乃木若葉はモテモテである   作:もちまん

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若葉たちが白鳥さんたちのために歓迎会を開くお話です。


上里ひなたはボディーガードである (諏訪一族歓迎編)

ある日の早朝……

乃木若葉は、寝ていた(直球な表現)。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:若葉の部屋

 

 

若葉「ううっ……眩しい……朝か……」

 

ひなた「おはようございます、若葉ちゃん」

 

 

 

朝日の光を受け、目覚める若葉。

目を開けると、枕元にひなたがいた。

若葉は特に驚く様子もなく、彼女がここにいる理由を聞く。

(若葉とひなたは合鍵を持ち合う仲なので、ひなたが部屋にいること自体は普通である)

 

 

 

若葉「……ひなた?どうして私の部屋に……今日授業は休みのはずだが……」

 

ひなた「そこが……問題なんです」

 

若葉「?」

 

ひなた「若葉ちゃん、昨日何があったか覚えていますか?」

 

若葉「?ああ、もちろん。白鳥さんと藤森さんが来た日だろう」

 

ひなた「そのときの白鳥さんの行動……若葉ちゃんはどこか、変に思いませんでしたか?」

 

若葉「え?……いや、特には……」

 

ひなた「いくら若葉ちゃんが宇宙一可愛いとはいえ、白鳥さんの若葉ちゃんに対する甘え方……普通ではありません。実際、天守閣前では若葉ちゃんを今まで見たことがないにも関わらず彼女は若葉ちゃんを認識していました……それに語尾のスラッシュの多さ……おかしいと思いませんか?」

 

若葉「……たしかに、それは私も気になってはいたが……考えすぎじゃないか?」

 

ひなた「考えすぎに越したことはありません」

 

若葉「……もしかしてひなた、私が白鳥さんに取られるのが怖いのか?」

 

ひなた「!?そっ、そんなこと……」

 

若葉「ふふ……予想通りの反応……可愛いな」

 

ひなた「……とっ///とにかく!今日は休日!つまり、向こうから何らかのアピールが来る可能性があります。だから今日1日は、私が若葉ちゃんのボディーガードを努めます!悪い虫がつかないように!」

 

若葉「悪い虫って……まぁ好きなようにやってくれ」

 

ひなた「私も……守られてるだけじゃ……ないから……!」

 

若葉「おいそれ杏の台詞」

 

 

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LOCATION:食堂

 

 

若葉とひなたは、朝食を食べるために食堂へ向かう。

 

 

 

友奈「あ、若葉ちゃん、ひなちゃん。おはよう」

 

若葉「おはよう」

 

ひなた「おはようございます」

 

千景「……おはようなぎ」

 

友奈「今日はうさぎじゃないんだよね~」

 

千景「ふふ、今朝は調子がいいの」

 

 

 

千景は現在の機嫌により挨拶の様式が変化する。

朝の気分が通常であれば『おはようさぎ』、高揚であれば『おはようなぎ』となる。

そして気分が最高潮の場合は『おはようどん』となり、その様相は神世紀298年における乃木園子の「レッツエンジョイカガワライッ!!!」のテンションに匹敵する。

 

 

 

球子「おーっす!今朝は温うどんだぜ」

 

杏「おはようございます」

 

若葉「……白鳥さんたちはどうした?」

 

球子「来てないぞ。昨日の今日だし、まだ疲れて寝てるんじゃないか」

 

若葉「今日は休みだしな。無理に起こすこともないだろう」

 

友奈「あのね若葉ちゃん、そのことでさっきまで話してたんだけど……ごにょごにょのまるまる……」

 

 

 

………………

 

 

 

若葉「歓迎会?」

 

友奈「イエス(キリストではない)。せっかく来てもらったんだし、ちゃんとお祝いをした方がいいかなと思って。もちろんサプライズで!今日はその買い出しや、準備をしないかって話してたんだ」

 

若葉「なるほど……いいなそれは。今夜か?」

 

友奈「うん」

 

ひなた「(余計なことを……!)」

 

友奈「でもタマちゃんの言うように、疲れてるかもしれないから……やっぱり来週にした方がいいかな?」

 

若葉「うむ……」

 

 

 

バンッ(ドアを開ける音)

 

 

 

白鳥「乃木さぁん!おはようございます!」

 

藤森「おはようございます」

 

若葉「おはよう」

 

白鳥「オウ、今朝はうどんね!いただきまーす!みーちゃん、七味かけてあげる!」

 

藤森「う、うたのん!かけすぎかけすぎ!」

 

友奈「(……大丈夫そうだね)」

 

