このすば*Elona   作:hasebe

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第134話 マインしてクラフトする

 鉱物。

 それは人々が営みを行う上で欠かせない、切っても切り離せない要素の一つ。

 だが鉱物一つとってもイルヴァとこの世界では扱いが大きく異なる……というのは以前も述べた話だ。

 

 繰り返すが、イルヴァでは大地を司る神が定期的にファハハハハハハハハハハハハハー! フワハァー! と地殻変動を引き起こして自身の力を大地に行き渡らせているがゆえか、その恵みが枯渇するという事は無い。

 短期間で掘りつくせば何も出てこなくなるが、その場合も年単位で放置していれば自然と鉱脈は復活する。

 ゆえに畑を休ませるのと同じように、複数の鉱脈をローテーションで掘っていく、というのがイルヴァにおける普遍的な採掘事情だ。

 あなたが所持する素材群を除いた各種鉱物も、大半は安価かつ手軽に手に入る。

 無論希少価値が高いものについては相応の値段になるし、万が一大地の神が零落でもすれば話は大きく変わってくるのだろうが、少なくとも今のところはそうなっている。

 

 対してこの世界の鉱物資源はまさかの有限。

 採掘された富で栄華を誇りながら、人類に掘り尽くされたり魔物に食い尽くされたりといった様々な理由で資源が枯渇、廃鉱になった鉱山街は枚挙に暇が無い。

 国単位の話になると、世界地図において最北部に位置する、雪に閉ざされた氷鉄の国ことルドラが挙げられるだろう。

 カイラムがエルフの国であるように、ルドラはドワーフの国。

 そして鉄の名を冠する事から分かるように、ルドラは世界で最も多くの鉱山と採掘力、そして鍛冶師を有している。

 そんなルドラはここ数年、複数の大鉱山で事故や魔物騒ぎが相次いで発生。世界各国の鉱物事情と流通価格に小さくない悪影響を及ぼした。

 既に解決済みの事件であり、その裏には例によって魔王軍による暗躍があったという話だが、遠い他国という事もあってあなたは噂話程度でしか知らない。

 

 両世界の差異についてだが、あなたは神々のスタンスの違いから来るものだと推察している。

 イルヴァの神々は、この世界の神々と比較して人々に近しい存在であり、その恩恵や影響を直接肌に感じられる事が多い。無論特別に寵愛という名の贔屓をされているあなた達とは比較にならないほど小さいものではあるのだが。

 

 一方でこの世界の神々は、女神エリスが人知れず世のため人のために活動していることからも分かるとおり、地上の者達に決して無関心というわけではないにしろ、やはりどうしても距離はあるとあなたは感じていた。異邦人にして筋金入りの狂信者であるあなただからこそ、余計に。

 互いが長い歴史の中で育ち、作り上げられてきた世界である以上、このスタンスの違いについて良し悪しを論ずる意味は無いだろう。両世界における命の重さが異なるように、どちらもそういう世界であるというだけだ。

 

 あなたの考察はさておき、限りある資源であるからこそ、この世界における希少な鉱物の価値がイルヴァより遥かに高いというのは伝わっただろう。

 伝説と謳われるコロナタイトが拳大で軽く億を超える程度には。

 だからこそ、その危険度の高さから人の手が入る余地が一切なく、強力で希少な鉱石が生まれやすい環境である濃密な魔力で満ちた白夜焦原の山脈は、あなた達にとって文字通り宝の山と呼べた。

 

 

 

 

 

 

 奥に進むにつれて遭遇するモンスターが徐々に強くなっていくのを感じ取りながら丘陵地帯を超え、白夜焦原に満ちる炎の力を長年に渡って浴び続けた山岳地帯に足を踏み入れたあなた達ネバーアローン。

 山麓を超えるかどうか、といった具合の標高を、あなた達は採掘場所に見定めた。

 白みがかった青空を背景に聳え立つ黒い山々はコントラストが映えていると同時に、難攻不落を誇る砦のような印象を受ける。

 どこまでも人の立ち入りを拒んでくる世界の姿に、そうでなくては踏破のし甲斐がないとあなたは意気込みを新たにした。

 

 ここまであなた達と行動を共にしていた不死鳥の雛も、それまでと比べて目に見えて元気になっているのが分かる。今もあなた達から離れる気は無いようだが、もしかしたら巣が近いのかもしれない。

 

 何か面白い発見があるかもしれないとあなたが軽く周囲を見渡してみれば、煤けた大地については相変わらずであるものの、川の名残と思わしき地形が彼方にまで続いていた。

 半島が竜の谷という魔境に変質する前は、この不毛の大地にも大きな川が流れ、木々が生い茂っていたのだろう。

 普通に考えれば諸行無常とでも呼ぶべきなのだろうが、無常というには白夜焦原は凶暴なまでの生命力に溢れすぎている。

 その筆頭が今まさにあなたの目線の高さで羽ばたいている不死鳥だ。

 育ち盛りの雛は腹が減ったのかぴよぴよと鳴いて餌を催促してきたので、あなたは白夜焦原で作ったカリカリの干し肉を差し出す。餌付けもすっかり手馴れたものだ。相変わらずウィズからは絶対に受け取ろうとしないが。

