クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 銀河の守護者   作:オービタル

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afterstory44:皇家の覚醒

 

退院した勇人は格納庫にあるアダムを見る。

 

「大丈夫、アダム?」

 

『私は大丈夫です、シン・ギデオンとジェームズ・マクライト、ミライ・マクライトによって100.0%修復されましたので♪』

 

「そっか…」

 

『勇人は大丈夫ですか?貴方がブリタニア皇家の子孫であり、10人目の護星神に選ばれて……』

 

「……緊張する、このスサノオが抜けたら解れるんだが……」

 

『……怖いのですか?』

 

「え?」

 

アダムの問に、勇人は頷く。

 

「うん……正直に言うと、まだ…ドレギアスの恐怖に圧されているんだ…それでも、乗り越えたいんだ」

 

『……私は、勇人を応援します。あなたが最高の『ヒーロー』になると……』

 

「『ヒーロー』か……(ヒーロー…憧れたなぁ、子供の頃、あのスーツ…本当にカッコ良かったなぁ〜)」

 

勇人は、自分の憧れのヒーローを演じている姿を、想像していた。

 

『思想力が上昇しておりますよ』

 

「…え!?そんなとこまでスキャンするの!?」

 

「さらに心拍数が上昇中です」

 

「そこまでスキャンしないで!」

 

『何故です?』

 

「何故って……はぁ〜……もういい……取り敢えず、スサノオをここに置いておくよ」

 

『見張っておきます』

 

勇人は整備用の道具が置かれているデスクの上に、スサノオを置き、格納庫を去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

エルシュリア王国直属研究所『プランター』では、志歩がこの世界の技術を勉強しており、ある物を制作に成功した。

 

「出来た〜〜!!私自作の強化剤!その名も"スーパーヤクト"!!」

 

隣にいるシンが言う。

 

「何だそれ?麻薬か?」

 

「いえいえ、これは飲んだだけで、自身のパワーやスピードか数千倍に上がるのです!まぁ、後の二つは失敗作なんですけど……てヘヘ♪」

 

「てヘヘじゃないだろ……結局麻薬だろ、見ろ」

 

シンはスポイトで液を吸い上げ、特殊なシートに落とすと、シートか青黒く染まる。

 

「こんなに青黒くなるって言うことは今までの薬物の何千倍もあるってことだ!!分かってるのか!?」

 

シンが志歩に怒鳴る。

 

「ごめんなさい」

 

「全く、気を付けろよ……っ!?」

 

突然室内が暗くなり、研究者達が動揺する。

 

「何だ!?」

 

「何が!?」

 

シンも志歩も動揺していた直後、背後からレンチを持った何者かがシンと志歩を打つ。二人が気を失うと、その影が持っていた薬を盗み出し、通気ダクトへと入る。

 

薬を盗んだ洋介は格納庫に到着し、アダムの側に置いてあるスサノオを見る。

 

「誰もいない……良し」

 

洋介は、盗んだスーパーヤクトを飲む。

 

「う!………うう…ウウッ!!!」

 

洋介の体が見る見ると大きくなり、皮膚が破け、強靭なオーガへと変貌した。

 

「あの剣……オデのだ……」

 

洋介が徐々にスサノオに近付き、触れようとした直後、スサノオが光だし、金色の電磁波が放たれ、洋介に触れるのを拒む。

 

「っ!!?どうなっでるんだ!?」

 

洋介が慌てていると、何処からか勇人の声が格納庫内に響く。

 

「残念だったな!」

 

すると周りに隠れていた狙撃兵や衛兵達が現れ、スナイパーライフルや槍と盾を構え、洋介を囲む。すると兵達の中から勇人と陽弥達が、それぞれの剣を構えていた。特に陽弥とシンとレオンが鬼の表情で洋介を睨み付ける。

 

「お前の企みなど、お見通しだったよ!先祖の剣を盗んで、それを引き抜いて王になるつもりだったんだろ!天井裏で盗み聞きしていた事は俺と師匠と全神々も知っていたんだからな!!」

 

「くそぉぉ!!……くそぉぉ!!…くそぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

洋介は怒鳴りながら、電磁波を放つスサノオを盗む。

 

「これはオデのだ!!オデが神になるんだああああああ!!!」

 