若葉「(そうだな。今日を逃すと休みは来週になってしまうし……やるか。ごちそうさま……)」

 

 

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LOCATION:廊下

 

 

朝食を終えた香川勇者ら6人は、白鳥たちの目を盗み、歓迎会の相談を行っていた。

 

 

 

若葉「歓迎会と言っても、具体的に何をするんだ?」

 

友奈「普通だよ?みんなでお菓子やケーキを食べたり、いろいろ話をしたりして過ごすんだ。あと、ゲームとかもできたらいいかな」

 

千景「さすがね高嶋さん。ゲームを挙げるあたり、目のつけ所が違うわ」

 

友奈「ぐんちゃん、何かオススメ持ってるの?」

 

千景「ふふ、今の私のオススメは……主人公がハンターとなって化物を倒したり武器を作ったり肉を焼いたりする狩猟アクションゲーム……その名も『モンスターハンティング』……略して『モンハン』……!」

 

若葉「ああ、この前千景が私に貸してくれたやつだな」

 

友奈「却下☆」

 

千景「ええっ!?」

 

若葉「ダメなのか?」

 

友奈「みんなで遊べるやつじゃなきゃ!」

 

千景「ううっ……そうね……探してみるわ」

 

若葉「面白いのになぁ……」

 

ひなた「若葉ちゃん……あ、それと友奈さん。今夜ということは、食べ物の買い出しも今日するんですよね?」

 

友奈「そのつもりだよ。でも白鳥さんたちを残して買い出しに行くわけにはいかないし……(全員留守だと怪しまれるからね)」

 

球子「そこで!タマとあんずが代表で買いに行くことになった!」

 

杏「タマっち先輩、メモは持ちました?」

 

球子「もちのロン。では、ちょっくら下界に降臨してくるぞ」

 

杏「(スルーしとこ……)」

 

友奈「気をつけてねー!」

 

若葉「(ああ、このテンポの良さもSSならではだな)」

 

 

 

千景はみんなで遊ぶ用のゲーム探し、球子と杏は食料の買い出しに出かけた。

残る若葉にひなた、友奈は……

 

 

 

若葉「千景はゲーム、球子と杏は買い出し……私たちにも何かできることはないか?」

 

友奈「んー……白鳥さんたちを放って置くわけにいかないし、まずはこの学校の案内でもしない?昨日はバタバタしてて何も紹介できなかったし」

 

若葉「そうだな。それに他の3人が戻って来るまでの時間稼ぎにもなる。ひなたも同行してくれるか?」

 

ひなた「もちろんです!若葉ちゃんのためなら、たとえ火の中、水の中、愛憎渦巻く修羅の中……!」

 

友奈「ひなちゃん、やけに張り切ってるね?」

 

若葉「妻想いの夫なんだ。気にしないでやってくれ」

 

 

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LOCATION:白鳥の部屋

 

 

白鳥「ワッツ?私たちに、ここの案内を?」

 

若葉「ああ。昨日だけでは説明できなかったところもあったし、何より2人にはこの学校のことをもっと知ってもらいたいと思ってな」

 

友奈「あ、でも疲れてるなら無理しなくてもいいよ。今日絶対ってわけでもないし、案内ならいつでもできるから」

 

白鳥、藤森「………………」

 

ひなた「(断れ~断れぇ~……)」

 

藤森「……どうする?私は別に疲れてないけど」

 

白鳥「私もノープロブレム!それにせっかくの乃木さんたちからのお誘い……断るわけにはいかないでしょ!」

 

藤森「うん!」

 

ひなた「(行くんかい……!)」

 

 

 

ひなたは、脳内ツッコミレベルが1上がった。

 

 

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LOCATION:教室

 

 

若葉「ここが私たちの教室だ。室内での授業は基本的にここで行われる」

 

白鳥「そうなんだぁ///あ、これが私と乃木さんの机ね。ごそごそ……」

 

ひなた「こらそこ!勝手に席を入れ替えない!」

 

 

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LOCATION:家庭科室

 

 

若葉「ここが家庭科室だ。ここでは以前、調理実習でぼたもちを作ったことがある」

 

白鳥「ぼたもち、美味しいよね///私のぼたもち、乃木さんにも食べてほしいなぁ///」

 

若葉「作るの、得意なのか?」

 

白鳥「う、うん///」

 

ひなた「んんーっ!(キレそう)」

 

 

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LOCATION:グラウンド

 

 

