このすば*Elona 作:hasebe
アクセルの街から山脈地帯の方角へと半日ほど歩き、山の麓の獣道を進んでいった先に、一軒の頑丈な作りのログハウスが建っている。
このログハウスはすぐ近くの山の岩肌に存在するダンジョンの避難所として機能しており、駆け出し冒険者達の休憩場所となっているのだ。
そのダンジョンの名はキールのダンジョン。
とある魔法使いの名を冠した、ある意味とても分かりやすい名のダンジョンである。
それは遠い遠い昔のお話。
キールという名の天才アークウィザードが一人の貴族の令嬢に恋をした。
街を散歩していた令嬢に、今まで人生の全てを魔法に捧げて色恋になど目も向けなかったキールは一目惚れをしてしまったのだ。
だが、それは身分違いの決して許されぬ恋。
それをよく分かっていたキールは恋心を忘れるかのようにひたすらに魔法の修行と研究に没頭し続け……やがてキールは国一番のアークウィザードと呼ばれるようになった。
国の為に惜しみなく力を揮い、国を発展させ、多くの人々に称えられたキールに王はどんなものでも望みを一つ叶えようと言った。
キールが何を望んだのかは知られていないが、今もなお人々に伝わっている話としては、キールは件の貴族の令嬢を誘拐してダンジョンを作り立て篭もったのだとか。
その後キールと令嬢がどうなったかは彼の望みと同様に伝えられていない。
今となってはそんなダンジョンが作られた経緯も殆ど忘れ去られ、駆け出し冒険者達の初めてのダンジョン探索の良い練習場所になっている。
……という話をあなたはアクセルの街の歴史が綴られた本で読んだ事がある。
そしてここ最近、アクセルの街の冒険者の間ではそのキールのダンジョンに謎のモンスターが出現しているという噂がまことしやかに囁かれていた。
あなたの調べでは第一発見者はダストのパーティー。
どういうわけかデストロイヤー戦に参加していなかったダストは他の冒険者のように報奨金を貰っておらず、懐が寂しい事になっていたのだという。
そして酒場で日々管を巻くダストを見かねた他のメンバーが小遣い稼ぎがてらキールのダンジョンに潜った所で件の謎のモンスターを発見したらしい。
あなたはキールのダンジョンに潜った事が無い。
今更駆け出し冒険者の潜るダンジョンに行く意義を見出せなかったのだ。
しかし今回、謎のモンスターと聞いては黙ってはいられないと意気揚々とキールのダンジョンに向かう事にした。あわよくば貴重な品を手に入れる事が出来ないだろうか、などと考えながら。
■
朝方にアクセルの街を出立してからおよそ数時間、丁度太陽が最も高く昇る時間帯。
雪深い道を踏みしめながらあなたはこれといって何のイベントも無くキールのダンジョンに到着した。
周囲を観察するがログハウスの中を含めて他の冒険者やギルド職員の姿は見えない。
今は冒険者の休みの期間である冬なのだし当たり前だが、ギルドは案外腰が重いようだ。
噂が流れ始めて間もない為今は調査の為の準備を行っているのかもしれない。
いずれにせよ自分にとっては都合がいいと切り捨ててあなたはダンジョンの入り口である綺麗に整備された階段に足を踏み入れた。
ダンジョンに潜る冒険者として常備していて然るべき、松明やランタンのような光源を手に持つ事無く。
長い長い階段をひたすらに降り続けていく。
入り口から既に十分以上は経過しているだろうか。
地上からの光が届かなくなって大分経つにも関わらず、未だ階段は続いており通路や広間といった場所は見えないしモンスターにも遭遇しない。
駆け出し冒険者向けのダンジョンというわりにはやけに階段が長いとあなたは感じた。
製作者なりの嫌がらせだろうか。足を踏み外して転げ落ちればまず死ぬだろう。
キールのダンジョンの階段に松明や蝋燭といった光源は設置されていない。
この階段の長さやキールのダンジョンのアクセルからの距離を考えれば当然である。
故に日の光が途絶えた今、あなたの身は無明の闇の中に在る。
この世界のアーチャーのスキルに千里眼という暗視が可能なスキルがある。
文字通り遠方の視認が可能になり光が無い真っ暗闇の中でも空間の把握が可能で置いてある物の形が分かる便利スキルである。
