この死神と呼ばれる魔法使いに祝福を!   作:zorozoro

46 / 63
やっと紅魔の里に着きます。


この魔王軍の兵士に死神を!

「めぐみんは、学校生活時代は魔法学でも魔力量においても、常に一番の成績で………。里の人達もこぞって、天才だ天才だって期待してて………。そんなめぐみんが、爆裂魔法しか使えない欠陥魔法使いに成り下がったなんて知られたらと思うと………」

 

「おい、欠陥魔法使い呼ばわりはよしてもらおうか。一応魔法の威力だけならば、間違いなく紅魔族随一なはず。噓偽りなんて言っていない。我が人生のほぼ全てを捧げている爆裂魔法の悪口はやめてもらおう」

 

俺達は森の中で休憩する時にカズマ達からシズクと出会った経緯を聞いた。ヴェッターに襲われ、殺されそうになった時にシズクに助けられた事を聞いた俺はカズマ達に肝心な時にいなかった事を謝罪し、シズクにカズマ達を助けてくれた事に礼を言った。休憩を終え、里へと向かう道すがらめぐみんとゆんゆんが揉めていた。

 

「爆裂魔法の使いどころなんてどこにあるのよ!ダンジョンでは威力が高すぎて崩落の恐れがあるから使えない!よほどの高レベル魔法使いですら、一撃打てばまず二発目は使えない、非効率な魔力消費!唯一の長所の威力にしたって、どう考えたってオーバーキルでしょ!爆裂魔法なんて、誰も取らない、スキルポイントだけをバカ食いするネタ魔法じゃない!」

 

「………言ってくれましたねゆんゆん。言ってはいけない事を言いましたね。この私の名を馬鹿にするよりも、最も言ってはいけない事を言いましたね!」

 

「な、何よ、やる気?勝負なら受けて立つわよ。もうめぐみんには負けないんだから!」

 

ゆんゆんは警戒しながら、めぐみんから距離を取る。めぐみんは、そんなゆんゆんは一瞥すると………!

 

「ソウガ、カズマ。ゆんゆんの恥ずかしい秘密を教えてあげましょう。実は我々紅魔族には、生まれた時から体のどこかに刺青が入っているのですよ。個人によって入っている場所は違うのですが、ゆんゆんの体に刻まれている刺青の場所は、なんと………」

 

「やめて、ちょっとソウガさんとカズマさんに何を言うの!ていうか、何で刺青の場所を知っているのよ!こんなところじゃ爆裂魔法なんて使えないでしょう!?魔法が使えないめぐみんなんて、取り押さえる事ぐらい簡単にできるんだからね!」

 

半泣きのゆんゆんが突っかかっていくが、それをめぐみんはヒラリと躱し。

 

「アクア、支援魔法をください!この子に痛い目見せてやります!」

 

「ひ、卑怯者!めぐみんはやっぱりズルい!昔からずっとズルいっ!」

 

おいおい、あまり大きな声で喧嘩するな。魔王軍に見つかったらどうするんだ。

 

「おい、こっちだ!やっぱりこっちから、人間の声が聞こえてやがる!!」

 

………どうやら、見つかったみたいだ。………はぁ。

 

「おい二人とも、どうやら敵に聞きつけられた様だぞ!そろそろ静かに!」

 

「短気なゆんゆんが、いつまでも大声を出しているからですよ!」

 

「私よりめぐみんの方が短気じゃない!昔から、後先考えずに無鉄砲な事ばかりやらかしたり!ちょむすけだってさっきから、帽子の中から出てこようとしないじゃないの!」

 

「なにおう!!」

 

「二人ともいい加減にしろっ!おいカズマ、お前も何とか言ってやれ!」

 

「おい、そんな事よりも、ゆんゆんの刺青の場所を詳しく!」

 

「お前という奴は!お前という奴は!」

 

「………これはもう戦闘は避けられませんね」

 

「………ああ、そうだな」

 

「見つけた、ここだ!こんなところに人がいるぞー!!」

 

そう言って、耳が尖り、赤黒い肌をした、スリムな鬼みたいなモンスターの悪魔モドキが出てきた。数は二十を超えていた。

 

「紅魔族を二匹見つけた!子供の紅魔族が二匹もいる!今がチャンスだ、大手柄だ!残りは冒険者風の人………げ………ん………」

 

悪魔モドキの一匹がめぐみん達を見た後に俺と目を合わすと、汗を大量に流しながら固まり。

 

「「「ししししし、死神だああああああああああああああああああああああ!!!???」」」

 

