ハイスクール KIVA   作:寝坊助

11 / 76
9話 リメンバー・エリカの戦う理由

一行は教会の扉を開け、聖堂まで走る。

この時点で敵は侵入に気付いている筈、後戻りの選択肢はもう存在しない。

そして聖堂の中へ足を踏み入れる

長椅子と祭壇、頭部が破壊された聖人の彫刻が不気味な雰囲気を醸し出していた

 

「やあやあやあ〜!ご対面!再会だねぇ!感動的だねぇ!」

 

柱の陰から出てきたのは、この前キバが倒した神父フリード。

 

『あいつ生きてたんだ…』

 

「おぉやおや〜!テメェは俺をボッコボコに痛め付けてくれたキバさんとイックサさんじゃあ〜りませんか!しかもそこの雑魚悪魔とご一緒ですか〜!俺としては二度会う悪魔はいないって事になってんだけど!ほら俺、メチャクチャ強いんで悪魔なんて初見で首チョンパ、だったからね〜!でも、お前らが邪魔したから俺のスタンスがハチャメチャ街道まっしぐら!ダァメダァメ〜。人の人生設計をブッ壊しちゃ〜。だからさ、ムカつくんだよ。俺に恥をかかせたクソ悪魔のクズどもとクソ人間がよぉぉおおおおおおおおっ!」

 

「私、ああいう男嫌い」

 

「おい!アーシアはどこだ!」

 

イッセーの言葉にフリードは祭壇を指さす。

 

「んー、そこの祭壇の下に地下への階段が隠されてございます〜。そこから儀式が行われている祭儀場へ行けますぞ〜。お前らブッ殺せば良いから、先に言っといてやりま、アブゥッ⁉︎」

 

その時、イクサがフリードの首を掴んで壁に叩きつける。

 

『……行って』

 

そう言い、イクサは更に進みフリードを掴んだまま壁を突き破り奥の方へと進んでいった。

 

「何だかよく分かんねーが、行くぜ!俺に続けー!」

 

「何で蝙蝠が仕切ってんだよ!」

 

ベルトから離脱したキバットに続き、一行は先に進む。

 

 

**********

 

 

イクサはフリードを壁に叩きつけながら奥へ奥へと進む。

そしてある程度、広い場所に出た所でフリードを地面に放り投げた。

 

「いっっっでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛なぁ!テメェ何すんだごらぁ!」

 

『元教会の同僚としての務め』

 

イクサの声を聞いたフリードの頬がピクリと動く。

 

「おんやぁ〜?君ぃ〜、もしかしてエリカちゃんじゃぁあ〜りませんか?」

 

『正解よ』

 

イクサは顔の方だけ鎧を解除し、素顔を見せる。

 

「久し振りね、フリード

 

「oh〜〜‼︎これはまさかの再開!こんな所で会うなんてねぇ〜、"苛められっ子"のエリカちゃ〜ん」

 

「追放されたって聞いたけど、まさかここにいたなんてね」

 

「きゃははははは!懐かしいねぇ!物覚えの悪い君を苛めたあの日の記憶が蘇ってきたよ〜〜〜ぉぉぉおおあああああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

突然、怒号を上げるフリード。

 

「『イクサシステム装着者認定試験』でテメェが生意気に俺を倒してくれたお陰でぇ!俺はイクサになれなかったんだぞぉぉぉぉお‼︎‼︎それは俺が貰う筈だったのによぉぉぉぉおお‼︎‼︎‼︎」

 

そう、2人はイクサの装着資格を巡り、戦った者同士。

フリードはエリカに負け、その資格を貰えなかったのだ。

 

「それを使ってもっとクソ悪魔を殺殺する俺の夢がYO!あ、そうだー。テメェを殺して犯して奪えばいいんだー。俺様あったまいい‼︎‼︎」

 

そう言って、フリードは光の剣を振るう。

エリカは頭部の鎧を再展開し、受け止める。

1度、2度、3度、4度と何度も斬撃を放つフリードに対して、的確に受け流す。

しかし、それでも後退するのはイクサの方だった。

 

