だいぶ時間がかかってしまいましたがクオリティはお察し。
主人公のプロフィールは序章が終わったら公開します。
「私はメルディンと申します」
ひとまずドラゴンの件は置いといて彼女の名前を聞いてみた。メルディンちゃんか......なんか聞いたことあるようなないような。だけど綺麗な女性に悪い人はいなくはないけど困ってそうだから助けてみようかな。
それに対人戦はだいぶ慣れたし、最近思いついたことも試せると思うからいっちょやりますかね。
「メルディンちゃんね。これから宜しく」
「それでは」
「うん、そのドラゴン退治やらせてもらうよ」
「ありがとうございます。それでは行きましょうか」
俺の手を引いて歩きだしたメルディンちゃんを見て思ったことがあるんだけど、この人ビッチくさいんだよね。いや、言わないけどね。せっかく布あげたのに服を直そうともいないし。まあ、ドラゴン退治はやらせてもらいますけど。
「今更だけど詳しい事情とか聞かせてもらえるかな?」
「私たちの村は狩猟とこの森にある木の実を採ることで生活している村なのです。ちょうど1ヶ月前まで何事も無かったのですが、ある時猟手である村の男が死にかけながらも村に帰ってきて言ったのです「竜がでた」と。その後、私たちの村の周りの森では竜の唸り声が聞こえてくるようになったのです」
「なんとなくわかったけど、ならあなたはなんでこんな所に?普通なら村の中にいるはずだろ」
「それが私の弟が昨日から見当たらなく、それで心配になって......」
「森に入ってしまったと」
「はい」
そんな話をしていると後ろから唸り声が聞こえてきた。その声と同時に俺は背負っていた剣を抜いた。そして横を歩いていたメルディンちゃんを背で隠すように振り向いた。そこにいたのは件の竜種だと思う。だが俺の思っていた竜とは若干違く、節足種昆虫みたいな全長1mちょいのキモいものが飛んでいた。
「もしかしてあちらさんが話していた」
「はい」
「だけど、なんていうかな?俺の知ってるのとは違うような気が...」
「あれは雑竜種ですよ。普通の竜種よりは弱いですが、それでも人なんて容易く食べられます」
メルディンちゃんは怖いのか震えた声でそう言ったが、俺的には怖さよりもキモさが勝ってしまい素直に怖がれない。たぶんだけど、そもそもこの身体の元の持ち主であるトリスタンは円卓の騎士として腐る程こんなやつを屠ってきたからなのか全く負ける気がしない。
油断と慢心は命取りになるからしないけど。それに慢心していいのは我様だけだしな。
だけど見たところ1体しかいない。これでは流石に俺の考えてたことはできないな。普通にやるしかないか...
俺は一気に間合いを詰めると同時に背中に背負っていたもう1本の剣を抜いて、右で持っている剣で首を跳ね左で持っている剣で尻尾を切り落とした。
尻尾を切り落とした理由は見た感じ危なそうだったのと、首を跳ねたのだからないと思うがもしものためにやった。
だけど何事もなく動かなくなったので心配も杞憂に終わったらしい。
「大丈夫か。ひとまずこの辺だと今仕留めたこいつだけだと思うけど」
「お強いんですね、えーと...」
「そういえば名乗っていなかったな。俺はトリスタンだ。それであと何頭ぐらいいるのかわかるか?」
「トリスタン様ですね。よろしくお願いします。それと流石に何頭いるかまでは...」
「わかった。それじゃああなたを村まで送った後、俺があなたの弟を探すよ」
「いえ、私も一緒に行かせてください」
「理由を聞かせてもらっても?」
「トリスタン様は弟の顔を知らないからです。それにあんな薄情な村に帰りたくなどありません」
「それはどうゆうことだ?」
「弟がいなくなった時、私はすぐに探してくれるよう頼んだのですが村の方々は取り合ってくれず......」
それもしょうがないと思うけどな。俺は今なら倒せる力があるからいいけど、昔の俺なら絶対に村人たちのと同じ対応しただろうし。
でも、困ったな。確かにメルディンちゃんの弟の顔は俺にはわからないし、それに村まで送ってその後また1人で探されても困る。
これは同行を認めるしかなさそうだな。それに誰かを守りながら戦う練習にもなるし案外いいかもな。
「事情はわかった。確かにあなたの言う通りなところもあるな」
「それでは」
「あなたの弟を探すのを手伝ってくれ。そのかわり戦いになったら、俺の指示を聞いてくれよ」
「ありがとうございます」
ひとまずせっかくの竜種、えっと雑竜種だっけ?なんでもいいけど、こいつの尻尾の針は毒矢に使えそうだな。さっきから接してる地面が溶けてるのか、そこだけ穴になっている。これなら宝具にすればそれなりのランクいくんじゃないのかね。手短にある木の枝を「全ての物は我が矢なり」で矢にして、それを針に触れさせてここから武器改造スキルと「全ての物は我が矢なり」を両方使ってっと。
「何をされてるんですか?」
久しぶりにいい矢を作れそうだからテンション上がっちゃってメルディンちゃんのことすっかり忘れてた。前回作ったのは1週間前のキメラの牙とか爪だっからな。神秘的には申し分ないんだけど、付随効果が期待出来ない点だけが良くなかったからな。
それに比べて今回のは前回以上に期待できるからな。
それでも無視は悪いので反応しておくか。
「矢を作ってるんだよ」
「スゴいですね。騎士様になればそんなことまでできるのですか」
「いや、流石に俺ぐらいだと思うよ......」
「あれ?ですが、トリスタン様は弓など持ってないですけど...」
なんだこの子、意外と鋭いな。俺の持ってる武器は他人から見ると背負っている剣が2本しかない。これのことを知り合って間もないのに話してもいいものなのか?
