その日、比企谷八幡は自ら命を絶った。   作:羽田 茂

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こうして、私達の青春ラブコメは幕を閉じる。下

雨音が鼓膜を穿つ。

 

布団の中に綺麗に収まっているにも関わらず、肌に触れる空気は必要以上に冷たく感じられ、思わずブルッと身震いする。

モゾモゾと身体を動かすが、睡眠によって下がった体温は中々上がらず、一向に布団も身体も暖まる気配はない。

 

手早く身体を暖めるのを諦め、意味もなく窓の外を見やると、濃い墨を流し込まれたかのような空が視界に入った。

眼に入る景色が普段より暗いのは、分厚い雨雲が微かな朝の陽光を遮断しているからだろうか。

鼓膜を震わせるつんざくような雨音と、湿気を含みじめついた空気が嫌に気になり、身をよじる。

すると、隣で寝ている姉の白いうなじが眼に入った。その肌はしっとりと汗が滲んでいる。

 

身体を抱えるように丸くし、震えながら涙を流す姉の姿は、すでに見慣れたものとなってしまった。

私は彼女の頭を胸元に抱きこみ、彼女の頭に手を置いてゆっくり、ゆっくりと撫で始める。

 

地面に叩きつけるような雨音を聴きながら、柔らかな髪を撫で続けていると、次第に姉の呼吸は緩やかになり、震えが治っていく。

そしてピクンとその身体が小さく跳ねた。

 

「……の……ちゃん?」

たどたどしいしい声。そして、弱々しい声。

「ええ、……おはよう姉さん」

 

むくりと姉が起き上がり、一度自分の髪を手で(くしけず)るように撫でる。が、すぐ今度はくしくしと眼をこすり始めた。

「また…かしら?」

拭えど拭えど、拭いきれず瞳から零れ落ちる滴。それでも姉は手を止める事なく、眼を真っ赤にしながら、コクンと小さく首を振った。

「……」

「眼が傷付くわよ」

姉は再び首をコクンと縦に振り、目蓋から手を離す。

行き場を失った手はダランと垂れ下がり。行き場を失った涙はボタボタとシーツに幾つものシミを作った。

 

姉は布団が身体にかかったまま、涙を伝せたまま身を起き上がらせ、ポツリと呟く。

「…死んじゃったね」

 

雨音に掻き消されてしまいそうな声に私はそうね、と短く返す。

「…今日だね」

そうね。

「早いけど、起きよう」

そうね。

 

姉が布団から這い出て、近くにある電灯のスイッチを押し、キッチンへ歩いて行く。

暗闇に慣れた目に明るい光が刺さり、思わず眼を手の平で覆った。

 

眼が慣れると、私もベットから起き上がり、パジャマの上から直接コートを羽織った。

 

勉強をして。食事をして。入浴をして。そして眠る。

ただ胸に底の見えない空洞を抱えながら、変わらぬ生活を繰り返すアリゴリー。

 

時間が解決する、という言葉があるが。私の胸に生まれた虚無感は、一向に治まる気配は無い。

それどころか、まるで餌を与えられたバクテリアの様にその空洞を広げ続け、私を苦しめる。

 

けれど、それで良いのだ。

 

きっといつか、皆忘れてしまうのだろう。比企谷八幡という一人の少年の事を。

無かった事になるのだろう。あの惨劇(さんげき)も、悲劇(ひげき)も、孤り苦しんだ彼の悲壮(ひそう)も、彼が被葬(ひそう)される事すら許されなかった事実も。

何もかも全てを、()ぎ去った()去の事になるのだろう。()ぎ去った(あやま)ちになるのだろう。

 

それでも、私は。私達は忘れない。彼の事を。

それが義務である事を、責任である事を。私達の罪悪感がそうさせている事は否定はしない。

 

けれど、そうじゃないのだ。それだけじゃないのだ。だって、私達は。

 

 

だから、問うのだ。

 

「姉さん。良い夢だった?」

 

卵を掻き混ぜていた姉の手がふと止まる。

「良い夢だったよ」

 

涙を止める事なく、彼女はそう返した。

 

 

 

 

「コレで…、最後ね」

蛇口から流れる水を止め、濡れた手でそのまま食器を乾燥器に詰め入れる。

そして、近くに(あらかじ)め置いてあったタオルで、付着している水滴を拭い取った。

 

閉じたカーテンの隙間からは微量と呼ぶのも烏滸(おこ)がましい陽光が入り込み、部屋の情景を靉靆(あいたい)と、かつ暗然(あんぜん)と浮かび上がらせている。

そんな部屋の中央にあるソファに横たわる影。

その瞳は閉じられておらず、何処を見ているのか分からない。ただ透明なガラス玉の様な瞳で、虚空を見つめていた。

「…食器片付け終わったわ」

 

姉が半身寝返りをうち、私と瞳が交差する。

 

