ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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22話 スタンドアップ・その声の主とは

「会長、あれ」

 

「んん?」

 

生徒会長の視線の先には、キバに変身した渡が立っていた。

 

「へぇ、ゴミのクセに面白そうな物を持ってるんだなぁーーーー不愉快だ、殺せ」

 

生徒会長はメンバーの1人に指示する。

生徒会はコクリと頷い、ニヤニヤと笑いながらキバに近づく。

 

『お前、イッセーを殴った奴だな』

 

「ああ、そうだな。あの時はウケたぜ!ゴミだと思ってたら、本当にゴミの様な吹っ飛び具合だったからなぁ!軽い軽い!ハハハハハハハハハハ!」

 

『許せない…‼︎』

 

「調子こいてんじゃねぇぞ!ゴミのクセに!フンッ!」

 

その時、生徒会のオーラが格段に上がる。

 

「どうだ!俺は『強化』の魔術で魔力、身体能力を向上させられるんだ!さらぁに!」

 

生徒会の両手に、赤い籠手が現れる。

 

『「龍の手」か』

 

「そうだ!ありふれた神器だが、『選ばれた者』である俺が使えば!」

 

生徒会の力が更に上がる。

 

「どうだ!この状態なら巨大オークも簡単に倒せる!」

 

『………』

 

「怖くて声も出ないかぁ?ギャハハハハハハハーーーー」

 

「「「「「え?」」」」」

 

その時、生徒会の姿が消えた。

 

「あ、あそこ…」

 

生徒会の1人が天井を指差すと、そこには一瞬の内にボコボコに殴られた生徒会が、天井にめり込んでいた。

 

ガラガラ……ボゴッ。

 

ヒュルルルル………ドスンッ!

 

暫くして天井が崩壊し、生徒会は重力に引っ張られ地面に叩きつけられた。

 

「お、おい……冗談よせよ」

 

生徒会の1人が、倒れた生徒会に向かって言う。

 

「………」

 

「俺達は『選ばれた者』だぞ⁉︎なのに『選ばれなかった者』に負ける訳ねぇだろ!おい!」

 

「………」

 

「悪ふざけはもういいんだよ!さっさと立って、そいつ殺せよ!」

 

幾ら話しかけても、全くの無反応。

 

「何やってるんだよ」

 

そんな中、生徒会長だけは平然としていた。

 

「『選ばれなかった者』に負けたあいつは、『選ばれなかった者』という訳だ。何をしている、さっさと殺せよ」

 

「は、はい!」

 

そう言って生徒会の一人は斬りかかって来るが、

 

『遅い』

 

剣を弾きそのまま相手を蹴り飛ばす。

 

「この、ゴミのクセに!周りこんで同時に攻めろ‼︎」

 

敵は5人、それぞれキバを囲む様に並ぶ。

 

「喰らえ!」

 

「死ね!」

 

生徒会の2人が同時に炎と風の魔術を放つ。

2つの魔術が合わさった炎の竜巻が、キバを襲う。

 

「ハッ!『選ばれた者』に楯突くからこうなるんだ!」

 

勝利を確信した矢先、炎の竜巻から勢いよくキバが現れ、殴り飛ばされる。

 

「へ?ーーーーーー」

 

隣にいた生徒会も気づいた頃には腹に拳を入れられ、血反吐を吐きながら倒れる。

 

「かかれ!反撃を許すな‼︎」

 

その光景を見た生徒会が一斉に襲ってくるが、そのくらいじゃ怯まない。

 

『ハァッ‼︎』

 

横払いの回し蹴りで、同時に2人を仕留める。

 

『ッセァ‼︎』

 

腰を捻って繰り出したパンチを、生徒会の顔面に思い切り放った。

 

「ラストだ渡!」

 

最後の1人を、踵落としで地面に叩きつけた。

 

『最後はお前だ』

 

「中々いいものを見せてもらった」

 

下衆な笑みを浮かべた生徒会長が、パチパチと拍手を送る。

 

「おめでとう。君を『選ばれた者』と認めよう。さぁ、僕の手となり足となり、一生を僕の為に費やすんだ。そうすれば最高の生活を約束しようじゃないか」

 

生徒会長は依然下衆な笑みを浮かべながら語る。

 

『断る。お前みたいな下衆に仕える気は毛頭無い』

 

「そうか…残念だね…………死ね」

 

刹那、生徒会長は魔力の玉を発射する。

当たれば充分相手を殺せるレベルだが、キバは片手で防ぐ。

そのまま突撃し、生徒会長の下衆顔に向かって拳を放つ。

 

ガンッ‼︎

 

が、キバの一撃は奴には届かず魔法障壁によって防がれた。

 

「『選ばれた者』に対して無礼なんだよ!ゴミが‼︎」

 

『お前はそれしか言えないのか……‼︎』

 

キバは魔皇力を高めて拳に力を入れる。

 

バリィィィンッ‼︎‼︎

 

「何ッ⁉︎ブベラァ⁉︎」

 

魔法障壁は破れ、そのまま生徒会長の顔面を殴り飛ばした。

 

「ち、血を⁉︎『選ばれた者』である僕に血を流させたな⁉︎」

 

『血も流した事もないのか』

 

「黙れ!高貴で崇高なる僕が血を流すなんて事はあってはならないんだ‼︎‼︎」

 

魔力弾を放とうとするが、その前に突き出された手を握り潰す。

 

ボギャッッ‼︎‼︎‼︎

 

「ギャァァァァァァァァァアア⁉︎⁉︎⁉︎そんな!『選ばれた者』である僕がお前みたいなゴミに負けるハズないのに!」

 

