夜魔―理々禍流奇譚   作:罠ビー
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 金髪の子編第四話となります。なんとなく書いてたら筆が思わぬところに行きかけましたがまだセーフです。セーフだよね。
 ちょっとメルヘン調が崩れてきました。


複製奇譚―4

 時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンはジュエルシード事件の参考人であるフェイトとアルフ、そしてユーノの話を聞き頭を抱えた。

 全く参考にならない。フェイト達の言うもう一人の少女は魔導師ではないという。ではレアスキル持ちかと勘ぐるも彼女達の証言にその少女の能力について何かヒントになるような事がないのである。
 それだけなら彼女達が虚言を述べている。そう捕らえられただろう。しかしその少女についてユーノも証言しているのだ。


「ユーノ、君が彼女達とグルだという事は?」

「違います」


 ユーノの言葉に肩をすくめる。何の役にもたたない。わかったのはその少女の高町 なのはという名前だけだ。目的も能力もわからない。


「……私達の証言が信じられないならやってみればいいじゃないですか、ありしあさま」


 フェイトが挑発的にクロノにそう言う。生憎事件と無関係なオカルトに付き合ってる暇等ない。くだらないと一蹴しようとした。しかし他の二人の反応に違和感を覚える。


「そんなこと、今度こそフェイトがっ」

「君はあれの危険性はわかってるだろっ」


 本気で二人がフェイトの提案を拒否しているのだ。そこに何か手掛かりがあるのか?執務官としての勘からかクロノにはそう思えて来る。


「そのオカルトは今回の件に関係あるのか」

「少なくとももう一人の……高町 なのはには関係がありますよ」


 正体不明の第三者の手掛かり。なら試してみる価値があるのだろうか。荒唐無稽ながら他に無いと言うのならと吊り下げられた手掛かりに執務官としてのクロノが興味を持ち始めた。





 






 ――――べちゃっ







 水を含んだ何かが地面の上に落ちたような音が響いた。

 突如として聞こえた音にそれまでの会話は中断をやむなくされる。
 クロノ、アルフは初めて経験する不可思議な事象に生理的な恐怖を抱き、ユーノはそれがあの時と同じ、自身を助けた少女が゙友達゙と呼んでいるものが来訪した事を知りその体を強ばらせる。


「なんで……」


 そしてフェイトは自身が越えたと思っていたモノの存在に唖然とした。さっきは昂っていたためあまり感じなかった恐怖が一気に押し寄せて来る。



 それは人形だった。
 ヒタヒタに濡れて自慢のフカフカな毛が見るも無惨に体に引っ付いてしまった熊の人形だった。赤い糸が巻かれておりその先は見えない。
 そしてその人形を拾う影が一つ。水底から浮かび上がるように現れた長い金髪が水を滴らせながら現れ人形を拾う。その光景に体が水に沈み混むような錯覚を覚える。

 四人の背筋にゾワゾワと何かが這いずりまわるような感覚を覚える。

 やがて幾人もの金髪少女が水面のようにすら思えてきた床から四人を囲むように浮かび上がってくる。その腕には水に濡れた人形を抱えて。部屋を埋め尽くすような金髪少女達は一切音を発する事なくただただ四人を見ていた。