若葉「最後に、グラウンドだ。私たちの学校はスペースの問題で体育館がない。だからここは私たちが自由に身体を動かせる数少ない場所だ。ちなみに体育は雨の日以外毎日あるから、体操服は忘れないようにな。勇者の戦闘訓練もここで行っている」

 

白鳥「戦闘訓練(意味深)……///」

 

若葉「……いつも私にくっついているが……今日は体調でも悪いのか?保健室に行くか?」

 

白鳥「そういうわけじゃ……ないんだけど……私、乃木さんに会えて……本当に嬉しくて……だから、もう少しだけ……///」

 

若葉「………………」

 

 

 

自身の腕で若葉の腕をギュッと掴む白鳥。

案内の間、ずっとこのような恋人繋ぎをしている。

長時間の移動により、若葉と白鳥の腋は汗だくである。

これには、さすがの若葉にも疲れの色が見られるようで……

 

 

 

ひなた「ちょっと、いい加減に若葉ちゃんから離れなさい!嫌がってるじゃないですか!」

 

若葉「いや、私は別に」

 

ひなた「え?」

 

若葉「きっとこれも、彼女なりのスキンシップなのだろう。ならば、受け入れてやるべきだ。白鳥さん、私も会えて嬉しいぞ」

 

白鳥「の、乃木さん///好きぃ……///」

 

ひなた「……どうぉして~(U○ERworld風に)」

 

 

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LOCATION:街中

 

 

一方その頃、移動中の球子と杏は……―――

 

 

 

球子「ん?どこからか歌が…『儚き永久の……なんとか』か?」

 

杏「たぶん違うと思いますが……『ときのなみだ』かと。それよりタマっち先輩、この曲のバンド知ってるんですか?」

 

球子「……ああ、3枚目のアルバムが超クールだよな」

 

杏「アルバムまで持ってるなんて!なんでもっと早く教えてくれなかったんですか」

 

球子「あ、ごめん嘘。この曲はタマタマ知ってただけだ。このバンドで知ってる曲は基本的にアニソン関連だけで……」

 

杏「んもう!CD貸してあげます!」

 

球子「あ、ありがとな、あんずよ」

 

杏「コアプラ大好き」

 

球子「わ か る」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:スーパー

 

 

杏「さて……スーパーに着きましたね、メモには何て書いてあるんですか?」

 

球子「ん~、ちょっと待ってろ~……あり?」

 

杏「どうしました?」

 

球子「……や、やべ……リストなくした」

 

杏「ええ!?」

 

球子「あ、安心しなあんずよ。タマの記憶力を持ってさえすれば……」

 

杏「(安心できないなぁ……)」

 

球子「……たしか買ってこいリストにあったのは、輪ゴムか消しゴム……」

 

杏「どちらかの2択!?ゴムはゴムでも、用途全然違いますよ!?」

 

球子「あっれー……違ったかなー……?キャベツ太郎は確実にあったぞ」

 

杏「ていうかケーキとお菓子系でしたよね?友奈さんに電話します」

 

 

 

電話中………………ガチャッ

 

 

 

友奈「しもしも」

 

杏「あ、友奈さん?」

 

 

 

………………

 

 

 

杏「全部買えて良かったですね。帰りましょう」

 

球子「サンキューあんず。ほんと、一時はどうなるかと思ったぞ」

 

杏「これからメモは携帯で写メるか、直接メモ帳に書き込んだ方がいいかもしれませんね」

 

球子「なるほど……賢いなあんずは!」

 

杏「普通だよ!(真顔)」

 

球子「な、なんだよ~……もう。それよか、帰る前にゲーセン寄らないか?千景が前やってたゾンビのやつ、タマもプレイしたいぞ」

 

杏「……いえ、今は真っ直ぐ帰りましょう」

 

球子「え?なんでだ?まだ昼だぞ?」

 

杏「なんだか電話越しの友奈さん、少し忙しそうだったので……準備で人手が足りないなら、早く戻って手伝った方がいいよ。それにこのケーキも早く冷やさないと美味しくなくなるし」

 

球子「……そうだな。帰るか」

 

 

 

このとき球子、意外に素直。

 

 

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LOCATION:丸亀城敷地内

 

 

球子たちが買い出しを終えたその頃……

若葉は何やら、眉間にしわを寄せていた。

 

 

 

若葉「いつの間にか友奈と藤森さんとはぐれてしまった……」

 

白鳥「オウ、唐突ね」

 

若葉「白鳥さん、藤森さんと連絡取れるか?」

 

白鳥「ソーリー、私の携帯充電中!」

 

若葉「んー、私もだ!ひなた、持ってるなら友奈に連絡頼む」

 

ひなた「プルルル……」

 

