ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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34話 タイムオーバー・戦いの行方

「ダーリン❤︎」

 

『貴女は……⁉︎』

 

キバの目の前にはあの時の美女、ヘルがいた。

 

『何故ここに⁉︎』

 

「貴方に会いに来たに決まってるじゃない。でもいきなり死にかけてるなんて」

 

ヘルはルークを睨む。

 

「あいつ、殺す?」

 

その殺気に、キバは覚えがあった。

 

(この殺気…まさか…‼︎)

 

 

 

 

『マザーケルベロス⁉︎』

 

「あはぁ♪やっと思い出してくれた?」

 

マザーケルベロスのヘルは豊満な胸を、動けないキバに押し付ける。

 

「貴方に負けてから、ずっと貴方の事しか考えられなくなったのよ?」

 

『ちょ、待ってくれ!あんたコカビエルの仲間じゃないのか⁉︎』

 

「違うわよ?あれはコカビエルが冥府から私をレンタルしただけよ。じゃなきゃあんな戦闘狂の言う事なんか聞くものですか」

 

プイッと顔を逸らすヘル。

 

「でも運命って本当にあるのね」

 

ヘルは頬を赤く染め、キバを見つめる。

 

「適当に終わらせようとしていた時に、貴方は現れて私を倒した。あの時の強さ!姿!正しく貴方こそが私の運命のダーリンよ!」

 

ヘルのテンションについていけないキバ。

 

「ねぇ、私を眷属にして!」

 

『はぁ⁉︎』

 

ヘルの突然の言葉に、キバは声を上げる。

 

『ちょっと待って下さい!俺は眷属を集める気はないんです!』

 

「そんな事言って、あんな可愛い女の子を3人も眷属にしてるじゃない」

 

言い返せなくなる渡。

 

「私がいれば、この状況を打破できるわよ?」

 

『ッ………何が目的なんですか』

 

「貴方が好きだから。それだけじゃ理由にならない?」

 

ヘルの想いは純粋だった。

 

「私は愛しの男性といられる。貴方はこの状況を打破できる。互いにメリットはあるでしょ?」

 

『………本当にこの状況を打破できるのなら』

 

キバはまだ使われてないフエッスルを取り出す。

 

『キバ、暁 渡の名において命ず。汝、ヘルよ。我を守護する者として『戦車』へと変わることを命ず』

 

その瞬間、フェッスルから光の粒子が現れヘルを包む。

その粒子は数秒程、ヘルの周りを漂うとフェッスルに戻る。

粒子が戻ったフェッスルは、ケルベロスの頭部を模している赤黒いフェッスルとなった。

 

「んん?」

 

その光景をルークに見つかる。

 

「キバの契約……させるか!」

 

ルークは指からロケットクローを発射するが、

 

「ガアアアアアアアアアアアア!!」

 

マザーケルベロスの姿になったヘルに防がれる。

 

「行くぞ、キバット!ヘルさん!」

 

『ケルベロスフェッスル』をキバットに吹かせる。

 

「おう!『ケルベロスアックス』!」

 

フェッスルを吹き鳴らすと、ヘルは彫刻の姿となる。

彫刻を掴んだ瞬間、彫刻は戦斧・『魔獄斧ケルベロスアックス』へと変わる。

 

その瞬間、地獄の炎に包まれた鎖・カテナが厳重に両腕と胸に巻きついていき、弾けると両肩と胸の鎧がケルベロスの頭部に変化した。

 

最後にキバットの眼が赤黒くなり、ヘルの幻影がキバに吸い込まれると、キバの眼も赤黒に変色した。

 

地獄形態『ケルベロスフォーム』。

 

「ほう、新しい力かぁ!」

 

ルークは棍棒を振り回し、突進してくる。

 

『オオオオオオオオオオオオ!!!』

 

ガギィィィィィィィィイッ‼︎‼︎‼︎

 

ケルベロスアックスと棍棒が重なり合い、衝撃の渦が巻き起こる。

 

『うおおおおおおおッ‼︎‼︎‼︎』

 

「ぐっ…俺が押し負けた⁉︎」

 

キバはルークの懐に潜り込みケルベロスアックスを叩きつける。

しかし、矢張り棍棒でガードされている。

ルークには受け身を取り直ぐに立ち上がるが、キバは直ぐさま追いつきアッパーぎみに殴りつける。

 