 どういうことだろうか?恐怖に浸食されながらユーノは考える。なんで今、これらは出てきたのか。まだ儀式は行っていないはず。


「な、なんだコイツらは」

「フェイト……なんなんだいこれは、みんなフェイトに似て」




 瞬間フェイトは心を奮い立たせアルフの口を掴む。その瞳は殺意すら感じられるような鋭さでアルフはその剣幕に圧されて押し黙る。


「あれは私じゃない」


「何を言ってるんだ、どう見たって君に」


「私じゃない」


 二人の言葉にフェイトは拒絶する。それと同時に金髪少女達はフェイトに近づいていく。距離的にも



「フェイト、君、髪が」



 ……濡れて来てる







◇◇◇


「あの子達は妹さんになれたかな。それとも妹さんがお姉ちゃんになれたのか」


 そう言いながらなのはは宝石を探す。みんなが教えてくれるから宝石を探すのは簡単だ。そして集めた宝石を無造作にポケットに入れて海鳴の街を歩く。


「願いを叶える魔法の宝石」

「それは街のどこかに隠されてて見つけると自分の願いが叶うらしいよ」


 微笑みながら歩みを進める。そして集めた宝石を街の至るところに置いてまわる。学校や神社、海岸と色々なところに。


「ふーん、願いが叶うとは面白い話やな」

「そうやって噂を私に聞かせてなのはちゃんは何が目的なんや?」



 街を散歩する途中図書館で出会った少女、はやてに噂話を聞かせながらなのはは車イスを押して病院に向かう。


「私ははやてちゃんと仲良くなりたいだけだよ」

「仲良くなりたいなら話題のセンスをどうにかした方がええよ」


 なのはの言葉にはやては呆れたように返す。その言葉に表情を変えないなのはにはやては少し警戒する。


「友達できないで、そんな話ばっかしとったら」

「友達なら一杯いるよ」


 なのはの回答にはやては得心のいったようになのはを振り返りみる。そしてその表情を見て確信する。


「……そうか」

「そうだよ?」


 
 はやては諦めたようになのはを見ると話題を変える。なのはのその姿は昔病院で会ったとある女の子と重なった。


「なのはちゃんは病院に何しに行くん?」

「友達に会いに行くの。病院には友達がいっぱいいるから」


 少し気をつけなあかんな。石田先生にはそれとなく釘刺しとかな。

 なのはは楽しそうに笑いながら、はやてはそんななのはの声音に溜め息を吐きながら病院に向かった。


 
◇◇◇


 ありしあさま。
 フェイトがその儀式を行ったことは間違いない。さて、ではその儀式は完了をしていたのだろうか。

 意外な事に疑問を持ったのはアルフだった。アルフは鼻が良い。それは狼を素体としているからだろうか?とにかくその鼻の良さはフェイトの異変を敏感に嗅ぎとっていた。


「フェイト、ずっとフェイトから枯れ草みたいな臭いがするんだ。最初は部屋で付いたんだと思ったさ。でも今その臭いは強くなって……あれと同じ臭いがするんだ」


 そのアルフの発言にフェイトは驚いた顔をする。だんだんと湿りはじめた髪とアルフの言葉にフェイトは震え始める。







 やだ、やだ、やだ、やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ。


「……ゃだ」


 フェイトはか細い声でそう言う。声が小さくしかでない事にフェイトはさらに驚く。
 フェイトは自身がだんだんとアレに取り込まれていっているのを感じていた。


「――――!!」


 アルフの言葉がだんだん聞こえなくなってくる。なんて叫んでるかわからない。目の前にやってきたアレが私に人形を渡そうとしてくる。私はそれを拒めない。よくみるとそれは私が使った人形で……
 これを受け取ったら私は、私は……ありしあにされてしまう!!








 ユーノは立ち込める濃密な異界の香りに圧倒されながらも頭を回転させる。儀式は行っていない。でもアレが現れたのは……それにアルフの言葉。儀式は完了していなかった?
 でもあの部屋でジュエルシードは反応したはず。アレの願望か、フェイトの願望に。


「フェイトっ!!」


 アルフの呼び掛けにフェイトは答えない。全くといっていいほど反応を示さない。このままでは不味い事は理解できた。なら、手遅れになる前に、一か八か。



「クロノ、ジュエルシードはここにあるかい」

「ああ、あるが何をする気だ」




「こうするんだよっ!!」


 そう言ってクロノが取り出したジュエルシードを引ったくり気味に手にとりフェイトに向かって投げた。



「君は何者なんだっ!!フェイトっ」





「君は何者なんだっ!!――――っ」



 聞こえた声と投げられた宝石が目にはいる。私は何者?私は、私は、私は



『フェイト』





 母さん





「私は偉大なる魔導師、プレシア・テスタロッサの娘。フェイト・テスタロッサだっ」



 一番じゃなくてもいい。でも、母さんの娘である事。そして母さんのくれた名前だけは、失ってたまるか。











 私に人形を渡そうとしたありしあが、青い光の中、私に笑いかけた気がした。






 途中フェイトさんをこのまま取り込ましてしまいそうになってました。そんな予定じゃなかったのに。あとちょくちょくはやてさんが出てますが夜天奇憚をやる予定はありません。






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