 

 

電話中………………ガチャッ

 

 

 

友奈「しもしも」

 

ひなた「友奈さん?今どこですか?」

 

友奈「うん、今ぐんちゃんの……あっ……アーッ!みーちゃん!みーちゃああぁーんっ!!!」

 

ひなた「ど、どうしました!?友奈さry

 

 

 

ブツッ!……ツー……ツー……

 

 

 

ひなた「………………」

 

若葉「……ひなた?」

 

ひなた「……また、守れなかった……!」

 

若葉「!?おいおい、何の話だ!?」

 

 

 

………………

 

 

 

若葉「なるほど……状況はまったくわからんが、藤森さんに何かあったことに間違いなさそうだな」

 

ひなた「ええ……携帯ももう繋がらないので確認のしようがありません……」

 

白鳥「しょんな……みーちゃんが……アウトラストなんて……今すぐ迎えに行かないと!」

 

若葉「……と言ってもな……場所がわからないことには……あとアウトラストは関係ない」

 

ひなた「それならまずは、千景さんの部屋に行きましょう」

 

若葉「千景の部屋に?」

 

ひなた「先ほど友奈さんは、私の今どこにいるかという問いかけに対して『ぐんちゃんの』……と応えました。この後に続く単語は、おそらく場所……つまり千景さんの部屋か、その近辺にいる可能性が高いです」

 

若葉「よし……ならばそこまで行こう!ここからであれば、寮まで近い!」

 

白鳥「みーちゃん、待っててね……!」

 

ひなた「白鳥さん、そのキュウリは?」

 

白鳥「みーちゃんに会ったらあげるの!私たち諏訪の人間は、諏訪で作られた野菜を食べるだけで、どんな状態であろうとたちどころに元気になってしまうの!」

 

ひなた「そう……(無関心)」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:千景の部屋前

 

 

千景の寮に着いた3人。

若葉は玄関のチャイムの前に立つ。

 

 

 

若葉「……鳴らすぞ」

 

白鳥「ストップ!乃木さん!」

 

若葉「なっ、何だ?」

 

白鳥「この玄関のドア……開いてるわ……」

 

若葉「なん……だと……!?」

 

 

 

ざわ……ざわ……

 

 

 

ひなた「本当……ですね」

 

白鳥「乃木さん……これは……」

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

若葉「千景ーいるかー?」

 

白鳥「え?なんで鳴らしたの?」

 

若葉「え?開いてるからって勝手に入るわけにはいかないだろう」

 

白鳥「サイレントにって意味で!」

 

若葉「?すまん、わからん」

 

ひなた「んー、ここら辺は若葉ちゃんにはまだ難しいかもしれませんね」

 

 

 

若葉がチャイムを鳴らした数秒後、ドアを開け千景が顔を覗かせる。

どうやら玄関のドアが完全に閉まっていなかっただけのようである。

 

 

 

千景「……はい。どなた……って、乃木さん?」

 

若葉「如何にも、乃木さんだ」

 

白鳥「はい、私の乃木さんです」

 

ひなた「は?(キレそう)」

 

若葉「落ち着けひなた」

 

ひなた「キエエ……」

 

千景「……何の用?」

 

若葉「友奈と藤森さん、ここに来てないか?」

 

千景「来てるけど……」

 

白鳥「アメイジング……!すごいわ」

 

若葉「やはり……上里ひなたか……!?」

 

ひなた「ふふふのふ……」

 

千景「……何の話?茶化しに来ただけなら帰って」

 

ひなた「あっ、すみません。実はですね……」

 

 

 

………………

 

 

 

千景「……なるほどね。じゃあさっきのはきっとあれね。入って」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:千景の部屋

 

 

若葉ひなた白鳥「お邪魔しまーす」

 

友奈「あ、若葉ちゃん!」

 

藤森「もぐもぐ(どら焼を食べる音)」

 

 

 

部屋に案内された若葉たちが最初に目にした光景は、どら焼きを頬張る友奈と藤森の姿であった。

千景は長時間ゲームを探したようなのか、床とテーブルには無数のゲームソフトが散乱している。

 

 

 

若葉「友奈、無事だったか。捜したんだぞ」

 

友奈「ごめんね……会話中に電源切れちゃって。充電してたんだ。ごくごく(お茶を飲む音)」

 

若葉「そもそもなぜ千景の部屋に?」

 

友奈「私から来たんだ。ぐんちゃん、そろそろミイラになってる頃かと思ったから」

 

若葉「ミイラ?」

 