「調子にのるな!」

 

殴られたルークは怯まずにキバを殴り返してくる。

 

『がっ…ッラァ!』

 

殴られた反動をいかし身体を捻り、ケルベロスアックスを叩き込む。

ルークはまた殴り返してくるが、途端に動きが止まる。

 

「何だ……これは⁉︎」

 

ケルベロスアックスの飾りの鎖が、ルークを縛っていた。

しかも、鎖は炎を纏いルークを燃やす。

 

『これは「地獄の炎」。お前が殺してきた者達の怨念だ!』

 

「殺した者の顔など、一々覚えちゃいない」

 

『そう……かっ!』

 

キバは鎖で縛られたルークを投げ飛ばした。

 

(むう、引き千切れん!なんて強固な鎖だ!)

 

ルークが鎖の破壊に苦戦していると、

 

 

 

「アルビオン!ヴァーリ!もらうぜ、お前の力!」

 

『「ッ⁉︎」』

 

振り向くと、イッセーが白龍皇の宝玉を右手の甲に存在する赤龍帝の宝玉にぶつけて叩き割っていた。

右手からオーラが発生し、イッセーの右半身を包み込んだ刹那、

 

「うがあああああああああああああああああああああああああああああッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

身体中に形容し難い激痛が走る。

 

『お、おいイッセー⁉︎』

 

「どうやら本当のバカだったらしいな」

 

「ぬがあああああああああああ!ああああああああああああああああああああああああッ!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎これに比べたら光の槍なんてぇ………‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「――――ッ!まさか、俺の力を取り込む気か!?無謀過ぎる!死ぬぞ!」

 

〈ドライグよ、我らは相反する存在だ。それは自滅行為に他ならない。こんな事でお前は消滅するつもりなのか?〉

 

〈アルビオンよ!お前は相変わらず頭が固いものだ!我らは長きに亘わたり、人に宿り争い続けてきた!毎回毎回同じ事の繰り返しだった〉

 

〈そうだ、ドライグ。それが我らの運命。お互いの宿主が違ったとしても戦い方だけは同じだ。お前が力を上げ、私が力を奪う。神器をうまく使いこなした方がトドメを刺して終わりとなる。今までもこれからも〉

 

〈俺はこの宿主、兵藤一誠と出会って1つ学んだ!バカを貫き通せば不可能を可能にするとな!〉

 

「バカで結構!俺の想いに応えろ『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』ァァァァァァア‼︎‼︎‼︎」

 

イッセーの右手が真っ白なオーラに包まれ、白い籠手が出現した。

しかし、

 

「グァァァァア‼︎‼︎‼︎」

 

激痛は治らない。

 

「な、何で……ちゃんと神器の移植は…!」

 

「当然だ」

 

「ッ!」

 

ルークがイッセーに言う。

 

「確かに神器が移植されたのは驚いた。しかし、お前は赤龍帝。移植したのは白龍皇だぞ?お前自信が望んでも……

 

 

 

 

 

 

歴代(・・)が望まない」

 

「ッ⁉︎」

 

そう、神器の中にある歴代の怨念や思念が、白龍皇を拒絶するのだ。

幾ら神器の移植が完成しても、これだけはどうにもならないモノだった。

 

〈その通りだ。ヴァーリよ、今代の赤龍帝と白龍皇の戦いは我々の不戦勝だ〉

 

「やれやれ、元々期待なんてしてなかったからな」

 

「ッ⁉︎」

 

非常な言葉の連発に、イッセーは膝をつく。

 

(死ぬのか⁉︎俺は……⁉︎)

 

イッセーが意識を手放そうとしたその時、

 

 

 

 

 

 

 

「イッセー!」

 

(ッ!……部長!)

