何故こんな事になってしまったのだろう?翌朝、俺達はウィズに頼んでアルカンレティアにテレポートをしてもらった。テレポートしてもらう時にウィズから最近、冒険者が行方不明になる事件と謎のモンスターが出るという事を教えてもらってアルカンレティアに転移した後、紅魔の里に向かっていただけなのに………。本物の神様をぞんざいに扱ってるから罰が当たったのか?アクアが大事にしている変な形の石を捨てたから?ゴミだと思って捨てたから?違うんです神様、あいつ、珍しい物を見つけるとすぐ何でも拾ってくるんです。神器の羽衣と俺の下着を一緒に洗ったから?違うんです神様、あいつの神器と一緒に洗うと、浄化作用で汚れが簡単に落ちるんです。心の底から反省しています。ああ………、だから、どうか神様………!
「最初は男の子が良いわねえ!オスが六十匹にメスが四十匹!そして海の見える白い家で毎日あたしとイチャイチャするの!」
「神様!心の底から謝るので、どうか俺を許してくださいっ!」
俺は平原地帯でオーク達に追われて、必死に逃げていた。俺は平原地帯に入る前にモンスター情報を見ると、ヤバそうなモンスターばかりだったので俺が先行して、何かあったら逃げれる様にする事にした。そのモンスター情報の中にオークの名前があった。だが、この世界のオークはメスしかいない事がめぐみんから教えてもらった。今のオーク達は色んな種族と交配して、もはやオークと呼べないモンスターになっていた。オークは優秀な遺伝子を持つオスを欲していて、俺はそのオークを倒してしまい、オーク達に追われる事になってしまった。
「俺のパーティーメンバーに俺より強い男がいるので、その男に相手をお願いするので俺は勘弁してください!」
「今はあなたしかいないじゃない!諦めてズボンを下ろしな!」
畜生!勘弁してくれっ!俺は迷う事なくダガーを前に突き出すが、オークは容易く俺のダガーから身を躱し………!
「よおーし!すぐ済むから。すぐ済むからじっとして、目を瞑りな………!」
あっさりと握っていたダガーを弾き、俺を地面に押し倒した。この危険地帯で生き抜くオークの力を舐めてました!
「話をしよう!話をしようっ!!」
「エロトークなら喜んで!さあ、話してごらん?あんたの今までの恥ずかしい性癖をさ!ふーっ、ふーっ!」
オークが荒い息を吐きながら、俺の上着を左右に引き千切った。俺はドレインタッチをしようとしたがスイッと躱され手首を掴み、手の平を舐められた。もう本当に許してくださいっっっ!!
「やっ、やめてええええええええええ!名前を!そういや俺まだ、あんたの歳も名前も聞いてない!最初は自己紹介からあああ!私は佐藤和真と申します!」
「ピチピチの16歳、オークのスワティナーゼと申します!さあ、あんたの下半身にも自己紹介してもらおうか!あんたの自慢の息子も紹介しなよ!」
「ウチの息子はシャイなんです!今日のところは、お互いの名前を知ったって事でお開きをおおおおおー!アクア―!アクア―っ!助けてえええっ!」
「カ、カズマさーん!」
俺が、悲鳴を上げ、アクアが叫んだその時だった。空がいきなり曇り出し、雷がオーク達に落ちた。何匹かのオークはその雷で消滅した。その場からオークは急いで逃げていた。俺に乗っていたオークも後を追いかける様に逃げて行った。俺は急いでアクアの下に這いずった。
「うあああああああーっ!!怖かったよおおおおおお!!」
「よしよし、安心しなさいカズマ。もうオーク達はいないから。ねっ?」
俺の顔を胸元に寄せて優しく頭を撫でてくれる今のアクアは本当の女神だと不覚にも思ってしまった。
「ですが、あの雷は一体何だったのでしょう?いきなり曇り出して雷が何回か落ちた後に雲はすぐ消えましたが………」
「あれは、私の能力で作った雷雲ですよ」
「「「「ッ!?」」」」
そう声が聞こえた方向を見ると、体色は白が主体。後頭部に髷、肩と首回りにかけて風神の風袋のようなものがあるモンスターがいた。
「初めまして。私はグロウキメラのヴェッターと申します。早速で悪いのですがあなた方には………」
「ありがとうございましたああああああああああああ!!」
「………はい?」
