このすば*Elona   作:hasebe

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第137話 星と闇の比翼

 多くの自然現象がそうであるように、火もまた正負の印象を同時に内包した現象の一つである。

 

 安息、文明、信仰、浄化、生命。

 暴力、破壊、災厄、汚染、死。

 

 あなた達の前に立ちふさがった二羽の不死鳥は、まさしくそれらを体現する存在といえるだろう。

 

 浄化の力を持つ星の炎。

 呪詛の力を持つ闇の炎。

 

 そしてこの不死鳥達が持つ力は、色彩こそ間逆であるものの、奇しくもあなたとウィズの力や関係性に酷似していた。

 

 あなたが扱うのはエーテルの魔剣。

 無数の血と死で呪錬されたおぞましき星の力。

 他にも破壊()だの災厄(メテオ)だの殺戮(ジェノサイドパーティー)だの、あなた自身物騒な文言には全くもって事欠かない。

 

 ウィズは不死者の王ことリッチー。

 言わずと知れた闇の極致であり、格としては大悪魔に比肩する。

 しかし彼女は彷徨えるアンデッド達を天に還す事を己が使命と定めており、事実竜の谷における冒険でも数多くの魂に安息を与えてきた。

 つまり浄化の力を行使していると言えなくもない。

 

 鏡写しのような不死鳥とネバーアローンの戦い。

 あなたの見立てでは蒼い不死鳥の総合的な強さは最低でも黒い不死鳥と同等であり、ウィズもそれは間違っていないだろうと答えた。

 

「今一度確認しておきますが、現状の私達には黒い不死鳥を殺害する手立てがありません。それどころか無茶に無茶を重ねる事でようやくまともに戦えるようになり、黄金の林檎でようやく戦闘不能に出来ました。蒼い不死鳥が同等の不死性を持つのであれば最悪撤退も視野に入れる必要があるかと……逃走が可能であれば、の話ですが」

 

 薄々不可能だと理解しつつも、ウィズは逃走を選択肢の一つにあげた。

 新たに参戦した蒼炎の不死鳥もまた親の敵とばかりにあなた達を鋭い目で睨みつけ、壮絶なまでの敵意と殺意を向けてきている。

 たとえここであなた達が脱兎の如く逃げ出したとしても、どこまでも追跡してくるだろうということがあなたには容易に想像出来た。

 それこそ竜の谷の外、地の果てまで追ってくるとあなたは確信している。竜の谷の外で暴れる番の不死鳥は人魔に壊滅的な被害をもたらすだろう。

 

「もう一回林檎使っちゃいます?」

 

 渋面を作りたくなる頼もしさ全開の提案を行うパートナー。

 だがあなたはこう答えた。

 自身の勘が正しければ不死はともかくとして、戦闘自体は格段に楽になる筈なので、少なくとも今すぐ林檎を使う必要は無いと。

 

 ウィズは思わずといった風に形容しがたい表情であなたを見やった。

 確かに頭と正気を疑われてもおかしくない発言だが、あなたは決して嘘を言っていない。

 蒼と戦う中で黒の不死性を打破する手立てが見つかるかもしれないと考えてはいるが、変に隠し立てをしているというわけでもない。

 言葉の通り、先ほどまでより楽に戦えると予想している。

 

「本気ですか?」

 

 ここで正気かと問いかけてこないあたり、ウィズの善性が垣間見えるというものである。

 単純計算で脅威は二倍。

 更に言うのであれば浄化の蒼炎はウィズに覿面に効くだろう。

 常識的に考えれば逃げの一手か形振り構わぬ全開戦闘か最終兵器(即死林檎)の口内投入が圧倒的に正しい。

 それを理解してなおあなたが前言を翻す事は無い。このまま問題なく戦えると。

 

「――――!」

 

 自信の根拠をウィズが尋ねる間も無く、甲高い咆哮を合図に、天高く舞い上がる二羽の不死鳥。

 今まさに崩壊しつつある帳を突き破り、白夜に蒼黒の螺旋が描かれる。

 一糸乱れぬ連携を見せる不死鳥は灼熱の比翼と呼称するに相応しい。

 

 油断無く速度を引き上げるあなたはしかしその光景を見つめながら確信を深めた。

 第二ラウンドにおいて主導権を握る事になるのは相手ではなく自分達だと。

 

 楽観と覚悟。

 互いに異なる感情を抱きながら、廃人とリッチーが蒼と黒の奔流を迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

 白夜焦原の空を不死鳥が飛ぶ。

 飛翔の軌跡は蒼と黒、二色の筆を操るかのごとく空の画板に炎の線を走らせた。

 そして描かれた二本の線は竜巻、閃光、弾、壁、津波といった形で不死鳥の意思、つまり憎悪と殺意へと変換され、焼け焦げた大地に降り注いでいく。

 