 

 ちなみにこの干し肉、魔物の解体作業の過程で生まれた大量の廃棄肉を使い、手慰みと実益を兼ねてあなたが作った代物だったりする。

 手当たり次第片っ端からポケットハウスの軒先に吊るしたので、今あなたが手渡したものも何の肉かは分からない。

 それどころか本当に食べても大丈夫なのかすら不明だが、ひよこのような何かはご機嫌な様子で干し肉に噛り付いた。コロナタイトを難なく消化するくらいなので、さぞかし頑丈な胃腸を持っているのだろう。

 

「幸いにしていい感じのキャンプ地も見つかりましたし、ここを拠点にして掘っていきましょうか。とはいっても時間制限があるわけでもないですし、安全第一で頑張りましょうね」

 

 眼前の山々を見上げてそう言ったウィズはフード付き耐熱外套の上から安全用ヘルメットを被っており、片手には愛用のツルハシを装備している。

 姿と口ぶりからなんとも手馴れたものを感じさせるが、それがかえってミスマッチを助長しており、非常にシュールな姿となっていた。

 

 この期に及んで再確認するまでもなく、アークウィザードであると同時に研究を好むウィズは博識だ。

 そして今となっては懐旧の念すら覚える玄武との遭遇、もとい宝島発掘作業の時のように、多種多様な素材群の中でも鉱石系について一家言を持っている。

 その道の専門家には及ばずとも、深い造詣を持っている事は間違いないだろう。

 一方で実際の採掘能力はお世辞にも高いとは言えない。

 肉体的疲労を覚えないアンデッドの体を活かして不眠不休で働く事は出来るが、眠気や精神的疲労はしっかり感じるのでそのうち限界が来て頭がおかしくなるか昏倒する。

 

 対してあなたの知識は今も素人に毛が生えた程度ではあるものの、こと採掘能力に関してはプロフェッショナルにも引けは取らないという自負がある。

 採掘に限らず、思考を停止して延々と単純作業に従事する事においてあなたの右に出る者はイルヴァでも極めて稀。廃人に到るまでの過程と経験が生み出した実績は伊達ではないのだ。

 ツルハシやスコップで山にトンネルを作り出すなど造作も無く、イルヴァと比較して大地が脆いこの世界であれば、それこそ地下深くまでもが採掘場所の候補に入るに違いない。

 

 頭脳労働担当のウィズと肉体労働担当のあなた。

 互いが互いを補うコンビと言えるだろう。

 

「あの、すみません。ちょっといいですか? 私はこの分野に詳しくないので、素人質問で大変恐縮なんですけど」

 

 手を上げるゆんゆん。

 だがどういうわけなのか、反射的にウィズの表情が虚無になり、目から一切の光が消え去った。

 とても怖い。

 

「はい」

「え、えっ? 私何かまずい事言っちゃいました? まだ何も質問してないのに?」

 

 機械の如く感情が乗っていない師の声に震え上がる少女。

 あなたはゆんゆんがおかしな事を言ったとは思えないのだが、今のウィズは透明視装備を持たずに受けたモンスターの討伐依頼で不可視のカボチャ系モンスターが複数混じっていると気付いてしまったノースティリスの冒険者のような姿だ。

 想像しただけで眩暈、動悸、頭痛、立ちくらみ、吐き気、そして膝が折れそうになるほどの絶望と疲労と憤怒があなたを襲う。

 やはりカボチャ系モンスターは等しく生きていてはならない。生かしておいてはならない。憎悪を燃やしたあなたは人知れず抹殺の決意を新たにした。

 

「……ああ、すみません。学生時代に嫌というほど聞いた言葉だったのでつい過剰反応を。本当に嫌というほど聞いた言葉だったので。本当に嫌というほど」

「つい、であんなになっちゃうんですか!? すんっ……ってなってましたよ!? しかも三回も繰り返すくらい!?」

「なっちゃうんですよ。レポートや研究の発表っていうのは。似たような経験をした方ならきっと頷いてもらえるんじゃないですかね……」

 

 ふふふ、と疲れきった哀愁の笑いを零すウィズ。

 あなたは生まれてこの方学生という身分に縁が無かったので共感できないが、幼い頃から天才アークウィザードとして実力を示していたという彼女がトラウマになるほどの恐ろしいイベントだったようだ。

 

「自慢みたいになってしまいますが、私が在籍していた魔法学院はその筋では非常に有名でして、何かにつけて各地で名を馳せた魔法使いや研究者の方々が大勢集まっていたんです。中でも学生が発表した論文や研究成果が微に入り細を穿つとばかりに延々と質問攻めにされて憔悴するのは風物詩のようなもので。私も例外ではなく毎回の恒例行事でした。当時から魔法関係の研究は好きでしたけど、発表だけは本当に面倒で億劫に感じていましたね……自分で言うのもなんですが、当時の私はコミュニケーション能力が冗談や謙遜抜きで壊滅していたので」