「この度は助けて頂いてありがとうございます!あのままだったら今頃は大変な事に………。うっ、うわあああああああああああ!!」
「カズマ!?何、お礼を言っているんですか!?あれはモンスターなんですよ!」
「えっと、私は一応医者をやっておりまして、精神安定剤のお薬を差し上げますね」
「あっ、ご親切にどうも」
「アクアもモンスターから薬を貰わないでください!?」
「「「はっ!」」」
そう言われて俺とアクアとグロウキメラのヴェッターは急いでお互い距離を取った。俺とアクアの傍にめぐみんとダクネスが来た。
「いけないいけない、あなた方の雰囲気に呑まれてしまいました」
「それで貴様は何しにここに来た。返答次第によっては………!」
「いえいえ、大した用ではありませんよ」
ダクネスが剣をヴェッターに向け言うと、ヴェッターはそう言うと。
「あなた方には死んで頂こうと思いましてねえ」
そうヴェッターは言うと、ダクネスの前に物凄い速さで接近した。
◆◆◆
「何っ!?ごふっ!?」
ダクネスが驚いているとヴェッターはダクネスの腹部を殴り後方に吹っ飛ばした。ダクネスは何とか態勢を立て直し接近してきたヴェッターに攻撃をしたが、全く当たらなかった。
「躱した方が危ないですねえ。ふっ!」
「ぐわっ!」
「ダクネス!くそっ!」
ヴェッターがダクネスに掌底をするのを見ていたカズマは背後から切ろうとしたが、躱されてしまい、背中を蹴られてしまった。ダクネスは急いでカズマの所に向かいカズマの手を取り、立たせた。
「立てるか、カズマ」
「いてて、ああ大丈夫だ」
「カズマ、ダクネス!後ろ!」
「「ッ!?」」
アクアの声を聞いたカズマとダクネスは急いで後ろを向くと、ヴェッターに首を掴まれヴェッターの能力で体を焼かれた後に投げ飛ばされた。アクアとめぐみんは急いでカズマとダクネスの傍に行った。
「あちちちちちちちっ!?『フリーズ』、『フリーズ』!」
「カズマ、ダクネス!?大丈夫ですか!?」
「ああ、問題ない。むしろ、おかわりが欲しいくらいだ!」
「熱そうですねえ。ならこちらをどうぞ」
ヴェッターがそう言うと、冷気をカズマ達の方へ放出しすると地面を凍らしながらカズマ達に迫っていった。カズマは近くにある岩を見た。
「あの岩に隠れるんだ!急げ!」
カズマがそう言うと走り出した。その後をアクア達もついて来て皆が岩陰に隠れると冷気は岩のおかげでカズマ達は助かったが、その周囲は凍っていった。
「わわわわわわっ!?この後はどうするの!?早く次の手を考えて!早く!!」
「うるせえ!今考えてるから黙ってろ!」
「考える暇を与えるとでも?」
ヴェッターはそう言うと、自身の周囲から何初もの雷を同時に放った。その雷はカズマ達が隠れている岩を少しづつ破壊していった。
「これだけの能力を同時に発動するなんて………!」
「あわわわわわっ!?どーするの!?ねえ、カズマさん!?どーするの!?」
「ああ、もうクソ!!『狙撃』!」
カズマがヤケクソ気味に何発か矢を射るが、ヴェッターは片手で払うと竜巻を発生させてカズマ達に放った。竜巻はカズマ達を巻き上げて、それぞれ別方向に飛ばした。
「私は人と能力は惹かれ合うと思っています。グロウキメラの能力では満足できない私は多彩な能力が使える、気象を操る能力を手に入れました。………だが、まだ足りない!!」
「「「「ッ!?」」」」
「実験の末、私は様々なモンスターの能力を取り込む事で進化できるようになりました。そこで、私はある手段を使って進化する方法を見つけました。例えば………」
そうヴェッターが言うとカズマの方に手を向け。
「『スティール』」
そう唱えるとカズマの弓と矢を奪った。ヴェッターは弓と矢を捨てた。
「なっ!?」
「この様に冒険者のスキルも使える様になりました。あと私はウィザード、プリースト、クルセイダーなどのスキルを手に入れました」
「どうなっているんだ?あいつの言う通りならモンスターの能力を取り込んで手に入れたんだろ?でも、そう都合よくスキルを持っているモンスターがいるのか?………ッ!?まさか!?」
「やはり、あなたはあの女性達より知力が高いようですねえ、カズマさん?あなたのご明察通り、冒険者をモンスターに変えたんですよ。この宝石を使ってねえ」
