ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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35話 武勇伝・暁 音也

「悪魔と天使と堕天使の共同作業か」

 

「本当に和平が成立したんだな」

 

現在、3大勢力による戦闘後の後始末が行われている。

修復されていく駒王学園の風景に渡とイッセーが表情を綻ばせている。

 

「………しかし、お前がキバだったなんてな」

 

イッセーの言葉に、渡はビクッと体を震わせる。

 

「アーシアの時も、コカビエルの時もお前だったのか」

 

「…………幻滅したか?」

 

渡が恐る恐る言うと、

 

「いや、最高の親友だと思うぜ!」

 

イッセーは二カリと笑った。

 

「っ!………そうか」

 

渡も笑い返す。

そして2人は互いの拳を重ねた。

 

「ダ〜リン❤︎」

 

「へ、ヘルさん⁉︎」

 

背後からヘルが渡を抱き締める。

それと同時にヘルの豊満な胸が渡の背中に当たり、なんとも言えない至福の感覚に襲われる。

 

「もぅ〜、私を放って何してるの?早く帰って、契りを交わしましょう❤︎」

 

「こんの……渡から離れなさいビッチ!」

 

「渡君!私と貴方の関係を見せつけましょう!」

 

「ギュッとして〜、渡〜」

 

「あうう、渡さん!私も!私も!」

 

「渡……私も…」

 

「渡君…私も……渡君が望むなら…いいよ?///」

 

「ええい離れなさい貴方達!渡様は私だけのモノです!」

 

結菜、リーヤ、紫水、アーシア、プリムラ、エリカ、グレイフィアが渡にのしかかる。

 

「わ、渡…!お前いつの間にハーレム王に⁉︎」

 

「はぁ、勘弁してくれ」

 

 

 

校庭の中心ではサーゼクス、ミカエル、アザゼルと会話していた。

 

「カテレアの件は私達に問題があった」

 

「いいよ、こっちもヴァーリが迷惑をかけたしな、未然に防げなかったのは俺の過失だ」

 

そう言うアザゼルの瞳には寂しさの陰りが写っていた。

きっとヴァーリと間で彼なりに思うところがあったのだろう。

 

「俺はもう疲れた。これからやる事があるからな」

 

背を向けて、アザゼルはサーゼクス達の元をから離れて行った。

 

 

 

「いや〜、まさか渡ちゃんがキバだったとはねぇ〜」

 

フォーベシイがネリネを連れて渡の側に来る。

 

「これで確定だね。君はネリネちゃんのお婿さんだ」

 

「お、お父様///」

 

「ちょ、そんな勝手に!」

 

「いやいや、キバは『王の証』。冥界のプリンセスであるネリネと、キバである渡ちゃんは地位の問題を気にせず婚約できるよ。いやー!めでたいめでたい!」

 

 

 

「なぁ、ミカエル。和平が完了しても、不満を持つ奴はいるよなぁ?」

 

「はい、そうですが…」

 

ユーストマはミカエルと話し合っていた。

 

「だったら、天界のプリンセスであるシアが、キバである渡殿と結婚して更に親睦を深めれば、そいつらも納得するんじゃねぇの?」

 

「おお!それはいいですねユーストマ。シアちゃんも渡君に好意を抱いていますし、ゴハッ⁉︎」

 

「み、ミカエうぶっ⁉︎」

 

「お父さんもミカエルさんも余計な計画立てないで!」

 

大天使と神王の脳天に、同時に椅子が叩きつけられた。

 

 

天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』総督アザゼル、冥界代表魔王サーゼクス・ルシファー、三大勢力各代表のもと、和平協定が調印された。

 

以降、三大勢力の争いは禁止事項とされ、協調体制へ。

 

この和平協定は舞台になった駒王学園から名を採って「駒王協定」と称される事になった。

 

 

***********

 

 

「てな訳で、今日からこのオカルト研究部の顧問になる事になった。アザゼル先生と呼べ。もしくは総督でも良いぜ?」

 

着崩したスーツ姿のアザゼルがオカルト研究部の部室にいた。

リアスは額に手を当て、困惑しながら言う。

 

「……どうして、あなたがここに?」

 

「ハッ!セラフォルーの妹に頼んだら、この役職だ!まぁ、俺は知的でチョーイケメンだからな。女生徒でも食いまくってやるさ!」

 

「っと、こんな事をしたから『堕天』したんだこいつは」

 

「あ〜、納得」

 

オカルト研究部に呼ばれた渡達はリリスの言葉に納得する。

 