 

 滅多に聞けない貴重なウィズの昔話にほへー、と興味津々で聞き入るあなたとゆんゆん。

 

 だがここにかつてのクラスメートであるリーゼロッテ、あるいはウィズに質問を投げかけた者達がいれば、彼らはこみあげる頭痛と胃痛を耐えながら死んだ目で吐き捨てていただろう。

 貴女が言われていたそれは、他の学生とは意味合いが違う、と。

 あるいは、お前マジざっけんなよ……と。

 

 この分野に詳しくないので、素人質問で恐縮ですが。

 身に覚えのある者が聞けばトラウマに震え上がるであろうこの言葉が向けられる時、それはもっぱら初心者でも気付くようなミスや問題点をオブラートという名の皮肉に包んで指摘されている時だ。

 

 だがウィズに向けられていたそれは違う。

 他意のない、まさしく文字通りの意味合いしか込められていない。

 賢者と呼ぶべき世界的に高名な魔法使いや研究者。

 彼らをして微に入り細を穿つレベルで質問し、説明してもらう必要があるほどに、歴史に残る不世出の天才という名の全自動心折マシーンが生み出した独自の魔道理論は難解極まりないものだったのだ。

 幼少時のウィズの対人能力が死滅していたのも決して無関係ではないが、それ以上に画期的すぎて、あるいは頭のネジが飛びすぎていたせいで。

 彼らはウィズが自分用に構築した、そのままでは同レベルの天才しか理解できない、それでいて間違いなく有用な理論に対して幾度と無く質問を繰り返し、天才美少女の「なんでそんな事までわざわざ説明しないといけないの? 言わなくても分かるでしょ?」という悪意の無い、しかし心底面倒臭そうな応対に心とプライドを抉られながら、何とか自分達でも理解可能なレベルまで翻訳していったのだ。

 ウィズの発表時期が来るたび彼らは胃薬を調達し、頭皮の脱毛に悩まされた。中には感情の希薄な幼い少女に蔑まれたい、という度し難い趣味に目覚めてしまった者すらいたりする。

 

 そんな悲惨な事実を知らないウィズは、覇気すら感じ取れる凛とした表情で宣言した。

 

「もう大丈夫です。どんな質問をしてくださっても構いませんよ。覚悟完了しましたので」

 

 全身から迸る不退転の決意はたった一人で人生最終最大の戦いに挑む気高い英雄の如く。

 氷の魔女の異名で謳われた現役時代を彷彿とさせる、仲間の威風堂々たる姿を見たあなたとゆんゆんだがしかし、感動や畏怖よりも先に、子供の頃、どれだけ質問されるの嫌だったんだろう、と考えてしまったのは致し方ないといえるだろう。

 

「じゃあ、なんですけど。お二人は探知魔法を使った後、普通に人力で山を掘っていくんですよね?」

「そうですね。その予定になっています」

「どうしてクリエイト・アースゴーレムを使わないんですか? 私ならともかく、ウィズさんなら凄く大きいゴーレムを作れますよね? それを使ってガンガン山なり地面なりを掘っていけばいいと思ったんですけど。なんなら山にクリエイト・アースゴーレムを使えば一気に掘れちゃいますよね」

「あー、なるほど……」

 

 あなたとウィズは何とも言えない表情で互いの顔を見合わせる。

 村人全員が手練のアークウィザードである紅魔族は、力仕事筆頭のインフラ整備すら全て魔法で解決してしまう。

 魔王軍の攻撃で村が壊滅しても三日もあれば元の景観を取り戻すという話なので、ノースティリス顔負けのインフラ技術を有しているのは間違いない。

 そんな場所で生まれ育ったゆんゆんは魔法の運用方法についても常人とは視点が少し異なっていた。

 戦闘関係に偏っているあなたやウィズではこうはいかない。

 

「ゆんゆんさんの質問ですが、確かに可能といえばそういうやり方も可能だと思います。ただ……」

「ただ?」

 

 気まずそうに目を泳がせ、口ごもるウィズの言葉をあなたは継いだ。

 その場合、ゆんゆんはほぼ確実に数え切れないくらいの回数死ぬ事になるだろう、と。

 

「死ぃ!? 私また命の危機ですか!? それも数え切れないくらい!?」

 

 またである。

 竜の谷の探索行におけるゆんゆんの命はあまりにも儚い。

 

 ゆんゆんが口にしたような、繊細さの欠片もない能力にあかせたゴリ押し採掘。

 それをあなたとウィズが考えなかったわけではない。

 むしろ最初はそのつもりだった。

 順調にいけば普通にそうなっていただろう。

 