勿論魔法戦士であるあなたは習得していない。
だがあなた達イルヴァの冒険者は物理的、魔術的要因で視界を塞がれない限りデフォルトで暗視が可能なのだ。光源が無い程度で戦えなくなってしまってどうしてネフィアで戦えようか。
無論盲者でないあなたは敵と戦う際に松明やランタンのような光源は無いよりもあった方がいいに決まっている。
しかし流石に光の下と同じとはいかないまでも、数十メートル程度ならば視界を確保する事が可能だ。
故にあなたの足取りに澱みは無い。
まるで見えているかのごとく……否、あなたの目には暗闇の中であっても今もハッキリと地の奥に続いていく階段が見えているのだ。
さて、そうこうしている間にあなたの視界に長い階段の終わりが見えた。
ようやくか、と若干呆れつつも勇み足になる事は無く周囲を警戒しながら階段を下り終える。
下り終えた階段の先には通路が左右に分かれており、階段を降りてすぐの場所に朽ち果てた冒険者の死体が放置されている。
辛うじて人の形は保っているものの、やけにぐちゃぐちゃな死体だ。
しかし魔物に死体を荒らされたようには見えない。
まさかこの長い階段から足を踏み外して転げ落ちたのだろうか。
あなたも疲労困憊の状態で階段から足を踏み外して死んだ経験があるのでこれは他人事では無い。
それも一度とは言わず複数回死んだ事があるのだ。
あれは今のあなたであっても普通に痛い。
餓死や圧死、窒息死と同じくフル装備の廃人を殺し得る数少ない手段の内の一つである。
今のあなたは死ぬとどうなるか分からない。
精々これらの死因には気を配っておこうと考えて歩を進める。
■
さて、暫くダンジョンを進むあなただったが中々それらしいモンスターに出くわさない。
キールのダンジョンは階層自体は非常に広かったが今の所次の階層に続く階段を見ていない。一階だけのダンジョンなのだろうか。
そしてエンカウントするのはグレムリンという下級の悪魔やウィズとは比較にならない程弱いアンデッド、野生動物に毛が生えた程度の駆け出し冒険者が戦うような雑魚ばかりである。
謎のモンスターはどこにいるのだろう。
噂では人型をしているらしいが。
もしや既に狩られたか移動してしまったのだろうか。
そんな事を考えながら隠密スキルを使い敵と戦う事無くダンジョンを進み続けるあなただったが、ある程度進んだ所でずん、という震動と音が聞こえてきた。
この感じからして恐らくは爆発音だろうとあなたは当たりを付ける。
断続的に発生する音と震動を頼りにあなたが辿り着いた場所は一際大きい広間だった。
そこでは逃げ惑うグレムリン達を小型の何かが襲っているように見える。
やや離れた場所からあなたがよく観察してみれば、それは人型をしているようだ。
一言で表現すると仮面人形。
白黒の仮面を被った大人の膝の高さほどのサイズの人形が二足歩行で悪魔を追い回している。
逃げ惑うグレムリンが弱い魔法や石を当てると、たったそれだけで人形は派手に爆発四散してしまった。
まさかグレムリンの攻撃ではないだろう。
そして数分の観察の結果、人形は殴る蹴るといった攻撃はせずひたすら自爆しかしない事が判明した。
攻撃が当たったら自爆。
敵の隙を衝いて接近し自爆。
とりあえず自爆。
ノースティリスの爆弾岩やカミカゼイーク、ハードゲイのような敵である。
無数の自爆モンスターによる連鎖爆発は歴戦の冒険者をして恐れる物なので侮れない。
そんな厄介な攻撃方法を持つ図鑑に載っていない、あなたの知らないモンスター。
どうやらあれが噂になっていた謎のモンスターなようだ。
それはサイズこそ違えど、あなたが先日入手したバニル君人形にとてもよく似ていた。
というかアレはもう言い訳しようが無いくらいに完璧にバニル君人形である。
謎のモンスターを生み出しているのはバニルなのだろうか。
怪しんだところであなたは先日会った時にバニルはこう言っていたのを思い出した。
――店も更地になっていた事だしアクセルの街に来る途中に面白い物を見つけたので我輩はそこに行ってみるとしよう。
現状を鑑みるにあれはここの事を言っていたのだろうと思われる。
悪辣極まりない破滅願望を持つウィズの友人はキールのダンジョンに目を付けたらしい。
