ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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40話 パーティー・新顔と再会と疑問と…

「イッセー、お前大物になったな」

 

「そうか?」

 

修行を終え、渡達は冥界のパーティーの会場に来ていた。

ついた瞬間、初めに目にしたのはグレモリー眷属がドラゴンに乗って会場に到着した光景だった。

 

「ありがとうな!タンニーンのおっさん!」

 

「うむ、禁手に至らなかったのは残念だが、よくここまで修行をこなしたモノだ」

 

最初はビクビク怯えていたにも関わらず、今となっては普通に会話していた。

しかも”おっさん”呼びで。

 

「お前が今代の『キバ』か…」

 

タンニーンは渡の顔をマジマジと見つめる。

 

「ふむ、音也の息子だというのは本当らしいな。面影がある」

 

「知り合いなんですか?」

 

「ああ。五大龍王の一角、ティアマットを口説き落とそうとした話は俺達、龍族の中では有名だ」

 

「ドラゴンにまで手を出してたの俺の父さん!?」

 

相変わらずの女誑しっぷりに項垂れる渡。

 

「まぁ、今代の『キバ』がお前のような奴で良かった……ああ、全く本当に」

 

「?」

 

それだけ言って、タンニーンは眷属を連れて去っていった。

 

 

**********

 

 

パーティー会場に着き、あいさつ回りを始める渡達。

しかし、あいさつ回りをしている中で少なからず渡に嫌悪の感情を向けていた者もいた。

勿論、露骨に出していたわけでは無いが、渡の事を見下すように見ている様に感じた。

 

リリスの言っていた、渡を『キバ』と認めない者達だろう。

 

そして、こんな言葉も聞こえてくる。

 

「見ろ、あれがキバの眷属だ」

 

「美しい。是非、私の眷属にしたいものだ」

 

「あんなクソガキの何処に惚れたのやら」

 

「しかし、聞いたか?若手のレーティングゲームで、若手があのガキに勝つと『キバの鎧』と一緒にあの眷属も手に入れられるそうだぞ」

 

「若手の者達は何と羨ましい」

 

「今からでも誘ってみるか?」

 

「うむ、そうしよう」

 

「あんなガキには勿体無い美貌の女性ばかりだ」

 

不快感満載の会話が聞こえてきた。

突然、結菜達は誘われても即Noと答えた。

それでも食いつく輩にはプレッシャーを放って無理矢理黙らせている。

断られた悪魔達は渡の方を向き、舌打ちしたりしていた。

 

そんな輩の視線を無視していると、

 

「よう、『お化け太郎』」

 

一番会いたくない奴に出くわした。

 

「匙か。何か用か?」

 

「対戦相手のお前にプレッシャーを与えにな」

 

「正直なこと」と、呟く渡。

 

「しかし、お前が『キバ』だとはなぁ」

 

「まぁな。幻滅した?」

 

「ああ、したさ。何でお前みたいな落ちこぼれを選んだんだか。『キバの鎧』ってのは見る目がねぇな」

 

匙の一々カンに触るような言葉を受け流し、グラスのジュースを飲む。

 

「しかし逆にラッキーだな。お前みたいなカスが『王』なら、初戦は俺達の勝ちだぜ」

 

「まだ決まった訳じゃねーっつの」

 

「はぁ?お前みたいな奴が俺達に勝てる訳ねぇだろ。寝言は寝て言えボケ」

 

「ハイハイ」

 

「お前が負ければ『キバの鎧』は会長の物。しかも、あの可愛い美女達も生徒会に入る。サイコーだな!」

 

匙がグイッと、渡を引き寄せる。

 

「なぁ、どんな脅し(・・)をしたんだ?お前みたいなブサイクがあんな美女達を眷属にできる訳ねぇし。どんな弱み握ったんだよ」

 

「状況が状況だったからな。正直、眷属集めには興味無いし」

 

「あ〜あ、可哀想に!お前の不幸体質があの娘達を巻き込んだのか。お前、最低だな」

 

「そうだな、状況だとはいえ。眷属にさせちまったのはちょっと罪悪感」

 

「自覚してんのかよ。じゃあ「おい止めろ」ッ!」

 

いつの間にか、青髪のキリッとした顔立ちの青年が匙の肩を掴んでいた。

 

「何すんだ『駒1つ』!」

 

