「なん……ですって…‼︎⁉︎」
グレイフィアは人生で一番、驚愕した。
翌日、渡は結菜が自分の眷属になった事を明かした。
それを聞いたグレイフィアはフルフルと震えていた。
「な、何という事でしょう…まさか『キバの鎧』にそんな素晴らしい機能があったなんて…でしたら渡様、私グレイフィア・ルキフグスは、渡様の『女王』に立候補させていただきます。悪魔として経験豊富な為、必ず貴方様のお役に立てるでしょう!」
グレイフィアは凄い顔で渡に迫る。
「い、いやグレイフィア?あの時は仕方なくてだな。状況が状況だったからであって、俺は眷属を揃えようと思ってない」
「何をおっしゃいますか!いつどこで、愚かな輩が『キバの鎧』を狙ってくるかわかりません。ならば眷属を多く備えていた方が得策かと!」
是が非でも渡の眷属になりたいグレイフィア。
「最近、グレイフィアが”残念化”してきたなー」
そんなグレイフィアを見ながら、紅茶を啜るリリス。
「で、眷属になった感想はどうだ?結菜」
「別に、何も変わらないわよ…ただ」
「ただ?」
「……トドメの時、あれ一体何だったのよアホ蝙蝠!」
「さぁ〜てぇ、何の話だろうな〜」
キバットはシラけて、飛び交う。
「中々、色っぽい声出てたぞぉ?」
「うっさい黙れー!」
「また喧嘩が始まった」
「さて、バカアホ2人はほっといて《ピンポーン》お、キタキタ」
「誰が来たんだ?」
リリスは扉を開け、そこにいたのは
「喜べ渡、今日からここにホームステイする、アーシア・アルジェントだ」
「よ、よろしくお願いします」
「何でだーーーーーー⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
そこには大きな荷物を背に立っているアーシアがいた。
「それはね渡君」
端からひょっこりとエリカが現れる。
「色々あって、アーシアがこの町に住めるようになったの。だけど、私は一人暮らしが大変で…それでリリーさんに相談したら、オッケーを貰ったの!」
確かに、元々この屋敷の主人はリリスであるのだが。
「今まで内緒にしてたな?」
「よかったな〜渡。ハーレム要因がまた1人増えたぞ?」
「ハーレムなんて目指してない」
こうして、家族が1人増えたのだった。
**********
「はぁ、また学校で虐められるな」
ため息をつきながら、買い物を袋にいれて帰宅している渡。
「………?」
ふと、渡の視界に気になる少女が目に入った。
ゲーセンの中にあるクレーンゲームを覗く薄紫のツインテールの少女だった。
ポチポチとボタンを押して、中の猫のぬいぐるみを物欲しそうに眼差しを向けていた。
少し気になり、ゲームセンターの中に入って声を掛けてみた。
「金を入れないと、ゲーム出来ないぞ?」
「………」
ツインテールの少女は渡に顔を向けてくる。
一目見ただけで無感情そうな子だと認識した。
だが、気になるのは彼女から感じるこの異様な魔力。
ただの悪魔ではない事は分かった。
魔力が膨大すぎて不安定な状態だ。
それこそ、何かの拍子に暴走してしまったら、この町が消滅することは間違いない。
(親はいないのか?引き取った方がいいのかな?)
「悪魔なら魔王に問い詰めた方がいいんじゃねーの?こんな不安定な状態を放っておいたらどうなることやら」
渡のカバンからキバットがひょっこり現れる。
「お前、一人か?」
「・・・・・」
少女はコクリと頷いた。
(好都合な事だが……幼女誘拐と捉えられないよな?)
(安心しな、キバっていけ!)
「じゃあ、一緒に家に来るか?お前の保護者を見つけるまで家に泊らせるけど・・・っと、俺の名前は暁 渡だ」
自己紹介をした。
すると、意外な事に。
「ワタル?」
「ああ、お前は誰なんだ?」
「………」
尋ねると、顔を俯いた。
そして、少女は顔を上げて口を開いた。
「……ネリネ、知ってる?」
意外な人物の名前が出てきた。
「ネリネの知り合いか?」と、首を傾げて問うてみた。
そしたら、
「ワタル」
徐に抱きついてきた。
「えっと……」
「やっと、見つけた…ワタル」
(……これ、どうしろと?)
(連れて帰るべきじゃね?)