彼女は数拍私に空虚な瞳を向けていたが、(しばら)くすると、

「うん…じゃぁ、そろそろ起きなきゃね」

ガラス玉に色を垂らしたかのように、その瞳に理性と知性を映しだした。

よっとソファから起き上がると、大きく伸びをし私に向き合う。

 

「さて、小町ちゃんはいつくるかな」

「少なくとも9時には迎えに来ると言っていたけれど」

姉がチラリと眼を上方斜めへ傾ける。私もそれに続く様に、視線を其方(そちら)に向けると、円形の形をした壁掛け時計が目に入る。

その短針は8と9の中間を指していた。

 

「うーん、小町ちゃんがくるまで、もう少し時間あるね」

「……そうね。でも、彼女の事だから約束より、30分程早く来るのではないかしら」

彼の様に。

「ん。私もそう思う」

姉がそう口にした瞬間、ピンポーンと高く、間抜けた音が部屋中に響き渡った。

 

「噂をすれば」

姉が玄関へゆっくりと歩いて行く。私も背中を追った。

 

「はーい」

「どーもです。陽乃さん、雪乃さん」

扉を開けると、そこに居たのは案の定小町さんだった。

 

あの日から、一ヶ月以上前から変わらぬ、薄い微笑みを顔に張り付けている。

「まぁ、立ち話も何だから入って、入って」

そう言った姉を制すように、小町さんは胸の前で手をひらひらと振った。

 

「いやぁ、ですね。来たばっかりで悪いんですが、これ以上遅く行くと見られなくなっちゃうかもしれないんですよー」

「その、小町さん。私達は今日何処に行くのか、まだ聞いていないのだけれど」

そう返した私に彼女は、またまたそんなー。と笑みながら言った。その眼は笑っていない。

「……雪乃さん達も知っているんでしょう?あの事」

小町さんが一歩踏み出す。コツッと靴が鳴った。

 

「うん、知ってるよ。やっぱり行くの?」

姉が腫れた眼を細め、彼女の瞳を覗いた。

「はい。それが、私が兄に出来る唯一の罪滅ぼしだと思っていますから」

人差し指をピッと立て、″それに〟と言葉を繋げる。

「兄を殺した人の顔、結構気になるんですよー」

一瞬だけ、小町さんの眉間に小さく皺が寄ったのを見た。

そんな小町さんに、「そう」と短く返す姉。

 

「それじゃ、今度は小町がお二人に聞きますけどー。…行かないんですか?」

首を斜めに倒し、小町さんが問う。

愚問だ。

「まさか、そんなワケないよ。必ず行くよ、何があってもね」

全て赴いた。分かる限りの、彼の死に関係する場所は。全て。

ですよね、と私達に返し、小町さんはくるっと体を180度回した。

その視線の先には、雨が降っているだけだ。

 

「ねぇ、小町ちゃん。…限界なんでしょ?」

姉がそっと問うと、小町さんは再び身体を180度回転させ、うん?と首を捻った。そしてにゃはっと笑う。

 

「突然どうしたんですか?てか、限界…?小町ちょっと陽乃さんが何を言っているか分からないですね〜」

「うん、だろうね。でも…」

姉はそこで言葉を区切り。そ小町ちゃんに向かって足を一歩踏みだす。そして、

「早かれ遅かれ……。必ず追い付かれるよ」

憐れむような、慈しむような。どちらともいえない様な。そんな声音で彼女に言った。

 

「そうですか」

「うん、そうだよ。……っとこれ以上時間を無駄にするのもアレかな。じゃ、行こうか雪乃ちゃん……、小町ちゃん」

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

住宅街は騒然としていた。

 

激しい雨が降っているにも関わらず、人混みは恐ろしい程肥大している。皆が傘、レインコートで雨を防いでいるため、雑然とした人混みがより一層雑然と映った。

 

ある者はこの日を待ちわびていたかのように、携帯を高く持ち上げ、餓えた獣のように眼を光らせ。

また、ある者は何事かと理解してないにも関わらず、周りの熱気に染され、やはりその手に携帯を構えた。

 

周りに張られた黄色いテープはまるで機能しておらず、野次馬は、マスコミは、その内側へと容赦無く足を踏み入れている。

警官達は、彼等を抑え止める様に両手を手を大きく広げていた。

いや、ただ抑えるポーズをしているだけで、誰一人として本気で彼等を食い止めようとしていない。

それは数の暴力からくる無気力によるものなのか。あるいは、故意的にそうしているのか。

 

「行きましょうか」

フードを深く被った小町さんが私達に言った。

 

「小町さん…貴女、本当に大丈夫なのかしら」

「大丈夫……?ああ、大丈夫ですよ。これだけの人混みなんですよ。私を判別出来る人なんて居ませんよ」

″彼等の興味は私ではなく、あそこにあるんですから〟と、彼女は付け足す。

「……そうは言っても、小町ちゃん。もし見つかったら間違いなく囲まれるよ。マスコミにとっては、貴女も等しく対象なんだから。だから、…くれぐれも気を付けて」

 

