ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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31話 リリス・冥界最強の女悪魔

「ん?」

 

「ようやく動ける様になったか、一誠」

 

「渡?いったい何があったんだよ⁉︎」

 

渡はイッセーに現状を簡単に説明し始めた。

 

旧校舎にいるギャスパーが拉致され、無理矢理『禁手』めいた力を発動させられたのだ。

 

周囲を見渡すと、動ける者と停まっている者に別れていた。

 

サーゼクス、セラフォルー、フォーベシイ、アリーシェ、ミカエル、ユーストマとアザゼル、そしてリリスとグレイフィアは動いており、ヴァーリと健介はアザゼルの命で先程外へ向かった。

 

そして他で動けるのは渡の他にリアスとイッセーに木場、そしてゼノヴィア。

後の皆んなは全員停められている。

 

「………テロか」

 

「そういう事だな」

 

リリスの言葉をアザゼルが肯定する。

外を見ると魔術師みたいな連中が攻撃している光景が視界に飛び込む。

外に行ったヴァーリと健介が蹴散らすも、魔方陣の中から同じ様な魔術師の軍勢がどんどん出てくる。

 

「ギャスパーはテロリストの武器にされている……何処で私の下僕の情報を得たのかしら……しかも、大事な会談をつけ狙う戦力にされるなんて……!これ程侮辱される行為も無いわっ!」

 

リアスは全身から紅色のオーラを迸らせながら怒りを露にする。

 

「因みにこの校舎を取り囲んでいた堕天使、天使、悪魔の軍勢も全部停止させられているようだぜ。まったく、リアス・グレモリーの眷属は末恐ろしい限りだ」

 

「他人事みたいに言わず、何とかならならないのか?」

 

渡の質問にアザゼルは首を横に振るだけだった。

 

「無理だな、学園全体を囲う結界を解かないと俺達は外に出られない。だが、結界を解いたら人間界に被害が出るかも知れないだろ?」

 

「……確かに、下手に暴れても相手側の思う壺になっちまうだけだ。それなら暫く籠城して敵の親玉が出るのを待つしか無いって事か」

 

「と言うより、我々首脳陣は下調べ中で動けない。だが、まずテロリストの活動拠点となっている旧校舎からギャスパーくんを奪い返すのが目的となるね」

 

サーゼクスが言うと真っ先にリアスが名乗り出る。

 

「お兄さま、私が行きますわ。ギャスパーは私の下僕です。責任を持って私が奪い返してきます」

 

「言うと思ったよ。妹の性格ぐらい把握している。しかし、旧校舎までどう行く?この新校舎の外は魔術師だらけだ。通常の転移も阻まれる」

 

サーゼクスの問いにリアスは『キャスリング』を提案する。

旧校舎に残っている未使用の『戦車』と自分の位置を入れ替え、旧校舎に向かうと言う算段だろう。

しかし、相手はテロリストなので何を仕掛けてくるか分からない上に転移出来る定員はあと1人。

誰がギャスパーの救出に向かうか決めあぐねていると、イッセーが挙手してきた。

 

「サーゼクス様、俺を行かせてください。ギャスパーは俺の大事な後輩です。俺も助けに行かせてください」

 

その後、イッセーはアザゼルから神器の力を制御及び対価無しで『禁手化』出来る腕輪を自分用とギャスパー用、合わせて2つ貰ってから転移の準備に入る。

 

リリスは外の魔術師軍勢に1度眼を通してからアザゼルに訊く。

 

「アザゼル。あのテロリスト共はいったい何者だ?」

 

リリスの質問にアザゼルは答えた。

 

「『禍の団』だ」

 

聞き慣れない単語に疑問符を浮かべるリリスと渡を他所にアザゼルは更に続ける。

 

「組織名と背景が判明したのはつい最近だが、それ以前からもうちの副総督シェムハザが不審な行為をする集団に目をつけていたのさ。そいつらは三大勢力の危険分子を集めているそうだ。中には禁手に至った神器持ちの人間も含まれている。『神滅具』持ちも数人確認してるぜ」

 

「その者達の目的は?」

 

「破壊と混乱。単純だろう?この世界の平和が気に入らないテロリストだ。しかも最大級に性質が悪い。組織の頭は『赤い龍』と『白い龍』の他に強大で凶悪なドラゴンだよ」

 

アザゼルの話に全員が絶句したを

 

「そうか、彼が動いたのか。『無限の龍神』オーフィス。神が恐れたドラゴン……この世界が出来上がった時から最強の座に君臨し続けている者」

 

『そう、オーフィスが「禍の団」のトップです』

 

