「これがハンバーガーというものですか⁉︎」
「あぁそうだよ、そう言えばアーシアはこういうハンバーガーって初めてなんだっけ?」
翌日、流石に事の収集がつくまで家にいるのは良くないので、渡はエリカとアーシアと共に外を満喫していた。
昼、3人はハンバーガーショップに赴き、ハンバーガーを買い公園で食べていた。
「私ずっと教会にいたのでこういう食べ物も初めてなんです。」
そう言いアーシアはハンバーガーを頬張る。
それがいつも当たり前だと思っていた事でも他の所では食べた事のない人もいる物だと、いやアーシアの場合は教会に拘束されて食べられなかったというのが正しい。
昨日、彼女から聞いた話では彼女は生まれた時から教会に育てられ、神器の力で聖女と呼ばれて人々の為に働いてた。
だがある日、悪魔を助けた事によって魔女と呼ばれて教会から追い出されてしまった。
渡から言わせれば「くだらない」の一言だ。
下らなすぎて、教会への怒りよりアーシアに人として当たり前の幸せを感じさせてやりたいと思ったくらいだ。
そんな考えをしながらハンバーガーを食べると同時に周りからなぜか嫌な気配を感じた。
エリカも、汗を流し警戒している。
「あれっどうしました?」
心配したのかアーシアが2人に問いかける。
だがそれと同時に2人の直感が自然と体を動かせた。
「危ない!」
「えっ?」
アーシアの手を引くと共に後ろへと下がると、そこには光の槍が突き刺さっていた。
「堕天使」
エリカは上空にいる3人の堕天使を睨む。
「あら、今回はキバもイクサもいないようね。残念、この前の仕返しをしたかったのだけど、まぁいいわ。さぁ、その子を渡しなさい」
昨日より態度がでかくなったレイナーレに疑問を抱きながら、渡とエリカは互いに見つめ合う。
((どうしよう、人前で変身はできない…‼︎))
「2人共、俺がこいつらを引き付けるから逃げろ!」
「だ、ダメ!私が引き付ける!だから渡君がアーシアを連れて!」
「女の子が何を言ってんだ!俺に任せろ!」
「大丈夫、多分私の方が貴方より強いから!」
「心はガラスだからな!」
「お願い!私の屍を越えて!」
「いや!俺の屍を越えろ!」
「2人仲良く屍になりなさい!」
レイナーレ達の放った槍が地面に刺さり、土煙が舞う。
(やった、これに紛れて変身すれば!)
エリカはベルトを装着し、イクサナックルに掌を付ける。
《レ・ディ・ー》
「変身!」
《フィ・ス・ト・オ・ン》
イクサに変身し、レイナーレ達に立ちはだかる。
「あら、いつの間に現れたのかしら。まぁいいわ」
レイナーレは狙いをなんとイクサではなくアーシアに向かって投げてきた。
『ッ!卑怯な!』
イクサは直ぐアーシアの方へ向かおうとするが間に合わない。
「おおおおおおお!」
しかし、煙から渡が現れアーシアを抱えて、後ろへと避けた。
だが避けきれずに脚に槍が刺さってしまう。
「ぐっ!」
「結崎さんっ!」
(渡君!……許さない‼︎)
「どうかしら、アーシア。私達の元へと戻ってくればそいつは見逃してあげてもいいわよ」
そうレイナーレは邪悪な笑みを浮かべる。
「く、うう…」
「もういいです、渡さん!私がついて行けば、せめて貴方は助かります!」
「大丈夫だ」
そう言って、立ち上がろうとする。
「渡さないと言うんだったらもうちょっと痛いめに合って貰うわよ。カラワーナ、ミットテルト」
「かしこまりました」
「了解ッス!」
そう言うと共に3人が渡に向かって光の槍を投げてきた。
渡はすぐにアーシアの楯になろうとした。
だがその前にイクサが槍を打ち落す。
『許さない‼︎》
「くっ、こけ脅しよ。行きなさい!」
「「はい!」」
そう言い2人はこちらに向かって大量の光の槍を投げてきた。
イクサはそれを容易く打ち落す。
「光の槍をあっさりと、ならば一気に近づいて」
「カラワーナっ!」
カラワーナは苛立ったのか、イクサに光の槍をもちながら近づいたが、
『ありがと。接近戦はこちらの領分よ』
《イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ》
『ブロウクン・ファング』がカラワーナに直撃する。
「キャァァァァァァァアア‼︎‼︎」
「へ?いや、ああああああああ‼︎‼︎」
カラワーナは悲鳴を上げると共に爆発し、その爆発にミッテルトが巻き込まれ、消滅した。
『ッ!』
それと同時に、攻撃を放ったばかりのイクサに向かって無数の槍が放たれた。
『貴女…味方の死を使って……!』
「あははは!戦闘じゃ役に立たないんだから、責めて囮にした方が幸せでしょう!」
(こいつどこまで‼︎)