 だがかつて溢れる知性と力による友情パワーで宝島を綺麗さっぱり掘り尽くしたあなた達は、今回も白夜焦原に聳え立つ山脈に意気揚々と挑み、眼前に立ちはだかる断崖の如き焦山を凄まじい速度で削っていく……というわけには残念ながらいかなかった。

 その原因は小手調べの段階であっさり出てきてしまったコロナタイトに他ならない。

 機動要塞デストロイヤーの製作者が遺した手記によると、動力として用いられたコロナタイトは火の付いた煙草を押し付けただけで盛大に暴走したのだという。

 ということは、あなた達が地中のコロナタイトにツルハシやスコップを直撃させた場合、デストロイヤーの動力源よろしく暴走、爆発してしまうのでは? という懸念が生まれてしまったのだ。

 決して杞憂だと笑い飛ばす事は出来ないし、爆発の衝撃で他のコロナタイトが……といった風に連鎖爆発が起きる可能性すらある。

 

 とはいえコロナタイトが爆発したところで、あなたとウィズが致命的なダメージを負うかは怪しいものがある。

 なので最悪でも直接的な人的被害はゆんゆんが塵一つ残さず消し飛ぶ程度に収まるだろう。

 そしてゆんゆんの案である地面を使ったゴーレム生成も結局この爆発問題を解決はできない。それどころかほぼ確実に大爆発が起きてゆんゆんの消失とばかりに影だけ残して蒸発する。

 採掘中、事あるごとに爆死されては命がどれだけあっても足りはしない。

 

 山肌を用いてゴーレムを作った場合だが、こちらはほぼ確実に大規模な山崩れが発生するだろう。

 普通に掘っていて爆発した場合もそうだが、山や坑道が崩落して生き埋めにされてしまうというのは非常によろしくない。

 竜の谷はテレポートの魔法が使用不可能なので、一度生き埋めにされると脱出が極めて困難になってしまうのだ。大問題である。

 

 余談だが、イルヴァの魔法にも転移関係のものが複数存在するわけだが、こちらに関しては恐らく発動自体は可能だろうとあなたは認識していた。

 だが使ったが最後、時空の歪みに巻き込まれて全身がバラバラに引き裂かれて四散する気配をあなたは感じているため、実質使用不可能になっている。いのちだいじに。

 

 オマケのような理由にはなるが、他にもあまり派手に採掘するとモンスターを引き寄せすぎて面倒な事になりかねない、という懸念もあるといえばある。

 ゆんゆんにはこちらの方が伝わりやすいかもしれない。

 

「なるほど、言われてみれば確かにそうですね。私が浅慮でした…………ってあまりにもさらっと言うからつい流されかけましたけど! 被害は私が塵一つ残さず消し飛ぶ程度って! 程度って! 私なら何回死んでもセーフみたいな言い方止めてもらえませんか!? いや一度だって絶対に嫌ですけど! 幾ら私が紅魔族だからってその子みたいに無茶な生態はしてないですからね!?」

 

 あなたの隣で滞空する不死鳥を指差して涙目で吠えるゆんゆんに、悪いほうに考えすぎだとウィズと共に優しく宥める。

 ことあるごとに発露するネガティブさはゆんゆんの悪い癖だが、自身の力が通用しない環境における冒険は神経をすり減らして当然だ。彼女がナーバスに陥るのも無理も無い。

 実際問題、神器による擬似的な無限残機を得たベルディアでもあるまいし、現状のゆんゆんが何回死んでもセーフと考えるほどあなたの人間性や倫理観は終わっていない。

 彼女はカズマ少年のようにリザレクションによる無限蘇生は叶わないし、あなたの復活の魔法も数えるほどしかストックが残っていないのだから。

 ノースティリスの冒険者と同じく、ゆんゆんの命の価値をゴミ同然にするには、相応の条件を整える必要があるのだ。

 

 

 

 

 

 

 さて、地雷原じみた鉱脈にネバーアローンはどう対処していくのか、という話だが。

 答えは単純にして明快。

 コロナタイトが危険なら、コロナタイトを刺激しないように採掘を行えばいい。

 あなたの説明を聞いたゆんゆんがきがるにいってくれるなあ。と渋面を作る程度には難問だが、この場にはそれを可能とする人物が存在する。

 

「マテリアル・サーチ」

 

 手の平に乗せた小さなコロナタイトに向けて魔法を使うウィズ。

 トラップ・サーチやエネミー・サーチといった魔法使い用の魔法をアレンジし、この世界の炭鉱夫が使う鉱物探知スキルを再現したオリジナル魔法である。

 

「やっぱりというか、地面にも山にも相当な量のコロナタイトが埋まっていますね。しかも少し離れた場所にはコロナタイトの鉱脈っぽいものまでありますけど……掘りますか?」

「反対! 私は反対です! お二人は良くても死にますから! 私が!!」

「ゆんゆんさんを死なせてしまうつもりはないですが……まあそうですね、危険なので手を出すのはやめておきましょうか」

 