キバットにそう言われる始末。
(まあ、俺を知っているようなら問題ないだろう)
「んじゃ、一緒に帰るか?」
「うん」
謎の少女は頷いた。
了承を得たことで彼女を引き連れて家に帰路に着く。
**********
「ただいまー」
「「「「おかえりー‼︎‼︎」」」」
帰ると、シア、ネリネ、ユーストマ、フォーベシイが迎えていた。
「こ、こんな所で…皆んな何やってんの?」
「ご近所の親睦を兼ねて、ティーパーティーという話になったんです」
「皆さん、渡さんをまってたんですよ?」
ネリネとアーシアが答える。
「そうそう、”リリー”殿と一緒に酒を飲みながらな!」
「いやはや、美しい保護者だね」
「まぁ、お上手♪」
そう言ってユーストマとフォーベシイはリリー…元いリリスに酒を注ぐ。
(完全に、催眠をかけられてるな…)
「おや、可愛らしいお客さんを連れてきているね〜。その子は……」
フォーベシイが少女よ顔を見た途端、表情が凍る。
「プリムラッ⁉︎」
フォーベシイだけでなく、ネリネ、シア、ユーストマも驚愕している。
「何故、ここに…?」
「あの、何かネリネの知り合いだったみたいだから…」
「リムちゃん…どうして?」
「会いに…来た……ワタルに、会いに来た」
「へ?俺?」
「どんな人なのか…ずっと、話聞いてたから…」
「えっと、プリムラは近所に住んでた子でねぇ。人見知りが激しいけど、ネリネちゃんには懐いていたんだ」
フォーベシイがぎこちなく説明する。
「という事は…冥界の?」
しかし渡はこの時、疑問に思った。
「ちょっと待ってくれ、膨大な魔力を制御できていなく不安定な状態な娘をですよ?そんな娘を町中に一人で出歩かせて、もしも暴走して町を消滅してしまったらどう責任を取るんだ?」
「あ、あの〜、何で魔力の事を知っているのかな?」
「俺が悪魔と人間のハーフだって気づいてるでしょうに。ていうか、話を折らないでください」
「そ、それはだな………」
ユーストマが冷や汗を流して渡から視線を逸らす。
当のプリムラはシア、ネリネと話しをしている。
観念したかのようにフォーベシイが口を開く。
「彼女はね。私達、冥界と天界が共同して無から創りだした人工生命体なんだよ」
「人工……生命体?」
とんでもない単語が出てきて一瞬、思考が止まる。
その後は驚愕の真実の連発だった。
まず、ネリネは自分の持つ強大な魔力に身体が耐えられず、幼い頃から頻繁に体調を崩していた。
魔力強化の実験の為に作られた人工生命体の1人でありその2号体で、存在している悪魔の細胞を強化培養して作り上げた別人格、ネリネのクローン、リコリスが生まれた。
その存在はネリネとして扱われ、魔王の娘がその身体を持って実験に協力するという冥界全体への宣伝材料に使われていた。
しかし天界、冥界でもクローン技術は不完全なものであり、ただでさえ寿命の短かったリコリスは、 無理な実験によって更に寿命を奪われてしまい、最期の願いとしてネリネとの同化を望み、 ネリネはその生命力を貰う事により魔力を制御できるようになり健康な身体を手に入れた。
話しを聞いた渡…リリスとグレイフィア、結菜は絶句した。
信じられなく、視線をネリネに向けば、重々しく頷いた。
「プリムラは3号。リコリスちゃんはプリムラの前に生まれたクローンだ。ネリネちゃんのDNAによって生まれた人工生命体2号としてね」
「因みに1号は、当時の冥界と天界はそこまでの技術を発展していなかった。だから、無理な強化と実験によって耐えきれず、爆発を起こしてその研究所は消滅した」
渡はリリスに向かって視線を送る。
(知ってたか?)