洋介は吼えながら、強靭な肉体で突進する。

 

「まずい!!狙撃班!撃て!!」

 

陽弥の号令と共に、狙撃兵達がスナイパーライフルを撃ちまくる。弾は麻酔弾で洋介の皮膚に注射針刺さるが、何ともなく、衛兵の防壁の陣を突破する。レオンとジュンがアースセイバーとスパーダを構え突き付け、洋介の腕に攻撃する。しかし、スーパーヤクトの効力のせいか、刃が通らなかった。

 

「「何っ!!?/嘘だろ!!?」」

 

「邪魔だああああ!!!!」

 

洋介は剛腕でレオンとジュンを振り払う。

 

「待て!!!このクズ野郎!!!」

 

レオンがアースセイバーを構え、走り出す。陽弥もガイアブリンガーを構え、洋介の前に立ち塞がる。

 

「よくも八塩折仕込酒作戦を邪魔をして!!ただで住むと思うな!!泥棒がっ!!」

 

「うるせぇ!!神の王に逆らうなァァァ!!!!」

 

洋介はそう言うと、大ジャンプして、陽弥の上を通り過ぎ、格納庫から出る。

 

「クソ!!」

 

陽弥達は急いで洋介の後を追うと、洋介の目の前に重装甲部隊や戦車、ガンシップ、セイクリッドメイル、パラメイルの部隊が立ち塞がっており、先頭に頭に包帯を付けたシンがオムニシールドとヘビーマシンガンを待っていた。

 

「逃げられないぞ、クソ野郎」

 

「テメェ!生きてたのか!!」

 

「あの娘もだ……欲に堕ちたな、化物が」

 

「化物じゃない!オデは王だ!!この国や全宇宙を支配者であるぞ!!」

 

「……殺れ!」

 

全部隊の銃弾や砲弾の雨が洋介に炸裂する。

 

「……(全く持って腹が立つ!!コイツの家系はどんな風に育てられたのか……人間を何と思っているのやら!!後でコイツを捉えて、父親と共に処刑してやるか、陽弥の弟子をゴミの様に差別した分を傭兵団『ブルーサンズ』の刑務所に引き渡して、奴隷の様に扱ってやる……あそこは犯罪者の溜まり場だからなぁ……)…っ!!」

 

煙の中から洋介が突進してきて、シンは急いでオムニシールドで防御するが、吹き飛ばされた。

 

「クソ!!」

 

洋介はそのまま戦車の防衛網を突破し、エルシュリア王国城門を破壊する。

 

「まずい!ガンシップ!!追撃しろ!!」

 

シンがガンシップ部隊に命令し、洋介に追撃命令を下す。数機のガンシップがバルカン砲や乗組員と共に追撃する。

 

「こっち来んな!!!」

 

洋介は抉れた岩を持ち上げ、ガンシップに投げ付ける。ガンシップは回避するも、後方にいたガンシップに直撃した。

 

「四番機が撃墜された!!二番、三番、五番機は洋介に攻撃!火力を集中させろ!!!」

 

ガンシップのパイロットがそれぞれのパイロットに指示をだし、洋介に攻撃を集中させる。洋介は盗んだスーパーヤクトを飲む、

 

「うおおおおおおお!!!!」

 

スーパーヤクトの効力により、洋介の脚力が上がると、大ジャンプし、ガンシップに飛び掛かる。そして洋介はまたスーパーヤクトを飲み、もうあの頃の人間とは思えない醜く禍々しい姿へと変貌した。

 

「ハハハ!!!もう俺を止められるものなんていない!!ドレギアスを倒して、俺は神の王になる!!!!」

 

洋介はそう言い、スサノオを引き抜こうとするが、強靭な力でも抜けなかった。

 

「何でだ!!?あの野郎も抜けなかったから、他にいると思ったのに!!!抜けろ!抜けろ!抜けろ!抜けろ!抜けろぉぉぉぉぉ!!!くっ!!!!」

 

必死に引き抜こうとするが、ビクともしなく、等々スサノオを投げ捨てた。すると投げ捨てた方向に、勇人がおり、勇人はスサノオを持つ。

 

「何で抜けないんだろう……まぁいい」

 

勇人はスサノオを持ったまま、荒神へと変身したその直後、スサノオから鼓動を感じた。

 

