ハイスクール KIVA   作:寝坊助

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10話 ブルーウルフ・青き獣の騎士

キバ達は祭壇の下にある階段を見つけその奥にある扉をバンッ!と勢いよく開く。

 

其処には大勢の悪魔祓い達の奥にそびえる巨大な十字架。

その傍にレイナーレ。

そして、その十字架に張り付けにされたアーシア。

 

「アーシアァァァァァア‼︎‼︎‼︎」

 

イッセーがアーシアの名前を叫ぶ。

 

「いらっしゃい、悪魔共…そしてキバ」

 

レイナーレが下衆な笑みを浮かべて見下す。

しかし、そんなものは気にせず、アーシア救出に即行動を移した。

キバに続いてイッセー、木場、小猫が走り出す。

 

「キバめ!滅してくれる!」

 

一番近くにいた悪魔祓いが斬りかかって来た。

僅かに体を右にずらし、その一撃を避け、右拳を悪魔祓の腹に叩きんだ。

 

ドガシャァァァァァァァアアン‼︎‼︎‼︎

 

その悪魔祓いはもの凄い勢いで吹っ飛び、頭から壁に突っ込んだ。

 

「「「「なっ!?」」」」

 

吹っ飛んだ悪魔祓いを見て驚愕する残りの悪魔祓い達。

 

「やっぱ強え〜」

 

「今だけ敵じゃなくて良かったよ」

 

「今だけですけど…というか、勝ち目なさそうです」

 

3人が苦笑いを浮かべているが、無視して進む。

向かって来る悪魔祓い共を殴り、蹴り、吹き飛ばす。

 

イッセー達も混ざり大混乱に。

 

「ふん、無駄な足掻きよ。さぁアーシア、その神器を私に……へ?」

 

そのにはもうアーシアはいなかった。

 

「ど、何処へ⁉︎あんな非力な娘が鎖を壊して逃げるなんて事………あーー!」

 

 

 

 

「んしょ、んしょ」

 

そこには、キバットがアーシアの服を噛みながら飛び、救出していた。

 

「あいつ…そう言えばずっとベルトからいなかったな」

 

教会に入る前、キバは予めキバットに命じていたのだ。

「自分達が戦っている間にアーシアを救出しろ」と。

キバットの翼は鋭く、そこら辺の鎖なら簡単に斬り裂ける。

 

「あ、あの〜…重くないですか?」

 

「おう!大丈夫だぜ!しっかし軽いな〜、ちゃんとメシ食ってる?」

 

『いらん事言うな』

 

「あちょ、待…Wake、up!」

 

キバットはテンパりながらも右脚の封印の鎖・カテナを外す。

 

『ハァーーーーーーーッ‼︎‼︎‼︎』

 

「ヒッ!い、イヤアアアアアアッ‼︎‼︎‼︎」

 

『ダークネスムーブレイク』がレイナーレに直撃し、壁に叩き込んだ。

 

ドォォォォォォォォンッ‼︎‼︎

 

レイナーレは壁に激突し、動かなくなった。

 

「アーシア!」

 

遮る物を全て蹴散らしたイッセーはアーシアの元へ向かった。

 

「ほらよ、もう歩けるな」

 

「はい、ありがとうございます!蝙蝠さん!」

 

「蝙蝠さんじゃねぇ、キバット・バットIII世だ」

 

そんな和やかな状況の中、レイナーレはズルズルと這いずりながら、ある物を手に取る。

 

「殺す!殺してやるわ!アーシアももういらない!全員死ねばいいのよ!」

 

「ん?ちょ、あんた何して…」

 

結菜が先に気づき、声を上げる。

レイナーレは構わず、手に取った注射器を体に突き刺す。

 

「お!おおおおお……‼︎‼︎」

 

注射器の液体がレイナーレの中に入ると、レイナーレの力が何倍にも膨れ上がる。

 

「い、一体何が…!」

 

木場達は警戒する。

 

 

 

ボゴッ!

