よし、京都に行こうみたいなノリでアイルランドを目指してみたもののそこまでの道のりが大変だった。
どうやらブリテン島は幻獣種の巣窟らしく、毎日毎日飽きもせず色んな獣が襲ってくる。そのおかげで、狩猟スキルと料理スキルが上がっていく一方だったが。
そんな生活をしながらなんとか港にたどり着いたが、アイルランドまでの海上にはワイバーンが数え切れないほどおり、結局慣れない船の上でワイバーンを撃ち落とすことを必要とされる航海を余儀なくされた。
唯一の救いが船を出してくれたおやっさんがめちゃくちゃいい人だったことだな。そうだ、お前も知ってるあの人だよ。魚料理とかすごい上手くておもわずどうやって作るのか聞いてしまったぐらいである。
なんとかアイルランドに到着することができた。
ここまで送ってくれた礼と安全に帰ってもらうために辺り一帯のワイバーンを撃ち落とし、念のため港にあった弓を改造しておやっさんでも俺の矢を撃つことのできるボウガンにした。それだけだと心許ないのではと思いおやっさんの許可を貰い船を改造させてもらった。具体的に言うと船首に2つのボウガンを付けただけなのだが。使い方を教えてあげたらすごい感謝されたけど、ここまで来れたのはおやっさんのおかげなのでそんなに感謝されても困るんだが。
そんなこんなでなんとか俺はアイルランドに来ることができたが、そんな俺をお出迎えしてくれたのは綺麗な港町のお姉さんではなくワイバーンだった。むしろワイバーンが港町を破壊してるところだった。ここまで撃ち落としてきたワイバーンは、全てアイルランドから飛んできていたのだから当たり前と言えば当たり前の光景だった。
とりあえずワイバーンを狩り尽くした。このことをダシにして宿にタダで泊まろうとかそんな狡い事考えてなかったよ。ほんとだよ。
辛辣な言葉をありがとう。
その後、大変ありがたいことに町を助けたお礼にと無料で宿に泊めてもらった。そしてそこでこのワイバーンはアイルランドの中心部から飛んできていることと、最近そこには毒竜が住み着いてしまったという情報を耳にした。
その情報を耳にした時に俺は思いついてしまった。
このあてのない旅に理由を持たせようと。それは各地で困ってる人を助けてそれこそ英雄譚の主人公のようなことをしようと。
そうと思ったら即行動に移るのが俺だ。そこの港町をあとにして、急いでアイルランドの中心部に向かった。
道中にはワイバーンやら子供の竜やら多くいて、正直ブリテン島よりもめんどくさいことこの上なかった。
それでも俺はなんとか件の毒竜まで辿り着くことができた。
どうやって倒したのかだって?てか、俺が倒せたこと前提で話すのか。
今生きてるんだから倒せてないわけないってか。それもそうなんだがもしかしたら怖くて逃げたかもしれないだろ。
そこまで信用してくれてるとはありがたいね。
確かにお前さんの言う通り俺は逃げなかったし、その毒竜を倒すことに成功した。
その毒竜は毒竜と言うだけあって全身から毒を撒き散らしてやがった。どれだけヤバいのか、俺は食らってないからわからんが。周りの草木は全て跡形もなくなっていたし、俺が2、3日かけてそいつを観察してる時よく分からん騎士様が戦いを挑んでな。そいつは近付いた瞬間溶けていなくなったよ。跡形もなくな。
そこで俺はひとまず矢を射ってみた。普通の矢では毒竜に触れる前に溶けてなくなっちまった。
そこで俺はある方法を使ってその毒を吹き飛ばしてみた。それから毒がまた散布される迄の間に何本か矢を射ってみたが今度は当てることができた。
その方法を教えろって。ただ矢を爆発させただけなんだが。
それで当然矢が当たったからには俺の居場所がバレてしまい反撃をくらうわけなのだが、その前に退避していたのでその攻撃は俺には届かなかった。
そこからは俺とやつのどっちが先に倒れるかの我慢比べだったよ。
結果としてやつの方が先に音をあげたって訳だな。
最後に止めとしてクレタナを使ったんだがその時にクレタナが欠けちゃったんだよね。