「っ!!?」

 

さらに、スサノオが勇人の力を吸い取っていく。

 

「(何だ太刀!?……荒神化した俺の力を吸い取っている!!?がぁっ!!!)」

 

勇人はスサノオを離そうとするが、指がスサノオを離そうとしなかった。

 

「(指が勝手に!!……やばい!!このままだと命が!!)グッ!!」

 

勇人は苦しみながら、胸を抑え付け、必死に抗う。洋介は勇人の様子に嘲笑い、勇人を痛め付ける。

 

輸送艇に乗っている陽弥達が勇人を見る。

 

「クソ…助けに行きたいけど、アイツが何をするか分からない……今も勇人が……」

 

陽弥達はただここで見ることに悔しがる。そして今も勇人はスサノオや洋介に痛ぶられる。

 

「どうした!どうした!その程度か?勇人!!」

 

「う!!」

 

勇人は洋介に殴られながらも、スサノオを離さなかった。

 

「(このまま、終わるのか……スサノオに命を削られ、洋介に殴り殺させる……シンディも助けられないのか……)」

 

勇人がそう思っていると、ポケットから、ある物が出てきた。

 

「?」

 

それは、勇人が八歳にシンディに上げた手作りのブレスレットであった。勇人はそのブレスレットを見て、将来の約束を思い出す。

 

『(この戦いが終わったら..........その.....俺と結婚してくれ!)』

 

『(!)』

 

『(この先、何年後、嫌、何十年もずっと一緒に居よう!二人で!)』

 

『(yes!勿論です!ワタシも勇人と一緒に居たい!離れたくない!これからもずっと幸せに暮らしたいです♪)』

 

二人の誓い合う言葉を思い出し、歯をくいしばる。

 

「俺は、まだ……死にたくない!こんなところで幼馴染を助けないまま……この太刀に命を喰われ、大嫌いな奴をぶん殴れないまま死ぬのは嫌だ!!」

 

勇人はスサノオを振り上げ、洋介の顔に炸裂させた。

 

「っ!!?」

 

洋介が吹き飛ぶと、勇人は立ち上がる。

 

「父さん…母さん……俺はまだ、そっちには行かない!シンディや皆が……仲間が俺を呼んでいるんだ!!こんなところで俺は……俺は…俺は!!まだ!!くたばらねえええええっ!!!!」

 

勇人が紅き月と黒き太陽が輝くホライゾンへ轟き叫ぶと、勇人の中にある何かが光、メビウスの輪を描く。すると、勇人の体が光だし、姿が変わっていく。

 

「何だ?…この不思議な光は?」

 

光が勇人の体に集まり、形を変えていく。それは和をモデルにした蒼い甲冑であり、黄金の装飾、兜の立てものが日輪と三日月の様な装飾になっており、勇人の面に禍々しく怒り表情を顕にする鬼面と面頬が付けられており、鬼神と思わせていた。

 

「これは?」

 

するとスサノオの鞘に銃の引き金とマガジンが装着されていた。

 

「抜けって言うのか?」

 

勇人は緊張しながら、刀を抜こうとすると、洋介が突進してくる。

 

「一か八か!!」

 

勇人はスサノオを持ち、勇人に向かって走り出す。勇人がスサノオを抜き取ろうとすると、何処からか声が聞こえてきた。

 

「まだだ!!」

 

「!?」

 

「相手の軌道と隙を見分けろ!」

 

「相手の軌道…」

 

勇人は何故か目を瞑り、洋介の行動を読むと、勇人が足を止めた。そして洋介の拳が振り下ろされると、目を瞑ったまま、右に回避し、粒子発勁を放つ。

 

「っ!!?」

 

すると洋介の腕が、急に脱力すると、今度は足に粒子発勁を放つ。

 

「な!?何でだ!?……腕と足に力が!!」

 

そして勇人が洋介の前に回り込み、居合の体制を構える。

 

「プライドとエゴを守ろうとして…破壊神に魂を売った洋介……覚悟はできてるだろうなぁ?」

 

勇人の鋭い眼差しと鬼面と面頬から放つ殺意と恐怖、そして勇人の笑顔が、洋介の心を震わせた。

 

「(!!!?、な……何だ!?…コイツの眼差しを見ていると、何だ……何でこんなに震えてるんだ!?……な…何なんだよ!?)」

 