そう叫ぶと、体をガタガタと震えながら怯えていた。………まぁ、しょうがないな。

 

「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」

 

「嫌だああああああああああああああ!俺はまだ死にたくないっ!まだやりたい事がたくさんあるのにっ!」

 

そう言って涙を流しながら言っている奴もいれば、恐怖で吐いている奴、泡を吹きながら失神している奴がいた。

 

「おおう、これは凄いな」

 

「ソウガを見ただけでこんな風になってしまうとは。私も見習わないといけませんね」

 

「死神?」

 

「………?」

 

ダクネスとめぐみんはそう言い、ゆんゆんとシズクは何が起こっているのか分からない様だった。すると、カズマとアクアが悪魔モドキの前に出た。

 

「おうおう!俺達が死神のパーティーだと知ってて、あんな強気な態度を取っていやがったのか!あん?」

 

「私達がソウガに頼めば、あんた達みたいな悪魔崩れなんか八つ裂きよ?や・つ・ざ・き!分かっているんですかー?そういえば、何かチャンスって言っていたわね?傷ついたんですけど!どうしてくれるのよ!!」

 

「す、すみません!これで許してください!」

 

そう言って悪魔モドキが金が入っている袋を差し出すと、カズマはそれを乱暴に奪って中身を見た。

 

「………別に結構だよ。お前達の命がこの程度なら」

 

「全然足りないんですけど!!何、あんた達の命はこの程度の額なの?なら、もういいわよ!ねえ、ソウガ!こいつら始末して!!」

 

「ま、待ってください!?お願いします!?」

 

「「「「「………うわぁ」」」」」

 

カズマとアクアが悪魔モドキ達を脅迫しているのを見て、俺達は引いていると、突如何もない空間から黒いローブを着た四人の集団が現れた。その人達の魔力の高さと紅い瞳で紅魔族だという事が分かった。魔王軍の兵士が戸惑っていると。

 

「肉片も残らずに消え去るがいい、我が心の深淵より生まれる、闇の炎によって!」

 

「もう駄目だ、我慢が出来ない!この俺の破壊衝動を鎮めるための贄となれえええーっ!」

 

「さあ、永久に眠るがいい………。我が氷の腕に抱かれて………!」

 

「お逝きなさい。あなた達の事は忘れはしないわ。そう、永遠に刻まれるの………。この私の魂の記憶の中に………!」

 

「ちょ………!待っ………!やめっ………!」

 

魔王軍の兵士が何か言おうとしていたが、既に紅魔族の魔法は完成していた。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」

 

「セイバーッ!」

 

「セイバーッッ!」

 

次々と叫ぶと同時に紅魔族達は光の剣で魔王軍の兵士を切り裂いていった。その場には魔王軍の兵士の残骸があるだけになった。

 

「叫び声を聞いて、魔王軍遊撃部隊員と共にこんな場所まで来てみれば………。めぐみんとゆんゆんじゃないか。何でこんなところにいるんだい?」

 

「靴屋のせがれのぶっころりーじゃないですか。お久しぶりです。里のピンチだと聞いて、駆けつけてきたのですよ」

 

めぐみんの言葉にぶっころりーという紅魔族は首を傾げた。その後、それぞれ自己紹介を行った。アクアは紅魔族の名乗りを行った。名乗る際に女神だとまた言ったが、紅魔族の人達は全く信じていなかった。ダクネスも紅魔族の人達に期待した眼差しで見られ、名乗ろうとしたが、恥ずかしいのか徐々に声が小さくなっていった。ちなみに、俺とシズクは普通に自己紹介した。

 

「めぐみん、いい仲間で何よりだね。ここからだと里まではまだ距離がある。さあ、案内するよ外の人。テレポートで送ってあげよう!」

 

ぶっころりーはそう言うと、テレポートの魔法を唱えた。視界内がグニャリと曲がると、辺りの景色が一変する。カズマ達が呆然としていると、ぶっころりーが笑顔を見せた。

 

「紅魔の里へようこそ、外の人達。めぐみんとゆんゆんも、よく帰ってきたね!!」

 

◆◆◆

 

里の中央に位置する大きな家。テーブルを挟んでソファーに座る中年の男が、眉間に皺を寄せていた。族長宅の応接間に通された俺達は、目の前の中年の男性事、ゆんゆんの父親に紅魔の里の状況を聞いていたのだが。

 