 脳内地図に周囲一帯のコロナタイトの埋蔵箇所をマーキングしたウィズに先導され、あなた達は安全に採掘が可能な場所に向かう。

 マテリアル・サーチが炭鉱夫のスキルに明確に勝る点として、今のウィズが示してくれたように、特定の鉱物のみに狙いを絞って探知可能という点が挙げられるだろう。あなたと出会う前の彼女は、この魔法を使って欲しい素材を集めていたらしい。

 イルヴァにも物質感知という似たような名前と効果を持つ魔法があるのだが、素材の一つ一つには反応を示さないし、何故か階段や扉にも反応を示してしまうせいで、もっぱら主目的である素材の溜まり場を探すよりも迷宮の階段を探す用途で使われているというのが実情だ。

 

 そうしてしばらくの間、無数の大小さまざまな岩が転がる荒れ道を歩いた後、ウィズは足を止めた。

 岩山というよりは岩壁と呼ぶべき、垂直に切り立った山肌だ。

 

「よし、ここらへんなら大丈夫です。地面も山も多少深く掘ったところでコロナタイトに当たる事はありません」

 

 言うが早いか、巨大な岩壁に向けてツルハシを振り下ろす不死の女王。

 魔法使いらしい細腕から繰り出された一撃は、しかし頑丈な岩に弾かれる事もなく、驚くほどあっさりと突き刺さった。

 あなたの感心した視線に気付いたウィズは笑顔でツルハシを掲げてみせる。

 

「やっぱりあなたにも分かりますか? このツルハシはあなたに紹介した職人さんが手がけたもので、私みたいな非力な後衛職でも軽々振るえる上、硬い岩盤でも簡単に貫ける逸品なんです。自動修復機能付きでちょっとくらいの損傷なら勝手に直るので手入れもあまりいりません。以前は出番が無かったですが、普段私が採掘する時はお世話になってるんですよ」

 

 それほどにいい品なら随分と金もかかったのではないだろうか。

 かつての真冬を通り越した絶対零度の懐事情を知るあなたが何の気なしに発した感想を受け、ウィズは目をそっと逸らした。

 

「……高性能で得られる快適さはプライスレスなので」

 

 なるほど、至言である。異論などあろうはずもない。

 だがこのツルハシ代を食費に当てるべきだとは一度も考えなかったのだろうか。

 

「さて、じゃあ掘り始めましょうか」

 

 ネバーアローンの知恵袋、パートナーの正論をまさかの黙殺。

 あーあー聞こえなーいとばかりに脇目も振らずに採掘を始めた、世話焼きで家事も得意と、誰かと共同生活を営むなら絶対良いお嫁さんになれると確信できるのに、いざ一人暮らしをさせると食生活が世界最速でゴミになる元極貧店主の背中を、あなたとゆんゆんはじっと見つめる。

 

「あの、ちゃんとウィズさんの生活の面倒、見てあげてくださいね?」

「えっ!?」

 

 切実に訴えるゆんゆん。

 真剣に頷くあなた。

 驚愕を露にするウィズ。

 

「私が生活の面倒を見られる側なんですか!? 面倒を見る側じゃなくて!? 家事やってるのに!?」

 

 ウィズはこれまで、異世界人であるあなたに何度もこの世界の常識を教えてきた。

 更に同居では自身が炊事掃除洗濯といった家事全般を一手に担っているという自負もあるのだろう。甚だ心外といった様子。

 

 確かにウィズは家事担当かつあなたの精神的ストッパーであり、外付け良心でもある。

 だが生活の面倒を見るのと家事担当は違う。違うのだ。主に金銭的な意味で。

 一人で放っておくと綿に含ませた砂糖水を食事にするこの愛すべき友人は、どの面下げて自分が生活の面倒を見るなどとのたまっているのだろう。

 全力で抗議を始めたウィズの戯言を聞き流しながら、あなたは素で思った。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで採掘が始まったわけだが、何も雁首揃えて仲良くツルハシを振るうわけではない。

 ネバーアローンの採掘における各々の役割分担はこうだ。

 

 まずあなたがメイン業務である採掘を担当する。

 うおォン、あなたはまるで人間削岩機だ、とばかりにただひたすら目の前の壁を掘って掘って掘り続けるだけの簡単なお仕事であり、同時にあなたにとっては慣れ親しんだ作業でもある。

 

 ウィズの仕事は全体の統括、各種魔法を用いた採掘跡の掃除、粉塵の除去、窒息やガス中毒の防止といった採掘環境の維持、採掘物の管理と多岐に渡る。

 実質的な採掘リーダーがウィズである事に疑いの余地は無い。

 

 最後のゆんゆんは土魔法を使った坑道の補強と風魔法によるウィズのサポート。

 本人は自分だけ仕事が少ないのでは、と悩んでいたが、ウィズの魔力が回復しない現状ではサポートだけでも十分すぎるほどにありがたいものだ。

 坑道の補強とて他に劣らぬ重要な仕事であり、魔法をインフラに活かすのが上手い紅魔族にうってつけの役割といえるだろう。

 