友奈「任務ほったらかしてゲームに夢中になってるんじゃないかなって……まぁ、私たちもミイラになっちゃったんだけど……」

 

若葉「むむっ……ミイラ取りがミイラに……良くない傾向だな」

 

ひなた「では、もしかして先ほどのは……」

 

友奈「うん……」

 

 

 

数十分前……

 

 

 

友奈「あっ!みーちゃん、ズルい!」

 

藤森「ふふ、バナナの皮を制する者がマ○オカートを制するんだよ……!」

 

千景「高嶋さん!私に構わず進んで!ここは……私が犠牲になるっ……!」

 

友奈「うあああああああああああああっ!!!」

 

 

 

………………

 

 

 

友奈「……ってときだね~」

 

藤森「一番テンション上がってたよね~」

 

若葉「……まぁ、熱中しすぎないようにな」

 

友奈「ごめんなさい!」

 

白鳥「みーちゃんてそんな性格だったっけ?」

 

藤森「普通だよ?」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:千景の部屋

 

 

買い出し係の球子と杏も無事に帰還し、一同は夕食と風呂を済ませる。

 

そして時刻は午後9時。

パジャマ姿の若葉たち8人全員は、千景の部屋に集合していた。

今から行われるのは白鳥歌野と藤森水都……その歓迎会である。

 

 

 

友奈「それでは!今夜は白鳥歌野ちゃんと藤森水都ちゃんの歓迎会を開催します!」

 

 

 

パン!パン!……(クラッカーを鳴らす音)

 

 

 

白鳥「ドーモドーモ!それにしても、ビッグなサプライズだわ!」

 

藤森「な、なんだか申し訳ないです……」

 

千景「……それより、なんでパーティー会場が私の部屋?狭いのだけど……」

 

友奈「ごめんね。でもテレビ2台あるの、ぐんちゃんの部屋だけだから……それにゲームもたくさんあるし!」

 

球子「そもそもなんで2台あるんだ?」

 

千景「カセットの入れ替えに時間が掛かるからよ」

 

球子「?なるほど、わからん」

 

千景「……あと、録画も捗るわ。1台に録画できるHDDの容量には限界があるし、何よりここの寮のテレビは一般家庭レベルでの機能が備わっていない……だから私の部屋にはその不足分を補うための最新テレビが置いてあるの……その利便性は私のお墨つき……特にこの機器は……―――」

 

球子「うん……?つ、つまり……?」

 

杏「せ、先輩の頭から煙がプスプスと……!ショートしてる!」

 

友奈「ぐんちゃんは機械にも詳しいよね~」

 

 

 

………………

 

 

 

この歓迎会のメインイベント。

リビングの中心にあるのは大きなテーブル。白いシーツが一面に被せてある。

 

 

 

友奈「さあ、ご注目!2人のために用意した、今夜のメインメニューはこれだよ~!」

 

白鳥、藤森「ワオッ!?」

 

 

 

友奈は得意げに、意気揚々とテーブルに掛けてあるシーツをめくる。

そこには球子と杏が買って来た大量のお菓子にケーキ、そして野菜ジュースが並んでいた。

 

 

 

若葉「白鳥さん、藤森さん。改めて……ここに来てくれてありがとう。特に何かしてやれることはないが……これは我々から、せめてもの感謝の気持ちだ。受け取ってくれ」

 

白鳥「グレート……机いっぱいのお菓子とケーキ……しかも野菜ジュース(←重要)まで……」

 

藤森「これをわざわざ、私たちのために?いいんですか?こんなにしてもらって……」

 

若葉「ああ、もちろんだ。今夜はみんなで楽しもう!」

 

藤森「乃木さん……みなさん……素直に嬉しいです。ありがとうございます!」

 

球子「いいってことよ!んま、そもそもの提案は友奈だけどな!」

 

杏「よ、良かった……喜んでもらえたみたいで……」

 

友奈「飾りつけはみんなでしたんだ!特にぐんちゃんが張り切ってたよ~」

 

千景「ドヤッ(ドヤ顔)」

 

ひなた「微力ながら、私もお手伝いさせたいただきました」

 

白鳥「ううっ……ありがとうっ……!私も嬉しいよ……乃木さぁん!」

 

若葉「おっと!」

 

白鳥「ど、どうして逃げるの……」

 

若葉「このパジャマ、新品なんだ。涙で汚されては堪らん」

 

白鳥「そっ……そんな……待って乃木さぁん!」

 

若葉「はははー!捕まえてみろー!」

 

球子「なんだこれ」

 

 

 

………………

 

 

 