 浄化と呪詛。

 炎に秘められた力こそ正反対なれど、いずれもただの一撃で強固な城塞を容易く蒸発させ、人々の営みを灰も残さず無に帰すだけの威力を持っていた。

 天の裁き、あるいはこの世の終焉と呼ぶに足る、強大な力。破滅の嵐。

 そんな攻撃がたった二人の冒険者に向けられ、叩きつけられる。

 

 だが、しかし。

 地から天に放たれる攻撃もまた存在した。

 

 黒雷、氷嵐、爆炎、閃光。

 青い斬撃と光条。

 絶え間なく乱れ飛ぶそれらは天から降り注ぐ炎を打ち払い、打ち砕き、彼方の空を飛ぶ不死鳥を撃墜する。

 何度でも、何度でも。

 

「…………」

 

 そんな光景を、ゆんゆんは、戦地の遥か彼方で見守り続けていた。

 結界に護られた非力な少女は、ただただ必死に、そして真摯に祈りを捧げる。

 地獄と呼ぶことすら憚られる中で今も戦い続けている、二人の師の無事を。

 

 

 

 

 

 

 楽しくて、嬉しい。

 それは、あなたと共に不死鳥と戦うウィズが抱く、嘘偽りの無い感情だ。

 

 楽しくて、嬉しい。

 今の自分には、英雄と称えられていたかつての自分達が常に背負っていたもの、背負うべきだったもの、背負わなければいけなかったものが何もない。

 正義、大義、使命、人々の期待。

 そういったものが一切合財介在する余地の無い、どこまでも自由で純粋な闘争に身を投じている。

 

 楽しくて、嬉しい。

 何故ならそれは、幼き頃の彼女が憧れ、夢見ていた冒険者の姿そのものだったから。

 あの日なりたかったものになれている。心からそう思えるから。

 

 楽しくて、嬉しい。

 あなたという、かつて夢見たような冒険者と肩を並べ、強敵と戦っているから。

 

 楽しくて、楽しい。

 それは嘘でもなんでもない、ウィズの素直な気持ち。

 

 

 だが、しかし。

 

 

(だからこそ見えてくるものがあるわけで……)

 

 自身の防御とあなたの援護と不死鳥の攻撃への対処を続ける中、ウィズは心中で深く嘆息した。

 あなたや不死鳥に対してではない。

 これは往時の感覚、いわゆる戦闘勘を取り戻せていないと認識した自分自身へ向けられた失望だ。

 

 ニュークリアグレネードを巡るあなたとの喧嘩や闇の中の空戦では気付かなかったが、今になって彼女は理解する。

 現役時代はおろか、幼少期と比較しても、自分が著しく衰えているという事実を。

 

 思考と動作に僅かな間隙がある。ノータイムで動けていたのに。

 自分の連携に粗が見える。連携なんて即興でも完璧にこなせていたのに。

 集中すると視野が狭くなる。常に目の届かない範囲まで見渡せていたのに。

 深い部分まで読みきれていない。敵味方の動きなんて手に取るように読めていたのに。

 最善の対応が取れていない事が分かる。最善手なんて打てない方がおかしかったのに。

 自身の性能を十全に発揮しきれていないと痛感する。そんな者はどれだけ強くても二流もいいところだと思っていたのに。

 

 戦えば戦うほど、本当の自分はこんなものではないと、もっと上手くやれる筈だという忸怩たる思いばかりが募っていく。

 かつては呼吸するように出来ていた事が出来なくなっている事実を突き付けられる。

 

(現役時代の私に見られたら、あまりの不甲斐なさにきっと怒鳴り散らされちゃうでしょうね。今すぐ私と交代しなさいって)

 

 思わず自嘲する。

 長年に渡るアクセルでの平和な隠居生活は、魔王軍に恐れられた英雄の心身を錆付かせるに十分すぎるもの。

 現役を退いた後も魔道の研鑽だけは怠っていなかったし、あなたとゆんゆんに混じって運動するようになったり元同僚であるベルディアに触発された結果、ちょっと全力疾走した程度で息切れしたり筋肉痛になるといった、目を覆わんばかりの無様を晒さないだけの体は取り戻せた。

 しかし実戦から遠ざかっていた事実に変わりはなく、竜の谷でも立ち塞がる全てを蹴散らすばかり。

 不死鳥という真剣に戦う必要のある敵に相対する事で初めて自覚させられた、魔法使いとしてではなく、戦う者としての明確な劣化。

 

 少し前までならそれでもよかった。

 リッチーである自分が現役時代のように全力で戦う事など無いと思っていたから。

 だが今となっては、とっくに現役は引退したから、などと甘えた事は言っていられない。

 可能な限り近いうち、自分を徹底的に叩いて追い込む必要があるとウィズは認識していた。

 少しでもかつての自分を取り戻し、更にその先へ進むために。

 