 オマケとして、不死鳥の雛がたいまつや魔法の代わりに坑道を照らす。

 世の中には坑道にカナリアを連れて行き、弱ったり死んだら毒ガスが出ていて危険だから引き返すという極めて非人道的な運用法があるそうだが、不死鳥はその名の通り馬鹿げた生命力を持っているので多少毒ガスを吸い込んだところで命に別状は無い。それどころか毒ガスに当たった場合、真っ先に倒れるのは確実にゆんゆんである。

 

 

 

 

 

 

 白夜焦原において唯一、一切の日光が届かぬ深い闇の中、規則的で硬質な破砕音がどこかから響いてくる。

 それは一人の人間がツルハシを振るう音と呼ぶにはあまりにも大きく、速く、そして激しすぎた。

 カーン、カーンではなくドガガガガ、としか形容出来ない、どう考えても激しい魔法やスキルが入り乱れる戦闘音でしかないそれは、あなたが速度を全開にして採掘を行っている証に他ならない。

 ツルハシ二刀流による一心不乱の坑道掘り。

 

 常軌を逸した音と採掘を目の当たりにした二人のアークウィザードは、採掘が始まってすぐの頃はそうはならんやろ、と酷く狼狽を示したのだが、あなたがその狂った身体能力を存分に振るうと正気を疑う事態に陥るのは最早ネバーアローンの日常なので、早々に慣れる事になる。

 それでも採掘音が酷くやかましかったのは確かなので、明かり無しでも物が見えてなおかつ頑丈すぎるあなたが先行して採掘し、あなたが掘り散らかした跡を二人が片付けつつ付いていくという形に自然と落ち着いた。

 

 そんな整地削岩機と化したあなたが切り開いた坑道の中でもちょっとした部屋と呼べるほどに広い空間で、ウィズは採掘品のチェックと整理を行っていた。

 雑多に並べられた袋や箱の中には、何かしら鉱物と関わりを持つ者なら一瞬で目の色を変える事請け合いの、超の付く希少鉱石が所狭しと詰められている。

 

 ミスリルやオリハルコン、アダマンタイトといった一般的に希少鉱石とされるものはほんの序の口。

 あなたがエーテルと呼ぶ、星の力が感じられる青い結晶体。

 熱漂う坑道でなお凍てつく冷気を放つ鉄鋼。

 下手をせずとも一つで億に届く、濃密すぎる魔力を内包したマナタイト。

 竜が埋められた、竜の化石ならぬ竜の化鉱。

 確実に竜の谷の異界化に貢献しているであろう、周囲の時の流れを歪める異常な鉱物。

 研磨する前から目を奪われる魔性を持った、宝石の原石の数々。

 存在自体が伝説や幻と謳われる柔らかい石。

 耳を澄ませると中から声が聞こえてくる、石のような物体。

 果ては古今東西の文献を紐解いてきたウィズですら全く未知の鉱石の数々。

 

 まだ採掘を始まってさほど日数が経過していないにもかかわらずこの有様。

 このペースならば世界の鉱石市場の掌握を通り越して崩壊させる事すら容易だろう。

 故に竜の谷産の素材の数々の例に漏れず、取り扱いには細心の注意を払う必要があるとはネバーアローンの共通認識だ。

 だがそれはそれとしてまだまだ採掘を止めるつもりは無かった。あなたとウィズは金銭欲や名誉欲こそあまり強くないものの、物欲に関しては高位冒険者らしく相応に持ち合わせている。

 

「ウィズさん、壁の補強終わりました」

「了解です。お疲れ様でした」

 

 案外居心地がいいのか、大人しく耐火性の鳥籠の中でくつろぐ不死鳥が放つ明かりを頼りに、ここまで掘り進めてきた坑道の地図、現在自分達がいる場所に新たに工事完了のサインを書き込む。

 本職の炭鉱夫が見ればその見やすさに感嘆するであろう詳細な地図は、ウィズが自ら書き記したものだ。

 迷宮に潜る冒険者にとってマッピングは必須技能。凄腕冒険者だったウィズも当然のように高度なマッピング技術を有している。

 

「私はマッピング苦手なんで詳しくは分からないですけど、パッと地図を見た感じ、この坑道もだいぶ長くなってきた感じですか?」

「そうですね。まあ拡張ペースがペースなので」

 

 ネバーアローンが作った坑道はこれで三本目。前の二本は拡張を続けた結果、山を貫通した。

 道は一律で縦横3.5メートルほどと、それなりに余裕を持った広さになっている。

 それを単独で成し遂げるあたり、今もどこかで無心で破壊行為を続けるあなたの採掘の技術が垣間見えた。時間制限付きかつ甲羅掃除を兼ねていた宝島採掘の時とはわけが違う。癒しの女神に鉱物を捧げ続けてきた更地マシーンの面目躍如といったところだろう。