だけど弟が見つけるまでに何回か戦わなくちゃいけない場面があると思うから、その時に知られるかもしれない。なら別に今教えても変わらないかな。
それに俺の予想だと別に教えたところで関係ないだろう。
「この背中に背負っている剣があるだろ。これの柄どうしを合わせると弓になる」
言いながら俺は2本の剣を抜き柄を合わせると弓の形になった。原理としてはプロトアーチャーの終末剣エンキと同じだ。
なんでこんなことになったのかと言うと、武器が弓しかないのはつまらないし剣が欲しいと思った時に、トリスタンの持っている弓は弓らしくなかったみたいなことを言われていたのを思い出し、武器改造スキルで弓をエンキみたいに分割して剣にできないかなって思ってやってみた。そしたらなんか簡単にできた。
そのおかげか武器改造スキルが1段階上がってしまったけど、気にしない方向性である。
「すごい武器なのですね、剣と弓の両方として使えるなんて」
「そこまでほめてもらえると使い手としても嬉しいよ。よし、できた」
メルディンちゃんと話しているあいだにあっさり完成した矢は、弓と一緒に置いてあった矢筒っぽい何かの中に収納する。ちなみにこの矢筒は開けるとどう見てもこの小さな、それこそシュガレットケースぐらいの大きさしかないところに何万本もの矢が入っている。
何このリアル四次元ポケット。だけど哀しいかな、俺の作った宝具である矢しか入らないんだよな。
「こっちの作業も終わったしメルディンちゃんの弟探しをしますかね」
「よろしくお願いします」
***
それから俺とメルディンちゃんは森の中を虱潰しに探し回った。当然雑竜種たちが黙っているわけもなく、そこに飛竜種も追加されて戦闘は何十回も行われた。そのたびに矢を作って増やせるので、俺的にはウハウハなんだけど。
とうとう弟が見つからないまま日が沈み夜になってしまった。俺としては夜目が効くのでこのまま捜索を続けてもいいが、正直この意味の無い捜索も飽き飽きしてきた。
なのでそろそろネタばらし、てか俺の予想を言うだけなのだが。もし間違ってても俺の黒歴史が増えるだけだから問題は......多ありだね。なんで転生したのに黒歴史作んなきゃいけないんだよ。
「それでもう夜だけど、どうする?」
「弟を探します」
「いや、だからさもう演技をやめたらどうだって言ってるんだ」
「何のことですか?」
「正体を明かせって言ってんだよ、花の魔術師マーリン」
メルディンちゃんは驚いたふうな顔をしてすぐに笑みを浮べて言った。
「いつからですか?」
「会った時からずっとだよ」
会ってすぐに雑竜種との戦闘になったが、驚いてるように見えて結構余裕そうだった。俺にすぐにそれが雑竜種だと教えてくれたこともあやしかったし。
それに少し前に思い出したけどメルディンって言えば、史実でのマーリンとの同一人物とか言われてるやつがそんな名前だった。
最後の理由は、目の前にいるマーリンに言ったところでしょうがないけどな。
「そうでしたか。トリスタン卿でもない方にバレるとは」
気落ちした顔で俺がはじめに会った胡散臭そうな真っ白な好青年に変わったマーリンの言った言葉で俺は思考を停止した。
「マーリン、今なんて言った?」
「ですからトリスタン卿でもない方に見破られるなんてと言ったのですよ」
あっれー?なんで俺がトリスタンじゃないってバレてるの?わざわざぼろを出さないために城を出てきたのに。
よく思い出したら、俺から出ていくって言ったんじゃなくてマーリンから言い出したんだったっけ。その時点であやしいことに気付けよ過去の俺。
「俺がトリスタンじゃないって何時から気付いてたんだよ」
「それは初めからです」
ですよねー。そうじゃないとあんなすぐに城から追い出されるわけないし。
「それじゃあ予言云々は嘘だったのか?」
「いえ、予言については嘘ではありませんよ。その予言でトリスタン卿の中に他の者がいるとあったのですから」
「それで会った時に確信したと...なんでこんなまねをしたのか理由を聞いてもいいか」