会話をしながら、黄色いテープを超える。警察は私達が侵入していたのに間違いなく気付いているにも関わらず、何もアクションを起こさず、ただ案山子のように立ちながら両手を広げていた。

 

内側に入ると人口密度はグンと増し、一月にも関わらず何処か生温い空気が辺りに充満している。

「………」

 

『お前も見たんだよな、あの画像』

『見た見た。マジヤバかったよ。俺マジ最初合成かと思ってたもん』

 

「雪乃ちゃん、小町、ちゃん。……手」

姉が私達の手をギュッとキツく握る。

「こんな場所で離れ離れになったら、…ね?」

姉の言葉に私達は頷き、その手を握り返す。

 

絶えず人混みに押され、擦れ。足を踏まれる。

 

『ちょっと、押さないでよ!』

『あ?この人混みで押すなって方が無理あんだろ』

『て、おい!俺のスマホ!あ、ああ!踏むな!壊れるだろうが!』

 

耳に入り込む雑音は聞くに絶えないモノばかりで。

「雪乃ちゃん…、顔色悪いよ」

「大丈夫よ…。それより、早く進みましょう」

普段なら30秒とかからない道程(みちのり)を、時間を掛けゆっくりゆっくりと進んで行く。

それは、私にとってはある種の拷問の様に思えた。

声が痛い。

 

「はぁ…ッ、はぁ……」

「もう少しだよ、雪乃ちゃん。もう目の前だから」

「ええ、もう着きましたよ雪乃さん」

 

肩で息をしながら、いつの間にか俯き気味になっていた首を上げる。

「…アレが……」

 

視線の先には、一軒の住宅があった。

乳白色の壁に茶色い玄関扉。何処にでもある一軒家。

「これ以上進むのは無理そうだね」

姉が肺の空気を吐き出すように、重々しく呟く。

 

目の前に張られている黄色いテープ。

ここまで来るまでにも一度見たものだが、コレはソレとは張られている密度と、面積が違う。

今度こそ本当の立ち入り禁止なのだろう。その内側にいるのは警官だけだ。

 

皆がその扉を凝視している。その光景は異常とも思えた。

どれくらいそうしていただろう。

遂に。

「あ…」

扉がゆっくりと開かれた。

 

パーカーを深く被った少年が扉の向こうから姿を表す。

両側に警官が付き、その少年をパトカーへと誘導しているが、その動きは酷く緩慢としている。

少年の脚はまるで千鳥足のように覚束ないものだ。

 

「アレが……()が…君を……」

無意識に口から漏れ出す。呼吸が荒くなり、唇が戦慄(わなな)く。

 

眼が合った。と、思ったのは私の自意識過剰か、それともただの錯覚なのか。

それは定かでは無いが、彼は間違いなく私達のいる方角に視線を向けていた。

 

ああ、あの感覚だ。

肺の奥から湧き出る黒い水が、喉を、気道を満たす不快感。

 

一瞬にして胸の内側に、厭悪(えんお)が根を張り巡らせた。

「……ア″……」

視界が微かにボヤける。

 

叫び出したくて堪らない。泣き出したくて堪らない。

 

姉は、柔らかな唇に犬歯を突き刺し、射殺さんばかりに血走った眼でソレを睨みつけている。

小町さんは、雨のじっとりとした空気と、人混みの熱気の所為か。その頬に汗を滲ませていた。

 

姉が下手くそに肺の空気を吐き出し、ギィと歯を鳴らした。

視線が交差する。

姉が口を開く。しかし、

「ねぇ、雪乃ちゃ……」

 

「帰りましょう」

ソレを遮るかのように、小町さんが溢した。

 

「小町さん、一体何…を…言っ……」

「早く」

 

低い声。深く被ったパーカーの隙間からは、依然と変わらず吊り上がっている。

しかし、その声には焦燥が…紛れもない焦りが含まれていた。

小町ちゃんに握られていた手に締め付けられる様な痛みが走る。

 

「早くッ!!」

彼女が叫ぶように言った。

そして、それとほぼ同時に。

 

″コッ〟と少し高めの接触音が鼓膜を小さく震わせた。

その音はまるで、骨を金属で叩いたかの様な…。

微かに耳に届いた、男の呻き声。

 

『ーーーーーーーーーッ!!』

そして、それに続くように鼓膜を警察官の怒声が震わした。

 

思わずそちらを振り向くと、警察官の足下(あしもと)で、手錠の掛けられた両手で右耳付近を押さえながら、歯を食い縛る少年が目に入った。

その足元で開封されていない缶が、コロコロと転がり、やがて路上の石にぶつかってその運動を止める。

 

『プフっ』

「…?」

 

頭を動かさず、視線を横へズラす。

すると人々が口元を歪め、クスクスと笑い声を漏らす光景が眼に入った。

 

