クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 銀河の守護者 作:オービタル
帝国軍艦隊から逃げている陽弥は、ジスタードを使いこなし、帝国軍を翻弄する。コーパス艦隊とゼルドリアン艦隊のメガ粒子砲が同士討ちになり、仲間割れをしていた。陽弥はその隙に隠密部隊がいる前線基地へと戻り、共和国行政府に報告していた。
『情況を報告してくれ、隠密部隊特務大佐 ズィルバーンよ…。』
「最高議長、惑星サイロックスにて帝国軍がクアンタの遺物を調査していました。現在は密林惑星の帝国基地を、我々隠密部隊の前線基地にて奴等の行動を偵察しております。」
『なんと、帝国の基地をズィルバーン直属の前線基地にするとは……。それより、その"クアンタ"とは何なのだ?』
「……数十億年前に存在し、我々の様な種と生命を誕生させた…最初の種族でございます。彼等の技術力は遥かに優れており、コーパスはクアンタの遺産を欲しがっております。」
「む〜〜……クアンタの遺産か…それは凄い物か?」
「えぇ、とてつもなく……」
「クアンタの遺産か……」
「……(家の嫁と義姉さんはそのクアンタの王家の末裔だけど…未開惑星保護条約の為、会わせませんよ♪)」
「良し、ではズィルバーン特務大佐よ…君に新たな任務を命ずる。帝国よりも先にクアンタの遺産や遺物を先に見つけ、こちらの戦力にせよ。」
「仰せのままに……」
陽弥は最高議長にお辞儀で返すと同時に通信を切る。そして前線基地のラボでニケから授けられたクアンタの技術を見る。
「凄い……曾祖母は、ずっとこれを守っていたんだ……クアンタ人の主力武器のほとんどが未知の光学兵器で、とてつもない艦艇を持っていたのか……。しかも放射能除去装置や衛星超兵器、自動光学障壁もか……ん?でも待てよ……」
陽弥は前線基地での受信メールを思い出す。
『我々はついに、曙光の女神 ニケとザ・コアを出現させる種族"歌の民"の居場所を示すクアンタの遺跡を見つけた……。』
「曾祖母はともかく、ザ・コアを出現させる種族"歌の民"……何のことだ?(これはじっくりと調べる必要があるなぁ……)」
陽弥はそう言い、クアンタのデータの解読を始めるのであった。
正にその頃、第一宇宙の治安維持国家"宇宙秩序軍"の方では、207宙域で、帝国艦隊と抗戦を開始していた。帝国艦隊を指揮していたのは、フェメシス騎士団の一人 ガイラスであった。
「フンッ!弱すぎる!……秩序を守る気あんのかぁ!?」
ガイラスは笑い、帝国の制式量産型ローガストメイル『ウンブラー』と重量級量産機『サングイース』と共に秩序軍を圧倒していく。秩序軍アドバンス級駆逐艦やその外殻に取り付いて防衛している秩序軍の簡易型途戦術兵器が誘導ミサイルやバルカン式レールガンを乱射するが、サングイースのビームメイスによって破壊されると同時に、駆逐艦も撃沈されていく。さらに秩序軍の汎用宇宙戦闘機で応戦するが、帝国の無人戦闘機により、撃墜されていった。その中にガイラスの操るイントゥルが標準型巡洋艦の艦橋に向けて、ギガントメイスを振り下ろされた。一方、秩序軍の方ではオペレーター達から次々と報告されていく。
「UOA第一艦隊!EEA第二艦隊が援軍要請!」
「第三、第四部隊が、全滅!」
「13番機!偵察機に接近!」
偵察機からの映像にガイラスのイントゥルが接近し、映像にノイズが浮き出る。
「偵察機!破壊されました!」
「見れば分かる!」
秩序軍リブラ級三番旗艦 アレイオスの艦長がデスクを叩くと、彼の元に白銀の甲冑を身に纏い、表裏が白と赤のマントと真紅のスカートマントをなびかせるベールゴールドのロングヘアーの女性が現れた。
「これは!アリアード大公殿下!」
「気にするな……私は只の流れ者の聖女でございます。」
「しかし!貴方様の存在は…我々秩序軍や全銀河の希望でございます!」
「……ジアートを出してくれ、私が自ら奴等に相まみえる……。」