 

「「「「「「ッ⁉︎⁉︎⁉︎」」」」」」

 

その時、レイナーレの顔が大きく膨れ上がった。

 

ボゴボゴボゴボゴ……‼︎‼︎

 

「あ、あ゛…ぁぁ!ち、ぢがら゛が…あぶれ…ぴぶ!おお!」

 

レイナーレの体はドンドン大きくなり、背中から4本の腕が生え計6本に。

羽は巨大になったがボロボロで飛べるようなものではないが、不気味な雰囲気を出す。

足は蛇、体は毛むくじゃら、口は裂け、目が4つに増える。

 

「オエッ…!」

 

「こいつはヒデェ!」

 

「醜い」

 

「気持ち悪い…」

 

「何て……」

 

『グレイフィアの言っていたのはこれの事か』

 

「らしいわね」

 

その姿にイッセーとキバットは吐きそうになり、木場と小猫は吐き捨て、アーシアは震え、キバと結菜は警戒する。

 

「ビギョォォボビャギィィィィイ‼︎‼︎‼︎」

 

レイナーレ"だった"怪物は意味不明な奇声を上げ、襲い掛かる。

 

「避けて!」

 

『っ!』

 

「へ?きゃ!」

 

結菜の指示と共に、キバはアーシアを担いで飛ぶ。

イッセー達も無事、回避した。

 

ドガァァァァァァンッ!

 

キバのいた場所で爆発したような轟音が鳴り響く。

 

「ギィィィィィィ‼︎ピピピピピピピ!アキュボゴーボゴーボ‼︎‼︎」

 

「声すら上げられないなんて…相当とんでもない物を射ったに違いないわ」

 

『ハァッ!』

 

無防備な背中に向けて蹴りを放つキバ。

捕らえたと思った瞬間、

 

シュバッ!

 

『えっ⁉︎』

 

怪物が消える。

しかし、すぐ後ろに気配を感じて

 

「ギュギョオオオオオオボボボボボボ‼︎‼︎‼︎」

 

『くッッ⁉︎』

 

腕を交差させてその一撃を受けきる。

怪物は更に6本の腕でキバを袋叩きにする。

 

「放せッ‼︎‼︎」

 

ザシュッ!

 

「グェァッ!」

 

結菜が爪で怪物の目を斬り裂き、激痛に苦しむ隙を見てキバは距離を取る。

 

「渡、無事?」

 

『く、ぐぅ……』

 

怪物はイッセー達に任せて、結菜はキバを安全な場所に運ぶ。

 

「あのバケモンヤバイぜ。どうすりゃいいんだ?」

 

キバットがキバに問う。

 

『はぁ、はぁ…やるしか…ないだろ…俺が、やらなきゃ』

 

そう言ってキバが立ち上がる。

 

「………」

 

そんなキバを結菜はただジッと見つめていた。

 

「方法はあるわ」

 

『何?』

 

結菜はキバのベルトにある透明な笛を指差す。

 

「それを使って、私を『キバの眷属』にして」

 

「おお!その手があったな!」

 

『ちょ、ちょっと待て!何だよ『キバの眷属』って。そんなの知らねぇぞ⁉︎』

 

「リリスが昔、予め私に教えてくれたんだ」

 

『あんにゃろう』

 

キバは自分の保護者の秘密主義に、頬をピクピクさせる。

 

「よく聞いて。そのフエッスルは、他種族をキバの眷属にして、その眷属の力を使う事ができるの」

 

元々、『悪魔の駒』はフェッスルを元に作られた物なのだ。

 

『でも、眷属って事は…結菜は俺の部下になるって事か?待て待て!俺は王様なんかの器じゃない!』

 

「何言ってんだよ、キバになってる時点でお前は立派な王様さ」

 

「アホ蝙蝠の言う通り、それに…」

 

すると、結菜はキバに対して頭を垂れる。

それこそ、王に仕える『騎士』のように。

 

「貴方は昔、たった1人孤立ていた私の気持ちを理解してくれた。そんな貴方の為なら、喜んでこの命、渡……いや、我が主『キバ』に捧ます」

 

『結菜…』

 

「決めんのはお前だぜ、渡」

 

『……ああ』

 

キバはフェッスルの1つを手に取った。

 

『キバ、暁 渡の名において命ず。汝、青盛 結菜よ。我を守護する者として『騎士』へと変わることを命ず』

 

その瞬間、フェッスルから光の粒子が現れ結菜を包む。

その粒子は数秒程、結菜の周りを漂うとフェッスルに戻る。

粒子が戻ったフェッスルは、狼の頭部を模している青いフェッスルとなった。

 

 

**********

 

 

「ギビビビビビビ!アギャハギャハギャハ!」

 

怪物は奇声を上げ暴れ回る。

 

「イッセー君!一旦、避難しよう!」

 

「部長達と合流して、それから作戦を立てましょう」

 

イッセーは木場も小猫の忠告に首を縦にふる。

 

「ダメだ!今こいつを野放しにしたら街で暴れるかもしれないだろ!」

 

「でもどうすれば……ッ!」

 

その時、怪物がアーシアに向かって襲い掛かる。

 

「きゃぁぁぁぁあ!」

 

「アーシアァ!」

 

『ハッ!』

 

間一髪の所で、キバがアーシアを助ける。

 

「あ、ありがとうございます」

 

キバはアーシアを避難させ『ガルルフェッスル』を取り出す。

 

「よし!新しい力だ!」

 

キバットはそれをキバから受け取り、

 

「『ガルルセイバー!』」

 

辺りに笛の音が響いた。

 

「アアアアアアアアアアアアア‼︎‼︎‼︎ギャァァァァァアア‼︎‼︎‼︎」

 

『アォォォォォンッ!』

 

ドガッ!