「確信はしてませんでしたよ。他の人の意識が突然、それも円卓の騎士でも一二を争う強さのトリスタン卿を支配するなんて。それならあなたの言った記憶喪失の方がまだ信じられました。なので確かめるためにこのようなことをしたのです。ですが、まさかこんなに早く変装が見破られるとは思いませんでしたのでカマをかけさせていただきました」
「それに俺はまんまと引っかかったと」
「はい」
この笑顔殴りたい。おっと危ない、あやうく殴り殺すところだった。あれ?別にそれでも良くね。
「本当の用事が別にあるんです」
「まだあるのかよ」
てか、それを先に言えよ。もう別人だとバレているのでいつもの感じで喋らせていただく。
「これをお渡しにきました」
そう言ってマーリンは空間に裂け目をつくりそこからものを取り出した。花の魔術師って空間魔術とか使えたのかよ。マジで頭おかしいなこの人。
「何を驚いているんですか、あなたの矢を入れる入れ物も同じようなものではないですか。それよりもこの剣をお返しに来たのです」
そう言って差し出されたのは1本の剣だ。俺はそれを受け取った途端、俺の脳内でこの剣がどのようなものなのか情報が入ってきた。
この剣はクレタナだ。俺的に馴染みがあるのはカーテナの方なんだけどどっちでも変わらないからいいか。
だけどフェルノートは宝具としての情報が入ってきたのに、このクレタナについては俺の剣だっていう情報ぐらいしかない。
これはこれから自分で宝具としての逸話をつくれってことなのかな。
だけどこのままでも充分強そうなんだけど...
「あなたは面白いですね。トリスタンではないはずなのにその剣がどのようなものか分かっていらっしゃる様だ」
「そんなことないけど。それでこれを持ってきてくれた引き換えに何をやらせるんだ?」
この胡散臭い魔術師が、善意で俺という怪しいやつのために武器を届けてくれるわけがないんだよなぁ。
俺でもそれぐらいは想像がつく。
「そんな人聞きの悪い。ただ、よろしければここら一帯の雑竜種と飛竜種を狩っていただけるとありがたいですけど」
ほれみろ、これだから魔術師は、というかマーリンは。
別に矢を増やしたいからやってもいいんだけど、こいつのためにやると思うといっきにやる気が下がるな。
「そもそもそれは円卓の騎士たちがやることじゃないのか?」
これも気になることである。雑竜種にしろ飛竜種しろ竜種なのは間違いないので、そんなの相手にするのは円卓の騎士だろ。それなのにこんなに野放しな感じでいいのか。
確かブリテンってこの頃魔境だった筈だし、幻想種なんて珍しくないのか。
「なんか勘違いしてそうなので言っておきますが、雑竜種にしても飛竜種にしても普通はこんなにいないですよ。それと円卓の騎士たちは、戦争の準備があるからこんなことしてられないんだよ」
「それなら円卓の騎士から外れた俺にやらせると」
「察しがよくていいね」
「うるせぇ、それならこれはお前に頼まれてやるんじゃなくて、そうだな...アルトリアのためにやるってことにしておいてくれ」
せっかくやるのなら、こんな胡散臭い野郎のためにやるより金髪の美少女のためにやるほうがやる気が上がる。そんな事考えながらマーリンを見たら、驚いたような顔をした後目を細めた。
なんだよ、その意味深な表情変化は。俺がなんか失言したのか?
「本当に君はトリスタン卿ではないらしいね」
「そうだよ、さっきからそう言ってるだろ」
なんだよ、マジで。やっぱりマーリンは苦手だな。何考えてるのかわからないし。
「それでは私も準備があるのでここら辺で失礼するよ」
「ちょっと待て、どこと戦争しようとしてるか俺が聞いたら教えてくれるのか?」
何そのやれやれみたいな顔。うぜぇ。俺はやれやれ系のおっさんは頼りになるからいいと思うけど、マーリンは信用ならないからやめた方がいいよ。それとかなりウザい。
「私達が今度戦うことになったのは、国と言うより個人ですよ。あなたにはわからないでしょうがその者はヴォーティガーンと言われています」
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