ひなた「はぁ……仲がいいのは結構ですが……白鳥さん、あなたはどうしてそこまで若葉ちゃんに……」

 

藤森「……きっと、寂しいんだと思います」

 

ひなた「……寂しい?」

 

藤森「うたのんは、諏訪で唯一の勇者だから……ひなたさんも巫女ならわかるはずです。勇者という存在が、そこにいるだけで人々に、どれだけ希望を与えているのかを……」

 

ひなた「……ええ、もちろん」

 

藤森「うたのんは、言うならその期待や希望をずっと背負ってきたんです。いつ破られるかもしれない結界の中、たったひとりで……向こうでの『勇者白鳥』は、人に頼りにされることはあれど、自分が頼りにできる人はいなかったから……だから乃木若葉さんの存在は、うたのんにとって……希望なんです。ここの勇者たちが、四国の人々にとっての希望のように……」

 

ひなた「……それは違いますよ」

 

藤森「え?」

 

ひなた「水都さん、あなたも白鳥さんの支えになっているんですよ」

 

藤森「私が……?」

 

ひなた「自分では気ついていないだけです。ひとつ訊きますが、白鳥さんが誰も頼りにしていない……なんて、誰が言ったんですか?」

 

藤森「うっ……それは、私が……」

 

ひなた「なら水都さん。自分が誰からも頼りにされていないなんて、決めつけないでください。私は今日1日、白鳥さんと一緒に行動して、よくわかりました。あの人は、あなたのこと……誰よりも大切に想っていますよ」

 

藤森「うたのんが……」

 

ひなた「ええ。ですから、自信を持ってください。あなたが白鳥さんのことを大好きなように、白鳥さんもあなたのことが大好きなんです。忘れないで。私たちは巫女と勇者である以前に、互いを想い合う仲間なのですから……」

 

藤森「ひなたさん……その言葉、心に響きました。ありがとうございます!」

 

ひなた「前回の話で白鳥さんがあなたのことを『私の勇者』と言ったのも、その表れでしょうね」

 

藤森「(あれ伏線だったんだ……)」

 

ひなた「……ですから、できれば今の彼女を止めていただきたいのですが……」

 

藤森「……はっ!うたのん!!!ストーオップ!」

 

 

 

パッシィァア!

 

藤森は、掛け声と共にハリセンを床に叩きつける。

その音に白鳥が驚かないはずもなく……

 

 

 

白鳥「はうっ!?みーちゃん!?」

 

藤森「寮内では静かに!」

 

白鳥「ご、ごめん……」

 

若葉「ははは……」

 

 

 

………………

 

 

 

杏「でも……珍しいですよね。普段は厳格な若葉さんが、今日はあんなに羽目を外すなんて……」

 

球子「たしかに。それに歌野が来てから少し、丸くなった気がするな」

 

ひなた「(……ああ、若葉ちゃんもきっと、彼女と同じなんですね……)」

 

 

 

今日は少しだけ……大目に見てあげますか。

 

 

 

白鳥「フム……それにしても、勉強になるわ。最近のJCはこんなパッジャーマを着るのね」

 

藤森「うたのん、それ言ったら私たちもJCじゃ……」

 

白鳥「私たちのとは可愛さが違うわ!千景さんとかキャミソールよキャミソール!あんなの、この私が生きていた時代にはなかった……」

 

千景「そうなの?」

 

藤森「あ、別に深い意味はないんですよ。うたのん、漫画とかアニメにすぐ影響されるタイプだから……」

 

白鳥「千景さん可愛い!茄子あげるからこっち向いて~♪」

 

千景「……ま、まぁ、悪い気はしないわ」

 

友奈「おおっ!ぐんちゃんがノリノリに!」

 

白鳥「ねぇ千景さん!もっと過激なのはないの?」

 

千景「……ふふ、いいわ。私のとっておき……見せてあげる!」

 

白鳥「キャーッ!☆」

 

友奈「スケスケだぁーっ!(笑)」

 

杏「……『うたちか』?流行りますかね……(シャッターを押しながら)」

 

球子「意外すぎる。どっかのカラオケ店みたいだな」

 

杏「ちなみに作者さんは『わかうた』推し……」

 

球子「知ってた」

 

 

 

………………

 

 

 

千景「よし……起動したわ」

 

友奈「みんなー、ス○ブラ(2008)やろうよ~」

 

白鳥「スクランブル!私がやるわ。乃木さんも一緒にプレイしましょう?」

 

若葉「ああ」

 

球子「何っ!?なつい!タマもやるぞ!あんずもやるだろ?」

 

杏「で、できるかな……」

 