 ウィズがこうも必死になる理由は、言うまでもなく共に戦っているあなたが原因だ。

 ゆんゆんであればどちらも同じくらい凄いと言うだろうが、他ならぬウィズはあなたと自分の間にある壁を感じ取っていた。

 

 判断の早さが違う。

 連携の巧みさが違う。

 視野の広さが違う。

 読みの深さが違う。

 行動の正確さが違う。

 戦闘者としての純度が違う。

 

 嬉々として立ち回り、エーテルの魔剣を振るう廃人。

 その姿は、あなたの隣に立ちたいと願い、あなたに置いていかれる事を厭う不死王の心の柔らかい部分を否応無く刺激し続けていた。

 

 だがそれは何もおかしい話ではなく、むしろ当然の事ですらある。

 こと戦闘経験という要素において、質量共にあなたを上回る者はこの世界に存在しない。

 あなたはウィズより遥かに長い期間活動を続ける現役の冒険者であり、鍛え上げたペットと共に個性豊かな友人達と殺し殺されを日常的に繰り広げていたのだから。

 

 無論ウィズとしても彼我の戦闘経験の差については熟知している。

 だがそれはそれ、これはこれ。

 彼女はあなたの足を引っ張るなど絶対に嫌だったし、気兼ねなく頼り頼られる関係になりたいと思っているし、何よりも負けず嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 ただひたすらに災厄の焔を退け、殺意を打ち払い、敵を撃墜する。

 そうして二色の不死鳥と戦い続け、体感にして早数時間。

 手を変え品を変え、果敢に、そして幾度と無くあなた達に襲い来る不死鳥達が致命傷を受けた回数は合計で四桁に到達している。

 

 よくもまあこれだけ殺され続けて諦めないものだ、とあなたは不死鳥に対してある種の感慨を抱く。

 このまま戦っても勝ち目が無い事くらいとうに理解できているだろうに、と。

 筋金入りの諦めの悪さを誇るあなたであっても、ここまでどうしようもないとなれば一旦引いて策を練るなり準備を整えて改めて挑むなりはするというのに、相手は一切そのような様子を見せない。

 

 あまりにも不死鳥がしつこいので、あなたはウィズとの連携を磨く叩き台になってもらっていたりする。

 初見であなたと完璧に息の合った連携をこなしてみせたリーゼと違い、ウィズは現役を退いて久しい。

 いかなる才人であっても長いブランクがあれば戦闘中の機微に疎くなるのは避けられない……という事にあなたは不死鳥との戦いの最中、遅まきながら気付かされた。

 ミスとまでは言わずともギクシャクしたり、判断の遅れが見て取れたり、本来であれば不要なあなたのフォローが必要になる場面もあった。

 ウィズ本人も直接口や表情にこそ出していないが、自分自身に憤懣やる方ない思いを抱いている節がある。

 よってあなたは、どれだけ好き勝手に叩いても死なず、それでいて適度な緊張感を保って戦える不死鳥を存分に有効活用させてもらっていた。

 つまり、その程度には余裕を持って、楽に戦えていたのだ。

 

 そう、楽に戦えている。

 

 開戦の直前に嘯いたあなたの言葉に嘘は無い。

 紛う事なき強敵に対して、あなた達は確かに楽に戦えてしまっている。

 耐性を貫通する炎は決して油断していいものではないが、それでも更なる苦戦を余儀なくされるはずだった不死鳥に対して圧倒的優勢に立っている。

 

 そもそもの話、あなたとウィズが黒い不死鳥に苦戦を強いられた最大の要因とは何だろうか。

 耐性を貫く呪いの炎。

 常軌を逸した不死性。

 なるほど、これらは確かに十分すぎるほど厄介だが、しかし最たるものではない。

 

 あなた達が何より手を焼いていたもの。

 それは超高速で飛行する不死鳥の気配と姿を覆い隠していた闇の帳である。

 気配を隠され、視界を閉ざされていたからこそ序盤は一方的な防戦を強いられていたし、不死鳥を追えるようになった後も空中でひたすら白兵戦を敢行していた。

 

 だが今現在、あなたとウィズはどこまでも続く青空の下で戦っている。

 見晴らしは極めて良好。超高速で飛翔する二匹の不死鳥もはっきりと目視出来る。

 

 こうなってくると話は変わる。

 いかに不死鳥の飛行速度、移動速度が凄まじくとも、反応速度と行動速度の差から生まれる攻撃密度の差で圧殺できる。出来てしまう。

 外部要因込みとはいえ、現在と同じ速度のあなたを切り刻んで片腕を飛ばした挙句首まで落としかけたヴォーパルの恐ろしさが分かるというものである。

 

