私は大手柄だ!レイナーレ様の計画に加担した罪を考えてもお釣りが来る!中級への昇進に留まらず上級……いや、幹部も夢ではない!)

 

約束された未来をイメージしたドーナシークの顔に正気が戻ってきた。

 

「ふははははは!いいぞキバ!来るがいい!お前を倒せば、私の未来は薔薇色だ!」

 

『……1つ』

 

「あ?」

 

『1つ聞かせろ……天野 夕麻。あいつは堕天使なのか?』

 

「ああ、私の上司だ。まぁ、貴様を倒せばあんな奴の地位など簡単に越えるがね!」

 

『何故、イッセーの彼女になったんだ』

 

「そんなもの、神器を持っていたからに決まっているだろう。唯、普通に殺すのはつまらないから恋人の振りをして遊んでたらしい」

 

『遊んでた……だとぉ……!』

 

「話を聞いた時には笑ったな!いい酒の肴になった!」

 

『……まれ』

 

「しかしそれが悪魔になっているとは。ゴキブリの様な男だ」

 

『黙れよ……』

 

「下等な人間風情が我々と釣り合う訳もないというのになぁ!はははははは‼︎‼︎‼︎」

 

『黙れよぉ!』

 

我慢の限界の来たキバは、殺気を放つ。

 

『そんな理由で!そんな下らない事で!あいつの初恋をおおおおおおおお‼︎‼︎‼︎』

 

ドーナシークに向かって走り、跳躍、一瞬で目の前まで行き、腹を殴る。

 

『ハアッ‼︎』

 

「ゴブッ⁉︎」

 

ドーナシークは血反吐を吐き、バウンドして吹き飛んだ。

 

「ぐぅ… たかがハーフごときに…‼︎私は堕天使‼︎薄汚い悪魔と下等な人間の混ざり合いなんかとは格が違うのだぁ!」

 

「渡!こいつマジで許せねぇ!遠慮なくやっちまえぇ!」

 

『当たり前だ‼︎』

 

「死ねぁ‼︎‼︎」

 

ドーナシークの投擲してきた槍を、片手で握り潰す。

 

「バカな⁉︎私の全力をぉ!」

一気に接近したキバは、飛び上がってドーナシークを打ち落とした。

 

「ボハァァァァアッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

そのまま着地して振り向き、堕ちてくるドーナシークに素早い拳打を浴びせた。

 

『ハァァァァァァァァァァァア‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

「グゴハァガァァッ‼︎‼︎‼︎」

 

一回転して、その遠心力を利用した回し蹴りにより、ドーナシークを地面に叩きつけた。

 

『"堕"天使なんだろう。その方がお似合いだ』

 

「ふざけるなァァァ‼︎私は、私は堕天使なんだぞォォォ‼︎‼︎たかがハーフ風情ごときが傷つけていい相手じゃないんだぞォォォ!!!!」

 

ゴガンッ‼︎‼︎‼︎

 

「ヴボォ‼︎‼︎」

 

叫ぶドーナシークの顔面を思い切り殴る。

 

「はぁ!はぁ!くぞ!くぞ!このガキぃ!」

 

歯はボロボロ、鼻血がダラダラ、充血した目でキバを睨む。

 

「い、一旦…退却を……!」

 

逃げようとしたドーナシークは羽を広げたが、ガクリ!と地面の重力に引っ張られ倒れる。

 

「逃がすかバーカ」

 

「ンナァッ⁉︎」

 

キバットがベルトから離れて、その翼でドーナシークの羽をズタズタに斬り裂いていた。

 

コッ、コッ、コッ

 

『………』

 

「ヒィィィィイ‼︎」

 

無言で近づくキバに、ドーナシークは恐怖する。

 

「ま、待ってくれ!すまない!悪かった!」

 

ここへきて、ドーナシークは命乞いをする。

 

「あの小僧を侮辱したのは謝る!許してくれ!そ、それに騙して殺したのはのはレイナーレだ!そうだ、我々の計画とアジトを教える!それで手を打たないか⁉︎だから命だけは!」

 

ガタガタと小動物の様に震えるドーナシークを見下ろすキバ。

 

『………消えろ。2度と俺達の目の前に現れるな』

 

そう言って後ろに振り返ったその時、

 

 

 

 

 

「バカがぁ!死ねぇキバァ‼︎」

 

立ち上がり、槍を投擲するドーナシーク。

 

 

 

『……キバット』

 

「ほいよ!相変わらずお前は甘い奴だねぇ」

 

バキィィインッ!

