若手悪魔の面々は異様な雰囲気が漂う場所に案内された。
高い所に置かれた席には悪魔の上層部が座っており、もう1つ上の段にはサーゼクス・ルシファー、隣にはセラフォルー・レヴィアタンとフォーベシイが座っていた。
その隣にはベルゼブブとアスモデウスも座っており、渡達を高い位置から見下ろされている状態にある。
「あ」
渡は魔王より更に1つ上の段、最上部につまらなさそうな表情のリリスを見つけた。
リアスを含めた若手悪魔7人と渡が1歩前に出た。
因みに、渡はキバである為、若手悪魔と同じ段にいるようにと、フォーベシイから聞かされていた。
尚あの後、ゼファードルはサイラオーグが殴り飛ばした所為で顔には生々しい膝の痕が残っていた。
「よく集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認する為、集まってもらった。これは一定周期ごとに行う若き悪魔を見定める会合でもある」
初老の男性悪魔が手を組みながら威厳の声で言い、ヒゲを生やした悪魔が「早速やってくれたようだが……」と皮肉げに言った。
「私はシーグヴァイラ・アガレス、大公アガレス家の次期当主です」
会合が始まり各々の若手悪魔が自己紹介する。
「私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」
「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」
「俺はサイラオーグ・バアル。大王バアル家の次期当主だ」
「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さん、よろしく」
「どぅも〜、ロウド・ビフロンスで〜す。ビフロンス家の次期当s、ああ!クソッ!このボス強え!」
ロウドだけはその場でゲームをしていた。
それを見た上層部は不快な表情でロウド睨み、やがて「仕方ない」「こういう奴だ」と呟き、渡の方に視線を向ける。
「え?………あ」
暫くして渡は何故、視線を向けられているか察した。
「えっと…暁 渡です。『キバ』やってます」
「「「「「………」」」」」
(あれ?マズかった?)
渡が困惑している中、
「く…くくく、カッハッハッハ!」
そんな中、ロウド・ビルロンスだけが笑っていた。
「な、何?」
「いやー、ゴメンゴメン。他の皆とは違うというか、合コンの挨拶みたいだったからついね!くくく!」
「そういえば、お前…あの時守ってくれたよな?」
「まーね♪頑丈だけが取り柄だし」
ロウドは懐からスナック菓子を取り出し、1つを渡に渡す。
「あげるよ、友情の印ってヤツ」
「お、サンキュー。丁度、小腹が空いてたんだよ」
渡はロウドのスナック菓子を喜んで貰い、口に放り込んだ。
「美味。なんていう菓子?」
「冥界で人気なんだよね〜。後で俺の家くる?まだ人気の菓子沢山あるし」
「マジで?行く行く」
「「「「「中学生か!!!」」」」」
中学生のような会話に限界が来て、全員が突っ込む。
「ロウド・ビルロンス!その煩い口を閉じろ!貴様など唯の『数合わせ』なのだからな!」
「全く、ビルロンス家最大の汚点だ!」
「これをやるから黙っとれ!」
上層部の1人が魔法陣からスナック菓子を取り出し、ロウドに向かって投げる。
「え?マジで⁉︎これ最近発売された超レア菓子じゃん!ウッソー!やったー!上層部の皆さん愛してる〜!」
そう言って目を輝かせ、早速この場で袋を破りサクサクとスナック菓子を頬張るロウド。
(こいつ色んな意味で凄いな)
そんなロウドを苦笑いで見つめる渡。
「しかし、あれが今代の『キバ』か」
「チッ、何故下等な人間の混ざり合いなんぞに」
「ライザー・フェニックスをやったのも奴だそうだ」
「それを理由に『キバの鎧』を取り上げるか?」
「いや、完全にライザーに非がある。全く使えない奴だ」
上層部は渡を不快な目で見下し、話を戻す。
「キミ逹
「我々もいずれ『禍の団』や闇人との戦いに投入されるのですね?」
「それはまだ分からない。だが、出来るだけ若い悪魔逹は投入したくはないと思っている」
「何故です?若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担います。この歳になるまで先人の方々からご厚意を受け、なお何も出来ないとなれば―――――」
「サイラオーグ、その勇気は認めよう。しかし無謀だ。何よりも成長途中のキミ逹を戦場に送るのは避けたい。それに次世代の悪魔を失うのはあまりに大きいのだよ。理解して欲しい。キミ逹はキミ逹が思う以上に、我々にとって宝なのだよ。だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている」
サーゼクス・ルシファーの言葉にサイラオーグは一応の納得をしたが、不満がありそうな顔をしていた。
だが、これはやはりサーゼクスなりの優しさだと言えよう。
「最後にそれぞれの今後の目標を聞かせて貰おう……と、言うのだがその前に」
上層部の1人が渡の方を向く。
「下等な人間との混ざりもの。はっきり言おう、キバの鎧を
(あ、やっぱそうなる?)