現在バニルは自爆するバニル君人形を使って本来キールのダンジョンに住み着いていたモンスターを駆逐してダンジョンの環境を整えている真っ最中という事か。
あなたはこのままダンジョンを進むか引き返すか考え、万が一バニルでなかった場合の事を考えて先に進み始めた。
どうかバニルではありませんように、と考えながら。
果たして、ダンジョンの奥深くであなたが見つけたのは扉の前であぐらをかいて黙々と地面の土をこね回して人形を作る仮面を被った地獄の公爵の姿だった。
分かっていた。分かっていたがあなたはそれでも一縷の望みを託していたのだ。
バニル本人ではなく、バニルのファンなだけで無関係の何者かだったりしないだろうかと。
だがいつだって期待は裏切られるものである。
あなたはウィズの友人が建設中のダンジョンに足を踏み入れてしまったようだ。
ノースティリスの友人があなた達他の友人に秘密で気合を入れて自宅を改装している最中に遊びに行ってしまった時のような、あなたの信仰する女神があなたの部屋のベッドであなたの使っている枕を抱きしめてごろごろ転がりながらおなかいっぱい甘い物が食べたいとか仕事辞めてずっとここに住んでたいとか他の女神のスタイルがよくて羨ましいとかあなたが
最後のは信仰者として非常に光栄とはいえ、そのような光景を見て見ぬふりをする情けがあなたにも存在した。
バニルは今も人形作りに夢中であなたに気付いている様子は無い。
敵であれば気づかれていないのをこれ幸いと全力で殺しに行くのだが、そこまで空気を読めないあなたではないしバニルの夢を邪魔する気も無い。
あなたはバニルに何も言わずにその場を後にする事にした。
完全に無駄足を踏んだと内心で思いっきり愚痴を吐きながら。
帰り際、何かの事故で冬眠から覚めたと思われる一撃熊を発見したので八つ当たり気味に狩ったあなたを誰も責められはしないだろう。
■
それから暫くの後のある日。
あなたの家を一人の女性が訪ねてきた。
自身を王国検察官と名乗った彼女の名はセナ。
やや小さめの眼鏡と長いストレートの黒髪が印象的な、目つきの鋭い女性だ。
表情を動かさずに淡々と話を続けるセナは良く言えば生真面目で仕事が出来そうな、悪く言えば頭が硬くて融通の利かない感じの印象を抱かせる。
「というわけでして、我々は今回の件を非常に重く見ています。王都でも名を知られ、デストロイヤー討伐に多大な貢献をされた中の一人であるアクセル随一のエレメンタルナイトであるあなたにも是非ご協力をお願いしたいのですが……」
さて、そんなセナの話ではキールのダンジョンから謎のモンスターが大量に湧き出しているのだという。
動いている者に取り付き自爆するという性質から、冒険者ギルドとしても対処に困っている状態なのだとか。
自爆系モンスターの厄介さはあなたも身に染みているのでよく理解出来る話である。
そしてセナの話を聞くに、どうやらバニルはダンジョン内部のモンスターを駆逐し終えたらしい。
バニルは配下の悪魔をダンジョンに配置すると言っていたし、人形が外に湧き出ているのはそれに気付かずバニル君人形をせっせと作り続けているからと思われる。
流石に配下ごと冒険者を爆殺したいわけではないだろう。
「報酬は相応に支払われると思ってくださって構いません。アクセルはあなたを高く評価しています。無論私個人も。……如何でしょうか?」
セナがあなたの顔色を窺うように問いかけてくるが、あなたは今回の件について一切手を出す気が無かった。
相手の正体を知らなければ飛びついていただろうが相手はウィズの友人である。
そしてバニルが現役の魔王軍幹部である手前決して口外は出来ないが、バニルの性質や目的を考えるとこの案件の危険度は極めて低い。
なのであなたは現在他に用事を抱えており、そちらに集中したいので申し訳ないがダンジョンに同行する事は出来ないとセナの申し出をキッパリと断った。
今回の話はデストロイヤー討伐のようなギルドから発注された緊急のクエストではなく、あくまでもセナの個人的な頼みなので拒否権はあなたにあるのだ。