『ナイス空き缶…!ってアレ?』

『あの缶中入ってね?うっわ、だとしたら痛いったそぉ〜」

『警官の人も、あんな奴の為にわざわざ怒鳴らなくて良いのに』

 

何故か自分が嗤われているような錯覚に陥いり、鼓動が速くなっていく。

 

そんな私の肩を、誰かがトンと叩いた。

「……雪乃ちゃん、小町ちゃん……、アレ…」

「………」

姉の言葉に視線を戻す。

 

顔を俯かせ、依然右耳付近を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる男。

ブツブツと何か呟いている様で、その口から小さく言葉が漏れ出ている。

「…ん…なよッ」

 

そんな彼の姿が滑稽に映ったのか、野次馬の一人が、

『っぷ…、おーい、何言ってんだー?聞こえないよー?』

と、嘲笑を噛み殺した様な声で野次を飛ばした。

 

その瞬間、吠えた。ソレは、吼えた。

「ざ……ッけんなよ!!フザッけんなッ!!グソがッ!!グゾがぁッ!!」

突然の罵声に野次馬達が閉口し、(ざわ)めきが小さくなってゆく。

 

「お前ら…お前らなんなんだよ!!ジロジロ、ジロジロッ人の事見やがってよォッ!!俺がぁ……ッ俺が何した!?」

眼球が飛び出さんばかりに目を見開き、唾液を飛散させながら言葉を連ならせる。ソレ。

 

気付けば誰しもが沈黙していた。

辺りには、撒き散らされるのは口汚ない罵声と、(しずく)の弾ける音だけが落ちている。

随分と精神的に追い詰められる生活でも送ってきたのだろうか、ソレはその事にすら気付いていないようだった。

 

「殺してやるよッ!!殺してやるッ!!ブッ殺してやるッ!!」

 

顔中に皺を刻みながら手を振り回し、叫ぶ、姿は酷く醜かった。

 

「そもそも、全部!全部……アイ…つ…が……」

罵声が尻すぼみになっていく。

見開かれた眼は、地面を見つめ、その瞳に狂気を映している。

 

ゆっくりと口が動く、何かを確認するかのように。

「ヒキタニ」

呟く。呟かれた、その名前。

 

口から吐き出される息は白い。にも関わらず、生温かい汗が頬を伝った。

 

ソレは頬に爪を立て、そのまま皮膚を下へ引っ張るように、何度も顔を撫で始めた。そして、壊れてしまったレコーダーの様に、繰り返し、繰り返し彼の名を、蔑称を呼ぶ。

「ヒキタニ……。ああ、……比企谷ッ。…ははは、ひぁ、ヒキタニッ」

その瞳の狂気が濃さを増し、何が嬉しいのか、楽しいのか、喜ばしいのか、その口が狂喜に吊り上がる。

 

「そうだ、…元はと言えば!元はと言えば!全部ヒキタニィ…全部!全部ッ!ヒキタニッ!!そう、ヒキタニィッ!!全部ッ!!アイツが悪りぃんだろ!!」

 

視界にソレしか映らなくなる。身体が熱い。

 

「何で俺が悪りぃみてェなってんだよ!!あんな屑!…あんな屑なんざああなって当然だろ!!」

 

「俺が間違ってるってのかよ!?はは、な訳ねぇよな!!俺は正しい事しただろうが!!正しいだろうがッ!!あんなヤツなんざーー」

 

ふざ、けな……で…。

 

 

「ーー死んで当然だろォ!!?」

 

脳を金属で殴られたかのようだ。視界が一瞬グラリと傾き、黒い水は色を変え激情に変わる。

 

「ふざけるなああああああああああああああッ!!!!」

絶叫が聞こえた。

 

肩を誰かに撥ねられ、体がグラリと揺れ、

「あッ…」

私は地面に体を叩き付けられた。

激情が驚愕に塗り潰され、私の瞳はグラリと震え、自分の衣服が泥水を吸っていく様を見た。

 

「小町ちゃんッ!!」

それと同時に、姉の叫びが聞こえた。

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

「ただいまー!って……あれ?誰もいない?」

兄へのお土産、プレゼントを片手に帰ってきた私を出迎えたのは、玄関で毛繕いをするカーくんだけだった。

 

玄関に入った体を半分扉の外へ出すようにして、兄の自転車を確認する。

「ありゃ…出掛けてるのかな?」

普段の休日ならば、兄がリビングのソファに横になって居る筈なのに…。珍しい。

とは言っても、どうせラノベを買いに書店に行ったか、なりたけ辺りで外食にでも行っているのだろう。

靴を脱ぎ捨て、リビングの暖房を付ける。そして、ソファに思いっきりダイブする…前に。

 

「念のため…」

二階に上がり、薄くドアを開け、兄の部屋の中を確認する。

 