 

「ギャブッ⁉︎」

 

突如現れた光に吹き飛ばされてしまう。

光の正体は結菜が変身した彫像。

キバは左手を伸ばし彫像を掴む。

すると彫像は形を変えていき、魔獣剣

『ガルルセイバー』に変化した。

 

『アオォォォォォォォォォォッ!』

 

ガラララララララララァッ!

 

ガルルセイバーの遠吠えと同時に、キバの腕に鎖・カテナが巻きついていく。

左腕全てを覆うと鎖は砕け、弾け飛ぶ。

 

現れたキバの左腕は先程までとは違い、蒼い装甲に変質していた。

剣を扱う事に最も適した筋肉構造に変質している。

 

そして次に胸が鎖で覆われ、同じように弾け飛んだ時には同じように蒼く変質していた。

 

キバットの目も青く変色し、最後に一瞬だけ結菜の幻影が現れ、キバに吸い込まれるように消えると、キバの目も蒼く変色した。

 

『ウゥゥゥ…ワァァァァァァァァォォォォォンッ!』

 

超高速形態『ガルルフォーム』。

 

変身したキバの野生が目を覚ます。

大地を揺るがすような雄叫びを上げ、右手を地面に触れ、戦う本能に従う獣の如く、怪物に向かっていった。

 

「ッ⁉︎」

 

怪物の目の前には超高速で移動したキバがいた。

 

『ガァァァァァァッ!』

 

ザザザザシュッ!

 

「グギャ…!」

 

怪物の体に無数の斬り傷が現れる。

怪物は方向を変え、逃げ出そうとするが、

 

『ガァァァァッ!』

 

またもや前にいたキバに斬り刻まれる。

 

キバが何体もいるのではない。

神速のスピードで怪物の目の前に回りこみ、斬り刻んでいるのだ。

 

「いっけーわたr…じゃなくてぇ、キバ!」

 

『ガウァァァァァッ!』

 

ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!

 

「グエギャァァァァァァァァッ!」

 

怪物の足をキバは斬り裂き、怪物は地面に倒れこむ。

 

 

 

 

怪物…レイナーレにとって全て遅かったのだ…本当に命が欲しかったなら、もっと早く逃げ出さなければならなかったのだ。

 

下級なのに見栄を張って、

 

(助けて!助けて!)

 

弱い癖に見下して、

 

(ごめんなさい!ごめんなさい!)

 

そして欲望の為に仲間を見捨てて、

 

(誰か…誰かいないの⁉︎)

 

更には力と引き換えに、『大切な何か』を捨てた。

 

(こんな醜い姿嫌ぁ‼︎)

 

「ギキュゴボギギャァァァァア‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

イッセー達は理解した。

今、怪物が発しているモノは悲鳴だと。

いる筈のない仲間に助けを呼んでいるのだ。

 

「グギュゥゥゥゥゥゥウ‼︎‼︎‼︎」

 

「……今更、何だよ」

 

そんな怪物に対して、イッセーは声を震わせる。

 

「人の恋路を弄んで、命を軽く見て、アーシアを悲しませて…!」

 

イッセーの心に反応し、神器が形を変える。

光が収まった後にはイッセーの左手には赤い籠手のようなものが装着されていた。

 

《Boost!》

 

なんとかして一発ぶちかましてやろうと思っていたイッセーは怪物の顔面近くまで駆け出していた。

そこに思いっきり力を込めて神器が発現した左手で殴りつけた。

 

《explosion!》

 

「ボギャァァァァァァァァア⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

 

そんな音声がイッセーが殴りつけた瞬間、籠手から響き渡り、怪物は一瞬だけ宙に浮いた。

 

「チャンスだぜ、キバ!」

 

キバットは、近づけられたガルルセイバーの刃を噛み付く。

 

「ガルルバイト!」

 

キバットはガルルセイバーに魔皇力を注入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

(あん❤︎)

 

『今さっき、結菜の変な声が…』

 

この瞬間、ガルルセイバーの斬れ味は、数十倍にも増幅される。

 

『ハァァァァッ…!』

 

ガチャッ…

 

『ワオォォォォォォォォンッ!』

 

キバがガルルセイバーを構えると、ガルルセイバーは雄叫びをあげる。

 

雄叫びと同時に世界は再び支配され、『夜』が来る。

 

教会の中だというのに、周囲が草むら、天井が満月の夜空に変化する。

 

その光がスポットライトのようにキバを照らしていた。

 

ガチャン…ガキィィィンッ!

