「会長、あれ」
「んん?」
生徒会長の視線の先には、キバに変身した渡が立っていた。
「へぇ、ゴミのクセに面白そうな物を持ってるんだなぁーーーー不愉快だ、殺せ」
生徒会長はメンバーの1人に指示する。
生徒会はコクリと頷い、ニヤニヤと笑いながらキバに近づく。
『お前、イッセーを殴った奴だな』
「ああ、そうだな。あの時はウケたぜ!ゴミだと思ってたら、本当にゴミの様な吹っ飛び具合だったからなぁ!軽い軽い!ハハハハハハハハハハ!」
『許せない…‼︎』
「調子こいてんじゃねぇぞ!ゴミのクセに!フンッ!」
その時、生徒会のオーラが格段に上がる。
「どうだ!俺は『強化』の魔術で魔力、身体能力を向上させられるんだ!さらぁに!」
生徒会の両手に、赤い籠手が現れる。
『「龍の手」か』
「そうだ!ありふれた神器だが、『選ばれた者』である俺が使えば!」
生徒会の力が更に上がる。
「どうだ!この状態なら巨大オークも簡単に倒せる!」
『………』
「怖くて声も出ないかぁ?ギャハハハハハハハーーーー」
「「「「「え?」」」」」
その時、生徒会の姿が消えた。
「あ、あそこ…」
生徒会の1人が天井を指差すと、そこには一瞬の内にボコボコに殴られた生徒会が、天井にめり込んでいた。
ガラガラ……ボゴッ。
ヒュルルルル………ドスンッ!
暫くして天井が崩壊し、生徒会は重力に引っ張られ地面に叩きつけられた。
「お、おい……冗談よせよ」
生徒会の1人が、倒れた生徒会に向かって言う。
「………」
「俺達は『選ばれた者』だぞ⁉︎なのに『選ばれなかった者』に負ける訳ねぇだろ!おい!」
「………」
「悪ふざけはもういいんだよ!さっさと立って、そいつ殺せよ!」
幾ら話しかけても、全くの無反応。
「何やってるんだよ」
そんな中、生徒会長だけは平然としていた。
「『選ばれなかった者』に負けたあいつは、『選ばれなかった者』という訳だ。何をしている、さっさと殺せよ」
「は、はい!」
そう言って生徒会の一人は斬りかかって来るが、
『遅い』
剣を弾きそのまま相手を蹴り飛ばす。
「この、ゴミのクセに!周りこんで同時に攻めろ‼︎」
敵は5人、それぞれキバを囲む様に並ぶ。
「喰らえ!」
「死ね!」
生徒会の2人が同時に炎と風の魔術を放つ。
2つの魔術が合わさった炎の竜巻が、キバを襲う。
「ハッ!『選ばれた者』に楯突くからこうなるんだ!」
勝利を確信した矢先、炎の竜巻から勢いよくキバが現れ、殴り飛ばされる。
「へ?ーーーーーー」
隣にいた生徒会も気づいた頃には腹に拳を入れられ、血反吐を吐きながら倒れる。
「かかれ!反撃を許すな‼︎」
その光景を見た生徒会が一斉に襲ってくるが、そのくらいじゃ怯まない。
『ハァッ‼︎』
横払いの回し蹴りで、同時に2人を仕留める。
『ッセァ‼︎』
腰を捻って繰り出したパンチを、生徒会の顔面に思い切り放った。
「ラストだ渡!」
最後の1人を、踵落としで地面に叩きつけた。
『最後はお前だ』
「中々いいものを見せてもらった」
下衆な笑みを浮かべた生徒会長が、パチパチと拍手を送る。
「おめでとう。君を『選ばれた者』と認めよう。さぁ、僕の手となり足となり、一生を僕の為に費やすんだ。そうすれば最高の生活を約束しようじゃないか」
生徒会長は依然下衆な笑みを浮かべながら語る。
『断る。お前みたいな下衆に仕える気は毛頭無い』
「そうか…残念だね…………死ね」
刹那、生徒会長は魔力の玉を発射する。
当たれば充分相手を殺せるレベルだが、キバは片手で防ぐ。
そのまま突撃し、生徒会長の下衆顔に向かって拳を放つ。
ガンッ‼︎
が、キバの一撃は奴には届かず魔法障壁によって防がれた。
「『選ばれた者』に対して無礼なんだよ!ゴミが‼︎」
『お前はそれしか言えないのか……‼︎』
キバは魔皇力を高めて拳に力を入れる。
バリィィィンッ‼︎‼︎
「何ッ⁉︎ブベラァ⁉︎」
魔法障壁は破れ、そのまま生徒会長の顔面を殴り飛ばした。
「ち、血を⁉︎『選ばれた者』である僕に血を流させたな⁉︎」
『血も流した事もないのか』
「黙れ!高貴で崇高なる僕が血を流すなんて事はあってはならないんだ‼︎‼︎」
魔力弾を放とうとするが、その前に突き出された手を握り潰す。
ボギャッッ‼︎‼︎‼︎
「ギャァァァァァァァァァアア⁉︎⁉︎⁉︎そんな!『選ばれた者』である僕がお前みたいなゴミに負けるハズないのに!」
生徒会長は折られた腕を抑えてのたうち回る。