「しかし、『キバの眷属』はグレモリー眷属に負けじとも劣らないなぁ。絶滅種の戦闘民族の人狼族と、同じく絶滅種で水の魔力の扱いは右に出る者はいない人魚族。あらゆる異能を無効化し、物理攻撃しか効かないフランケン。そして全てのケルベロスの母、マザーケルベロス。眷属としてもハーレムとしても最高だな」

 

「前にも思ったけど渡!モテない同盟のクセに着々とハーレムを築き上げていやがったのか!お嬢さん方!今度俺とお茶でもしませんか⁉︎」

 

「嫌よ、私は渡一筋なの」

 

「貴方には品が無い。私、品の無い人が一番嫌いなの」

 

「君…………誰?」

 

「弱い子に興味は無いのよね〜」

 

デートに誘うが、瞬く間に断られその場に膝をつくイッセーであった。

 

「よし、イッセー。じゃあ童貞卒業ツアーにでも出掛けるか!渡!お前も一緒にどうだ⁉︎」

 

アザゼルは渡にも言ってくるが、渡は首を横に振った。

 

「俺は遠慮しますよ。好きな女以外抱く趣味はないし、色恋沙汰には興味ありません」

 

それを聞いて、渡に想いを寄せる女達はホッと胸をなで下ろす。

 

「はぁ、何だそりゃ?父親の音也はそんなつまらない男じゃなかったぞ?」

 

「どういう人だったんですか?」

 

渡の問いにアザゼルは懐かしそうな表情を浮かべる。

 

「エロかったな」

 

「「「「「……………」」」」」

 

「エロくて、女誑しで、バカで間抜けで、事あるごとに女にナンパするダメ男だった」

 

「女誑ししか合ってないわね」

 

「泣くぞ?俺………」

 

結菜の言葉に、瞳に涙を浮かべる渡。

 

「年下・同い年・年上・人妻・ロリっ娘・悪魔・堕天使・妖怪など年齢種族問わずに愛する浮気性。それが暁 音也だ。俺と音也はナンパ友達でよぉ。事あるごとにナンパの約束をしたもんだ」

 

「ねぇ、泣いていい?泣いていい?」

 

渡は涙目でリリスに縋り付く。

 

「すまん、渡。これは事実だ」

 

リリスも苦笑いを浮かべて渡を抱き締める。

 

「特に有名なのは天界に1人で潜り込み、天界一の美女ガブリエルの胸を見て、触って、揉んで、乳首を突いて、摘んで、吸った事だな」

 

「何て事だ!あの、あのガブリエル様の胸に何という事を⁉︎」

 

それを聞いたゼノヴィアは頭を押さえて膝をつく。

 

「渡…お前、何て素晴らしい父を持って産まれたんだ!」

 

対するイッセーは、感動のあまり落涙していた。

 

「ダメ男だったんですね……父さん」

 

渡が落涙しながら落胆していると、

 

「だがバイオリンの腕は凄かった」

 

アザゼルの言葉に反応する。

 

「あいつは誰よりもバイオリンをこよなく愛した。正に天才…とは片付けられない程にな。そして…」

 

アザゼルは真剣な顔立ちで言った。

 

「『決して女に涙を流させなかった』、『女を泣かした奴を許さなかった』。音也は人間、神器も持ってないただのバイオリニストだ。しかし、相手が魔王だろうと神だろうと恐れず突っかかった」

 

アザゼルは渡の方を向く。

 

「俺は初めて人間に恐怖したよ。『こんなバカで無鉄砲で自分の命すら顧みないーーーー強い(・・)人間がこの世にいたなんて』ってな」

 

話が終わった頃には、皆がその話に釘付けになっていた。

アザゼルはパンパンと手を叩き、話を戻す。

 

「ま、ここは三竦み同盟の代表な場所だ。仲良くやっていこうや。当面の目標は赤龍帝の完全なる禁手化。それとお前らのパワーアップだな。それらを夏休みに修行して達成するべきだ」

 

話は終わり、渡はただジッと青空を見上げていた。

 

「俺の父さん……凄かったんだな」

 

「ああ、未来永劫…あいつを超える人間なんて出て来やしないさ」

 

「そっか………」

 

渡は笑みをこぼし、家へ帰っていった。

 

 

 

 

「あ」

 

「?……げ」

 

途中、イリナと目が合い沈黙する。

 

「………じゃあな、紫藤」

 

「ッ!」

 

それだけ言って、渡は歩を進めた。

 

 

 

 

「……紫藤(・・)……か」

 

イリナの胸は、チクリと痛んだ。




音也に対するアザゼルの話はどうだったでしょうか?
そして、最後のイリナの表情…

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