声と同時に会議室の床に魔方陣が展開される。

その魔方陣を見たサーゼクスは舌打ちをする。

 

「そうか。そう来るわけか!今回の黒幕は!アリーシェ、リアスとイッセーくんを早く飛ばせ!」

 

「グレイフィア、お前も手伝え」

 

「はい」

 

グレイフィアはアリーシェの隣に立つ。

 

「姉さん」

 

「久しぶりねアリーシェ。話は後でしましょう」

 

2人はイッセーとリアスを隅に移動させ、小さな魔方陣を出し、2人は旧校舎に転送されていった。

 

渡は目の前の事態に備えて戦闘体勢を取る。

会議室に現れた魔方陣を見て、サーゼクスは苦虫を噛み潰した様な表情をした。

 

「レヴィアタンの魔方陣」

 

「ヴァチカンの書物で見た事があるぞ。あれは旧魔王レヴィアタンの魔方陣だ」

 

ゼノヴィアがそう呟く。

まだ魔王の血を引く者が残っていたと言う事だ。

そして魔方陣から1人の女性が現れた。

胸元が大きく開かれ、深いスリットも入ったドレスに身を包んでいる。

 

「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」

 

「先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン。これはどういう事だ?」

 

サーゼクスの問いにカテレア・レヴィアタンは挑戦的な笑みを浮かべて言う。

 

「旧魔王派の者達は殆どが『禍の団』に協力する事に決めました」

 

「新旧魔王サイドの確執が本格的になった訳か。悪魔も大変だな」

 

アザゼルは他人事の様に笑う。

普通はそんな余裕をかましている場合ではない。

 

「カテレア、それは言葉通りと受け取って良いのだな?」

 

「サーゼクス、その通りです。今回のこの攻撃も我々が受け持っております」

 

「クーデターか……カテレア、何故だ?」

 

「フォーベシイ、今日この会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私達はそう結論付けました」

 

彼女を含めた旧魔王派は和平を認めず、神の不在を知った上でクーデターを起こしている。

しかも、平和とは真逆の考えも述べている。

 

「オーフィスの野郎はそこまで未来を見ているのか?そうとは思えないんだがな」

 

アザゼルの問いかけにカテレアは息を吐く。

 

「彼は力の象徴としての、力が集結するための役を担うだけです。彼の力を借りて1度世界を滅ぼし、もう1度構築します。新世界を私達が取り仕切るのです」

 

「……天使、堕天使、悪魔の反逆者が集まって自分達だけの世界、自分達が支配する新しい地球を欲した訳か。それのまとめ役が『ウロボロス』オーフィス」

 

「カテレアちゃん!どうしてこんな!」

 

セラフォルーの叫びにカテレアは憎々しげな睨みを見せる。

 

「セラフォルー、私から『レヴィアタン』の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと!私は正統なるレヴィアタンの血を引いていたのです!私こそが魔王に相応しかった!」

 

「カテレアちゃん……わ、私は!」

 

「セラフォルー、安心なさい。今日、この場であなたを殺して、私が魔王レヴィアタンを名乗ります。そして、オーフィスには新世界の神となってもらいます。彼は象徴であれば良いだけ。あとの『システム』と法、理念は私達が構築する。ミカエル、アザゼル、そしてサーゼクス、貴方達の時代は終えるのです」

 

「私はそんな事をお前達に教えた覚えはない」

 

カテレアの前にリリスが立つ。

 

「リリス様…我が師よ」

 

カテレアはリリスの前で首を垂れる。

 

「何の真似だ」

 

「リリス様、我々の所へ来ては下さいませんか。貴女様は我々と一緒にいる事でその輝きは更に増すのです」

 

カテレアはリリスに手を差し伸べる。

 

「貴女様が来れば『キバの鎧』も我々の元へ。さぁ、この手を!我々と共に世界を改変しようではありませんか!」

 

「断る」

 

カテレアの言葉を即答で返すリリス。

 

「な、何故です⁉︎まさかこのような世界に不満は無いと⁉︎ましてや……」

 

カテレアは憎々しげに渡を指差す。

 

「こんな下劣な輩に『キバの鎧』を与えるなど!」

 

「何?」

 

カテレアの言葉に、リリスは反応する。

 

「俺が『キバ』っていうのが、そんなに気に入らないのか?」

 

「気に入らないのではない、相応しくないのだ!『キバの鎧』は真の王にのみ許された鎧!つまり、魔王の血を引く我々が、『キバ』に選ばれて当然!」

 

カテレアは杖を渡に向ける。

 

「下等な人間の混じり合いの分際で、『キバの鎧』を纏うなど、死をもって償いなさい!」

 

カテレアは侮蔑の目で吐き捨て、魔力を放った。

 

ドォォォンッ!バキバキッ!