 さて、そんな相手が持つ最大のアドバンテージである帳を黒い不死鳥が再展開してこない理由だが、これは確実に蒼い不死鳥にあるとあなたは考えていた。

 浄化と呪詛。誰がどう考えても二羽の性質は正反対であり、だからこそ帳の中では蒼い不死鳥は全力で戦えない。あるいは全力で戦うと自然と帳を破壊してしまうのだろう。

 逆もまた然り。黒の能力が白夜焦原と相反するものならば、蒼は白夜焦原の性質を更に先鋭化させるといったところだろうか。ウィズとは致命的に相性が悪そうだ。

 黒にしろ蒼にしろ、比翼の力が同質であれば、ここまで一方的な戦いになっていなかったのは間違いない。

 

 実に惜しいと若干の落胆を抱きつつ、攻勢に区切りがついたタイミングを見計らい、あなたはパートナーに目配せする。

 

「今更ではあるんですけど、これはちょっと、普通に戦っているうちは勝てる気がしませんね……負けもしませんが」

 

 疲労を隠そうともしないウィズの弱音。

 リッチーは肉体的な疲労とは無縁なので、これは精神的なものだろう。

 ブラックロータスを使って魔力を二度回復しているので、その影響もあるかもしれない。

 

 だがあなた達とて、何も無為無策で不死鳥を殺し続けていたわけではない。

 

 ひたすら遠距離戦に徹する不死鳥は、その中で片手で数える程だが近距離戦を挑んできた。

 そんな数少ない機会で判明した事実がある。

 片方が再生している最中にもう片方が致命傷を受けると、目に見えて両方の再生が遅延するのだ。

 そして二羽が同時に致命傷を受けた場合、更に再生にかかる時間は長くなる。

 

 以上の要素からあなた達が辿りついた回答。不死の突破方法。

 それは、完全に同一のタイミングで二羽を跡形も無く消し飛ばす、という身も蓋も無い力技だった。

 

「つまり、ようやくというか、あるいは来るべき時が遂に来たというか……まあ、そういう事ですね」

 

 そう、爆裂魔法の出番である。

 

 

 

 

 

 

「はッ!?」

 

 同時刻、アクセル郊外にて、爆裂魔法をこよなく愛する頭のおかしい紅魔族が唐突に何かを受信した。

 

「どうしたの?」

「……スロウスさんは感じませんか?」

 

 おもむろに眼帯を外し、どこまでも真剣な表情でじっと北西の空を見つめる少女の瞳は爛々と紅く輝いている。

 全力で困惑しつつ、身分を隠して活動する現役魔王軍幹部は正直に答えた。

 

「感じるって、何をかしら」

「爆裂魔法です」

「えっ」

「この世界のどこかで爆裂魔法が行使されようとしています」

「えっ」

 

 本名ウォルバクは一応師弟関係っぽい間柄を築いている仲の良い少女の正気を真剣に疑った。

 

「非常に遺憾ながら今の私を遥かに上回る威力の爆裂魔法の気配……一体誰がこんなものを……いや、この波動は身に覚えが……しかしスロウスさんではない……となるとまさか……ウィズ? ウィズが全力で爆裂魔法を使う必要がある相手と戦っている……? ……ふっ、面白いじゃないですか。中々どうして、世界は私が思っていた以上に広いようですね」

 

 嗚呼、どうして自分はあの時この子の前で爆裂魔法を使ってしまったのだろう。

 再会した後も爆裂魔法の研鑽に付き合ってしまったのだろう。

 怠惰と暴虐を司る心優しき女神は、目の前の少女の人生を滅茶苦茶にしてしまった事実を改めて痛感し、人知れず自責の涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 爆裂魔法で二羽同時に消し飛ばす。

 言うは容易いが、いざ実行するとなるとそうもいかない。

 

「超高速で自在に天を駆ける二羽を同時に射程と効果範囲に収めつつ、爆裂魔法を当てる必要があるわけですからね……」

 

 不死鳥が同時に地上を強襲してくるのを待つ手もあるが、流石に気が長すぎる。

 そんなものよりあなたはもっと正攻法の手段を選択するつもりだった。

 

 飛んで、時間を停めて、纏めて殺す。

 

「あのスキルを使って飛ぶ時点で正攻法のせの字も無いですよねという感想は置いておいて、時間を停めるとは? 言っておきますけど私はそんな魔法使えませんよ」

 

 あなたもそんな魔法は習得していない。

 だから、鬼札を切る。

 あなたがイルヴァから持ち込んだ品の中でも屈指の凶悪さを誇る道具を、時間停止弾を使う。

 

