主人公を英雄として召喚したら   作:ひとりのリク

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閲覧ありがとうございます。

アサシンが召喚される話を投稿すると、気持ち的にセイバー編を書きたくなっちゃうので。閑話という事にして、おまけ話を2.3話投稿しようと思います。
難しい背景とかは気にせず読んでください!
私も、閑話に関してはあーだこーだ考えず、ちょっとばかしチートじゃないか?と言われてもいいくらいの勢いで書きます。
もちろん、昼リクオも!?


閑話、ぬらりひょんの本領

衛宮 士郎は包丁を優しく握り、腕をキビキビと動かしキャベツを千切りにすべく奔走していた。

まな板の上にどっしりと小山のように構え、まるでこのまな板は俺の領土だと主張する程に大きなキャベツは、僅か10秒で千切りキャベツへと早変わり。包丁がキャベツに入る度に聞こえる、勢いのいい音は、耳に入るだけで食欲がそそられる。

台所を半歩動き調味料を手に取る。かと思えば既に蓋は開けられていて、まな板の傍に置いてある豚肉へ一工夫を凝らしている。小刻みに腕を振る僅かコンマ9秒。

手元はよく見えなかったが、士郎の腕が料理人として高みにあることは伝わってきた。

一体、その過程にどういう意味があるのだろうか?……少しだけ考えて、口に出すのはやめることにする。もしかしたら、この質問が士郎に対して失礼に当たるかもしれないからだ。口の中で言葉を止めるセイバー。言葉を止める事は出来ても、彼が調理場(戦場)で戦っている姿を見てみたい衝動は抑えられそうにない。

彼が次に手を加えたのは大根。

なんと逞しい野菜だろう。美しく輝く白い肌みたいだ。大地の中で育つ野菜は皆、この時代は驚くほどに肥えている。ジャガイモ然り、人参然り。彼は確か、味噌汁を作ると言っていた。味噌汁の具にする為の大根だろうか。

 

「お前のマスター、料理出来るんだな」

 

「はい、そのようです」

 

今夜のメニュー、豚の生姜焼き、千切りキャベツ、そして味噌汁。彼曰く、昨日の夜の帰りに夕飯等の食材を買う予定だったのだが、ランサーに襲われ刺されアサシンに斬られ。だから、今日の昼過ぎまでグッスリと眠っていた。起きて家事をし始める彼を、セイバーは慌てて止め安静にするように提案したが。体調は特に変わりがないと言い家の家事をこなす彼を、セイバーは後ろから付いていき手伝うくらいしか出来なかった。

外に買い出しに行く、と言った時は流石に止めた。昼過ぎまで寝ていた様子を見て、外出して倒れるのがのが怖かったのだ。家事を止めないマスターを気遣い、ぎこちなくも手伝う彼女を見た士郎は、午後四時頃から「分かった、分かったから。休むよ、流石に昨日の今日だからキツくなってきたところだったんだ」と、半ばセイバーに気を遣い休憩。アサシンに斬られた事や、ランサーとの逃亡について話し合い二時間を過ごすと。「飯を作らないとな」と言って立ち上がったのが少し前の事。

お察しの通り、この時ばかりはセイバーもこくりと頷くだけであった。召喚されてからそれまでは一口も口に含んでいなかったから、いや、まさかマスターを気遣う騎士がそのような理由で、休んでいたマスターを止めなかったはずはないだろう。これ以上はカリバーされそうなので文章は自重するが。

結果、食材の買い出しに行けなかったからこんな物しか作れなくてこめんな、と謝って料理しているのだ。

 

 

 

………ま、待ちきれない。

 

 

 

謝られてセイバーは狼狽えた。もし、彼の体調が万全で、食材が有り余るほどあればどれだけの料理が食卓に並ぶのだろうか。

何かと葛藤すること、約3分。

気づけば、騎士の足は正座していたはずが立ち上がっていて、気配を消し士郎の立つ戦場…台所へ赴いていた。心臓の打つ心拍数がやや上がっている。士郎の背後に、息を殺して近づく事になぜか緊張していたのだ。

 

なぜだろう…?

 

士郎が作る料理に意識のほとんどが向いている。今なら、彼女の後ろから木刀をゆっくりと頭に当てようとしても、気づかないかもしれない。なぜかって?今の彼女は、お口チャックして思わずヨダレが溢れそうになるのを防ぐのに一生懸命だからだ。

 

「シロウ。あ、あの…………」

 

ハッと気づけば台所の前に立っていた。士郎のサーヴァント、騎士セイバーは自分が無意識のうちに取っていた行動に、今更ながら戸惑った。自分の足が、台所へと向かっていた流れ全てが無意識のうち。

 

「ん?どうしたんだ、セイバー。夕飯はもう少し掛かるから、お茶でも飲みながらゆっくりしていてくれ」

 

「あ、、、はい………」

 

言葉が詰まるセイバーを眺める士郎。活き活きとした笑顔で振り向かれ、無理をしないで欲しいと言おうとした言葉を忘れてしまう。恐ろしや、食事の畏れ。

 