洋介が恐怖に溺れる最中、勇人は太刀の鞘の引き金を引いた。太刀が弾丸のように飛び出すと同時に、刀身が光り輝く、そして光が薄くなると、刀身がその輝きを顕にした。それは…刀身全てが宇宙であり、今にも吸い込まれそうな神刀であった。そして勇人はスサノオで居合斬りをし、洋介の後方に移動しており、ゆっくりとスサノオを鞘に収め、納刀した。その時、粒子発勁で動けない洋介の強靭な腕と脚が切れ、塵へとなる。

 

「い…い!…痛ええええええええええええええええっ!!!!!!!!!!!」

 

洋介は悲鳴を上げ、転がる。

 

「な!!何でだ!!!?何で抜けたんだ!!!!?」

 

洋介はぐしゃぐしゃで泣きべそをかく顔で勇人に問うと、勇人はスサノオを抜き、答える。

 

「知らんな……それと、お前の質問なんて聞きたくないな」

 

勇人は怒りの表情で、スサノオを構え向ける。

 

「ひいいいいいいいいいいっ!!!!!」

 

洋介は恐怖に怯え、逃げようとする。すると勇人が洋介の髪を掴み上げ、睨み付ける。

 

「何勝手に逃げようとしてるんだよ?……お前が今までしてきた事は……どれほど物か……そして、お前やお前の親父によって、何も罪もない人達が一体どれだけ自殺し…強姦、殺害、奪われたことか……その身で彼等の全ての激痛を味わえ!!!」

 

スサノオが横に振られ、洋介の腹を切り裂いた。腹から大量の赤い血が噴出し、さらに悲鳴を上げる。

 

「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

そして勇人は洋介を天高く投げ捨て、居合の構えをする。

 

「あの世で俺の父さんと母さんと苦しんだ人達が……お前を八つ裂きにしたいと待っているぜ!!」

 

「ぎやああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

勇人は引き金を引き銃弾の様に飛び出すスサノオで居合斬りをし、洋介を真っ二つにするかと思いきや、片方の手で、洋介をキャッチしていた。洋介は死ぬ怖さと殺される恐怖により、泣きながら気絶していた。勇人は洋介を下ろすと、シンと陽弥達が駆け付ける。

 

「勇人!大丈夫か!?」

 

「えぇ…」

 

勇人が返事すると、シンが要請したブルーサンズの隊員とトゥーリアンのウォーダンと言う所長に言う。

 

「コイツを囚人収容船パーガトリーの監禁室にブチ込んどけ!!」

 

シンが怒鳴りながら命令し、ブルーサンズが輸送艇であらゆる拘束具で縛り付けられた洋介を運び、囚人収容船パーガトリーへとワープした。

 

「洋介の奴はどうなるんですか?」

 

礼二が問うと、陽弥が説明する。

 

「パーガトリーは徹底した管理と厳しい懲罰がある…だがブルーサンズは…裏では奴隷売買するのが目的で、行き先はエクリプスが管理しているトリリウム採掘場だ……そこで働かされる奴隷の大半が犯罪者奴隷で、ほとんど朝から晩まで強制労働が続くらしい。脱走も完璧に200%不可能な大要塞で物凄く厳しい監獄なんだ…」

 

「労働などしたことのない洋介にとっては地獄だろうなぁ…しかし、そうでなくては。自分の犯した罪を身を持って味わわなければ、死んだ者や強姦された者達も納得しないだろう…」

 

「無理もない……薬で元の姿に戻されたあと、激しい精神苦痛と飲んだスーパーヤクトの中毒症状がでる……たぶん、どの犯罪者奴隷よりも地獄だろう…」

 

陽弥はそう言い、エルシュリア城へ戻るのであった。

 

 

 

 

 

勇人は自室で鞘から抜けたスサノオの手入れをする。

 

「綺麗な刀……」

 

オムニバースの様に輝くスサノオに、勇人はさらに手入れする。その時、彼の自室の手前に、未来の陽弥が腰掛けて、タバコを吸っていた。

 

「ここまでの役目は終えた……わしはもう、自分の未来に戻っておくぞ…」

 

ワームホールを展開した未来の陽弥は、未来へと帰還したのであった。

 


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