男と女。

力の差は歴然。

幾ら鎧を纏っても衝撃までは無効化できない。

そしてフリードの蹴りがイクサの腹に直撃する。

 

『ガハッ!』

 

イクサは吹き飛び、壁に激突する。

直ぐに起き上がろうとするが突如、フリードの足蹴りが迫り、咄嗟に受け止める。

 

 

 

 

 

 

「『バーストモード』は使わないのん?」

 

『ッ!』

 

『バーストモード』。

それは現在のイクサの状態『セーブモード』で抑えられてい本当のパワーを開放した状態。

システムの全機能を発揮できるが、装着者への負担は大きい。

未熟である現在のエリカにはまだ使いこなせないモードなのだ。

 

「ホント、何で君みたいな凡人がイクサに選ばれたのかねぇ〜」

 

フリードは踏みつけている足をグリグリと捻る。

 

『……』

 

「才能ない癖に美味汁吸いやがってよぉぉぉぉお‼︎‼︎‼︎」

 

ドンドンドンドンドンッ‼︎‼︎‼︎

 

押さえつけられて動けないイクサに、フリードの銃弾が火を吹く。

 

 

 

(ホント……何で私なんかが…)

 

認定試験の時も、自分の意思じゃなかった。

ただ強制参加だったから受けただけ。

「自分なんかがイクサに相応しい訳ない」そう思い、適当に負けようと思っていた。

しかし、何故か勝ち残って才能がどうとかでイクサに選ばれ、『キバ討伐』に向かわされた。

全て自分の思ってもない事態に回る。

 

(あれ?私…何で悪魔祓いになったんだっけ?)

 

エリカはこれまでの自分の人生を振り返った。

 

普通の家庭

 

普通の親

 

普通の学校

 

普通の友達

 

普通の人生

 

殆どの人間が、その普通の人生が幸せだと感じる。

エリカもそうだった。

ずっとこの普通が続けばいいと思っていた。

 

しかし、その日常は悪魔の手によって滅ぼされた。

 

他にもしてないのに、普通に生きてただけなのに…

 

両親を亡くしたエリカは教会の孤児院に引き取られた。

 

そこで流されるままに悪魔祓いになった……

 

 

(いや、違う……もっと、何か理由があった…)

 

神への祈り……下らないと思った。

 

神がいるなら何故、あの時助けてくれなかったのか。

 

神なんて信じても何もならない……神に祈っても幸せにならなかった人は大勢いた筈だ。

 

 

 

(そっか……)

 

そんな人の為に…戦いたかった。

 

何も罪のない人達の為に、人々の笑顔の為に。

 

復讐じゃない。

 

己の為、他人の為。

 

神様なんて信じてない。

 

神の下で行動していない。

 

自分の意思で、もう自分と同じ人間を生みたくないから。

 

認定試験の時、自分の目の前にいる男。

 

フリードの本質に気付いたから吹っ切れたのかもしれない。

 

こと男は"悪"だ。

 

こいつがイクサを手に入れたら傷つく人が大勢出る。

 

この時、エリカはこう思ったのだ。

 

 

 

 

ガッッ‼︎‼︎

 

「ああ?」

 

イクサはフリードの足を掴む。

 

 

 

『こんな奴に、イクサを渡すぐらいだったら……』

 

 

 

「おいお〜い、何俺の足掴んでるんですか〜?離せやゴラァァア‼︎‼︎」

 

 

 

 

『私がイクサになる‼︎‼︎‼︎』

 

《イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ》

 

自分の意思を全て込めた『ブロウクン・ファング』でフリードの顔面を思いっきり殴った。

 

「オゴオァァァァァァアアッッッ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

 

断末魔と共にフリードは遠くの方へ吹き飛ばされていった。

 

「はぁ、はぁ…!」

 

変身を解き、膝をつくエリカ。

 

「何で……忘れてたんだろう」

 

"人を守りたい"。

 

そんな簡単な理由。

 

「…強くなろう……もっと、強く…!」

 




エリカの戦う理由……どうだったでしょう。
感想をお待ちしています!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。