 

カテレアの放った魔力の弾が渡に直撃、

 

 

「リリス」

 

「死にたいようだなカテレア」

 

せず、リリスが防御壁で防いでいた。

 

「リリス様!血迷いましたか!?」

 

「血迷ったのはお前達の方だろう。アザゼル、こいつは私が貰うぞ」

 

「あーはいはい、相変わらずおっかねぇなぁ。何十ものハーレムを作った俺だが、お前だけにはどうも手が出せん」

 

アザゼルは両手を上げ「邪魔はしない」と言う。

 

「さて、暴走した弟子を止めるのは師の務め。覚悟しろよ、カテレア」

 

「悲しいモノですね。愛する師をこの手で殺してしまうのは」

 

カテレアは胸元に手を突っ込み、そこから小瓶を取り出した。

 

「ッ!堕ちる所まで堕ちたなカテレア!」

 

中に入っていた小さな黒い蛇らしき物を呑み込んだカテレアに、リリスは激昂する。

 

ドンッ!

 

「……っ⁉︎何だ⁉︎魔力が一気に跳ね上がりやがった⁉︎」

 

「カテレア!てめぇ、オーフィスの野郎に何を貰った!?」

 

アザゼルがカテレアに問いかける

 

「彼は無限の力を有するドラゴン。世界変革のため、少々力を借りました。今の私はリリス様とも戦える。貴女を倒した後は、サーゼクスとミカエルも、アザゼルも倒します」

 

「やってみろバカ弟子が。もうお前の事を教え子だとは思わない!」

 

カテレアは怒るリリスに杖を向けて、杖の先に魔力を集中させる。

10倍、20倍と…魔力の弾は巨大で強大となっていく。

 

「どうですリリス様!今の私は前魔王クラスの魔力量です!降伏するのなら今のうちですよ!」

 

「ほざけ」

 

「……そうですか、なら一撃で殺して差し上げましょう!」

 

魔力弾がリリスに向かって放たれた。

いや、魔力弾はこの街を一瞬で更地に変える程のエネルギーを持っている。

回避は不可能。

サーゼクス達も纏めて仕留めるつもりだ。

 

「おい渡。お前、リリスの戦った所を見た事があるか?」

 

「?、いいや」

 

「じゃあよく見とけ、あれがリリスの力だ」

 

魔力弾はリリスに迫る。

 

「カテレア…昔、教えたよな」

 

リリスは魔力弾に向けて片手を向ける。

 

「魔力量=強さではないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「何………だと!?」

 

瞬間、魔力弾が一瞬にして消えた。

いや、消滅(・・)した。

 

「グレモリーの…『消滅の魔力』⁉︎」

 

「魔力とは使い用と教えた筈だ」

 

リリスは平然と言い放つ。

 

「今…リリスは何をしたんだ?」

 

「分からねぇか?リリスの能力、それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての悪魔の能力を使えるんだ(・・・・・・・・・・・・)

 

渡はアザゼルの言葉に絶句した。

つまり、先程の『消滅の魔力』やその他の悪魔の能力も全て使用可能。

まさに、『冥界最強の女悪魔』である。

 

「名のある名門貴族の悪魔の8割は、リリスの教え子だ」

 

「当然、僕もリリス様の弟子だ」

 

「私も、リリス様にお世話になったわ☆…………色々な意味で」

 

サーゼクスとセラフォルーのハイライトが消える。

 

 

 

「サーゼクスの『消滅』、セラフォルーの『氷の魔力』、アジュカの『覇軍の方程式(カンカラー・フォーミュラ)』、ファルビウムの『戦術・戦略』その他の悪魔の能力、魔力の使い方を教えたのは私だ。勿論、お前の力もよく知ってる」

 

「く、うう!私は私はぁ!」

 

カテレアはまた魔力弾を放とうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『無価値』」

 

「な!?」

 

その時、カテレアの魔力が大幅に減った。

 

「ティハウザー・ベリアルの『無価値』まで……!!」

 

「もう止めろカテレア。大人しく投降するか、死ぬか。どっちだ?」

 

「貴様が死ーーーー」

 

「もういい」

 

瞬間、天を埋め尽くす程の魔法陣が展開される。

1つ1つが冥界や北欧、更にはオリジナルの魔法、魔術。

その全てがカテレアに向けられた。

 

魔の千罰(サウザンド・マジック・バースト)

 

カテレアは一瞬で消滅し、リリスの勝利で終わった。


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