「「「ッ!?」」」
ヴェッターが宝石を取り出して、そう言うとアクア達は息を呑んだ。
「動物や適合率が低いと倒された時に放出され、砕けてしまいますが。それも実験の末に解決しました。宝石を埋め込むと、冒険者は命と力を宝石に吸われて死にモンスターに変わる。そして吸い尽くした宝石は私が使用できる様になった後に転移の術式が発動して、私の下に転移する。………私は、それが欲しいだけなんですよ」
「ふざけるな!!もうこれ以上お前の好きにはさせない!!」
「無理ですよ。あなたの実力ではねえ『ライトニング』」
ヴェッターがダクネスに手を向け、唱えると雷がダクネスに当たり、後方に飛ばされた。
「ぐわあ!!」
「ダクネス!?」
「ですが、冒険者の能力だけでは満足できなくなってきた時に私は素晴らしいのを見つけました。死神が使っている魔法です」
「なっ!?」
「あの魔法は素晴らしい!あの魔法が手に入れる事ができれば、私はさらなる高みに到達する事ができる!ですので、あなた達をモンスターに変え、動揺して隙を作った死神を倒して、死神の力を奪おうと思いましてねえ。一緒に旅をしていた紅魔族を痛めつけても効果が薄かったのでねえ」
「なっ!?今なんて言いました!?あなた、ゆんゆんに何かしたんですか!!」
ヴェッターの言葉にめぐみんはそう言った。
「うん?あなたはもしかして彼女の友人ですか?ええ、彼女と戦いました。でも、彼女も実力不足でしたねえ。だから右腕を簡単に切断されるんですよ」
「ッ!?よくも、ゆんゆんを!!」
ヴェッターの言葉を聞いためぐみんはそう言うと、爆裂魔法の準備を始めたが、ヴェッターが一瞬で近づき、めぐみんの顔を殴った。めぐみんは地面を何回も跳ねながら吹っ飛ばされた。
「めぐみん!?」
「………おかしいですねえ。紅魔族なのに他の魔法を使わずにネタ魔法を使おうとするなんて………。まさか、あなたはネタ魔法しか使えないのですか?はは、あははははは!これは傑作だ!魔力が高い紅魔族がネタ魔法しか使えないとはねえ!そんなネタ魔法しか使えない大馬鹿者が私に勝てるはずがない!先にあなたから始末してあげましょう!」
そうヴェッターが言うと、雷雲を作り出した。
「………あと少し………、あと少しさえ時間があれば爆裂魔法であんな奴………!」
そうめぐみんが悔しそうに涙を流しながら言った。それを見ていたカズマは何か少し考えていた。そのカズマの近くにアクアとダクネスが来た。
「ど、どうしよう!?カズマさんどうしよう!?」
「このままではめぐみんが………!」
そうアクアとダクネスが言っている時にカズマが静かに言った。
「アクア」
「えっ?な、何っ?」
「俺に何かあったら回復魔法を頼む」
「えっ?………ッ!?」
カズマの言葉に、普段、空気を読まないアクアが察し、カズマの右腕を掴んだ。アクアのその行為にダクネスも察し、カズマの左腕を掴んだ。
「何、考えてんのカズマさん!?もっと他にも方法があるから考えてよカズマさん!?」
「もう、これしか方法が無いんだ!!」
「止めろ………、止めてくれカズマ!!」
そう言っているアクアとダクネスを振りほどき、カズマはめぐみんの方へ走った。
「無駄な抵抗です。この攻撃は防げない!」
「めぐみん!爆裂魔法の準備をしろ!」
「えっ?カ、カズマ?」
「いいから、早く準備しろ!」
「りょ、了解です!」
めぐみんはカズマに言われた後、再び爆裂魔法の準備を始めたが、雷雲がゴロゴロと鳴り始めた。
「もう遅い!終わりだ!!」
そうヴェッターが言うと、雷がめぐみんに襲い掛かるがカズマがめぐみんの前に出て雷をその身に受けた。カズマは体が焦げ、めぐみんの近くまで飛ばされた。
「何っ!?」
「カ、カズマああああああああああああああああ!!」
ヴェッターはカズマの行動に驚いていた。めぐみんはカズマの傍に行こうとすると、ボロボロの状態のカズマが言った。
「………や、れ………、めぐ、みん………」
「ッ!?うぁあああああああああああああああ!!『エクスプロージョン』ッッッッ!!!」
カズマの言葉にめぐみんはそう唱えると、ヴェッターに爆裂魔法が直撃した。
次回は新キャラを出そうと思います。