千景「ふっ……悪いわね土居さん。このゲーム、(私を含めて)4人用なの。だからあと3人……」

 

友奈「ぐんちゃんは私とマ○オカートだよ!ひなちゃんにみーちゃんもするって!」

 

千景「……わかったわ。藤森さん、次は私が勝つ……!」

 

藤森「(え?なんでこの人本気なの?)」

 

 

 

数分後……

 

 

 

球子「あんず……すまねえ。あとは、任せる……」

 

杏「タマっち先輩!」

 

白鳥「乃木さん……あとは、お願いします」

 

若葉「任せろ!」

 

 

 

さらに数分後……

 

 

 

若葉「いやっ、待て杏!そのスマッシュボールは……!」

 

杏「(えっと、たしかBボタンで発動……)」

 

若葉「ひああああぁっ!」

 

 

 

格闘ゲームでは白鳥が若葉を、球子が杏を守る形となり自滅。

若葉と杏が残ったものの、最終的にフィールドのアイテムを誰よりも上手く駆使した杏が1位。

 

 

 

ひなた「レインボーロード……進むだけでも結構難しいですね……」

 

友奈「2人とも、1回も落ちないなんてすごいなぁ……」

 

藤森「この手のゲームは得意なんです」

 

千景「(ぐぎぎっ……!私はゲームの天才……負けるはずがないっ……!このっ、このっ……蹴散らしてやるっ……!)」

 

 

 

レーシングゲームでは水都が意外な才能を見せ1位。

玄人の千景が惜しくも2位という結果になった。

 

 

 

若葉「(……たまには、いいよな。こんな楽しい日があっても……)」

 

 

 

友奈が企画した2人の歓迎会は無事大成功を収めた。

ひなたと白鳥の軋轢も解消?され、香川と諏訪間の絆はより深まった。

時刻は午後11時……まだまだ夜は続く……

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:若葉の部屋

 

 

歓迎会の翌日。時刻は朝7時。

 

 

 

???「……だぞ」

 

白鳥「んん……?何……?」

 

若葉「朝だぞ、白鳥さん」

 

白鳥「……はっ!ここは?」

 

 

 

何者かに起こされ、飛び起きる白鳥。

声の方に顔を向けると、そこには若葉の姿があった。

 

 

 

白鳥「ええと……」

 

若葉「おはよう。ここは私の部屋だ」

 

白鳥「え?なんで私が……」

 

 

 

寝ぼけまなこなまま、辺りを見回す。

自分以外には若葉しかいない。そして、若葉もまだパジャマ姿である。

彼女も今起きたのだろう。その証拠に、相手の布団もまだ片づけられていない。

 

 

 

若葉「覚えていないのか?昨日は私とひなた、藤森さんと4人で寝ただろう」

 

白鳥「……あっ、そっか……私昨日、乃木さんと寝たんだぁ///」

 

若葉「なっ///ご、誤解を生むような言い方はよせ!」

 

白鳥「ふふ、ねえ乃木さん。あとの2人は?」

 

若葉「ん……先に食堂に行くと言っていた。実を言うと私もさっき起きたばかりでな。白鳥さんを起こして一緒に行くように言われたんだ」

 

白鳥「そうなんだ……私、起きた方がいい?」

 

若葉「?どういうことだ?」

 

白鳥「もう少し……このままでいたいの……」

 

若葉「このまま……?」

 

 

 

白鳥は、少し表情を曇らせる。

 

 

 

白鳥「乃木さん……昨日は……ありがとう。楽しかった。ゲームもお菓子もそうだけど……何より私だけじゃなく、みーちゃんまでも必要としてくれるみんなの気持ちがこう……私のハートにダイレクトに伝わって……なんて言えばいいかな。諏訪の人たちとはまた違った形で頼りにされてるんだって思うと、本当に嬉しかった。みーちゃんも、きっとそう思ってると思う」

 

若葉「……それは良かった」

 

白鳥「でもねっ……なんで……かな……寝る前にね、こんな日がいつまでも続けばいいのにって、ふと思っちゃったんだ。そしたら……なんだか急に……不安になって……昨日あんなにしてもらったのに、私はまだ、どこか心細いみたい……」

 

若葉「………………」

 

 

 

下を向き、両手で目を覆う白鳥。頬を何かが伝う。

そう……彼女はこれまで、諏訪でたったひとりの勇者として戦ってきた。

人々の期待を背負いながら、ずっと……戦っていたのだ。たったひとりで。

 

 

 

若葉「白鳥さん……」

 