「いるわけないよね…」

案の定というか、当然というか。兄は居なかった。

そりゃそうだ。コレで兄がいたら、自転車が窃盗された事になってしまう。

 

力無い足取りで階段を降りる。そして、今度こそソファにダイブした。

ボフンと音を立ててソファが沈む。

 

手の中にぶら下がるプレゼントの中身は、何処にでもありそうなただの小物。

それでも、兄の好きそうなモノを桐乃ちゃんと一緒に時間を掛けて選んだ。

 

 

「早く帰って来ないかなぁ…」

早く兄に謝りたい、という思いと、許してくれていなかったら、という思いが葛藤となって私の心で蠢めく。

柔らかな感触に顔を埋め、目を閉じる。そうしていると、少しずつ眠気が襲ってきた。

 

暖房によってリビングは暖かくなってきている。寝ても風邪は引かないだろう。なら、

「…おやすみなさい」

私はそう独り言ち、睡魔に意識を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつもだったらすぐ出るのに…」

何度携帯に電話を入れても、ただ無機質な女性の声がスピーカーから流れるだけで、兄と繋がる事はない。

秒針が静かに音を立てながら回る。

その音が耳に入る度に、少しずつ、しかし確実に焦燥と不安が積もっていく。

 

その不安から目を反らす様に、私はスマホのアプリや、ゲームを開く。

 

それでも秒針の音は、無機質に時を刻む。

心細さが胸を締め付け、スマホを持つ手に力が入りずらくなった様に感じ、普段ならしないような操作ミスを連発する。

 

「んあ……」

精神が疲労してきているのを感じ、声とも覚束無い吐息を吐いた。

 

時計の針が12時を越えた。

 

ソファに横になり、ただひたすら義務のようにスマホの画面を操作する。

開いているのは、某SNS。

しかし、開いているだけで内容に眼を通していない。意味も無くただ画面をスライドする。

 

だから、きっとそれは偶然で…、いやその様に見えただけで実際は必然というものだったのだろう。

流れていく画面の中に、一瞬兄に似た横顔を見たような気がしたのは。

 

「え?」

一瞬思考が停止した。

 

しかし、すぐにソレを見間違いだろう、と思い直す。

兄に似た人間だって探せば幾らでも…とはいかずとも、それなりにいるだろう。あの若さであの眼の濁り具合は、そう見かけられるものではないにしても。まぁ、私の父母の年齢ともなれば、稀にだが街中でも見かける。

そもそも前提として、兄が自分の写真をネットに挙げるような趣味を持っていない。

 

だから、きっとアレはただの見間違いで。私の意識過剰で。決して、そう決して兄では無いのだ。

 

頭の中でそう結論付ける。結論付ける、も。

「……」

気付けば私は、来た道を引き返すように、ゆっくりと画面をスライドさせていた。

内容の移り変わる画面を食い入るように見つめ、顔を近付ける。

 

さっきまで酷く近く感じていた針の音が、今は薄い膜を一枚隔てたかのように遠く感じる。

 

そうやって、しばらく画面を見つめていたが。

 

「……?見つからない」

 

兄のそっくりさんの画像は見当たらなかった。

 

やはり気のせいだったのだろうか。そう思うと、今度こそ肩にこもった力が抜け、はぁ、と深く息吹いた。

肩すかしを食らったような気分になったが、同時に不安が膨れ上がっていた胸から、空気が抜けたような気がした。

 

「そりゃそうだよね」

分かりきっていた事。

ソファに(もた)れ掛かり、欠伸をする。

「……はや。もう1時間経ってたんだ」

 

そうやって時間を確認すると、再び兄の行方が気になってくる。

それに、「ハァ…」と、今日もう何度目かも分からない溜息を吐くと、突然脚元に何か柔らかく、それでいて暖かいものが当たった。

「ん?…あ、カーくん」

「にゃ〜」

ソフアに深く凭れさせていた首を上げ名前を呼ぶと、カーくんはまるで返事をする様に鳴き、ソファの上にあがり私の隣に寝転がった。

「うぃー。カーくんどうしたの?」

いつの間にこんな近付いてきていたのだろうか。

柔らかい毛並みの首元をうりうりと撫でると、カーくんは気持ち良さそうに喉を鳴らした。

 

「心配…してくれてるのかな。ありがとうカーく……ふあぁ…」

手のひらに触れる温もりに、眠気が襲ってき、私は再び大きな欠伸をした。

 

もう寝なければいけない。

「また明日帰って来てなかったら、結衣さん達に聞こう」

と、独り言ち、そのまま立ち上がる。そして、部屋に連れて行こうとカーくんに手を伸ばした、その時。

 

スマホの着信音がなった。

 

「はい!お兄ちゃん!?」

私は着信名も確認せず、通話ボタンを押す。

そして、スピーカーから流れ出たのは、

 

「比企谷妹!!比企谷はどうした!!今、家に居るか!」

平塚先生の声だった。

 

