ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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41話 真実・猫姉妹の絆

明るい場所を出て、闇夜の森を走る渡。

気配を辿り、森の中を進んで行く。

数分走ると、小猫と黒い着物に身を包み、頭部に猫耳を生やした女性がいた。

 

「暁先輩…」

 

「あら、貴方が『キバ』?」

 

女性の体はボロボロで、服も切り裂かれて痛々しい姿だった。

 

「話は聞いてる。もしかしなくても、あんたが黒歌…だな?」

 

「ええ…そうにゃ。悪いけど、白音を連れてここから逃げてくれない?」

 

「?」

 

黒歌の言葉に疑問を持つ渡。

 

「姐さま、どうして⁉︎」

 

「あんた、主人殺しだよな?イメージと違うんだが」

 

「別にイメージはいいのよ。それより早「逃げられると思ったか?」ッ⁉︎」

 

突然、声のした方を振り返る。

そこから、無表情の肌白の青年と、逆立った髪の青年が魔法陣から現れた。

 

「ナイト、ポーン⁉︎」

 

黒歌の顔が険しくなる。

 

「ナイトにポーン……リリスから聞いたチェックメイトフォーの新メンバー⁉︎」

 

渡と小猫は警戒する。

 

「ったく、てこずらせやがって」

 

ポーンはプラプラと片手を振り、

 

「そこにいる奴らも出てこい」

 

そう言って片手に魔法陣を展開させ、氷の槍を放つ。

 

「うおっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

そこからイッセーとリアスが現れた。

 

「イッセー⁉︎グレモリー先輩⁉︎」

 

「おーおー、雑魚共が次々と大量だなぁ」

 

ポーンはケラケラと見下しながら笑う。

 

「御機嫌ようチェックメイトフォーのナイトにポーン。貴方達は何故ここへ?」

 

「そこの猫又を捕獲に決まってんだろ」

 

「姐さまを?」

 

小猫はボロボロの黒歌を見て、察する。

 

「姐さまに何をするつもりなんですか?」

 

殺気を放つ小猫。

しかし、2人はその殺気を意に介さなかった。

 

「別に。ビショップ様の研究のモルモットに選ばれたから多少、傷をつけても捕獲しろって命令でな」

 

(モルモット?)

 

『貴方もあの堕天使と同じく、"モルモット"になっていただく』

 

渡は湖の時に聞いた、ビショップの言葉を思い出す。

 

(まさか…あいつらこの人を使って!)

 

「彼女は禍の団のメンバーという情報があるわ。何故、そんな事を?」

 

「別に禍の団に属してるから仲間って訳じゃねぇよ。組織は唯の『利害の一致』で成り立ってるにすぎねぇ」

 

「その通り、ビショップ様はモルモットにいい個体を探している。それにその女が選ばれただけの事」

 

「それを知った途端、ヴァーリの奴らも邪魔して来てよぉ。面倒ったらありゃしねぇ」

 

「ヴァーリ?…ヴァーリに何かしたのか⁉︎」

 

イッセーが声を荒げる。

 

「流石に相手にしてる暇はありませんでしたからね。別空間に幽閉したんですよ。例え、ヴァーリの禁手でも1時間は耐えられる位の空間に」

 

「あの……ヴァーリが?」

 

「しかしバカだねぇ」

 

ポーンは座り込んでいる黒歌に視線を移す。

 

「こんな自己犠牲バカ女(・・・・・・・)の何処に守る価値があるのやら」

 

「自己犠牲?」

 

小猫はポーンの言葉に反応する。

 

「自己犠牲って……どういう?」

 

当の黒歌本人は、下を俯き苦虫を噛み締めたような表情を浮かべている。

 

「あ?お前ら知らねえの?こいつは妹を守る為にバカな主を殺した事を」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

その事実に渡達は驚愕する。

 

「ぶ、部長のお母さんから聞いた話と全然違う…だって小猫ちゃんのお姉さんは自分の力に暴走して!」

 

「上級悪魔の奴らはいつもそうだよなぁ。情報は自分達の都合のいいように書き換える」

 

「都合のいいように……書き換える?」

 

小猫は既に何が何だか分からなくなってきた。

 

「猫魈は猫又の中でも希少で強力だ。主人は力に目が眩んで妹にも手を出そうとしたのさ。所がどっこい、そいつは妹を守る為に主を殺し、犯罪者に自分からなったのさ」

 

「そう……何ですか…姐さま」

 

小猫の問いに、黒歌はコクリ…と頷いた。

 

「あの事件に、そんな真相があったなんて」

 