「僕は将来を有望視された魔術の名門貴族だぞ!だからお前らみたいなゴミを管理するのが僕の使命なんだ!僕は『選ばれた者』なんだ!なのに何でお前は僕を見下してんだよ!」
『黙れ』
「ウブッッッッ⁉︎⁉︎⁉︎」
泣き喚く生徒会長の腹を思い切り殴り飛ばし、倒れた生徒会長を見下ろす。
「や、やめてくれ‼︎何でもする。金か?土地か?女か?幾らでもくれてやる‼︎だから命だけは‼︎」
生徒会長は必死に命乞いを始める。
『分かった。命までは取らない。だがもう俺達の前に2度と顔を見せるな。それと、お前らがやって来た悪行を公表しろ。それでお前の命は見逃してやる』
「するする‼︎約束する‼︎」
生徒会長は必死の形相で首を振る。
キバは振り返りイッセーの元へと向かう。
生徒会長の口の端が釣り上がるのを横目で見ながら。
「馬鹿が‼︎簡単に騙されやがって‼︎これでお前終わりだぁ‼︎」
ボギッ‼︎‼︎
「え?嘘……ぎゃぁぁぁぁぁぁあ⁉︎」
突き出された折れてない反対の手を握り潰す。
ありえない方向に曲がった両手を見て絶叫する生徒会長。
「た、助けて…‼︎もう、もうしない!だから…!」
『慈悲はもうやった。それを無駄にしたのはお前だ』
無情の言葉と共に、腰のベルトから"フエッスル"を取り出す。
「Wake Up!」
キバットにウェイクアップフエッスルを吹かせ、魔性の音色を奏でる。
瞬間、世界は『キバの世界』となる。
夜空は更に黒く塗り潰され、星も雲も消え、あるのは暗黒の空に輝く三日月ただ1つ。
「フッ!」
キバが右脚を天に上げると、キバットが右脚の周りを旋回する。
すると、封印の鎖・カテナが飛び散り、力が解放される。
蝙蝠の翼を象った扉、『ヘルズゲート』が完全に開放される。
そして、片足だけで空に飛び上がった。
「僕は『選ばれた者』なのに!僕は崇高なる存在なのに!何で…何でだよぉぉぉぉぉぉぉおおお‼︎‼︎‼︎」
生徒会長の断末魔の叫びが暗黒に響く。
キバは一瞬逆さになるように回転すると、強大な力を纏わせて、右脚を生徒会長に向け、『ダークネスムーンブレイク』を喰らわせた。
「ひ!イィィィヤダァァァアア‼︎‼︎‼︎‼︎」
瞬間、生徒会長の倒れた地面にキバの紋章が地面に刻まれた。
戦いが終わり、渡は気を失っているイッセーを見つめる。
「……キバット、イッセーはまた狙われるかな?」
「さあな、1つだけ言える事は、どちらにしろそいつはまともな生活を送れなくなるって事だ」
「そうか……」
渡は決心のついた表情を浮かべる。
「俺、戦うよ。大切なモノの為にーーーー俺の心に従って!」
**********
「………………」
「渡、確かにお前は友達を傷つけた。しかし”それだけ”か?お前はそれ以上に、人の命を救ってきただろう」
「リリス……俺は…」
「お前が最初に変身した時の言葉………何だったから聞かせてくれ」
「今……消えかけてる命を守りたい!」
「それでいいんだ」
リリスは渡を更に強く抱き締める。
「お前が聞いた声は、お前の『心の声』だ。お前がそうしたいという想いが、お前自身に語りかけていたんだ」
♪〜〜♪〜
その時、再びブラッディ・ローズが鳴る。
「キバット!」
渡はキバットを呼ぶ。
その顔は、覚悟の決まった表情だった。
「よっしゃぁ!待たせやがって!」
キバットも飛び、渡についていく。
「ありがとうリリス!」
そう言って、渡は出て行った。
「さて、グレイフィア」
「はい」
途端に険しい表情となったリリスの側に、グレイフィアが現れる。
「……行くぞ」
**********
「キャァ!」
「ッ、アーシア⁉︎」
外へ出た瞬間、目の前にアーシアが飛んできた。
アーシアをキャッチし前を見ると、そこにはーーー
「エリカ……」
「………」
虚ろな目をしたエリカが立っていた。
「渡…」
プリムラが渡の服を掴む。
「プリムラ、アーシアと一緒に下がってろ」
「渡さん…」
「大丈夫だアーシア。エリカは俺に任せろ」
渡はエリカと向き合う。
「キバ……」
エリカは虚ろな目で渡を見つめる。
「キバ……倒す…キバ……倒す」
壊れた玩具のように、ただその言葉を繰り返すだけ。
「操られているのか…エリカ」
《レ・ディ・ー》
「キバ……倒す…」
《フィ・ス・ト・オ・ン》
イクサに変身したエリカが、戦闘態勢に入る。
「来いエリカ、俺が全てを受け止めてやる」
過去編終了!
どうだったでしょうか⁉︎
そして渡復活と同時に洗脳されたエリカが立ちはだかる!
次回をお楽しみに!