白鳥「えへへ……おかしいわよね。私、乃木さんと出会って、ちょっと弱くなっちゃったのかも」

 

若葉「そんなことはない」

 

白鳥「え……」

 

 

 

顔を上げ笑顔を作る白鳥。

しかし、若葉にはそれがどこか……寂し気に見えた。

 

きっと、いや確実に。向こうでの彼女は誰よりも孤独だったに違いない。

期待と不安……そんなプレッシャーの中での戦いは……さぞ心細かったことだろう。

 

 

 

若葉「………………」

 

白鳥「の、乃木……さん?」

 

 

 

若葉は何も言わずに、目の前の少女を優しく抱き寄せる。

憧れの若葉の香りがする。こんなに近くで。白鳥の鼓動は加速した。

 

 

 

若葉「……言ったはずだ。もしここで困ったこと、辛いことがあれば、いつでも私たちに相談してくれと。白鳥さんは、ひとりじゃない。仲間がいる。たとえ世界がどうなろうと。世界のすべてがあなたの敵に回ろうと……歌野。何があろうと、私はあなたの味方だ」

 

 

 

今まで、人に言われてここまで嬉しかった経験を、白鳥は知らない。

 

 

 

白鳥「……のっ……乃木……さ……ん……ズルい、よ。ひっく……」

 

若葉「だから、もう『乃木さん』は卒業でいいんじゃないか?歌野」

 

白鳥「わ、若葉さん……」

 

若葉「ダーメだ。さん付けもよせ」

 

白鳥「わっ……『若葉』///」

 

若葉「何か用か?」

 

白鳥「もっ、もう///若葉が呼んでって言ったくせにぃ///」

 

若葉「はは、すまんすまん」

 

 

 

白鳥に笑顔が戻った。

いざ出会ってみると、最初は少し苦手なところもあったが、意外と可愛いところもあるんだな。

また心寂しくなることがあれば、こうして励ましてやるか……可愛いしな。若葉は思った。

 

 

 

若葉「歌野……」

 

白鳥「若葉ぁ///」

 

 

 

他に誰もいない空間で、2人はいつまでも、見つめ合っていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:食堂

 

 

一方その頃……

 

 

 

杏「うっ……」

 

球子「?どした?あんず。便通か?」

 

杏「なんか……遠距離から、もんのすごい百合の波動を感じます……!」

 

球子「……さて、今日も1日がんばるぞいっと!」

 

杏「無視はきついですー!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:若葉の部屋

 

 

若葉と白鳥……食堂に行くことも忘れ、2人は布団の上で女子トークに花を咲かせていた。

 

 

 

白鳥「ねえ若葉。今日もここを案内してくれるんでしょう?」

 

若葉「え?案内は昨日ですべて終えたはずだが……」

 

白鳥「ノンノン!今日は若葉のオススメデートスポットを教えてほしいな///」

 

若葉「今日は授業がある日なんだがな……」

 

白鳥「いいじゃない。私、若葉のこと……もっと知りたいの///」

 

若葉「……仕方ないな。じゃあ今日はry

 

ひなた「グッモーニン若葉ちゃん。いい夢見られましたか?」

 

白鳥「!?」

 

若葉「なっ、ひ、ひなた!?どうしてここに!?」

 

ひなた「あまりにも遅いんで戻ったんです!そしたらなんですか!今朝からこのイチャイチャっぷりは……私たちのドアを開ける音にも気づかないなんて……」

 

藤森「うたのん……ひどいよ……私という巫女がいながら……」

 

若葉「ごっ!誤解なんだ!ひなた、これはだな……その……!」

 

白鳥「ミートゥーミートゥー!」

 

ひなた「キエエエエエエエエエエエエエエエエーーー!!!だまらっしゃいっ!」

 

若葉、白鳥「はいっ!!!?」

 

 

 

修羅場……―――

というものが存在するのであれば、今が正にそれであろう。

百合行為及び授業放棄未遂……目の前の巫女は完全に怒っている。

抵抗するも、ひなたの威圧に成す術はなく……2人は反射的に正座の形を取る。

 

 

 

ひなた「若葉ちゃん!同じ勇者とはいえ、あまり甘やかさないように!」

 

若葉「うむ……わかった……」

 

藤森「うたのんも!愛に溺れてばかりじゃダメだよ!」

 

白鳥「は、はーい……」

 

 

 

ああ、やっぱり巫女ってちょっと怖いな。そう思う2人の勇者であった……

 

 

 

続く




普通とは何か?それを問い直す回でもありましたね。
ちょっとパロネタが多すぎた気もします。
次回も白鳥さんが大暴れ!

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