 自信満々に取り出したるは機械の申し子にして科学の結晶、光子銃。

 またの名をレーザーガン。

 ノースティリスにおいては汎用性の高い遠距離武器として多くの冒険者に愛用されている品だが、あなたの装備品であるこの銃はそんじょそこらの発掘品ではない。

 機械の神の狂信者である友人ことTSチキチキマニアお手製の逸品である。

 廃人仕様の威力もさることながら、単発銃、散弾銃、機関銃と三つの形態に切り替えが可能な超便利仕様となっている。

 

「……えーと、つまり、魔法の杖みたいなものって事ですよね?」

 

 説明を受けて困惑をあらわにするウィズ。

 友人が作ってくれた武器を自慢する気満々だったあなたは、仲間の味気ない反応に肩透かしを食らった気分になった。

 デストロイヤーのような複雑な機械の塊を作れるあたり当然といえば当然だが、この世界にも銃という概念は存在する。紅魔族の里であなたがレールガンを手に入れたのが動かぬ証拠だ。

 だがどこかのタイミングで製造技術が散逸してしまったのか、あるいは意図的に存在が抹消されたのか。

 こうして博識なウィズが知らない程度には知名度が無い。

 

 通じないのであれば自慢話も虚しいだけである。

 仕方が無いと気を取り直してあなたは説明を続ける。

 

 この銃に特別な弾丸を込めた上で発射、何かに命中させれば、その瞬間、弾丸に刻まれた術式が起動し、銃を撃った者以外全ての時間が停止する。

 正確には銃を撃った者のみ時の流れから一時的に切り離されるだけであって、世界全ての時間を停めるわけではないのだが、与えられる結果は同一だ。

 

 あなたが所持する時間停止弾の効果、つまり停止した時の中で与えられる猶予は五手。

 五秒ではない。こればかりは個々人の認識の問題になってくるが、ウィズであれば五手あれば爆裂魔法を行使するに十分間に合うだろう。

 この世界での時間停止弾の使用はこれが初めて。不発の可能性が無いわけではないが、その時はまた別のやり方を考えればいいだけだ。

 

「確かに五手あれば十分すぎます。なるほど……私がこれを不死鳥のどちらかに命中させればいいんですね?」

 

 責任重大と意気込むウィズに対し、あなたはそんなわけがないと真顔で即答した。

 

「えっ」

 

 時間停止弾の残弾は七。

 補充の当てが無い今、極めて貴重な品である。

 それこそこの世界でも問題なく発動するか確認する為に使った事が無い程度には貴重なのだ。あなたはこんな所で無駄使いしてほしくなかった。

 どれだけ至近距離で撃とうとも、不死鳥という高速動体にぶっつけ本番で素人が銃を命中させられると考えるほどあなたは耄碌していない。

 はっきり言ってしまうと、あなたはウィズの射撃の腕をこれっぽっちも信用していない。

 ウィズが銃を使った事が無いというのもあるが、それ以上に弓の射的の出店で見せてくれた醜態が記憶に焼きついている。

 

「いやまあ、それを言われちゃうと返す言葉もないんですけど。じゃあどうしろと? 時間を停められるのは道具を使った人だけなんですよね?」

 

 あなたは何でもないかのように答えた。

 時停弾は誰かしらに当てればいいのだから、不死鳥ではなく、自分に向けて撃てばいいのだと。

 無論この自分とはウィズではなく、あなた自身を指す。

 

 

 

 

 

 

「最後ですからね、これが本当に最後の一回ですからね!?」

 

 光翼型近接支援残酷冒険者(クソバカ肩車)、再び。

 いくばくかの間を置いて再開された不死鳥の攻撃を防ぎつつ、あなたの頭上でウィズが喚いているが、暗闇の中、不死鳥だけを頼りに飛ぶ必要があった先ほどまでとはまるで状況が違う。

 この通り視界は盛大に開けているのだから、青空を飛ぶ爽快感に身を任せるくらいでちょうどいいのだ。

 

「でも結局最後は墜落するじゃないですかー!」

 

 そればかりはあなたのスキルの錬度が足りていないのだから、我慢してもらうしかない。

 

「分かってますけども! 我慢しますけども! でもあなたがスキルをまともに使えるようになるまで、少なくともちゃんと着地出来るようになるまで、二度とこんな事やりませんからね!?」

 

 了承の意を告げると同時、あなたはスキルの火を入れる。

 展開される蒼き焔の翼。

 最善のタイミングを見計らい、テイクオフ。

 

 再び空高くかっとんでいく廃人とリッチー。

 ウィズの甲高い悲鳴がドップラー効果を生み出し、白夜焦原の空に虚しく木霊する。

 

 姿勢制御も安全も二の次三の次、最大速力で上空に吹っ飛んだあなた達は、その勢いのまま黒い不死鳥に特攻。

 

「ヶッ!?」

 

