とりあえず俺は近くにあった半壊したビルに登り、状況把握に努めることにした。
360度全てをかるく見渡したところで俺はあるひとつの考えに至った。
「これはFate/GrandOrderの特異点Fだな」
確証がある訳では無いが少なくともそう思わずにはいられない事があった。
まずは、辺り一面の炎の海と瓦礫の山だ。これはスマホの画面で見たことがある。それでも現実と仮想を比べたところでしょうがないとも思うが、これは本当に酷い有様だと思う。ナニコレ?世紀末?みたいな感じだ。
次に、これはほとんど決め手のようなものだが辺りを見回した時に見付けたガイコツやゴースト、そしてシャドウサーヴァントのことだ。こいつらのおかげで世紀末感がさらに上がっていると思うんだよな。こいつらはたぶんこれから戦うことになるだろうと思い、殺られる前に殺ろうとしたがシャドウサーヴァントには逃げられてしまった。
手傷を負わしたからいいとしよう。
さっきの場所から少し離れた別のビルに再度登り、今度はさっきよりも遠くのほうを見渡すことにした。
少し遠くに如何にも何かのビームが使われたと思われる跡と、さっき見たシャドウサーヴァントとは違うシャドウサーヴァントがいた。さらに遠くには大空洞だと思われる洞窟もあった。
ここまで俺の知っていることと酷似していると特異点Fだと思う。
ここで疑問がひとつある。
この場所が本当に俺の知っている特異点Fならそもそも俺なんて者がいる必要がない。確かに抑止力として召喚された可能性もあるかもしれない。それでも俺がいなくともこの話は解決するはずだ。なぜならこの話にはこの話の主人公がおり、多くの英雄と共に7つの特異点を復元するからであり、この特異点Fはその足掛かりだからだ。
ここまで考えてみて俺は思考を放棄した。そもそも俺は頭のできが決していい方ではない。それにいくら考えたところで結局は当てが外れることが多いしな。
俺は最後にもう1度何かないかと見回した時にそれを目にした。
何かの爆発のせいか隕石でも降ってきたのではと思ってしまうほどの大きなクレーター。その中心におかしなものがあったのだ。正確には普通そこにはないだろういうものだ。端的に言うと家なんだが。それがそこそこ大きさの洋館であり、クレーターの中心に鎮座しているのだ。
これはおかしい、違和感しかない。
気になった俺は注意深くその周辺を見ていると見覚えのある、否、見覚えしかない赤い服の女性がいたのだ。
俺は慌てて彼女の元に向かった。風のように走るを体現するかのような速さで走った。今まで生きてきたなかで最も速いと思う。
別に久しぶりに会えたのが嬉しくて嬉々として彼女のもとに向かっているのではない。少しぐらいあるけど今回は違う。むしろ窮地だと思って急いでいるのだ。彼女の周りにはさっき俺が倒したのと同じガイコツ達がいた。これぐらいなら彼女1人でも倒せるだろう。俺もこんなに慌てることはない。だが、そのガイコツ達の後ろにシャドウサーヴァントがいたらどうだろう。さすがの彼女でもシャドウサーヴァントには勝てないだろう。
彼女もやっとシャドウサーヴァントのことに気付いたらしいが、シャドウサーヴァントの方が行動がはやくもう攻撃しようとしている。このままだと間に合わないと思った時俺は思い出した。
そういえば俺って弓兵じゃん。
***
今日は大事な日だ。
目を覚ました時にそう思った。この私が寝起きで意識がはっきりしており、そしてそんなことを思えるなんて後にも先にも今日だけだろう。
あんまり気負うと失敗するぞ、なんてよく彼に言われたけど今日ばっかりはしょうがないと思う。なにせ聖杯戦争だ。
そんな事を考えていると目の端に違和感を感じた。カーテンの隙間から見えた景色が異様だったのだ。
私はベットから飛び起きて窓に近づきカーテンを全開にして言葉を失った。昨日までは平穏な町並みが広がっていたのに、今では斜めに上がっている地面が見えるだけだ。
これだけの情報で既に自分の状況がとても危ういのではと思った。私はさらなる情報を得るために急いで準備を整えて外に飛び出した。
外に出て壁を登ったところで私は言葉を失った。
辺り一面炎の海で、昨日まで目の前にあった建物は見るも無残な瓦礫になっていた。まさかここまでの惨状なんて想像してなかった。
その場で何分間立っていたのか。気づいた時には目の前に動くガイコツがいた。今まで生きてきたなかで見たことがなかったけど、私に向かってきているのでたぶん私を襲うつもりなのだろう。なんとか気持ちを切り替えようとした。戦闘の際には頭が切り替わって、ガイコツを撃退することに成功した。
だけどそれでもまだ動揺してしまっていたらしい。だって私は目の前に迫っていた影に気づけなかったのだから。
ごめんなさい、話は進んでませんね。