「大勢の前で恥ずかしくないのかよ」

 

青年は匙を引っ張り、渡と引き剥がす。

 

「『駒1つ』のクセに、『駒4つ』の俺に命令すんな!」

 

「さっき会長がお前の事呼んでたぞ」

 

それを聞いた匙は表情を変え、服装を整える。

 

「何だよ、それ先に言えよ!『駒1つ』のクセに!」

 

そう言って、匙は人混みの中にかけて行った。

 

「さっきはあいつがすまなかったな」

 

「いいや。慣れてるからいい」

 

青年はニコリと笑い、手を伸ばす。

 

「俺は【駿河 玲一】。シトリー眷属の『兵士』だ」

 

「暁 渡、何ていうか…キバだ」

 

「知ってるよ。ていうか、前々から会長から教えられてる」

 

「ん?お前、新入りじゃないのか?生徒会の手伝いの時、見た覚えはないけど」

 

「当然さ。俺は別の学園の生徒だから。会長って言ってるのは、主にそう呼べって言われてるから」

 

「あ、そうなのか」

 

渡は、グレモリー眷属は全員が同じ学園の生徒なので、シトリー眷属も同じかと思っていた。

 

すると、駿河の瞳は途端に鋭くなる。

 

「会長の夢は、悪魔なら関係なく受け入れる、レーティングゲームの学校を設立する事なんだ」

 

「?」

 

「でも頭の固い連中は、その夢を笑い物にしやがる…‼︎」

 

駿河は怒りで体を震わせる。

 

「だけど俺は本気だ!会長の夢を実現させて、そいつらを見返してやりたい!」

 

駿河の眼は本気だった。

 

「俺はその学校のせ……先生になりたいんだ」

 

「先生……レーティングゲーム学校のか?」

 

渡の問いに駿河は紅潮しながらも真剣な眼差し向ける。

その眼差しを見て、渡はうんうんと頷く。

 

「レーティングゲーム専門の学校の教師か……立派じゃないか。やるからには良い先生になれよ?」

 

「ああ、そのためにも結果を残さなきゃダメだ。だから……」

 

駿河は拳を渡に向ける。

 

「勝つ。会長の為に。それがどんな強敵であろうと」

 

「成る程、でも俺も「はいそうですか」ってやられる訳にはいかないぜ」

 

「当たり前さ。っていうか本気でやれよ?上にバカにされた以上、俺達は結果で見せなきゃいけない。本気のお前を倒してこそ、価値があるんだ」

 

渡と駿河は互いに笑いながらも、真剣な目で勝利宣言を交わす。

 

「じゃあな、暁」

 

「ああ、またな駿河」

 

そう言って、駿河は去っていった。

 

「………」

 

去っていく駿河の背中を見て、渡は何かを感じる。

 

「駿河………何処かで聞いた名前だ」

 

「お、お久しぶりです」

 

「ん?」

 

話しかけられて渡はそちらを見る。

見ればそこには金髪縦ロールの少女が。

 

「レイヴェル・フェニックス?」

 

「お、覚えててくれたのですか!」

 

レイヴェルは嬉しそうに顔を赤く染める。

 

「久し振りだな。そういや、兄貴は何している?相変わらず女の尻でも追っかけているのか?」

 

「いえ、貴方に負けたショックで家に引き籠っておりますわ」

 

「え?マジで?あいつが?」

 

少し罪悪感を感じる渡。

 

「まあ、調子に乗っていた所もありましたからいい薬だと思いますが」

 

(この子、意外に冷たいな)

 

「と、所で、貴方も王としてレーティングゲームを始めるのですか?」

 

「まあ、そのつもりだけど」

 

「眷属はもう集まっておりますの?」

 

「ある程度はな。けど、他のと比べると少ないな」

 

「そ、そうですか」

 

ぱあ、と顔を輝かせるレイヴェル。

 

「で、では私が『僧侶』に立候補してよろしいでしょうか?」

 

「『僧侶』?」

 

渡は暫く考えるが、

 

「いや、俺は眷属を揃えようとは思ってないから」

 

「そう……なのですか?」

 

レイヴェルは途端に暗くなる。

 

「……でも、場合があったら眷属にさせて貰うよ」

 

それを聞いて、再度顔を輝かせる。

 

「本当ですか!?」

 

「うお!?」

 

身を乗り出す勢いでレイヴェルが迫ってくる。

 

「わ、私を貴方の『僧侶』に?」

 

「え、いや、まぁ…うん」

 

 

「レイヴェル、旦那様がお呼びに……ってどうしたんだ?」

 

右の顔に仮面をつけた女性が渡達の様子を見て目を丸くしていた。

 

(確か、ライザーの『戦車』でイザベラだったな。レイヴェルの付き添いか?)