 

自分の愛する女性リアス・グレモリーの姿が、イッセーの視界に映った。

 

「いや……だ…」

 

イッセーは痛みを抑え、立ち上がる。

 

「諦めて……たまるかぁぁぁああ!」

 

「ええでぇ!その心意気ぃ!」

 

振り向くと、復活した健介が立っていた。

 

「お前⁉︎」

 

「初めは俺もダメかと思った。しかぁし!その死に物狂いの覚悟!気に入ったで!ギンギンやでぇ!」

 

「健介、今更何を…」

 

「まぁ、見とけ……禁手!!!」

 

健介が叫んだ瞬間、最初に見たギターの絃と、スピーカーが嵌め込まれた鎧の姿になった。

 

『これが俺の禁手『六絃琴の無際限演奏鎧(アンリミテッド・ギター・アームドライブ)』やぁ!』

 

「知ってるさ。確か、1度に数種類の音を鳴らし、多彩な効果を持つ音符を一斉に放てる…だろ?」

 

『それだけやない!』

 

「何?」

 

『コレが俺のロックやぁ!』

 

鎧全体から音楽が流れる。

 

調和音符(ハーモニーギター)!』

 

その音楽は形を成し、イッセーの体の中に入っていく。

 

「な、何だ?痛みが…ドンドン…」

 

「健介!何をした!」

 

『神と魔王がいなくなった所為でバランスが崩れんやろ?その影響や。それがこの神器に新たな力、「調和音符(ハーモニーギター)」を生み出した。どんな反発し合うモンでも完璧に調和させる。正にロックや!』

 

〈何だと⁉︎〉

 

《Vanishing Dragon Power is taken‼︎》

 

「で、出来た!『白龍皇の籠手(ディバイディング・ギア)』ってところだな!」

 

〈あり得ん!こんな事はあり得ない!〉

 

自分の力が取り込まれた事にアルビオンが驚愕の声音を出す。

 

「この力使うと物凄ぉ疲れるわ。ほんじゃ、後は頼む」

 

パタリ、と健介は倒れその場で寝た。

 

『ありがとな健介!』

 

イッセーは鎧を纏うい、ルーク向かっていく。

 

「矢張り殺しておくべきだったか」

 

ルークは棍棒でイッセーの拳を防ごうとするが、

 

《Half Dimension!》

 

「っ、ヴゥ⁉︎」

 

棍棒は半分(・・)の長さになり、イッセーはそのまま棍棒を素通りしてルークの顔面を殴った。

 

「見直したよ兵藤 一誠。なら、その覚悟を表して、全力でサポートしよう!」

 

「白龍皇の半減の力…死に損ないの癖に忌々しい」

 

ヴァーリに向かってロケットクローを放つが、横から割り込んだアザゼルによって防がれる。

 

「アザゼル?」

 

「ま、お前にしては上出来だよ。休んでな」

 

アザゼルはニヤニヤとイッセーに話しかける。

 

「おい兵藤 一誠!」

 

「あ?」

 

「今見せたヴァーリの能力、お前にも分かりやすい様に説明しよう」

 

「な、何だ?」

 

「あの能力は周囲の物を全て半分にしていく力だ。もし負けたらヴァーリは

 

『リアス・グレモリーの乳を半分にする』

 

って言ってるぞ?」

 

「は?」

 

アザゼルの言葉にヴァーリも驚く。

 

『…………………』

 

イッセーは首だけを動かしてリアスへ視線を向ける。

 

(おっぱいが半分になる?)

 

『ふ』

 

「ふ?」

 

『ふざけんなァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 

イッセーの怒りが爆発した。

 

『貴様ァァァッ!部長のォォォォ!おっぱいを半分の大きさにするつもりかァァァァァァァアアアアアアアアアアアッ!!』

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎》

 

『させねぇ!そんな事は天地がひっくり返ってもさせねぇぞぉぉぉぉお‼︎‼︎‼︎』

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎》

 

爆発的に増大されたイッセーの魔力によって地面が大きく抉れていき、アザゼルはその光景を見て大爆笑した。

 

「ブッハッハッハッハッハッハッハ!すげぇ!胸に関するとこんな事になるとはなぁ!魔力が一気に跳ね上がりやがった!」

 

『笑い事じゃないだろう』

 

『渡ぅぅぅぅぅぅぅぅぅうう‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

ビクッ!