 あまりにも突然すぎる奇襲に対応が間に合わず、愛剣で胴体を串刺しにされた不死鳥は激しく吐血。

 しかし致命傷を負うには至らず、灰と化す事も無い。

 反撃とばかりに全身から発された漆黒の呪炎があなた達を燃やし尽くさんとするも、苦し紛れのそれはあなた達の命に届く事は無く。

 不死鳥という巨大な荷物を抱えたあなたは、気配だけを頼りに黒を蒼に押し付ける。

 超高速で飛び交う者同士の正面衝突は双方に激しい衝撃を与えたが、その反動を用いてあなた達は全速力で離脱に成功。

 もつれるように落下していく二羽の不死鳥が体勢を整える直前、あなたの肩から落ちまいと必死にしがみ付いていたウィズが声を張り上げる。

 

「――撃ちます!」

 

 そして、光子銃を押し付けられたあなたの肩に衝撃が走り――――

 

 

 

 

 

 

 引き金は羽のように軽く、腕に伝わる反動は限りなく無に等しく。

 ともすれば何も起きないのでは、と感じたウィズの耳に、どこからか音が聞こえた。

 

 ギチリ、と。

 重く、鈍く、錆付いた歯車が動く音が。

 

「――――ッ!?」

 

 刹那、ウィズの視界が唐突に切り替わる。

 そうあるのが正しいのだとばかりに、ごく自然に、何の実感も無く。

 

 時間停止弾の力によって時の流れから切り離されたウィズの視界に広がるもの。

 そこは、どこまでも続く白と黒だった。

 

 青い空も。

 眩い太陽も。

 焼け焦げた大地も。

 

 二羽の不死鳥も。

 傍らにいるあなたも。

 

 全てが静止し、白と黒に染められた、無音の世界。

 ただ一つ、ウィズを除く世界の全てが、無機質なモノクロームに支配されている。

 

 一人取り残されたウィズは、真っ先にこう思った。

 恐ろしい、と。

 あなたに置いていかれたくないと願うウィズにとって、この絶対的に冷たく孤独な世界は、彼女の悪夢に等しい。

 もしずっとこのままだったら?

 静止した時の中に取り残されてしまったら?

 反射的にそんな事を考えてしまう。

 

 

 ――ガチリ(5)

 

 

 ウィズの瞳孔が開き、息が荒くなり始める直前、再度聞こえてきた歯車の音。

 無音の世界に響いた鈍い音は、すんでの所でウィズの正気を取り戻し、自身のやるべき事、やらなければいけない事を思い出させることに成功する。

 

 

 ――ガチリ(4)

 

 

「ブラックロータス、五番から九番!」

 

 モノクロの世界で咲き誇る、五輪の黒い、しかし確かな鮮やかさを誇る蓮の花。

 

 

 ――ガチリ(3)

 

 

 魔花から一瞬で魔力を吸い上げ、詠唱を開始。

 どこまでも深い集中は、まるで白黒の世界から目を背けるかのように。

 

 

 ――ガチリ(2)

 

 

 魔法そのものに三輪分の魔力を込め、残りの二輪で強制的に詠唱を短縮。

 限りなく一瞬に等しい時間で、不死の王は過去に類を見ない威力の術式を完成させた。

 とはいえ力技が過ぎる魔法は決して長くは保たない。

 もって三秒。それ以上術式を維持しようとすれば、あなたを巻き込んで盛大に自爆するという結果に終わるだろう。

 

 

 ――ガチリ(1)

 

 

 だが何も問題は無い。

 三秒という永遠に等しい時間など、彼女には必要ないのだから。

 

 

 ――ガチリ(0)

 

 

「――エクスプロージョン!!!」

 

 

 そして時は動き出し、モノクロームに染まったウィズの世界が色彩を取り戻す。

 

 

 

 

 

 

 視界の全てが白に染まったと感じた次の瞬間、あなたは背中から地面に叩きつけられていた。

 よほど激しい勢いだったのか、全身が痛みを訴えている。

 更に酷い眩暈に襲われており、妙な耳鳴りが止まず、意識も朦朧。

 

 それはあなたにとってとてつもなく身に覚えのある症状だった。

 強力な音属性の攻撃を受けた時のそれに極めて近い。

 この分だと鼓膜も破れていそうだと感じたあなたは範囲回復魔法である治癒の雨を発動。

 痛みが引くと共に全身の異常が快癒し、感覚を取り戻す。

 

 ウィズは大丈夫だろうか、と考えるあなたはしかし、すぐに自分が何かを抱きしめている事に気がついた。

 

「うぼぁー……」

 

 あなたの腕の中で呻いたのは、目を回して失神するウィズである。

 反射的に抱きかかえていたようだ。

 軽く確認するも、治癒の雨の効果か、これといった外傷は見当たらない。

 