「『キバの鎧』は貴様の様な下賎な輩が纏っていいものではない!今だけなら処刑は止めてやる。さっさと『キバの鎧』をこちらに返せ」
明らかに人に頼む態度ではない。
「俺が『キバ』っていうのが、そんなに気に入らないんですか?」
渡は一応、カテレアの時と同じ質問を投げる。
「気に入らないのではない、相応しくないのだ!『キバの鎧』は上等な種族である我々にのみ許された鎧!」
「下等な人間の混じり合いの分際で、『キバの鎧』を纏うなど、万死に値するのだ!」
(ほぼ、カテレアと同じ事言ってる)
渡は内心、溜息をつき立ち上がる。
「じゃあはっきり言いますね。嫌です」
渡の応えで、老人達が声を荒げる。
「人間如きが!是が非でも『キバの鎧』が欲しいというのか⁉︎」
「いえ、『キバの鎧』は興味ないです」
更に渡の言葉で驚愕する。
老人達だけでなく、来ていた若手悪魔達もザワついている。
「俺が渡したくないのは『キバの鎧』じゃなくて……
渡は肩に座っているキバットを指差す。
「キバットは俺が物心つく前からの付き合いなんで。『キバの鎧』をあんたらに渡すって事は、キバットもあんたらの所に行っちゃうって事ですよね?じゃあ嫌ですよ。キバットは俺の大事な家族なんだから」
「口を慎め人間如きが!!」
「下等種族如きが我々に逆らうなどと、身の程知らずも大概にしろ!!」
「そもそも、何故我ら悪魔に搾取される為だけに存在する人間の混ざり合い如きが『キバの鎧』に適合したのか理解できん!魔王様、この無礼な人間を殺して無理矢理にでも『キバの鎧』奪い返すべきですぞ!」
「黙れ」
「「「「「ッ!!!」」」」」
その時、会場全体に途轍も無い殺気が放たれた。
全員が顔を青ざめ、身体をガタガタと震わせる。
中には吐き気を必死に抑えて口を閉じている者もいた。
その殺気の主は当然、リリスだった。
「り、リリス……様?」
老人の1人がガタガタと震えてリリスを見上げる。
リリス本人は、ゴミを見る目で老人達を見下している。
「お前ら………死ぬか?」
「オロロロロロロ!」
「ヒィィィィイ!」
「出してぇ!ここから出してぇ!」
先程の言葉と同時に更に殺気が一段階上がる。
その瞬間、半数以上の他の若手悪魔が嘔吐し、悲鳴を上げ、逃げ出そうとする。
「『キバの鎧』は、鎧自身が主を選ぶのを忘れたか?」
「しかしリリス様!」
「渡は音也の息子だ」
それを聞いた瞬間、老人達は驚愕する。
「音也はサタンを倒して、この冥界を救った。その音也の息子なら納得だろう」
「暁……音也の…⁉︎」
「あの女誑しのか!」
「親子二代に揃って疫病神か!」
「『黙れ』」
「ッ………⁉︎」
「⁉︎ーーー。ーー!」
「〜〜〜〜〜ッ⁉︎」
リリスの言葉と共に、老人達の口が塞がれる。
「こ、『言霊』⁉︎」
コッ、コッ、コッ
リリスは階段から降り、老人達の前に立つ。
「『劣等種族如きが我々に逆らうなどと、身の程知らずも大概にしろ!!』だったか?」
「ーーーーーッ!ーー!」
ガタガタと震え、涙を流す老人。
「ーーーーーお前が身の程を知れ」
パンッーーーー
その瞬間、老人は破裂した。
「『見せしめ』はこれでいいか」
リリスは他の老人の方を向く。
「お前、お前と……それとお前」
リリスは先程、渡に対して暴言を吐いた老人達を指差す。
「お前ら
「「「ッ⁉︎」」」
老人達の顔は青ざめ、渡に暴言を吐かなかった老人達も驚愕し、同時に胸を撫で下ろした。
「ま、待ってくださいリリス様!そこまでする必要は「黙れシスコンガキ」シスッ⁉︎」
「私が冥界のトップとして返り咲いたからには容赦はせん。絶対にだ。甘やかしたりなどしない」
この時、全ての悪魔は思い出した。
リリスという、逆らう事のできない絶対的な支配力を。
「どうだ老害共。お前達はもう何も力を持たない下級だ。」
「そ、そんな…」
「お許しを…お許しをリリス様ぁ!」
「どうかご慈悲を!」
老人達は無様にリリスに媚びる。
「覚えておけ」
老人達はこれから発せられるリリスの言葉に何も言えなくなった。
「これがお前達が好き勝手振り回していた