 

「な……あ……」

 

キバの背後に迫る光の槍を、キバットが砕き、防いだ。

キバはドーナシークの方を向き、また無言で近づく。

 

「ひ、ヒィィィィイ‼︎ゴメンなさい!どうかご慈悲ぉぉぉぉお!」

 

『慈悲はもうやった。それを無駄にしたのはお前だ』

 

無情の言葉と共に、腰のベルトから"フエッスル"を取り出す。

 

『キバット!』

 

「おう!Wake Up!」

 

キバットにウェイクアップフエッスルを吹かせ、魔性の音色を奏でる。

 

瞬間、世界は『キバの世界』となる。

 

夜空は更に黒く塗り潰され、星も雲も消え、あるのは暗黒の空に輝く三日月ただ1つ。

 

「フッ!」

 

キバが右脚を天に上げると、キバットが右脚の周りを旋回する。

すると、封印の鎖・カテナが飛び散り、力が解放される。

蝙蝠の翼を象った扉、『ヘルズゲート』が完全に開放される。

そして、片足だけで、空に飛び上がった。

 

「ヒィ!嫌だ!嫌だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

ドーナシークの断末魔の叫びが暗黒に響く。

 

キバは一瞬逆さになるように回転すると、強大な力を纏わせて、右脚をドーナシークに向け、『ダークネスムーンブレイク』を喰らわせた。

 

「ウヴォオオオオオオオアアアアア‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

ヒットした瞬間、ドーナシークの倒れた地面にキバの紋章が地面に刻まれた。

 

 

**********

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ………‼︎

 

その時、暁邸が揺れる。

 

「ん?ああ、"エサ"の時間か」

 

部屋で読書をしているリリスは、洋館の異常に気づく。

 

「渡様の身に何かあったのでしょうか?」

 

グレイフィアは渡の身を心配するだけで然程、狼狽えていなかった。

 

『ゴオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎‼︎』

 

屋敷から巨大な竜の首が生える。

竜の首が吼えると、屋敷の一部がペーパーのようにクルクル巻かれ、まったく別の建物が出現した。

 

そう、それはキバの居城『キャッスルドラン』である。

咆哮と共に翼を羽ばたかせて飛ぶキャッスルドラン。

人避けの結界により、近所の人にはその姿と轟音は聞こえない。

 

キャッスルドランは我が主の無事と誇り高き勝利を祝福しに向かった。

 

『ギャォォォォォォォォォォッ!』

 

 

**********

 

 

キバの右足に再び鎖が巻かれる。

その瞬間、『キバの世界』が終った。

 

『お』

 

空を見ると、キャッスルドランの姿が見えた。

キャッスルドランは死体となったドーナシークを口に入れ、食べた。

 

「不味そうだな。うげぇ」

 

『これでよし』

 

キバは倒れたイッセーの方へ向かう。

 

キバの胸の中は『親友を守れた』という結果に満足していた。

後はイッセーを家に送り届けるだけ。

 

しかしその時、

 

 

「待ちなさい!」

 

「!」

 

背後から声が聞こえ、振り向く。

そこには、自分と同じ位の少女が立っていた。

夜の所為か、顔まではよく見えない。

 

「キバ…やっと会えた」

 

少女はベルトを腰に装着し、右手に装着した手甲を反対の左手の掌に当てる。

 

《レ・ディ・ー》

 

「何だ?」

 

《フィ・ス・ト・オ・ン》

 

手甲をベルトに装着した瞬間、黄金の十字架が少女の目の前に現れ、一瞬の内に純白の装甲を纏った戦士・イクサとなった。

 

『その命、神に返しなさい!』

 

イクサは地面を蹴り、キバに襲い掛かる。

両手で攻撃を防ぎ腕を弾くと、イクサに拳の連打を叩き込んだ。

 

『ウゥ!ッ…この!』

 