 

キバのマスクの口の部分が開き、ガルルセイバーの柄に噛み付く。

 

怪物は戦闘を放棄して、その場に棒立ちする。

 

もう、自分にやってくるのが深き『夜』であっても、相対する勇気が本能には無かった。

 

キバは勢い良く飛び上がり、満月を背にし、そのまま怪物に斬りかかった。

 

迫り来る刃は怪物に恐怖を与え、

 

ザシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 

『ガルル・ハウリングスラッシュ』は見事に一刀両断した。

 

その時、狼の幻影が浮かび、遠吠えと共に怪物は消え去った。

 

戦闘が終わり、キバと結菜は分離した。

 

 

**********

 

 

怪物を倒して、リアス達が教会に入ってきた。

するとリアスはイッセーの左手を見て驚いた顔をする。

 

「赤い龍の紋様……今まで見えなかったのに……そう、そういうことだったのね」

 

「部長?」

 

「『赤龍帝の籠手』。神器の中でもレア中のレアよ」

 

「ぶ、ブーステッドギア?」

 

イッセーは首を傾げ、ガルルは驚愕の表情を浮かべている。

 

「極めれば神すら殺せる神滅具……か」

 

「人間界の時間にて十秒ごとに自身の力を倍にしていく力。初めはそれほどでも無いけど、倍加の能力に際限は無いからやがてはどんな所有者でも神をも越える力を手に入れられる」

 

「す、すげえ……そんなとんでもない代物が俺の中に……?」

 

「まぁ、倍加には時間が掛かるし、本人も倍加に耐えられる肉体があればの話だけど」

 

「あ、そうですか」

 

それを聞き、イッセーは項垂れる。

話を終え、今度はキバと結菜の方を向く。

 

「御機嫌よう、キバ。そしてキバの眷属」

 

リアスは敵対心剥き出しで話す。

 

「この子達を手伝ってくれたことは感謝するわ。だけど、ここは私の領地。そして、その鎧は冥界の物なの。貴方達を倒して回収させてもらうわ!」

 

『………』

 

キバは片手を上げ、パチンッ!と指を鳴らす。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

 

「な、何だ?」

 

突然、教会が揺れイッセー達が警戒すると、

 

 

 

 

 

 

ドオオオオオオオオオンッ‼︎‼︎‼︎

 

「ゴアアアアアアアアアアアアアッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

「「「「「「ッ⁉︎⁉︎⁉︎」」」」」」

 

天井が崩れ、そこにはキャッスルドランがいた。

 

「ワイバーン⁉︎」

 

「ちょ、デカ⁉︎ていうか城ぉ⁉︎」

 

キャッスルドランは倒れた怪物を口に運び、

 

 

 

 

「食べた……」

 

モグモグモグモグ……ゲップ。

 

「グゥゥ……ゴォォ…!ゴォォ…!」

 

『何か、機嫌が悪そうだな』

 

「ふぅん、何々…

 

『最近、堕天使ばかりで物足りない!』

 

だとよ」

 

キバットが翻訳する。

 

『そうか、それは悪い、な!』

 

「トアッ!」

 

キバと結菜は跳躍し、キャッスルドランの頭部に立つ。

 

「あ、待ちなさい!」

 

リアスは滅びの魔力を放つが、キャッスルドランに貼られた、対魔力のバリアーによって防がれる。

 

何とか追撃しようとしたが、敵わずキャッスルドランはキバと結菜を乗せて、帰って行った。

 

 

 

 

その光景を、遠くで見つめている者が1人。

 

「『偽りのキング』が…キバを手にするなどと…‼︎」

 

男はキバの姿を見て、怒りを露わにする。

 

「ーーー、まぁいいでしょう。バカな堕天使のお陰で研究のデータは取れました。今は表へ出る時ではない」

 

眼鏡のズレを直し、怒りを収める。

 

「ああ、”キング”。もう時期、貴方の復活が果たされる。冥界を統べるのはカテレアやシャルバのような偽りの王ではない………”真の魔王”は貴方1人でいいのです」

 

 




『ガルルフォーム』初登場!
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