 

「真面目にやったら私が歩くより坑道が伸びる方が早いってどういう事なんだって感じですよ実際。しかもこの広さで完全人力。そうはならないでしょとしか言いようがないっていうか」

 

 陰口や悪口ではない、思ったままを口にする少女に苦笑を浮かべるウィズ。

 ふと時計を見てみると、今日の採掘を開始して数時間が経過していた。

 長時間時間の流れが分からなくなる暗闇の中で作業を行っていると、えてして時間の感覚が狂うものだが、永遠に太陽が昇り続ける白夜焦原において時間感覚の乱れなど然程気に留める事柄ではない。要は慣れである。

 

「ゆんゆんさん、そろそろお昼ですし、一旦休憩にしましょうか」

「あ、もうそんな時間なんですね」

 

 軽く片づけを行ったウィズとゆんゆんは部屋の片隅に鎮座する、大きな岩に括り付けられたロープに向かう。

 一目見てとても頑丈な作りだと分かるこのロープは、千年樹海で集めた素材を使ってあなた達が作成したものであり、先を見通せない暗闇の先にまっすぐ伸びている。

 

「せーのっ!」

 

 そんなロープを掛け声と共に二人が思いっきり引っ張ると、手ごたえと同時、彼方から絶えず聞こえていた破砕音がぴたりと鳴り止んだ。

 

 実はこのロープ、先端があなたの腰に結ばれていたりする。

 これは落下防止の命綱であり、遭難防止措置であり、そして何より速度差や採掘音といった様々な理由で声が届かないあなたを呼び出したい時に用いられるものである。

 

 その用途に違わず、呼び出しを食らったあなたは程なくして戻ってきたわけだが。

 

「なんでちょっと一人になっただけでそうなるんですか!?」

 

 明かりに照らされる、全身が血と土で滅茶苦茶に汚れたあなたの姿。

 一切覚悟していない状態で叩きつけられた視覚の暴力に、アークウィザードの師弟は揃って泡を食ったように慌てるのだった。

 

 

 

 

 

 

 血塗れの原因について問い詰められたあなたは、珍しく消沈し、嘆息混じりに答える。

 少しばかり下手を打ったと。

 

「ヴォーパルのような強敵と遭遇でもしたんですか?」

 

 あなたが怪我を負っていない事を確認した後、言外に、そういう時は私を呼ぶ約束ですよね? と眉根を顰めたウィズの問いかけだが、そうではない。

 採掘中にモンスターと遭遇したのは確かだが、全身を鱗ではなく赤熱した岩石で覆った竜であり、今まで遭遇してきた雑多なモンスターと同じく、ヴォーパルとは比較にならない相手であった。

 当然あなたに瞬殺されたわけだが、あなたの行動がいけなかった。

 

 岩竜は眠っていた。

 あなたの採掘ルート上で。

 

 結果として鉢合わせになってしまい、無心で採掘していたあなたはつい反射的に竜を素手で攻撃してしまったのだ。結果として竜は爆散。至近距離にいたあなたは盛大に返り血を浴びた。

 そして血濡れのまま採掘を続行したため土や泥が全身に付着して汚れたというのが事の真相である。

 まさしく下手を打ったとしか言いようがない。十分防げる事故だっただけに、あなたとしては多方面に対して反省する事しきりである。

 

 ただの返り血だと分かり、ほっと安堵する二人のアークウィザード。

 ヴォーパル戦であなたが負った傷は今もちょっとしたトラウマになっているようだ。

 二人に軽く謝罪しながらもあなたは己の首筋に刻まれた深い傷跡、愛しき強敵が遺した残痕にそっと触れる。

 更なる強敵の登場を願いながら。

 

 

 

 

 

 

 採掘を楽しんだ後は工作の時間だ。

 本来であれば素材はそのまま保管し、冒険が終わってからあらためて消費していく予定だったのだが、予想以上に各種素材がざくざく集まってくるので荷物限界の容量が心許なくなってきてしまったのだ。

 千年樹海や白夜焦原と違い、微かに伝え聞く三層はその性質上、素材の収集を行う機会は限りなく少なくなるだろうが、ここで引き返すという選択が存在しない以上、四層以降の存在の可能性を考慮して容量に余裕がある内に消費しておく事に越したことはない。

 

 比較的安全と判断した素材を使って魔法袋やめぐみんへのお土産といった思い思いの道具を作るウィズとゆんゆんを尻目に、あなたは低品質コロナタイトを素材にした道具を作っていた。

 

 止めろっつってんだろ! とベルディアから全力で頭を引っ叩かれそうな行為だが、当然ポケットハウスの中で制作を行うほどあなたは気が触れていない。

 ちゃんとアクセルから持ち込んだシェルターの中で遊んでいる。

 当然だが工作中に爆発の危険があるのでゆんゆんはシェルターに立ち入り禁止だ。

 

 トンテンカンテン、ドカーン。

 トンテンカンテン、ボカーン。

 トンテンカンテン、ガチャガチャ、*チョドーン!*。

 

 シェルターに響き渡る数々の音。

 そんなこんなで多くの失敗と爆発を経験した末に完成したアイテム。

 その名はニュークリアグレネード。

 

 

 ――ヒトゴロシくんはさあ……遊び半分で私の飯の種を奪う人?