渡は体から出る怒りを糧に目を見開き、立ち上がる。
「もういいです」
「アーシア、何を言って」
「もう私の為に十分してくれて嬉しかったです。でも私もこれ以上皆さんに苦しんで欲しくないのです。だからもうこれ以上は傷つかないでください」
そう言いアーシアは渡からそっと離れてレイナーレの元へと向かって行った。
「待て」
『ダメ…アーシア!』
「さようなら」
その言葉と共に渡の意識は薄れていった。
だがその最後の光景はアーシアの泣き顔だった。
**********
「はっ!ぐぅ!」
渡は目が覚め、勢い良く起き上がろうとすると全身に痛みが走り、そのまま後ろへと倒れ込んだ……が、誰かに肩を抱かれた。
「目が覚めた?」
そこには結菜が渡の肩を抱いていた。
結菜の助けを借りながらゆっくりと起き上がる。
「渡様、これを」
結菜の隣に立っていたグレイフィアから貰ったコップに入った水を飲み干し、今の状況を把握しようと頭を動かす。
そして数秒後には理解した。
ーーーアーシアを連れ去られたーーー
「助けなきゃ」
渡はすぐさま上の服を変え、クローゼットから服を取り出そうとするが体全体を、動かさないようにするためかギュウギュウにまかれた包帯が、邪魔で服がある場所まで腕が上がらなかった。
「……この!」
ブチブチという悲鳴を上げる包帯を渡は躊躇なく破り捨て、服へと手をかけようとするが横から手が入り、渡の腕をつかんだ。
「お待ちください!ハーフといえど、光の力を浴びたのですよ⁉︎それに、あの光の力から怪し気な力も検出されました!」
グレイフィアの話を聞かず、腕を払い、服を取り出して着て、教会へと向かおうとする渡の前にグレイフィアが立ちはだかった。
「この力は下級堕天使の持てるような代物ではありません。バックに何か潜んでいます!」
「それでも助ける価値がある娘がいる。それだけで十分だ」
その一言にグレイフィアは言葉を失っていた。
「だったら好きにしろ」
リリスがドアを開けて入ってくる。
「リリス様、ですが!」
「相変わらずの心配性だなグレイフィア」
リリスは渡の隣に立ち顔を引き寄せ、
「んむ…むぅっ!?」
唇を奪った。
「ん……なっ⁉︎」
「ちょ、ちょっとぉ⁉︎」
リリスの舌が怒涛の如く渡の舌を絡めては吸い上げる。
超絶な舌技によってビクビクと体が震える渡を2人は唖然と見守るだけだった。
「ん、んむ…むは、レロ……っぷは」
口からねっとりと艶めかしく纏わりつく渡の唾液がコーティングされたリリスの舌。
それは何とも煽情的でリリスは表情を一つも変えず、それでいて自分の舌と渡の口から繋ぐ唾液の糸を途切れさせまいとしばらく繋げていたがプツっと切れてしまった。
「私の魔力を分けてやった。これで暫くは万全の状態で戦えるだろう」
「あ、ありがとうリリ「では私も」んむ⁉︎」
今度はグレイフィアが渡の唇を奪う。
「くちゅ、レア…あむ…んん」
グレイフィアも舌を絡めながら魔力を注ぐ。
そして地味にリリスより長かった。
「結菜、お前もやるか?」
「へ?いや、あの……私は///渡がいいっていうんなら…まあ「は、早く行こう」待ちなさいよ!」
「ヘブッ⁉︎」
**********
『ここか』
「ええ」
キバに変身した渡と、獣人化した結菜が教会の前に立つ。
早速、教会に入ろうとしたその時、
「待て!」
背後には、イッセー、木場、小猫の3人がいた。
「何故、キバがここに!」
「それに…誰?」
「おっと」
結菜はフードを深く被り、顔を見えないようにする。
「お前ら止めろって!今はそんな事してる場合じゃないだろ⁉︎」
イッセーは警戒心剥き出しの木場と小猫を止める。
「イッセー君、相手はキバだよ?倒さない理由はない」
「そうです先輩、退いてください」
「まぁ、待てって!」
イッセーはキバの方を向く。
「…アーシアを……助けに来たのか?」
『…』
キバは無言でコクリと頷く。
「俺達もだ。なぁ、力を合わせないか⁉︎敵同士かもしれないけど、目的は同じなんだし!」
「イッセー君!」
「………どうする?」
『…ああ、そうしよう』
「よっしゃぁ!なぁ見たろ木場!小猫ちゃん!結構いい奴だって!」
「呆れます」
「あは、あははは…」
2人共、苦笑いを浮かべる。
「で?そこにいるんでしょ?出てきなさいよ」
結菜が言うと、茂みの奥からイクサが現れた。
『…一時休戦といくか?』
『……ええ』
こうして、役者は揃った。
共同戦線!
リリスとグレイフィアのキスシーンはどうだったでしょうか?
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