「…え?あの…え…」

しどろもどろとした私に、彼女は荒い口調で問う。

「比企谷はいるのか!!どうなんだ!!」

それだけの問いから、どれだけの焦慮と憂懼(ゆうく)が籠められているのだろうか。

 

その異常な態度に気圧され、額から汗が滲んだ。

「いえ、まだ帰って……って、……いや、待ってください!!何が、何があったんですか!?兄に、何が!!」

一度口を開くと、感情の波が襲ってきたかのように、言葉が止まらなくなる。

「教えて下さい!!まだ、帰って来てないんです!何か、知っているんですよね!?」

「………ッ」

平塚先生が電話越しに息を呑む。

「まさか本当にッ!……本当に、何も知らないのか?………今、御家族は…ッ」

彼女は激情を抑え付ける様に言葉を切り、重々しい声で尋ねる。

 

「…私一人です」

「分かった…ッ。……今直ぐ君の家に向かう、だから私が着くまで、絶対にその場から動くな、何もするな。携帯電話に触れることすらだ。分かったか。今から向かう」

平塚先生はそれだけ言うと通話を切ったようだった。

ブツッという音と入れ替わる様に、甲高い無機質な電子音がスマホのスピーカーから垂れ流され始める。

 

私はスマホを閉じ、ソファに背中から倒れ込んだ。

それに驚いたのか、カーくんが一瞬ピタッと動きを止め、そして慌ただしく逃げるようにリビングから出て行った。ドタドタと階段を上がる音がした。

 

「あ…待って、カーくん」

 

私はカーくんを追いかけ、リビングを出て階段を上がる。

そして、それはすぐに私の目に入った。

不自然に開いたドア。

 

…兄の、部屋だ。

 

昼間は明るくて気付かなかったが、電気を着けっぱにしていたのだろう、開いた隙間から微かながら光が漏れ出している。

それに、昼帰って来た時には開いて居なかった。と、いう事は。

 

「っと、見つけた」

 

部屋に入ると、カーくんはすぐに見つかった。

兄のベットの上でしぺしぺと毛繕いをしている。

「ほら、カーくん下戻るよーっと、電気消さなきゃ」

私は未だ光を発し続けているスタンドライトを消そうと、勉強机に近付く。そして、

 

「…?」

 

卓上に置かれて、一枚のルーズリーフのようなもの、…それが目に入った。

 

机の上は、ヤケに…いや、いっそ不自然さを感じてしまう程綺麗に整理され、本一つ置かれていない。

その真ん中にそれは置かれていた。

 

…よく見れば、まるで中身を見ろとでも言っているかのように。スタンドライトの光が、丁度紙に当たるよう設置されている。

 

無意識に喉が唾液を飲み込み、コクンと鳴った。

私は綺麗に折り畳まれているソレを、壊れ物でも扱うかの様にそっと開き。

 

「なにコレ…?」

 

中身は、私や結衣さん達、そして見知らぬ名前が幾つか書かれ、最後にありがとうと綴られているだけだった。

ハッキリ言って、意味が分からない。

 

何故兄はこんな物を書いたのだろうか。

 

そう頭を捻っていると、インターホンの音が家中に響いた。

 

「あ、そうだ。…平塚先生」

ルーズリーフを折り畳み直し、ズボンの右ポケットに突っ込む。

そして兄の部屋を飛び出し、階段を下り玄関へ駆けた。

玄関扉の向こうから、「比企谷妹!居るか!?」と声が聞こえてくる。

 

「あ、はい!今開けます」

扉を開け、返事をする。

 

次の瞬間。ーー肩を掴まれた。

突然の出来事に眼を見開く。

 

「比企谷妹、本当に比企谷は帰って来てないのか…」

肩で息をしながら、平塚先生が問う。

 

「え、あ、はい…」

「……そうか」

彼女はそう一言言うと、彼女は頭を項垂れた。

 

「教えてくれますよね?平塚先生が何を知っているのか…ッ」

「ひき……ガヤは…」

今度は私が問うと、彼女はカハッと息を吐き出し、歯軋りを鳴らした。

平塚先生の異常な動作、緊迫した空気。その一つ一つが私の胸をざわめかせる。

「比企谷…は…ッ」

 

ーーそして。

 

「……比企谷はッ」

 

 

ーーその五分後。私はその場に崩れ落ちた。

涙は出ず、ただ渇いた笑い声が口から漏れ出す。

 

気持ち悪い。

 

本当に気持ち悪い。

 

崩れ落ちる最中(さなか)、右ポケットの中身が乾いた音を立てた。

兄からの遺書はポケットの中で″クシャ〟と、乾いた音を立てた。

私の何かがクシャっと音を立てて潰れた。

 

 

 

 

懐旧。仄暗く、濁ったセピア色の記憶。

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

「ーー死んで当然だろォ!!?」

 

頭の中で何かが不快な音を立てて弾けた。

 