アリアードはそう言い、格納庫へ歩いていく。
ガイラスは残りの秩序軍を一掃していくのであった。
「オラァッ!!もっとマシな奴はいないのかぁぁっ!!」
ガイラスは吼えながら、ギガントメイスを振り回していると、旗艦のカタパルトから何かが飛び出した。
「……?」
ガイラスが目を疑いながらも、確認しようした直後。
「ッ!!?」
神速の如く速さと共に現れたのは、ガイラスのイントゥルや帝国機体よりも大きな機体であり、白銀と緑の色をして、イントゥルの肩に騎兵銃槍が突き刺さっていた。
「何っ!?」
「見せて貰いましょう…帝国の方々よ…」
アリアードはトリガーを引き、彼女の機体『ジアート』の騎兵銃槍『アブソーバー』の銃口からノバビームが放たれた。イントゥルの肩や腕が破壊されると同時に貫通したノバビームが後方に待機していた帝国艦隊にも被害を出した。
「ノバビームだと!?あんなの使える奴が三人もいたのかよ!!?」
ガイラスの言葉を接触回線で聞いていたアリアードは、ガイラスの言葉を疑う。
「三人?」
ガイラスはギガントメイスを振り下ろし、アリアードから距離を取る。
「それを使えるのは……クアンタ人の筈!……お前は……まさか!!?」
「そう……私はアリアード……いいえ…『アリアンロード・ヴェルデ・クアンタ』…。」
アリアードの本名にガイラスや帝国兵も驚く。
「何だと!?」
「率直に言う……ノバビームを使えるのが三人とは?」
「うっせぇっ!俺等に抗う護星神とクアンタの姫とレオンの事を言ってんじゃねぇ!!」
「なるほど、つまり私達のいる宇宙の他に…クアンタ皇家の生き残りがいるのか……なら!」
アリアードはアブソーバーを上空に突きつけ、叫ぶ。
「クアンタ一族ヴェルデ皇家の名においてこの我!"鋼のアリアード"が貴様らに万死を与える!秩序軍!前進せよ!!」
《うおおおおおぉぉぉぉぉ〜〜〜〜!!!!》
アリアードの言葉に、秩序軍は声を上げ、陣形を組み、突撃していく。圧倒出会った筈の帝国艦隊が次々に秩序軍に圧されていくのであった。
「クソッ!!こんな筈では!!」
ガイラスは怒鳴り、ギガントメイスで敵艦の攻撃から防御する。
一方その頃、第三宇宙での452宙域では、カロル率いるネブラ銀河帝国強襲艦隊がファウンダー軍事盟約連邦と汎銀河統一帝国の同盟国の総旗艦内で交戦していた。ネブラ銀河帝国兵が軍用魔獣であるクブロウが艦内を走り抜ける。そしてカロルは複数の帝国兵を連れ、阻害してきた統一帝国兵と連邦兵に容赦なく、ビームブロードで斬り裂く。すると統一帝国兵と連邦兵の中から側頭部に羽飾りをした兜、白銀の甲冑を身に着け、両手にブロードソードとシールドを持った茶髪の美少女が剣を突き付けてきた。
「貴様は?」
「私は『メリダ・イスリーフ・クアンタ』……クアンタ一族のイスリーフ皇家の姫よ」
「クアンタの?……あの宇宙にいるレグレシアの姫の従姉妹と言う事か…。」
「レグレシア?私の従姉妹?どういう意味ですか?」
「知りたければ……この私…グリニア帝国直属新生フェメシス騎士団団長 カロルを倒してみろ!!」
カロルは紅い瞳でメリダを睨み、黒い翼とコンドルレッグを展開し、神速の如く速さでメリダに襲いかかる。
「えぇ!そうさせてもらいますわ!私の実力…この"神速のメリダ"の名を…その頭に刻み込みなさい!団長さん!!」
メリダはそう言い、神速の如く速さで駆け抜け、カロルのビームブロードとブロードソードの刃がぶつかり合う。
また、第八宇宙でも同じことが起こっていた。シャンドゥア傭兵軍団とゼルドリアン帝国重装甲部隊が、熱帯雨林の惑星に先住民族を奴隷にしようとしたが、側頭部に羽飾りを付けた兜、ポニーテールのドミ・ミドル、白銀の甲冑を身に着けた長身の女性が、手に矛槍を持ったまま、帝国兵の死体の山の上に立っていた。
「やれやれ……また、つまらん羽虫共を殺してしまった……。」
