乃木若葉は百合である (乃木若葉洗脳編)
西暦2018年―――
この時代では、異形の敵『バーテックス』による侵攻が各地で進んでいた。
そして、この物語の主人公『乃木若葉』とその仲間は、人類をバーテックスから守る『勇者』と呼ばれる存在であり、日々その襲来を食い止めていた。
ここ四国地方の防衛を担う『勇者』は5名。
乃木若葉、高嶋友奈、郡千景、土居球子、伊予島杏。
そして彼女たちをサポートする『巫女』の上里ひなた。
『乃木若葉は勇者である』の登場人物は基本的にこの6名で構成される。
常在戦場の若葉たちであるが、それ以外はごく普通の少女。当然休息は必要である。
これは、そんな彼女たちの日常譚である……―――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
LOCATION:教室
ここは丸亀城内の教室。
現在は改築され、勇者専用の学校として使用されている。
景観は保ってはいるが、その内装はどこにでもある学校とさほど変わりはない。
ある日の休み時間……若葉はスマートフォンを眺めていた。
若葉「『結城友奈は勇者である』はアプリ配信に2期決定か……ゆゆゆ界隈も賑わっているな」
ひなた「そうですね。しかも『鷲尾須美は勇者である』に至っては、劇場版が公開されています。これはゆゆゆ界隈では初の偉業ですね」←姑息な宣伝を……
若葉「そう!そこなんだ問題は!」
ひなた「は?」
若葉「だっておかしくないか?『わすゆ』は『ゆゆゆ』の2年前の話とは言え、『わすゆ』は『わすゆ』でひとつの物語のはずだ。それなのになぜ、『結城友奈は勇者である―鷲尾須美の章―』と、『ゆゆゆ』に一括りにされているのか……」
ひなた「え?そこ問題ですか?」
球子「わかる!わかるぞ若葉!」
若葉「球子!」
後ろで話を聞いていた球子が会話に入る。
球子「タマも常々、このタイトルには疑問を抱いていた!『わすゆ』を映画化するなら、タイトルはやはり『鷲尾須美は勇者である』だ!」
若葉「ああ、その通りだとも!」
ひなた「いえ、だから、若葉ちゃんも言ってたじゃないですか。『わすゆ』は『ゆゆゆ』の2年前の話だって……だから『ゆゆゆ』に関連付けされても納得できると思うのですが……」
若葉「違うんだ……ひなた」
球子「うんうん」
ひなた「はぁ……なんですか?」
若葉「なるほど、タイトルがそうなってしまった理由はわかる。だが真に恐ろしいのは、我々の作品までもが『ゆゆゆ』に侵食されてしまうことにある」
ひなた「!!!」
若葉「我々『乃木若葉は勇者である』の小説、漫画以外での展開は、ドラマCD2枚だけだ。多方向への展開の早さであれば、それは『わすゆ』よりも早い。今後映像化もされよう。いや、されるに決まっている(願望)。考えても見るんだ、もしこのままの流れで『のわゆ』がアニメ化されたら、題名はきっとこうなる……」
『結城友奈は勇者である―乃木若葉の章―』!!!
ひなた「はぅっ!!!」
若葉「わかってくれたか、ひなた。今、事は想像以上にひっ迫しているんだ」
球子「うんうん、その通ーり!」
ひなた「……たしかに、このままではまずいですね」
若葉「ああ。我々初代勇者たちが威厳を取り戻さなければ、世界は終わる……!」
球子「(終わらねーよ……)って言っても、何か策でもあるのか?」
若葉「うむ……やはりまずは、『乃木若葉は勇者である』のことを多くの人に知ってもらうことが必要だと思うのだが……」
ひなた「なるほど……少し前までは難しかったかも知れませんが、今は『ゆゆゆい』もありますし、知名度も上がっていますから、そう難しくはないのでは?」
球子「乃木若葉の章難しすぎない?」
若葉「違う球子、そっちじゃない。ともあれ、知名度は上がっていることは確かか……公式も頑張っているし、我々にもできることか……ならば……!」
『二次創作を増やそう』
球子「に、虹?」
ひなた「まぁまぁ、素敵な響きですね……」
杏「二次と聞いて」
球子「おお、あんず」
若葉「『ゆゆゆ』関連で二次創作のページを開いてくれる人がいれば、調べていくうちに自ずと『のわゆ』の……そう、このページにも行きつくだろう。そうすれば、『のわゆ』も有名になって、正式なタイトルを勝ち得るに違いない!『ゆゆゆ』の力を借りるのは情けないが……」
ひなた「仕方ありませんよ、メディア展開は『ゆゆゆ』の方が先なんですから。もしかして若葉ちゃん、『ゆゆゆ』のこと……あまり好きではありませんか?」
若葉「いや、そんなことはない。寧ろ好きな方だ……だが、ああ、なんと言えばいいのか……このモヤモヤした気持ちは……」
杏「KOIですね」
球子「違うだろ」
杏「ゆーびの交ざり~」
若葉「……それだ!」
杏「え?」
若葉「『二次創作』……それをするにしても、様々なテーマがあってだな……我々はどの分野で展開していけばいいのか……正直、迷っていた……だが杏の言う、それならいけそうだ。二次創作で圧倒的に需要の高いもの……それは『恋愛もの』……勇者であるシリーズなら、『百合』だ。女の子の数で言えば、我々は8人!『ゆゆゆ』より2人も多い!」