「いや、あれはただの、娘に宛てた近況報告の手紙だよ。手紙を書いている間に乗ってきてしまってな。紅魔族の血が、どうしても普通の手紙を書かせてくれなくて………」

 

「ちょっと何を言っているのか分かんないです」

 

「………はぁ」

 

族長に即座にツッコむカズマにポカンと口を開けているゆんゆんを見て、俺はため息をついた。

 

「………えっ?あの、お、お父さん?その、お父さんが無事だったのはとても嬉しいんだけど、もう一度言ってくれない?まず、手紙の最初に書いてあった、『この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろう』っていうのは………」

 

「紅魔族の時候の挨拶じゃないか。学校で習わなかったのか?………ああ、お前とめぐみんは、成績優秀で卒業が早かったからなあ」

 

「………。魔王軍の軍事基地を破壊する事もできない状況だって………」

 

「ああ、あれか?連中は、随分立派な基地を作ってなあ。破壊するか、このまま新しい観光名所として残すかどうかで、皆の意見が割れているんだよ」

 

「なあ、ゆんゆん。お前の親父さんを一発ぶん殴ってもいいか?」

 

「いいですよ」

 

「ゆんゆん!?」

 

俺はその光景を見て、もう一度ため息をついているとゆんゆんの親父さんが真面目な表情になると俺に話しかけた。

 

「ところで、ソウガ君。少しいいかな?」

 

「はい?何でしょうか」

 

「君とゆんゆんはどのような関係なのかな?」

 

「どうと言われましても、友人ですが?」

 

「本当かな?それ以上の関係なんじゃないのかな?」

 

「はい?」

 

「お、お父さん!?何を言っているの!?」

 

「前に送ってくれた手紙を読んで、そういう間柄になっているのだと思ったものでね。その確認のためにね」

 

「………すみません。ゆんゆんの手紙の内容を教えてもらってもいいですか?」

 

「ええ、『アクセルの街で友達ができました!』と書かれており、ソウガ君の事が書かれていてね。その手紙にソウガ君の右腕に抱き着いているゆんゆんの写真が同封されていたんだ」

 

そう言って、ゆんゆんの親父さんが写真を出して、机の上に置いた。写真のゆんゆんは幸せそうな笑顔で俺の右腕に抱き着いていた。………確かに、一緒に写真を撮ったが、これは見た感じ………。

 

「………ゆんゆん。これは恋人紹介の写真ですか?」

 

「ち、違うよ!?何を言っているのめぐみん!?」

 

「………すみません。私もそう思います」

 

「シズクさん!?」

 

「あと、送られてくる手紙には『カフェでお話ししました!その時にあーんしてもらいました』など『一緒にクエストに行きました!褒めてもらった時に頭をなでなでしてくれて、凄い気持ちよかった!』など様々な事が書かれており………」

 

「………すみません。色々勘違いさせてしまい、すみません」

 

俺はゆんゆんの親父さんに頭を下げた。親父さんは笑いながら娘の事をよろしく頼むと言った後、何か考えていたが気にしない事にする。その後、ダクネスが首を傾げていた。………どうした?

 

「………ん?すまない、話を戻すのだが、魔王軍の軍事基地は建設されたと言ったな。なら、魔王軍の幹部が来ているというのは………」

 

「ええ、手紙の通り、魔法に強いのが派遣されてきてますよ。ああ、そろそろ来る頃かな。よかったら見ていきますか?」

 

ゆんゆんの親父さんが、気楽に誘ってきた、その時だった。

 

『魔王軍警報、魔王軍警報。手の空いている者は、里の入り口グリフォン像前に集合。敵の数は千匹程度と見られます」

 

「「せっ!?」」

 

カズマとダクネスが驚いている中、俺とシズクと紅魔族の三人と何故かアクアが落ち着いていた。アクアが何か言っていたが無視していると、シズクが話しかけてきた。

 

「ソウガ先輩。魔王軍は千匹程度に対して紅魔族は三百人程度、数ではこちらが不利です。加勢しますか?」

 

「いや、必要ない。俺達は黙って見ていればいい」

 

「分かりました」

 

俺とシズクが話している中、驚きで中腰状態になっているダクネスに、めぐみんが落ち着いた声音で言った。

 

「慌てなくても大丈夫ですよ。ここは強力な魔法使いの集落、紅魔の里です。皆も見ていきますか?」

 

そうめぐみんに誘われ、俺達は紅魔族と魔王軍の戦闘を見るために里の入り口に向かった。




アニメではやっとウォルバクさんが出ますね。どのような声なのか楽しみです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。