 

生徒会長は折られた腕を抑えてのたうち回る。

 

「僕は将来を有望視された魔術の名門貴族だぞ!だからお前らみたいなゴミを管理するのが僕の使命なんだ!僕は『選ばれた者』なんだ!なのに何でお前は僕を見下してんだよ!」

 

『黙れ』

 

「ウブッッッッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

泣き喚く生徒会長の腹を思い切り殴り飛ばし、倒れた生徒会長を見下ろす。

 

「や、やめてくれ‼︎何でもする。金か?土地か?女か?幾らでもくれてやる‼︎だから命だけは‼︎」

 

生徒会長は必死に命乞いを始める。

 

『分かった。命までは取らない。だがもう俺達の前に2度と顔を見せるな。それと、お前らがやって来た悪行を公表しろ。それでお前の命は見逃してやる』

 

「するする‼︎約束する‼︎」

 

生徒会長は必死の形相で首を振る。

キバは振り返りイッセーの元へと向かう。

生徒会長の口の端が釣り上がるのを横目で見ながら。

 

「馬鹿が‼︎簡単に騙されやがって‼︎これでお前終わりだぁ‼︎」

 

ボギッ‼︎‼︎

 

「え?嘘……ぎゃぁぁぁぁぁぁあ⁉︎」

 

突き出された折れてない反対の手を握り潰す。

ありえない方向に曲がった両手を見て絶叫する生徒会長。

 

「た、助けて…‼︎もう、もうしない!だから…!」

 

『慈悲はもうやった。それを無駄にしたのはお前だ』

 

無情の言葉と共に、腰のベルトから"フエッスル"を取り出す。

 

「Wake Up!」

 

キバットにウェイクアップフエッスルを吹かせ、魔性の音色を奏でる。

 

瞬間、世界は『キバの世界』となる。

 

夜空は更に黒く塗り潰され、星も雲も消え、あるのは暗黒の空に輝く三日月ただ1つ。

 

「フッ!」

 

キバが右脚を天に上げると、キバットが右脚の周りを旋回する。

すると、封印の鎖・カテナが飛び散り、力が解放される。

蝙蝠の翼を象った扉、『ヘルズゲート』が完全に開放される。

そして、片足だけで空に飛び上がった。

 

「僕は『選ばれた者』なのに!僕は崇高なる存在なのに!何で…何でだよぉぉぉぉぉぉぉおおお‼︎‼︎‼︎」

 

生徒会長の断末魔の叫びが暗黒に響く。

 

キバは一瞬逆さになるように回転すると、強大な力を纏わせて、右脚を生徒会長に向け、『ダークネスムーンブレイク』を喰らわせた。

 

「ひ!イィィィヤダァァァアア‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

瞬間、生徒会長の倒れた地面にキバの紋章が地面に刻まれた。

 

 

戦いが終わり、渡は気を失っているイッセーを見つめる。

 

「……キバット、イッセーはまた狙われるかな?」

 

「さあな、1つだけ言える事は、どちらにしろそいつはまともな生活を送れなくなるって事だ」

 

「そうか……」

 

渡は決心のついた表情を浮かべる。

 

「俺、戦うよ。大切なモノの為にーーーー俺の心に従って!」

 

 

**********

 

 

「………………」

 

「渡、確かにお前は友達を傷つけた。しかし”それだけ”か?お前はそれ以上に、人の命を救ってきただろう」

 

「リリス……俺は…」

 

「お前が最初に変身した時の言葉………何だったから聞かせてくれ」

 

「今……消えかけてる命を守りたい!」

 

「それでいいんだ」

 

リリスは渡を更に強く抱き締める。

 

「お前が聞いた声は、お前の『心の声』だ。お前がそうしたいという想いが、お前自身に語りかけていたんだ」

 

♪〜〜♪〜

 

その時、再びブラッディ・ローズが鳴る。

 

「キバット!」

 

渡はキバットを呼ぶ。

その顔は、覚悟の決まった表情だった。

 

「よっしゃぁ!待たせやがって!」

 

キバットも飛び、渡についていく。

 

「ありがとうリリス!」

 

そう言って、渡は出て行った。

 

「さて、グレイフィア」

 

「はい」

 

途端に険しい表情となったリリスの側に、グレイフィアが現れる。

 

「……行くぞ」

 

 

**********

 

 

「キャァ!」

 

「ッ、アーシア⁉︎」

 

外へ出た瞬間、目の前にアーシアが飛んできた。

アーシアをキャッチし前を見ると、そこにはーーー

 

 

 

 

「エリカ……」

 

「………」

 

虚ろな目をしたエリカが立っていた。

 

「渡…」

 

プリムラが渡の服を掴む。

 

「プリムラ、アーシアと一緒に下がってろ」

 

「渡さん…」

 

「大丈夫だアーシア。エリカは俺に任せろ」

 

渡はエリカと向き合う。

 

「キバ……」

 

エリカは虚ろな目で渡を見つめる。

 

「キバ……倒す…キバ……倒す」

 

壊れた玩具のように、ただその言葉を繰り返すだけ。

 

「操られているのか…エリカ」

 

《レ・ディ・ー》

 

「キバ……倒す…」

 

《フィ・ス・ト・オ・ン》

 

イクサに変身したエリカが、戦闘態勢に入る。

 

「来いエリカ、俺が全てを受け止めてやる」

 

 




過去編終了!
どうだったでしょうか⁉︎
そして渡復活と同時に洗脳されたエリカが立ちはだかる!
次回をお楽しみに!

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