 

 

「それよりもさ、セイバー。あんまり放置してると泣くぞ、あそこに寝転がる虎」

 

 

 

面白そうにそう言うと、テーブルの横を指差す。昨日の士郎とアーチャーが横になっていた場所だ。そこには、、、

 

「え………あ………」

 

こちらを涙目で見つめる、マスコット…には程遠い、衛宮家の番犬、藤村 大河が両手両足をバタつかせていた。絵に描くとかなりヤバイ。

 

「もー、ひっどいんだもんセイバーちゃん!さっきから話しかけてるのに、全て流すなんて!そんなに士郎の調理する背中に惚れたの!?惚れちゃったのね!?」

「な、何言ってるんだこのゴロ寝教師は…………藤ねえは軽口で言ってるんだろうけど、セイバーの事をちゃんと考えて言えよ!」

「ややっ、これは教師っぽくない事を言っちゃったわね!自重自重。それでセイバーちゃん、さっきは険しい表情で士郎なんか見ちゃって。どうかしたの?」

「いえ、その。たまたま、考え事をしていて、向いた視線がシロウだっただけなんです。はい、たまたま…」

「そう、たまたま、ねぇ…?ふ〜ん?」

「……っ、大河。何か?」

「うんや?健康でよろしいっ!」

 

「元気そうでなによりだ、うんうん」

 

「ははは、晩飯抜きにするぞ藤ねえ?」

「うぐっ……卑怯者め、我が栄養姫を盾にするか!」

「そのお姫様を作っているのは、どこの誰かな〜?」

 

と、こんな感じで居間ではいつもより少し賑やかな時間が過ぎる。セイバーが藤村の絡み攻撃を流しきれなくなってきた所で、タイミングよく運ばれてきた生姜焼きにより窮地を脱する。士郎のファインプレーにより、セイバーの空腹もようやく満たされるので、一難が去った。

食卓に並べられる新鮮なサラダ。サラダと共に頬張ってくれと言わんばかりのジューシーな生姜焼き。一息つくならいつでもどうぞ、と傍に置かれた野菜の具沢山味噌汁。それぞれ、士郎、セイバー、タイガーの元に置かれる。テーブルの上には四人分の食器とお箸。

士郎が最後に、各々に置き忘れがないかを確認。よし、と呟き両手を合わせる。

 

「いただきまーす」

「頂きます」

「いっただっきまあす!」

「悪いな、頂くぜ」

 

食事の挨拶が終わると、それぞれが好きなように料理に手をつけ始める。藤村とセイバーは迷わず生姜焼き、士郎は味噌汁を口に含み出来を確認中。

うんまぁい!と、とろけるように声を漏らす藤村。

口に入れた生姜焼きを噛み続け、頷きながら鼻息が荒くなるセイバー。

士郎は藤村に、大人しくしろと言いながら、セイバーの反応を伺っている。どこの国出身かも分からないので、日本の食が彼女の下に合うのかが気掛かりで仕方がないよう。

キラキラに輝く瞳のセイバーの反応を見て、士郎は安堵の息を静かに吐いた。興奮気味になっている事には、特に思う所はないらしい。満足気に食卓を見渡す。

 

三十分後。

今日一日、セイバーに外出を止められていたので満足に食材を揃える事が出来なかったが、終わりよければ良しとする。恐らくセイバーは、日本食でも問題ないようだ。食事後に明日の飯の事を聞くのは、満腹な所に悪いかもしれないので明日の朝にでも、好みを聞いてみることにしよう。

 

「シロウ、ご馳走様でした!大変美味でした。あの頃、この味があれば……」

「ご馳走様でした〜士郎。こんなにおいしい料理が作れるなら、もう風邪なんて吹き飛んでるわね!明日はちゃ〜んと来るのよ?」

「わ〜、きれいに食べたもんだなぁ二人とも。分かってる、明日は行くから。さて、片付けるか」

 

綺麗に片付いた食器をまとめる。本当なら、ある程度余った物は明日の朝飯にでもと考えていたのだが。……どうやら、藤ねえの食欲が今日になって爆発したらしい。熱めのお茶を飲むセイバーが、この量を平らげる訳がない。

 

「ご馳走さん、それじゃあな」

 

四人分の食器を台所へ持っていく士郎の耳に届く声。

食後にお茶を啜るセイバーの前を、縁側へ抜ける風が通る。

結局、なぜ緊張していたのかセイバーが知る事はなかった。




リクオのスキル、「総大将の血」が最大限に発揮された話でした。
所々で、リクオ喋ってましたね。

士郎の体調を伺うついでに食事も食べる。これぞぬらりひょんです!
どうでもいいかもしれませんがリクオは、妖刀祢々切丸を携えていませんでした。戦う気が微塵もなかったので、気付かれる事もなく無事、柳桐寺へ帰宅。味をしめ、その後度々、突撃士郎家の晩御飯をするのでした。

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