渡達が真実を知り、ぎこちない空気に浸っていると、

 

 

「ん…くくく、かははは……あっははははははははは!!!」

 

ポーンは突然、笑い出す。

 

「何がおかしいんだ!」

 

イッセーがポーンを睨み付ける。

 

「笑えるだろぉ⁉︎妹の為に自分が犠牲になるって、どこのアニメの主人公⁉︎笑える!傑作だぜ!偽善者って実際にいたんだな!」

 

「偽善……ですって!」

 

「考えてみれば分かるだろう?仙術は危険だが、そいつは仙術の達人だぜぇ?主に頼んで、妹に仙術を習わせないんじゃなくて、自分が手本となって習わせりゃよかったのによぉ!」

 

「ッ!」

 

それを聞いた黒歌は下唇を噛み締める。

 

「ええ、そうよ。今思えば、「そういう考えもあった」って何度も……何度も思い返して後悔したわ…!でも仕方なかった!仙術の恐ろしさは私が一番よく知ってるし、白音は仙術を使うにはまだ幼すぎた!それ以前に、あいつの目は腐り切ってた!」

 

「姐さま……」

 

姉の本当の自分に対する想いを理解する小猫。

その頬には、一粒の涙が垂れていた。

 

「どーやら、脳ミソの栄養は胸の方にいって間抜けな思考しかできなくなってたらしいなぁ。あはははははははははは!!!」

 

「笑うな!」

 

「あ?」

 

大口を開けて笑うポーンに対し、小猫は鋭い目つきで睨み付ける。

 

「私の…世界で一番の私の姉を、笑うなぁ!!!」

 

「白音……」

 

「小猫が……こんなに大声を上げるなんて」

 

「初めて見た」

 

リアスとイッセーも、今の小猫を見て驚いていた。

しかし、ポーンはニタリと笑う。

 

「確か、黒猫は不幸を呼ぶんだったっけなぁ?」

 

「ッ」

 

「本当に妹に不幸を呼んでやんの。妹の為の行動が、妹を更に苦しめる結果になった。その黒い髪、耳、尻尾。それが不幸の象徴という訳だ間抜けぇ!」

 

「それについては同感です。その姿、実に醜い(・・)。見ているだけで吐き気がする」

 

ナイトもポーンに同感して、黒歌を汚物を見るかのような視線を向ける。

 

「黙れ…黙れ黙れ黙れ!貴方達なんかに姐さまの…!」

 

「ダメよ白音!」

 

小猫は2人の挑発に乗り、地面を蹴り駆け出す。

 

「はっはっは、見事にかかりやがった。間抜けは姉譲りか?」

 

「どこまで姐さまを!」

 

拳を振り上げ、ポーンに狙いを定める。

 

「ほら、ここだこの」

 

ポーンは頬をツンツンと指で突く。

 

「サービスで一発入させてやる」と、全員が理解した。

小猫は容赦無く、思い切りポーンの頬へ拳を叩き込んだ

 

 

 

が。

 

「弱いなぁ。弱い弱い」

 

全くのノーダメージ。

完璧に決った筈が、それでもポーンの笑みは崩れなかった。

この瞬間、小猫は後悔した。

 

(何でもっと…多少無茶でも仙術を…)

 

「白音逃げて!」

 

黒歌の言葉で我に帰るが既に遅く、ポーンの拳が小猫の直ぐそこまで迫っていた。

 

「死・ね♪」

 

 

 

 

 

 

 

『「ダラァ!」』

 

「ボアァッ⁉︎」

 

刹那キバに変身した渡と、左腕に赤い籠手を出現させたイッセーが同時に放った拳を顔面に叩き込まれた。

 

ポーンは木に激突し、あまりの衝撃により倒れた木の上に倒れ込む。

 

「暁先輩…イッセー先輩…」

 

『塔城、お前の拳はあいつには効かなかったけど…お前の気持ちは俺達に届いてる』

 

「小猫ちゃんを泣かせやがって、一発じゃ収まらねぇぞ下衆兵士!」

 

2人は小猫を守るように前に出る。

 

「ナイトォ…!『目撃者は即抹殺』だったよなぁ!?」

 

「ええ、それに『キバ』は特別抹殺対象です」

 

「そいつぁよかった、皆殺しだクズ共ぉ!」

 

ポーンはピキピキと怒りで血管が浮き出る。

 

『塔城はお姉さんの側にいてやれ』

 

「はい」

 

「部長!俺はいつでもいけますよ!こんな奴らに小猫ちゃんのお姉さんを渡さねぇ!」

 

「よく言ったわイッセー!修行の成果を見せてやりましょう!」

 

キバ達が前へ出る。

 

「……ナイト、こいつらの目の意味が分かるか?」

 

「ええ、分かりますよ」

 

2人はイッセー達の瞳を見て、ある物を感じる。

 

「『こいつらを倒す』『俺達は負けない』っていう目だ。本当、クソむかつくぜ」

 

2人も戦闘態勢に入ったその時、

 

 

ゴォォォォォォ……!!!