 不死鳥はどうなったと空を見やるも、そこには何も無い。どこまでも静かで青い空だけが広がっている。

 作戦は成功したのだろうか、と考えながらあなたはウィズに声をかけて軽く叩き、起こそうとする。

 

「へぐー……」

 

 何度か試したものの、全く起きる気配がない。

 仕方ないのであなたは黄金の林檎を使う事にした。

 

「――殺気!?」

 

 何かを感じ取ったのか、まるで嘘のような勢いで飛び起きるウィズ。

 あなたはばれないように林檎をこっそり仕舞った。

 

「…………」

 

 何事も無かったかのように目覚めの挨拶を行うあなたの面の皮の厚さは最早世界レベルである。

 しかしウィズはしばらく無言であなたの顔をぺたぺたと触ったかと思うと、深い、深い溜息を吐いてこう言った。

 

「時間停止弾、私は二度と使いませんからね」

 

 

 

 

 

 

「爆裂魔法の威力が思いのほか強すぎたというか、安全距離が足りていなかったというか、攻撃範囲に巻き込まれかけたというか。大体そんな感じだと思います」

 

 謎の衝撃と墜落の原因について、ウィズはそう答えた。

 無茶な作戦だったのは否定のしようがない。

 流石にぶっつけ本番が過ぎたようだ。

 

「ほんとこれっきりにしてくださいね、こう色々と……」

 

 成功したからヨシ! と朗らかに笑うあなたに対し、がっくりと肩を落とすウィズ。

 流石のリッチーといえど、自身の爆裂魔法の余波に巻き込まれるというのは生きた心地がしなかったのだろう。

 

 とはいえ無茶の甲斐あって不死鳥は消滅した。

 あの爆裂魔法は間違いなくあなたでも消し飛ぶ威力だった。

 これで生きていたら流石におかしい。

 

 気が抜けてそんな発言をしたあなたが悪かったのだろうか。

 ふと気がつくと、あなた達の前方、爆裂魔法の余波で生まれたクレーターの中央に、蒼と黒の小さな火種が浮かんでいた。

 

 少しずつ、しかし確かに大きくなっていく灯火を見たあなたは反射的に攻撃を仕掛ける。

 吹けば飛ぶような火を何度も消し飛ばし、同時に吹き飛ばし、掻き消してみせる。

 しかし無より生まれ出ずる灯火が真の意味で消えることは無い。

 

 数分の格闘の末、全ての試みが徒労に終わったあなたは腹立たしいほどに爽やかな青空を見上げた。

 参った、流石にお手上げである。

 復活する前に急いで去るか、恥を忍んで黄金林檎をぶちこみ封印するしかあなたには手立てが思い浮かばない。

 

「……もういいです、分かりました」

 

 そうやってあなたが匙を投げたと同時、ウィズが口を開く。

 消滅と再生を何度も繰り返し観察し、遂にその本質を見極めた不世出の魔法使いが。

 

「不死鳥の殺し方が分かりました」

 

 内容とは裏腹に、その口調はどこまでも重苦しいものだった。

 

 

 

 

 

 

 目覚めは唐突だった。

 それの記憶の最後にあるのは太陽の如き白。そして全身を貫くかつてない衝撃。

 

 何が起きた。何をされた。何を受けた。

 何でもいい。自分は確かに生きている。ならば殺さなくては。

 あれを、あの恐るべき、許されざる者達を殺さなくては。

 決して逃がすわけにはいかない。奴らがどれだけ強いのだとしても、勝ち目など見当たらないのだとしても、絶対に、絶対に、絶対に。

 

 燃える憎悪。

 絶える事の無い殺意。

 

 閉じかけた黄金の瞳を意思の力で抉じ開け、呪殺の黒鳥が再誕する。

 

 軽く周囲を見渡せば、自身の傍らで今も静かに眠る蒼い翼を持つ番の姿が。

 一瞬の安堵と共に翼を広げた黒鳥はしかし次の瞬間、自身が最も恐れる光景を目の当たりにした。

 

「――――」

 

 憎悪も殺意も置き去りに、一瞬で漂白される意識。

 自身から少し離れた場所に、あの人間がいる。

 全力で飛べば一瞬で届く距離に、殺さなくてはならない者がいる。

 

 だが、だが。

 人間の手に握り締められている小さなそれは――。

 

 

 

 

 

 

「同時に殺す必要があるという条件自体は合っていたんです」

 

 静止した黒い不死鳥を前に、ウィズが淡々と声を発する。

 

「ただ、二羽ではなく、三羽同時だったというだけで」

 

 ウィズの爆裂魔法を受けてなお復活する不死鳥を本当の意味で殺すために必要だったもの。

 それは、あなた達が偶然助け、ここまで連れてきた小さな不死鳥の雛だった。

 あなたがひたすら灯火を消している間にウィズがゆんゆんを捜索し、雛を回収してきたのだ。

 