 

液体を、空気を入れ過ぎた風船がどうなるか。

末路は誰だって知っている。破裂する、破裂するのだ。そして、その中身を周囲に撒き散らす。

 

ずっと、おぞましい産声を溜め込んできた。産声をずっと風船に詰め込んできた。

コップの器を、出口の無い風船に変えたのは私自身で。自分の感情が漏れ出さない様に自分を偽った。

 

その上、中身を見たくないから、気付きたくないから。そんな理由で白い部屋に佇む黒い器を、ペンキを使い白く糊塗した。

それは紛れもない自分に対する欺瞞で、おぞましい行為だった。

 

それを証明するかの様に、喉が破裂した器の中身を吐露するように。

 

ーー私はおぞましい声を上げ、

 

「ふざけるなああああああああああああああッ!!!!」

 

 

ーー白い部屋は、撒き散らされた黒によって、暗澹(あんたん)と染まった。

 

 

驚愕が周囲の空気から感じられる。誰かが息を飲み、誰かが声を上げ、誰かが眼を見開いた。

それを背中に感じながら、脚を前へ、前へと走らせる。

 

陽乃さんの言葉が頭を過る。

何度も忠告はあった。それに耳を貸さず、見て見ぬフリをした。そのツケがコレだ。

ほら、こんなに苦しい。

 

視界が微かに滲み、足がもつれそうになったが、それでもブレーキをかける事なく突進する。

 

「あ?」

そんな声が一瞬聞こえ、ソイツと眼が会った。

 

ああ、殺してやりたい。

右腕に激痛が走る。

 

拳は喉笛に当たったらしく頭上から「ゲッ」と、蛙が潰れたかのような声が聞こえた。

それと同時に体が傾いていく、一瞬の浮遊感。

速度を出した体は止まる事が出来ず、そのまま押し倒す様な形になる。

 

硬いコンクリートに、頭を強く打ち付けたソレが、くぐもった声を漏らした。

それでも手を止める事なく、私は馬乗りになり拳を振り上げ。

 

そして、振り下ろした。

 

鼻から血をダラダラと垂らしながら、ソレは「ッグ」と低い声で呻き、私を睨めつける。

「何なんだ!クソッ…ッてぇ…ッなあ!!」

叫ぶソレの顔面に拳を振り下ろし続ける。鈍い音が鳴り、手に赤が付いた。

「……ガッ……ッ」

 

「お兄ちゃんが何をしたんですか…」

拳を振り下ろす。

「っテェッ……ッ!お前……、……アイツの」

 

腕に衣服が張り付く。振り上げた拍子に水滴が散った。

「返してよ……」

言葉にする度、拳を振るう度。煮詰められた黒い感情は、粘着性を持った汚泥の様に私の内側にへばり付いていく。

 

「クソ………ッ、どけよッ!!!!」

 

私の頬を衝撃が打った。

殴られた。

「………ッ」

鼻の奥から生暖かい温度が降りてくる。

 

痛かった。

当たり前のように、痛かった。

そうだ、当たり前なのだ。痛いに決まってるのだ。もっともっと痛かったに決まってるのだ。

それこそ、死んじゃうくらいに。

 

「………ッ!!」

 

鼻からぽたりと赤いしみが拳に落ちた。

私はその拳を思いっきり振り下ろす。

繰り返し、繰り返し。

 

「グゾォア″ッ!離ぜ…ッ!!」

 

同時に殴り返された。

鼻腔を刺す鉄の香り。

それでも私は。

「がッ!!」

拳を振り上げ、振り下ろす。

 

「はぁ……ッ!はぁ……ッ!!おい誰かコイツを止めろッ!聞いてんのかよッ!?おい…ぐ!…ぎあッ!!」

 

誰も動こうとしない。誰も喋ろうとしない。

ただ、傍観しているだけだった。

 

彼の(わき)に立っていた警官さえ、棒立ちになり動かない。

その顔が何を刻んでいるのか、下を見る私には分からないし、分かる必要も無い。

ただ、この間違いを正され無ければ、この行為を止められなければ、拳を振るう事を()めさせられ無ければそれで良いのだから。

 

「離せクソがッ!!ぐぅ……ッ、くそ、があッ!!」

 

「返せ」

手錠の付けられた腕で顔を覆うソレ。その横面を思いっきり引っ叩く様に殴る。

朱がべっとり鉄錆臭い華を咲かせる。

 

「はな、せ!おい、離せよ!……ぎ、くそ、やめ……ッ!!」

 

「返せ」

グジュと、トマトの潰れたような音がする。

再びソレの顔に赤が飛び散るが、その顔はすでに殆ど染まりきっており、肌色を探す方が困難の様に見える。

 

それでも、鎮まらない。

止めるものか。帰って来ないのだ、兄は二度と。

「や…めろ……、やめてくれ!頼む、ぐう、か……ッ!!やめ」

 