 

 

巨大な火の球が2人に当たり、炎で包み込んだ。

それを放ったのは……

 

「リアス嬢と兵藤 一誠が森に向かったと報告を受けて急いで来てみれば、結界で封じられるとはな…」

 

最上級悪魔の竜王、タンニーンだった。

 

「しかし、それもこれまでだ」

 

「ナイスだぜ! タンニーンのおっさん!」

 

 

 

 

「舐めんなクズ共が」

 

『「「「!?」」」』

 

炎の中から、ポーンの声が聞こえる。

そして炎が四散し、そこにはナイトとポーン……そして、

 

「何だよありゃぁ⁉︎」

 

イッセーが声を上げる。

そこには巨大な機械仕掛けの城塞のような姿をした巨大な怪物が現れた。

 

「チッ、【サバト】か。死した命を集合させ、強力な魔獣を作る秘術」

 

タンニーンが不快な表情を浮かべる。

 

「そんな、冥界では特に禁止されている秘術の1つじゃない!?」

 

「そういう奴らなのよ」

 

黒歌がサバトを見て吐き捨てる。

 

「こいつらは、自分達の理想の為にどれだけの犠牲を払っても構わない外道集団よ。例え、既に死した魂ですら利用する程のね」

 

「死した魂に何の価値があるというのです?寧ろ、死しても役割を与えられた事に感謝して欲しいくらいですね」

 

「こんな醜い化け物にされて、感謝もクソもあるかよ!」

 

「その通りだ、兵藤 一誠」

 

イッセーの言葉に、タンニーンも同意する。

 

「常に理想というのは、理解できる者にしか理解されないものなのですよ」

 

パチンッ、とナイトが指を鳴らすと更に4体のサバトが魔法陣から現れた。

計5体のサバトがタンニーンを取り囲む。

 

「まさか、この数で俺を倒せるとでも?」

 

「そこまで我々の思考が回らない訳がありません。唯、流石の貴方でも少々時間が掛かるでしょう。その間にここにいる全員を殺して、猫又を捕獲し撤退すればいいだけの事。貴方と戦うにはまだ時期が早過ぎる」

 

「……………成る程、的確な判断だ」

 

タンニーンはギリリ、と悔しそうに嚙み締める。

 

「兵藤 一誠!俺はこの屍共を何とかする!お前達はそいつらを倒せ!」

 

と言って、タンニーンは最後のサポートとして、ブレスをナイトとポーンに放った。

 

「戦闘開始の花火には丁度いいなぁ!」

 

それと同時に、ポーンとナイトは駆け出す。

ナイトは腰に差してある短刀を抜き、巨大な斬撃を最初に放つ。

 

『デカイ!?』

 

キバ達は間一髪で避けるが斬撃の余波が辺りに響き、周りの木々が次々と斬り裂かれる。

回避したキバの目の前には蹴りを放っているナイトの姿が映った。

回避した寸前の為、ナイトの蹴りが顔面に突き刺さる。

吹き飛ばされるキバは両手で地面を弾いて態勢を立て直す。

 

「やるねぇ、じゃあ俺も……」

 

ポーンは必然的に戦う相手となったイッセーとリアスの方を向く。

 

「…………………やっぱ止めだ」

 

「は?」

 

ポーンは気だるそうに言い、ナイトの方を向く。

 

「ナイト、俺と代われ。そいつ(キバ)の方が強そうだ」

 

「幾ら相手が弱そうだからと、戦闘中に余所見はいけませんよ」

 

「は?何を《ボオオオオンッ!》」

 

ナイトの方を向いていたポーンの顔面に、滅びの魔力が直撃した。

 

「人を舐めるのも大概にしなさいよね」

 

「流石部長!ザマァ見ろ!」

 

 

 

 

「ほらな、つまらねえだろ?」

 

「「ッ!?」」

 

煙が晴れると、滅びの魔力が顔面に直撃したにも関わらず血の一滴も垂れてないポーンの姿があった。

 

「あ〜あ、こんなんだったらタンニーンと戦った方がマシだったな。早急に終わらせよ」




次回、オリキャラのポーンとナイトとの戦闘です!

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