おかげでクレタナの新しい使い方を思いつくことができたけど。
その後は死んだ様に寝て、起きたら知らない天井で今までのは夢だったのかと呑気にそんなことを考えながら周りを見渡すと知らない女の人が手を握っていたってわけだ。
そう、お前さんのことだ。
確かにお前さんの言うとおり場所が違うだけで今と同じ状況だな。
ここからはお前さんも知っての通りだよ。
アイルランドの王様からお礼として姫をくれると言ったが、俺には身に余る光栄(笑)だったからその姫の特別な髪の毛を数本頂いてその場をあとにした。
お前さんがどうしても一緒に行きたいとか言うから、お前さんを護りながら今度はフランスに向かった。
安心しろ。別に邪魔だとは思ってなかったし、むしろ話し相手がいて俺的には良かったぞ。
フランスに行く時もアイルランドに送ってもらったおやっさんに頼んで送ってもらったよな。
今回は安全に航海をすることができてよかった。なんせワイバーンどもは、毒竜がいなくなったらすぐにどこかに消えちまったしな。
フランスに行ったのにはちゃんと理由があって、アイルランドでやったように人のためになることをやろうとしてたんだ。英雄みたいなのになりたかったしな。
だが、フランスは思っていたよりも平和だったわけだ。そこで俺は旅をやめて料理屋を開いたわけだ。
意味わからなくなんてねぇよ。普通に平和ならそこで永住して、普通に働いて生きていくに決まってるだろ。
確かにさっきまで話していたことと矛盾してると思うけどな、実はちょうどフランスが安全だとわかった頃だったかな。俺はもう旅をできるだけの身体じゃなかったんだよ。自分の身体だ。自分が一番はじめに気付くさ。
そこで考えたんだよ。俺がもってあと少しだとしてだ、残されたお前さんはどうなるのかとな。
さすがに俺の絶技をお前さんに教えるわけにはいかないし、かと言って何もしてやらんわけにもいかない。そこで俺は戦うことと同じぐらい得意だった料理を教えることにしたわけさ。お前さんは元からある程度料理ができる方だったし、手先が器用だったからな。
料理なんかより戦い方を知りたかったねぇ。確かに教えてやろうと思えば教える事はできたけど時間が足らなかったんだよ。
お前さんの言う通りいくらでもやりようはあったな。それでも俺はお前に教えなかった。
この際だから言うが俺はお前さんに俺のあとなんて継いで英雄になんてなってほしくなかったし、戦ってほしくもなかった。むしろ俺にしてくれたように、料理で誰かの助けになって欲しかったんだ。許してくれ。
なんでこんな時にわざわざこんな話をしたかというとだな、最後に頼みたいことがあってな。
今話した話を多くの人に広めて欲しいんだよ。それこそ英雄譚のようにな。
最後まで無理言って悪かったよ。こんな所まで付いてきてもらってありがとう。
泣くなよ。
大丈夫だ。俺はお前さんの中で生き続けるんだからな。
***
私が助けた英雄は普段なら言わないようなくさいセリフを言って死んでいった。死んでしまう理由は教えてくれなかったし、ブリテン島でどのような生活を送っていたのかも教えてくれなかった。
だが、彼は確かに私の祖国の英雄でありそして1人の騎士であった。
そんな彼だから私はこんな所まで付いてきたのだ。
私が彼と一緒に生活したのは2年ぐらいだったが、結局言えなかった。この気持ちを。
お久しぶりです。
雑な感じになってしまいましたが今回で序章は終わりにさせてもらいます。作者的にはさっさと本編に入りたかったんです。許してください。
次回から本編に入ろうと思っているですが、この話の主人公はトリスタンであってトリスタンではないということでお願いします。
トリスタンがfate/goにでると聞いた時からどうしたもんかと思っていましたが、まさかあんな感じの人だとは思ってませんでした。なので、この作品のトリスタンはこの作品だけのオリジナルの英雄ということでお願いします。なのでぽろろーん、とか言いません。
それではいつになるか分からない次回で。