すると女性は後ろでまだ生きていた帝国に向けて、ハルバードを投げ付けた。ハルバードの矛が帝国の頭部に突き刺さり、絶命した。女性はハルバードを抜き取り、名を轟かせる。
「この我!『シーラ・レスヴァリス・クアンタ』様に!膝魔付け!!虫ケラがぁっ!!」
シーラは怒鳴りながら、天に向かって叫ぶ。
そして第十一宇宙でも……抗戦で市街地が崩れ行く中、孤児を守ろうとしている白銀の甲冑を身に着けた女性が孤児に言う。
「いい…私に付いてきて」
女性はそう言うと、腰部に収納していた弓を持ち、矢を引き絞り、天に向けて放った。すると矢が拡散し、グリニア帝国兵士の頭上に突き刺さる。安全確認し、孤児達を連れて行こうとすると男の子が訪ねる。
「お姉ちゃん…名前は?」
「……♪エルネア……『エルネアス・ケルビス・クアンタ』♪」
妖艶なエルネアは孤児達を連れて、高速大型揚陸艇に乗り込み、星から離れる。
その頃、ホライゾンでは…サラとアンジュ、エミリアが
子供達と一緒に入っており、それぞれの日常生活の事を楽しく話し合っていた。
「えぇ!?アンタの名前って義理の名!?」
「はい、本名は『エミリア・レグレシア・クアンタ』と申しまして、クアンタ一族のレグレシア家の姫だったのですが、今ではギデオン家の夫人です♪」
「へぇ〜、"人は見かけによらぬもの"って言うことね」
「えぇ…その身分のせいか、王家や貴族が膝間づいちゃうのです…」
「え!?こっちの私とサラ子も!?」
「いえ、御二方は私にとって大切な家族なのですから♪」
エミリアは微笑み、アンジュとサラが感心していると、エミリアの背後からヒルダが現れ、突然エミリアの胸部を揉み始めた。
「んひゃあっ!?」
「ったく!アンジュやドラ姫も含めて、このアホ姫はこんな良い豊満な胸部をしやがって〜〜!!」
ヒルダはさらにエミリアの胸部を揉む。
「ひええっ、あちらのお義母様!勘弁してください〜!」
エミリアは悲鳴を上げ、ヒルダはエミリアの豊満な巨乳の情報を知るのであった。
その頃、陽弥はクアンタのデータを読み取り、次々とユニークなデバイスを開発していった。
「なるほど……このデバイスは熱源を含み、妨害電波を阻害、敵の思考を読み取る事が出来るとは……凄いなぁ……。」
陽弥がクアンタの情報を検索していると、あるウィンドウが浮き出た。
「ん?……これは……」
それは、全宇宙の星図であり、ザ・コアとザ・シードの場所が赤と青のアイコンとして、点滅していた。さらに、グレーとシアンに点滅するアイコンも表示されていた。
「これは……ザ・コアとザ・シードの場所を指している……ザ・シードはホライゾンに……ザ・コアは………リィボラ!!?」
陽弥は驚く。リィボラとは、かつて陽弥の父であるシンによって、地に堕ちたクアンタの慣れ果であるドゥームと共に、消えた筈の闇の意思を持つクアンタの星でもあった。
陽弥はポーチからパッケージングされている栄養素が入った密封パックドリンクゼリーを飲む。
「うぇ……これが共和国軍の飯か……」
陽弥は味気の無いドリンクゼリーで落ち着きを取り戻し、リィボラの座標を見る。
「何で事だ……惑星リィボラは……まだ消えていないのかよ……」
陽弥が混乱していると、緑に光るアイコンが各宇宙に表示される。
「これは…?」
するとアイコンから、ある名前が名表された。
『ヴェルデ家』
『イスリーフ家』
『レスヴァリス家』
『ケルビス家』
『レグレシア家』
それぞれの姓の中にエミリアの本姓であるレグレシアも表示されていた。
「何故エミリアが?……それに残りの五人は……まさか!?(残りのクアンタ人!?……今まで、エスメラルダ義姉さんが探していたクアンタ人が……あっさりとこれで座標されるなんて!?)……ん!?」
その時、陽弥があるデータメモリが表示されていたに気付き、その名前に陽弥は驚く。
『Victor』
「!!」
陽弥は心を高ぶった。かつての戦友のメモリがクアンタの遺物に保存されていた事に……。陽弥は歓喜に満ち溢れ、早速作業に取り掛かるのであった。