「返せよ……」

 

 返せ。

「や、やめ……て、く…」

「お兄ちゃんを返せよおおおおおおおおおおおおーーーーーーーッッッ!!!!」

 

皮の摺落ちた拳から流れる血で手がグチャグチャに染まる。私の血液は周囲に飛び散り、赤黒い点を作っていた。

 

感情を喪った様だと。そう自分に嘯いてきたモノクロの日々。

どんなに空虚で。どんなに無意味で。どんなに無価値でも、理解より無理解の世界の方がずっと私にとって優しくて。暖かくて。

だから、それに身も、心も、日常も。全て委ねようとした。無理解でいられるのなら、きっと非日常も、日常だと偽れるから。

理解は冷たいのだ。そして、果てしなく汚い。

現実は決して優しくなく、何処までも理不尽でつらいものだから。

 

でも。

 

もう風船は破れた。

 

激情の産声は悲鳴に変わった。

 

部屋は黒く染まっている。

 

嘯く声は消えてしまった。

 

理解してしまった。

 

ーー現実は、私を心地よいぬるま湯から引き摺り下ろした。

 

近くに転がっていたそれを両手で握り、逆手に持つ。

そして、腕を高く振り上げる。

 

誰かが小さく悲鳴を上げた。

 

中身のたっぷりと入った。開封されていないコーヒー缶。

血だらけになった手から流れる赤血球が、腕を伝い赤く歪んだ線を(えが)いた。

「死ね」

そして、私はソレの頭部に腕を振り下ろし。

 

「だめッ!!小町さん!!」

その身体を引き剥がされた。

狙いがズレた鈍器はコンクリートに当たり、″ガッ〟と鈍い音と共に、縁に深く、酷く不格好な曲線を作った。

 

半身を捻り、私を羽交締めにしている人物を()め付ける。

 

「雪乃さん、離して下さい…ッ」

「……嫌よ」

その一言を聞いただけで、汚泥が喉から込み上がた。

 

「離せぇええええええええええええッ!!」

 

絶叫し、拘束を解こうと腕を振り回す。

「小町さん!!」

「何でですか!!どうして邪魔をするんですかッ!!?コイツが……ッ」

 

呑んでいた嗚咽が、這い出ようと込み上がる。

「コイツが兄を殺したんですよッ!!?コイツが兄を追い詰めたんですよッ!!?」

 

視界が歪んでいく。前が見えなくなる。

「雪乃さんも見たじゃ無いですか!!あの写真を!!なのに、どうして止めるんですか!!

 

身体から力が抜けていく。

「殺してやりたくないんですかぁッ!!?もう、もう……ッ!!」

 

もうーー。

「兄は…帰って来ないんですよ………ッ」

 

兄は二度と帰ってーー。

 

「貴女が汚れたら、私は比企谷君に…もう、二度と。死んでも顔向け出来ないわ…」

囁きかけるような…けれど叫ぶような声が狂気から私を暗い現実へ戻す。

 

 

「全部私の自己満足、貴女を止めたのも全部私自身の為。彼が何より嫌った、…欺瞞よ…」

行き場を失った腕は地面へ垂れ、雨水を叩いた。朱色に染まった手に、冷たい泥水が染み込んでいく。

不思議と、痛みは無かった。

 

「分かってる、私だって赦せない。殺してやりたい。でも、もう…。何をしても、貴女が、私が手を汚しても……ッ、」

 

ーー現実は何処までも残酷に、私の最愛の家族を奪った。

 

「彼は帰って来ないの…」

その言葉が雨粒の様に内側に染み込んでいく。

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

「彼は帰ってこない」

そうだ、彼は帰ってこないのだ。

もう彼は二度とあの部屋へ変えてくることはない。

 

憎い。

 

憎くて堪らない。

 

この男を、今すぐ殺してやりたくて堪らない。

 

でも、ダメだ。耐えなければいけない。

私は小町さんを止めた。

でもきっと、本当に止めたかったのは小町さんじゃない。

止めたかったのは自分自身なのだ。

 

だから。

 

「彼は、帰って……来ないの……ッ」

 

私は気が狂いそうな感情に犬歯を突き立て、私は自分にそう言い聞かせ続けた。

 

雨はまだ止まない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




八幡の誕生日だ!!八幡の誕生日だ!やべぇ!祭りだ!!今日は祭りだ!!
天使!八幡は捻デレ天使だから!!
てか八幡の捻っぷりマジ可愛いよね!!
何ていうか、赤面させたい!デレさせたい!!てかいちゃつかせたい!!
八結、八雪、八色、八沙、八廻、八折、八留、八陽、八オリ!全てがベストカップリングだから!!
みんな違ってみんな良いですから!



10/8
あと一週間で終わる……。あと一週間で俺の人生を左右する一大イベントが終わるんだッ!!
投稿は来月からだよ。全然プロット組む時間無いからね。

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