「そう、ですか……残念です。ええ、本当に。ですが無理にお願いするわけにはいきませんね。もし気が変わりましたらご協力をお願い致します。私はこれから他の候補の方の所に向かった後、冒険者ギルドで人を雇いますので」
セナはそう言うと、若干名残惜しそうにあなたの方をチラチラと見ながらもあなたの家から立ち去っていく。
いかにも清廉潔白といった感じの、常識と良識に溢れた真面目そうな女性であった。
ノースティリスに連れて行ったら何日心がもつだろうかと意味の無い事を考えてしまうほどに。
「…………」
そんなセナをウィズは複雑な表情で見送っていた。
中々見ない顔にどうしたのだろうかと不思議に思ったあなたは素直に訊ねてみた。
ウィズを前にしてもセナはデストロイヤー戦の礼を言ったり社交辞令程度に挨拶をするだけで特別な反応をしなかった事からして、両者は普通に初対面であり知り合いだったり因縁を抱えていたりするというわけではないようだが。
「いえ、大した話ではないんですけど……なんだかセナさんって昔の私に似てる感じがするんですよね。こう、色々な意味で」
遠い目でそんな事を言うウィズにあなたは成程と思った。
両者共にクールで生真面目そうで融通が利かない……率直に言ってしまうとキツい感じである。
しかし写真のウィズは眼鏡をしていなかったのでそこまで似ているだろうか。
「……誰も眼鏡がどうとかそんな事は言ってないんですけど」
冗談である。
ウィズの直感に従うのならば、セナもかつてのウィズと同様に異性からアプローチを受けていない女性だという事だ。
つまりセナは他の異性に怖がられ、そんな自分を鑑みてこのままでは老後は一人になるのではないかと焦っていると……。
流石に下衆の勘繰りが過ぎるだろうとあなたはそれ以上この件について考える事を止めた。
写真のウィズ……カリスマ溢れる氷の魔女がどういう経緯を辿って今のようなぽわぽわりっちぃに変化したのかはあなたとしては非常に興味深いところではあるのだが。
ちなみにバニルから渡された当時のウィズの写真は額に入れて飾っておきたかったのだが、ウィズが捨ててくれなかったら私は家出しますと宣言したので泣く泣く処分した。今のウィズの写真なら持っていてもいいらしいのだが。
ちなみにウィズはセナが持ってきた今回の件がバニルの仕業だとあなたから知らされているので応援に行けとは言わない。
友人が自分の手を借りずに勝手にダンジョンを作っている事については不満があるようだが、今は店が物理的に潰れてしまっているので文句は言えないとの事。
■
「それじゃあ、続きを始めましょうか」
ウィズがそう言い、あなたが頷く。
彼女はニコニコと笑って全身から私期待してます、というオーラを発しているがこれは別にいやらしい話ではない。
セナが自宅に訪問してくる前、あなたはウィズと共にノースティリスの学習書の書き写しを行っていた最中だったのだ。
つまり用事があったというのは嘘ではない。
あなたが学習書をゆっくりと音読し、どこからか持ち出してきた度が入っていない伊達眼鏡をかけたウィズがそれを書き記す。
稀に書き間違いが発生したり言葉のニュアンスの確認、ノースティリス独自の言い回しや単語の為に止まる事があるものの、それ以外は特に問題は発生していない。
いずれコピーし終えたウィズは学習書を読み込みノースティリスのスキルを習得するのだろう。
今からその時がとても楽しみである。
そんな、友人と自宅で過ごす静かで穏やかな時間。
あなたは学習書を音読しながら、ふと自分の隣で楽しそうにノートに異界の知識を記し続ける友人の事を改めて考え始めた。
ウィズは人間から人外であるリッチーになった女性であり、アンデッド故に寿命の無い彼女は永劫の時を存在し続ける事が可能な存在だ。
そのせいだろうか、あなたから見てどうにもウィズは他人と一線を引いている感じがする。
ウィズは決して人付き合いが嫌いだったり苦手というわけではない。
むしろ新しい友人であるゆんゆんへの対応を見るに人付き合いは大好きな方だろう。
しかし心は人間であると自負するウィズは自分の身がリッチーであるにも関わらずそれを隠して人間の中で暮らしているという事に心のどこかで負い目を感じているようなのだ。