 意識を取り戻した筈の不死鳥は、気を失った雛に視線を固定したままピクリとも動こうとしない。

 雛があなたに握り締められているがゆえに。

 

「二羽がどれだけ致命傷を受けても退かなかった事を思うと、恐らくこの子は……」

 

 あなた自身、黒い不死鳥と雛には何かしらの関係があるのだろうとは思っていた。

 だが雛は黒い炎を見て激しく怯え、失神までしたのだ。

 穏やかな関係だと思えないのは当然だろう。

 

 やがて同じように蒼い不死鳥が目を覚まし、同じように雛を前に動きを止める。

 どうしようもなく隙だらけ。

 今なら不死鳥を殺せる。文字通り、赤子の首を捻るように簡単に。

 

 だがあなたはぺちぺちと雛の頭を軽く叩いた。

 これまでとは比較にならない殺気が二羽の不死鳥から飛んでくるが、あなたはそれを無視する。

 

「……?」

 

 ぱちくりと小さな目を瞬かせて目覚める、ひよこにしか見えない不死鳥の雛鳥。

 何が起きているのか分かっていないのか、首を回して周囲を確認。あなたと目が合った途端元気に挨拶をしてきた。

 全くいい気なものである。最悪の場合、このまま三羽揃って縊り殺されるかもしれないというのに。

 

 あなたが首と目線で前方を示すと、雛は釣られるように前を向く。

 そして。

 

「――ピィッ!?」

 

 悲鳴をあげた。

 反射的に黒と蒼が憤怒の咆哮をあげ、大地を炎上させる。

 ギャアギャアワアワアと仲良く鳴き叫んだところで何を言っているのかは聞き取れない。

 だが今すぐその手を離せとかぶち殺すぞヒューマンとかそういう感じのニュアンスなのだろう。

 

 辟易したあなたが愛剣を抜くと、エキサイトしていた二羽は一瞬で鎮火した。

 自分の立場を理解するだけの賢さはあるようだ。

 

「あの、なんか凄い悪い事をしている気持ちになってきたんですけど……」

 

 おずおずと声をかけてくるウィズ。

 だがこの場で悪いのは間違いなく相手の方である。

 

 ウィズが良心と戦っている最中にも三羽の会話は続く。

 最初のうちは話す舌など持たぬとばかりに激憤を続けていた蒼と黒も、ぴよぴよと鳴きつづける雛と会話を続けるうち、次第と様子が変わっていった。

 

「…………」

 

 蒼が、黒を睨みつける。

 その瞳からは底知れぬ怒りが感じられた。

 

「…………」

 

 黒が、蒼から目を逸らす。

 全身から冷や汗を垂れ流し、しかし一瞬で蒸発させていた。

 

「…………」

 

 無言を続ける両者。

 そして。

 

「コ……コケーッ!!」

 

 全身を蒼い炎に焼かれ、黒が鶏のような悲鳴をあげた。

 

「ああ、不死鳥の鳴き声が朝を告げるってそういう……」

 

 疲労感に満ちたウィズの呟きは、空に溶けて消えた。

 

 

 

 

 

 

 結果を言えば、あなた達が予想した通り。

 雛は蒼と黒の子供であり、家出というか初めての冒険に出かけて見事に迷子になり。

 数ヶ月間雛を探し続けていた蒼と黒は、雛を連れたあなた達を誘拐犯だと誤解。

 誘拐犯を発見してマジギレした黒の炎を見た雛は、親の怒りが自分に向けられているのだと誤解して見事に失神。以下戦闘……という流れである。

 神獣の最高位の眷属にあたる蒼い不死鳥は人間の文字を知っていたようで、拙くも器用に爪を使って地面に文字を掘って伝えてきた。親子勢揃いで土下座しながら。

 

「なんていうか、大変でしたね……お疲れ様でした」

 

 炎の台風一家。もとい一過。

 旅の連れだった雛と別れ、事の顛末を知らされたゆんゆんの感想である。

 一歩間違えれば大惨事だった事件であり、相手の勘違いという言葉ではとても済まされない。

 

 だがあなたとウィズはそこまで気にしていなかった。

 散々不死鳥をぶち殺した身であるし、何よりもケジメは付けると、不死鳥達から侘びの品を貰っていたからだ。

 

 世にも珍しい蒼と黒の不死鳥の尾、羽、肉、骨、血、内臓。

 何度でも再生するからこそ可能である、しかし本人達が灰にしなかったからこそ残る不死鳥の素材の数々欲張りセット(徳用)。

 割合としては黒い不死鳥の素材の方が圧倒的に多かったのは言うまでもない。


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