 

『お前も一緒にルークをぶっ倒すぞォォォォッ!特大の一撃を奴にぶつけやがれェェェェッ!』

 

キバはあまりの迫力に言葉を発せず、コクリと頷くしか出来なかった。

 

「行くぜ渡ー!」

 

『お、おお』

 

2人は今までに無かった超スピードでルークに向かって飛び出した。

鎖で繋がれているルークを捕まえるのは苦では無く、イッセーは拳をキバはケルベロスアックスを。

2人は揃ってルークにの腹に一撃を入れた

 

《Divide‼︎》

 

同時に移植したばかりのイッセーの力が発動し、ルークの力を半分にする。

 

バギッ!ドガッ!

 

『『グアッ!』』

 

「言った筈だ。半減した所で俺との差は埋まらない!」

 

完璧に決まったにも関わらず反撃するルーク。

 

『『ダアアアアアアアアアアア‼︎‼︎』』

 

体勢を立て直し……キバが背後からケルベロスアックスを顔面に炸裂させた。

更にイッセーが背中の噴出口を全開にして腹を殴る。

 

「無駄だ‼︎‼︎」

 

ゴオオオオオオオオオオオオン‼︎‼︎‼︎

 

棍棒で2人を地面に叩きつける。

 

『『オオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎』』

 

それでも食らいつき、同時にアッパーカットをルークにぶつける。

キバは打ち上げられたルークにケルベロスアックスを叩きつけて地面に落とす。

 

『ドォォォォォオラゴオオォォンーーーーショォォォォオット‼︎‼︎‼︎』

 

起き上がるルーク目掛けて、イッセーの魔力弾が直撃し大爆発が起きる。

 

『そしてこれが巨乳、貧乳、美乳を含めた!全ての女の子の!おっぱいの分だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!』

 

トドメにイッセーは拳を握り、

 

「『ケルベロスバイト』!」

 

キバットがケルベロスアックスを噛み、魔皇力を注入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁん!…………癖になりそう❤︎)

 

(もう突っ込まない)

 

『ハァァァァァッ!』

 

キバを中心に世界が夜に覆われる。

 

地面からそこかしこに火柱が現れ、上弦の月が浮かぶ。

 

正に地獄というに相応しい世界となった。

 

火柱はケルベロスアックスに吸い寄せられ、刃は地獄の炎に包まれる。

 

『『アアアアアアアアアアッッッ‼︎‼︎』』

 

キバの『ケルベロス・ヘルブレイク』とイッセーの拳が同時に炸裂した。

 

「おおおおおおおおお‼︎‼︎‼︎」

 

ルークはその威力に飲まれ、吹き飛ばされる。

 

「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」

 

「ぜぇ!はぁ!はぁ!ふぅ……!」

 

2人の変身は解け、肩で息をして立っているのもままならなかった。

 

「大丈夫?ダーリン」

 

ヘルは渡を支えて呼びかける。

 

「リア……充…」

 

「イッセーは大丈夫そうだな」

 

安心したその時、

 

「効いたぞ」

 

「「「ッ⁉︎」」」

 

煙の中から、所々に小さなアザと口に少しの血を流しているルークが出てくる。

 

「うっそ……だろ⁉︎」

 

「もう……魔皇力が…!」

 

「これは私も計算外ね…」

 

絶体絶命のこの状況の中、

 

ピピピピピ…!

 

「あ?」

 

ルークのスタートウォッチが鳴り響いた。

 

「何っ⁉︎た、タイムオーバーか⁉︎」

 

ルークはガクリと肩を落とし、トボトボと背を向けた。

 

「お、おい!何の真似だ⁉︎」

 

「言っただろう、『タイムプレイ』と」

 

「タイム……」

 

「プレイ……?」

 

2人は命令より、『タイムプレイ』への拘りに唖然とした。

 

「ちょっと待て……」

 

渡はある事に気づく。

 

「俺達の戦いは、たかがゲーム感覚(・・・・・)だったのか?」

 

今までの戦い全て、全力ではなく遊びでありゲームだったのだ。

 

「帰って俺に()を与えなければ」

 

そう言って、ルークは帰っていった。

 

「「………」」

 

暫くの無言。

そして2人は、糸が切れたように倒れた。

 

「は、ははは……」

 

渡の顔に笑みが浮かぶ。

『助かった』の笑みではない、『逆に笑える』の笑みだ。

 

こんなのが後、3人もいるのか(・・・・・・・・・・・・・・)

 




『ケルベロスフォーム』はどうだったでしょうか⁉︎
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