 

イザベラの言葉にハッと我に返ったレイヴェルは顔を話し、恥じらう様に顔を赤くする。

 

「す、すみません。私ったら」

 

「まあ、良いけど」

 

「渡様、今度一緒にお茶でもしながらお話ししましょう」

 

「あ、ああ」

 

「では」

 

最後は礼儀正しく挨拶をしてレイヴェルはイザベラと離れて行った。

 

流石に一息付こうとした瞬間、

 

「おいぃ〜っす、元気そうだな」

 

後ろからまた声を掛けられる。

 

「いい加減、面倒臭い」と思いつつ、渡はそれを表情に出さない様にしながら後ろを振り向く。

 

そこにいたのは、

 

「ロウド・ビフロンス」

 

「あの時以来だな〜暁 渡」

 

腕に大量の料理を抱えて、口に食べ物を含んでいるロウドが立っていた。

 

ロウド・ビフロンス。

若手悪魔の中で『最弱』と言われ、『無能悪魔』の烙印を押されている男。

 

「食う?」

 

「食う」

 

差し出された料理を受け取って口に含む。

 

「冥界って、意外と美味い料理あるよな。最初は漫画でよくあるでっかい釜に紫色の液体なんかを混ぜてるイメージあったけど」

 

「あっはっは!それ全悪魔を敵に回すような言葉だぜ⁉︎やっぱ面白いわお前!」

 

バンバン!と笑いながら背中を叩いてくる。

 

「そういえばお前、眷属いないの?」

 

「面倒だし、興味無い(・・・・)しな。その所為でレーティングゲームは全戦全敗。『無能悪魔』の由縁の1つさ!」

 

どこが面白いのか。

笑える要素が何1つ無い会話で、大笑いするロウド。

 

「ゲームの時は気おつけろよ?シトリーの戦略は成熟した悪魔も目を見張る物だ」

 

「物知りだな」

 

「力は弱いけど、情報には強いんだよね〜俺。でもその情報を上手く使える力は無い。これも『無能悪魔』の由縁の1つさ!」

 

また笑える要素が何1つ無い会話で、大笑いする。

いい加減、流石に疲れきた渡はロウドに背を向けて歩き出した瞬間、

 

「所で、白猫ちゃんがどっかいったよ?」

 

「トイレじゃね?」

 

「はぐれ悪魔の気配のする方だ。しかもS級」

 

その言葉に渡は足を止め、辺りの気配を探る。

 

「急がないと不味いんじゃないか?」

 

ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるロウド。

 

「……お前」

 

ロウドが何を目的としているのか漸く気づく。

睨み付けてやりたい気持ちを抑え、渡は駆け出そうとしたが、

 

(ちょっと待てよ?)

 

ある事(・・・)に気づき、足を止める。

 

「お前、何で気づいた?」

 

『若手最弱』、『無能悪魔』のロウドが、こんな繊細な気配の探知に優れているとは思えなかった。

 

「モム?」

 

当の本人は口にありったけの食べ物を詰め込んでいた。

 

「モグモグ……ゴクリ。あ〜、その事ね。偶然偶然」

 

無理矢理、含んでいた食べ物を飲み込んでニヤリと笑う。

どうにも、その笑みは渡にとって不快に感じた。

 

「お前は何者だ?」

 

気付けばこんな言葉を投げていた。

それを聞いたロウドはウンウンと頷きながら手に付いた食べ物のカスを舐める。

 

「ふぅ〜む、「何者か」…ねぇ。俺も、よく分からない(・・・・・・・)んだけどねぇ。まぁ、今分ってる事(・・・・・・)を教えてやるよ」

 

ロウドはニンマリの笑い、こう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は『()』さ」




オリキャラシトリー眷属の【駿河 玲一】。
匙が思ったよりクズキャラとなったので、思い切って善人のキャラを出してみました。

そしてロウドのあの言葉。
皆さん、もうわかりますよね。

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