最近はそうでもないが以前のウィズはよく事あるごとにリッチーの私なんかに、と言っていたのであなたはこれに関してはほぼ確実だと思っている。
バニルはそんなウィズがこのままではいずれ一人でいるのに耐えられても独りになるのは耐えられなくなると予想していた。
ではどうするのか。
今ならギリギリ大丈夫だからと、ウィズとの付き合いを辞めるなどというのは論外だ。全くもってお話にならない。
友人の為を思って突き放すなどあなたにしてみれば正気の沙汰ではなかった。
かといってノースティリスに帰還しないという選択肢も却下である。
あなたはこの世界の事は嫌いではないし、平和で過ごしやすいとてもいい場所だと思っている。
しかし骨を埋めるとなれば話は別だ。そんな覚悟はまるで出来ていないし必要ない。
不慮の事故に近い形でこの世界に迷い込んだあなたは女神アクアに招かれたキョウヤ達ニホンジンと違いどこまでいっても所詮は異邦人に過ぎず、骨の髄までノースティリスの冒険者なのだから当然である。
あなたが帰還する主な理由は信仰する女神、友人達、ペット、コレクションの数々があなたを待っているからだ。
しかしあなたは仮にそれらが無くても帰らねばならないと考えている。
バニルの手紙を読んで強くそう思わされた。
人間であるあなたには永劫の時を生き続ける事が可能なウィズと違い寿命というものがある。
ノースティリスであれば若返りのポーションを服用する事で半永久的に生き続ける事が可能なのだが、この世界ではそうもいかない。
あなたは若返りのポーションをかなりの数持ち込んでいるが、今以上の数の入手の手段が無い以上は寿命に限りがあるに等しい。
あなたに人間をやめる気が無い以上、ノースティリスに帰らなければいずれ老いて死ぬ未来が待っているのだ。
つまりこの世界とノースティリスを行き来する方法を見つけ出す必要がある。
実はこれはあなたも前々から考えていた事だったりする。
長い付き合いであるノースティリスの友人達と新しい友人であるウィズの間に差は無いのだからどちらを優先する、などという事が無いのは当然の話だ。
こうして一度目があったのだから二度、三度目があってもおかしくはないだろう。
ただ、行き来するのは自分と自分のペット達、そして信仰する女神だけにしておいた方がいいだろう。
他の友人は自分と違って色々と濃い部分があるからこの世界が危ない。あなたはそう考えている。
エヘカトル信者は人格こそ随一の善良さを誇るが、声を聞かせただけで一般人を発狂死させるなどある意味危険度も随一なので駄目である。
ちなみに、あなたの他の友人達も密かにあなたと同じ事を――自分は他の奴よりマトモな方だと――考えているがあなた達はそれを知らない。
《エヘカトルの狂信者》
あなたの友人の一人。性別は女。
外見は幸運の女神を髣髴とさせるスタイル抜群で金髪ロングな絶世の美女。
本人の性質はノースティリスの冒険者とは思えないほどに極めて良識的で常識的。
趣味はガーデニングと編み物と歌を歌う事。
自分から積極的に喧嘩を売る事は無いが戦闘力はあなたや他の友人達と同等。
穏やかだがいざ戦いとなったら躊躇しない芯の強い女性。
極度に興奮すると影から極彩色で流動的に蠢く冒涜的なナニカが溢れ出てくる。
一見すると非の打ち所が無い様に見えるが一度口を開けば出てくる毒電波に汚染された謎言語が全てを台無しにする。
黙っていれば美人、程度で済めばよかったのだが同格以上の存在でなければ彼女の天上の調べの如き美声の前に等しくガリガリと正気を削られる事になる。そこに人も人外も機械も関係ない。
街中やパーティー会場で歌おうものなら大惨事は不可避である。
時々彼女をナンパしようと声をかける無知な駆け出しが現れるが、一言二言彼女と会話しただけであっけなく発狂、精神崩壊する。
一応ボディランゲージや筆談で意思疎通は可能だが本人はお喋りが大好き。
自身の信仰する女神やイス系のペットだけが話相手。
同格にして癒しの女神の恩恵で
二人の会話を傍から見ていると異星人とコミュニケーションをとっているようにしか見えないとは他の友人達の共通の認識。
マニ信者とはとある理由により犬猿の仲。