イクサの回し蹴りが唸るが、キバは跳躍し避ける。

イクサが振り返った先には、キバの裏拳が迫っていた。

 

『キャッ!』

 

女の子らしい悲鳴を上げ、吹き飛ばされる。

 

『……止めるか?』

 

『なんの!』

 

キバの言葉を聞かず、イクサは拳の連打を放つ。

確実にキバの心臓を目掛けた技、キバは逸らす事で回避したが、次には蹴りが飛んできた。

キバはそれを腕で受ける。

 

『無駄だ』

 

受け止めた足を掴み、放り投げる。

魔皇力を左腕に集中させた拳を空中にいるイクサに目掛けて放ち、イクサは更に吹き飛ぶ。

 

『くぅ……!』

 

吹き飛びながらも体制を保たせ、、腰のベルトから"ナックルフエッスル"を取り出す。

 

『あれは……俺のフエッスルと似てる』

 

《イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ》

 

ベルトがナックルフエッスルを読み込み、手甲を外す。

 

「渡!」

 

『ああ』

 

2人が警戒したその時、

 

 

 

 

「ハァッ‼︎‼︎」

 

『え?キャッ!』

 

陰から獣人がイクサを突き飛ばした。

 

『結菜⁉︎』

 

「まったく、何やってるのよ」

 

獣人の結菜が呆れたように言う。

 

「ちぇ、ここからだってのに邪魔しやがって。バカ狼が」

 

「黙りなさいアホ蝙蝠」

 

『それより……結菜…』

 

「ん?何よ」

 

『その格好』

 

結菜の格好は局部が毛で覆われているだけのセクシーな姿だった。

 

「な、何よ…み、見たいの?エッチ//」

 

結菜は顔を赤くして言う。

 

『ちょ、そんなんじゃなくてだなぁ!』

 

「それより、あいつもういねぇぞ」

 

『「あ」』

 

周りを見れば、イクサの姿が消えていた。

 

 

**********

 

 

公園に戻ると、そこには倒れたイッセーの周りに数人の男女がいた。

 

「誰だ!」

 

声を荒げると、全員がこちらを向く。

 

「シア?ネリネ⁉︎」

 

「あ!渡君!」

 

「渡様!何故ここに!」

 

2人は渡の側に近寄る。

 

「貴方が暁 渡ね?」

 

2人に続き、紅髪の女性が来る。

 

「えっと……誰?」

 

「リアス・グレモリー先輩。『2大お姉様』って呼ばれてるの」

 

「ふぅ〜ん…それより、イッセーは⁉︎」

 

興味なさそうな返事をして、イッセーの無事を確認する。

 

「彼なら無事よ。安心しなさい」

 

「ほ、良かった…」

 

そっと胸を撫で下ろし、その場に座り込む。

 

「それで、貴方達はここで何をしていたの?」

 

「………あ」

 

リアスの言葉でドキリッ、と脈打つ渡。

 

「えっと、それは…」

 

渡は自分がキバだという事を隠している。

その事がバレればかなり面倒な事となるだろう。

 

「実は、兵藤に頼まれて街を徘徊してたんですよ」

 

渡の代わりに、結菜が答える。

 

「徘徊?何故?」

 

「話せば長くなるんてすが…兵藤の彼女が突然いなくなって、その謎を探る為に。そしたら変質者に襲われて2人は離れ離れに。1人になった渡が偶然、私と会った訳です」

 

結菜は「私に合わせて」という視線を、渡に向ける。

 

「渡は突然の出来事で疲れてます。あまり検索しないでくれますか?」

 

「そういう事ね。分かったわ」

 

一応納得してくれたリアス。

 

「災難だったね」

 

「お怪我はありませんか?」

 

シアとネリネの2人が、渡を挟んで心配する。

 

「じゃあ暁 渡君、青盛 結菜さん、私達はこれから兵藤 一誠君を送っていくわ、明後日、祐斗を使いに送るから、二人で旧校舎のオカルト研究部にきてちょうだい」

 

「わかりました」

 

「はい」

 

そう伝えるとリアス達は魔方陣で消えた。

 

「明日、どうなるんだろう」

 

「為せば成るでしょ」




イクサは753ではありません。
御不満はおありでしょうか?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。