球子「8人……?ちょっと待ちタマえ。タマたち6人はわかるけど……あと2人は誰だ?」
ひなた「まさか若葉ちゃん、白鳥さんと藤森さんをここに呼ぶ気ですか?」
若葉「そうするしかない。知名度的には、我々はまだまだだ……だから数で攻める!」
???「私もいるわよ!」
球子「ふーん……百合ねぇ……」
杏「私はアリですね」
若葉「だろ」
ひなた「(ああっ、なんだが若葉ちゃんがどんどん間違った方向に進んでいる気が……)」
………………
若葉「さて……最初は誰と、どんな展開で行くか……」
ひなた「”最初は”?若葉ちゃん、まさか複数と百合するつもりでは……」
若葉「当然だ。8人もいれば、カップリングの数は8C2で最大28!『ゆゆゆ』の6C2の最大15を圧倒的に上回る百合が形成される……それにどうやら、この次元の私は女子からモテモテらしい。そうだな、まずは友奈辺りから……」
ひなた「だ、ダメです若葉ちゃん!」
若葉「もしやひなた……お前BL派か」
ひなた「極端ですって!怒りますよ!」
若葉「やってみろよ(壁ドン)」
ひなた「(あれ?若葉ちゃん、なんだかいつにも増して真剣な表情……)」
若葉「ひなた……頼む……私のものになれよ……」
ひなた「わ、若葉ちゃん///あっ///やだ……」
……イチャイチャ……
球子「……帰るか」
杏「そうですね……」
………………
若葉「(……ふぅ、ひなたは攻略が楽すぎる。む、球子たちがいない……帰ったのか……)」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
LOCATION:廊下
ひなたとの百合を終えた若葉……しかしその顔は、決して清々しいものではなかった。
若葉は悩んでいた。『百合の本質』……それがどういうものであるのかを……
若葉「(……だが、これで本当に良かったのだろうか。実際、私は『百合』と言うものをよく知らない……先程ひなたとしたようなことが、果たして本当の百合と言えるのか?私とひなたが今までやってきたことも、所詮は仲良しの延長……真の百合とは一体……)」
友奈「あれ、若葉ちゃん」
若葉「お、友奈。それに千景」
千景「難しい顔して……何か考え事?」
若葉「……いきなりですまないが、ふたりの百合を見せてくれないか?」
友奈、千景「!?」
若葉「実は……―――」
………………
友奈「なるほど、全然わかんない!」
若葉「他人同士の百合を見れば、何か掴めると思うのだが……」
千景「願ってもない話だけど……お断りよ。百合は、見せつけるものじゃない……」
若葉「頼む千景先生!一生のお願いだ!」
千景「ええっ!?」
友奈「(今使うんだ……)」
千景「し、仕方ないわ……ね。乃木さんが、そこまで言うの奈良……」
友奈「奈良は私の地元だよ」
若葉「ありがとう!」
友奈「(キャラ違うし……)」
千景「写真は撮らないでね」
………………
若葉に懇願された2人は、そのまま百合を披露することとなった。
友奈「えっと……いつも通りでいいのかな?」
千景「そうね……まずは、指を絡めて……そう、ボディタッチが基本……」
千景が差し出した両手に、友奈の指が絡む。
この2人の百合は、比較的スローペースで行われる。
若葉「なるほど、少しずついく感じか」
友奈「密着とはいかないまでも、身体はなるべく近づけて……」
千景「(ああ、良いわ……高嶋さんの熱が、私の肌に直に伝わって……)」
若葉「ふんふん、いい感じだ!」
千景「(でもやっててなんか虚しい)」
友奈「(若葉ちゃんの反応……なんだか家のおとーさんみたいだ)」
若葉「次はもっと表面積攻める感じで頼む」
しかしその様子を、遠くからスコープでじっくり見つめている者がいた……
杏「(ククク……計画通り!)」
確実に百合思考に染まっている!!!
杏「(私の目に狂いはなかった……!若葉さんは、一度物事に興味を持つと、そのひとつを極めんがために、とことんのめり込んでしまう性格……その性格と、元々ひなたさんとの関係が濃厚&適正だったことから、私が以前貸した百合本100冊に百合百合ドラマCD音源の効果はてきめん。結果的に百合を好む体質になった……)」
ゆくゆくは若葉さんを(私好みの)完全な百合思考に染め上げて、若葉さんを支配!
そして私との完璧なノンフィクション百合小説を書いてみせる!はーっははははははは!!!
ガチャリ
杏「???……なっ、何ぃ~!?こ、これは……手錠!?」
球子「はい、伊予島さん家のあんずくん、逮捕ー」
杏「ど、どうしてタマっち先輩が私の心の中に……」
球子「タマじゃない。球子警察のモンだ」
杏「球子警察?なんですかそれ」
球子「あんず……お前を乃木若葉洗脳の容儀で逮捕する」
杏「ゆ、夢ですよね、これ……」
球子「自分の胸に聞いてみな」
友奈「イエーイ!逮捕しちゃうよー!」
杏「友奈さんまで私の心の中に!?い、いやー!離してください!治安維持法は違法ですよー!」
伊予島杏、逮捕。乃木若葉の思考は戻らず……
続く
今回は今後の話の基盤を作るため、メタ発言多めにしてます。
次回から『のわゆ』ワールドメインで展開させていただきます。