 

 

 完成させた瞬間、どこぞの貧乳テロリストから毒電波が届いたこれは、間違いなくコロナタイト由来であろう、核熱属性というあなたからしてみれば未知の属性の爆発を引き起こす手榴弾であり、イルヴァの技術と異世界の物品が合わさって生まれた両世界の架け橋的存在だ。

 簡単に言ってしまうと、直径数メートルという超極少規模の核爆発に似た爆発を無限に発生させられる楽しいオモチャである。

 

 うっひょーたーのしー! と童心に返って完成したニュークリアグレネードをシェルターの壁にぶつけて久方ぶりに爆発で遊ぶあなただったが、そんなあなたの肩を強く掴む者が現れた。

 

「…………」

 

 ウィズである。

 にこにこと満面の笑顔を浮かべた、しかし無言のウィズである。

 

「…………」

 

 あなたには分かる。

 おこである。

 ()()ぽわぽわりっちぃが本気と書いてマジと読むレベルでげきおこである。

 

 あなたは困惑した。

 怒っているのは分かるのだが、肝心の理由が分からない。

 制作の過程で爆発に巻き込まれて軽く煤けたりはしたものの、あなたは一切の怪我を負っていない。ゆんゆんやポケットハウスを危険に晒してもいない。

 あなたにはウィズがここまで怒る心当たりが本当に欠片も無かった。

 

「お楽しみのところ大変申し訳ないのですが、それは、ダメです。それだけは、ダメです。その道具は封印してください。速やかに、永久に。さもなくば私が破壊します。今、ここで」

 

 あなたは困惑した。

 いくらなんでも横暴がすぎる。何が逆鱗に触れたのか。

 ウィズは突然このような無体な要求を突きつけてくる女性だっただろうか。

 

「分かります。あなたは爆裂魔法に興味津々でしたもんね。でも約束しましたよね? 爆裂魔法が必要な時は私にお願いするって、約束しましたよね?」

 

 あなたは困惑した。

 確かに約束したが、何故その話が今出てくるのだろう。

 別にこれは爆裂魔法を発生させる道具ではないというのに。

 説明するため、あなたは再度壁に向けて手榴弾を投げる。

 爆発が起きたが、やはり爆裂魔法ではない。

 

「ほらまたそういうことする! 当て付けですか! 爆裂魔法の杖を仕入れなかった私への当て付けですか!? そんなのを爆裂魔法の代わりにするなんて私は絶対に認めませんからね!!」

 

 あなたは困惑した。

 笑顔から一転、ぷりぷり怒り始めたウィズはめぐみんが憑依したかの如き物言いである。

 いよいよ本気で彼女の頭が心配になってきたあなたは、ウィズの額に手を当て、次いでユニコーンの角を取り出した。

 

「熱はありませんし正気を失っているわけでもありません! これは私の尊厳の問題なんですー!」

 

 あなたは困惑を通り越して逆に楽しくなってきた。

 実のところ、手慰みに作ったオモチャを手放す程度は全く構わないといえば構わないのだが、折角の機会なのであなたはウィズに軽く遊んでもらうことにした。

 ニュークリアグレネードを掲げて宣言するあなたの姿を見た妹が発した次の言葉が全てだ。

 

 ――いわゆる「もしこの宝がほしいならこの私をたおしてゆくがいい」ってやつだねお兄ちゃん!

 

 かくしてどこでもない異空間の狭間にて、廃人とリッチーによる天地を揺るがす戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

「あ、おかえりなさい、お二人とも随分遅かったですね……ってなんで二人揃ってそんなズタボロに!?」

「ううっ……ゆんゆんさん、私は無力です……」

「いきなりどうしたんですか!? 本当にどうしたんですか!?」

 

 orzと床に手を付いてさめざめと嘆くウィズ。

 かつて見た事も無いほどに満足げに笑って天高く拳を突き上げるあなた。

 

 どこまでも対照的な二人の師の姿を見たゆんゆんは直感的に悟った。

 あ、これ絶対その場の勢いとかつい楽しくなってみたいな、最高にしょーもなくてどーしよーもないアホな理由で喧嘩したな、と。




 WARNING!! WARNING!!
 Encounter with Extra Enemy!!

 Enemy data:unknown
 Enemy level:unknown
 Enemy power:unknown

 unknown
 unknown
 unknown
 unknown
 unknown

 ……極めて困難な戦闘が待ち受けています。
 本当に挑みますか? y/n

 ウィズ「yyyyyyyyyyy」

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