(いいや。恐らく、私が冥界から姿を消した後の話だろうな)
「じゃあ、プリムラは何だ?」
「失敗した二つの研究を見直し、改めて創り出したのがプリムラだ。プリムラは無から創りだした奇跡の産物だ」
「当然、無から有を創りだすことは不可能。聖書の神じゃないとできないことだ」
(「わー、さすが神」って顔してるな、渡。けど死んでるんだよな〜神は)
「だがな、いくつもの失敗といくつもの偶然、そしていくつもの奇跡。それがたまたま綺麗に混ざり合って天文学的数字の確立を拾った。つまりだ。プリムラってのは奇跡の具現化。もう一度作ろうとしたって絶対にできねぇ、替えのきかないたった一人の実験体なんだよ」
「本当は冥界のとある施設で育てていたはずなんだけどね。とりあえず、彼女を冥界に帰す手続きをしないと」
「いや……ここに残る」
フォーベシイの言葉にプリムラが拒否した。
そんな拒否の言葉に周りの皆は驚く。
「ここに住む」
「プリムラ、帰らないといけないよ」
「ここに住む」
頑になってプリムラは拒み、この家に住みたいという。
どうしたものかと、悩んでいたらユーストマが溜息を吐いた。
「そう言いだしたらもう、止められねえな」
「だね。仕方がないかな」
続いてフォーベシイもユーストマの言葉に同意したかのような発言をした。
「仕方がないってどういう事ですか?」
「どうだね?渡ちゃん」
「どうだね?って言われてもな……」
プリムラを視界に入れる。
次にリリスへ視線を変える。
「構わん」
了承をもらった。
「じゃあ一緒に住むか」
「うん」
そして、もう1人家族が増えたのであった。
**********
「これは………」
その頃、アーシアは渡の持っていたカバンを収めようとして…
「あーーーーーっ」
その中に入っていたキバットを見つけてしまった。
「えっと、あの時の蝙蝠さんですよね?」
「オウ、オレサマハキバットバットIII世ダゼ」
脂汗だらだらのキバットは答える。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!出るタイミング間違えたー!)
「おーい、アーシアー。プリムラの親睦会やるから……」
アーシアを探していた渡は、その光景を目にした。
「渡………さん?」
「キバット?」
「お、おぅーい渡ぅ〜…バレちった☆」
ガシッ!
「ダークネスムーンブレイク!」
ガッシャァァァァァァァアアンッッッ‼︎‼︎‼︎
「オボアァッ‼︎‼︎‼︎」
キバットを鷲掴みにし、家具に投げつけた渡。
「どうしたの渡君⁉︎」
「いいや何でもない!先食べてて!」
シアにそう言い聞かせ、アーシアとキバットを持って一室に入る。
「ねぇキバット、言ったよね?バレないようにしろって。何でバレてんだよ。しかもアーシアに。バレちゃっとよ。しかもアーシアに。「俺様を信じろ」って言ったの誰だっけ?君だよねお前だよね?キバット・バットIII世様?なぁ相棒、最近警戒心緩くないか?喝入れようか?なぁ?さっきより強いの行こうか?ああ?」
メリメリメリとキバットを鷲掴みにする渡。
「落ち着け渡!力入れてもお前の力じゃ全然痛くねぇっての!」
「おっと、相棒。俺の心はガラスだぜ?」
「あの…渡さん」
アーシアが渡に呼びかける。
ギギギ…っと、気まずそうな表情を浮かべる顔を向ける渡。
「渡さんが……キバだったんですね」
「ウン、ソウダヨ」
「「破局だ」」と、渡とキバットは思った。
しかし、
「ありがとうございます!」
アーシアは渡に頭を下げた。
「「へ?」」
訳が分からず、目を点にする。
「あの時、私やイッセーさんを救ってくれたのが渡さんだったんですね。自分の正体を隠してまで、他人である私の為に…本当にありがとうございます!」
((天使だあああああああああああ‼︎‼︎‼︎))
2人は心の中で落涙する。
(天使だ!本物の天使が舞い降りた!)
(ああ〜、あの首筋にガブッといきて〜)
渡は気を取り直し、アーシアの両肩に手を乗せる。
「アーシア、俺がキバだって事は内緒にしてくれ」
「はい、分かりました」
アーシアも曇りのない眼差しで言う。
「イクサっていうのが、俺を狙ってるからな。正体を知られたらどうなるか…」
「………へ?」
その時、アーシアはエリカに言われた事を思い出す。
『アーシア。私がイクサだって事は他言しないでね。キバを倒す為になるべく正体は伏しておきたいの』
(あれぇ?渡さんがキバで、エリカさんがイクサで、エリカさんはキバを倒そうとして、でもエリカさんはキバの正体の渡さんと友達で、でもお互いの正体を知らなくて……あわ、あわわわわわわわ‼︎‼︎)
「よし、じゃあ皆んなの所に行こうか!」
(主よ!これも私の試練なのですか⁉︎)
一気に詰め過ぎでしたでしょうか?
プリムラの登場にネリネ、リコリスの真実。
そしてアーシアに正体がバレる。
感想をお待ちしています!