めんどくさい・・・。
大学に向かうため、7時過ぎの電車に揺られながら私一色いろはは体全体を支配している気だるさと眠気と戦っています。
高校時代からの憧れだった葉山先輩を追いかけて通う事にした某有名大学。
元々すごい頭のいい訳では無い私は3年の1年間をほぼ勉強に傾け、また運にも恵まれてここに通う事が出来ました。
ただ
なんでガイダンスのためだけに何日も通わなくちゃいけないんですかね・・・。
受験が終わってからのぐーたら生活の弊害かこの麻の電車が辛い。
それに1コマ90分の授業も慣れてなくてとても長く感じます。高校の時より40分も長いとか狂気の沙汰ですよ。
トドメは文系学部だからなのか、ウェイウェイしてるのがクラスにいっぱいいる事です。
頭の回転がいい戸部先輩みたいなのがいっぱいいるんですよ、怖くないですか?
いや、そうじゃない人も居ますけど、顔を覚える必要を感じないというか何と言うか・・・。
電車が大学の最寄り駅に付き、大学の生徒達が一斉に電車から吐き出される。
降りた人間が階段へ向かうという同じ意志を持った動きを行う中、その流れに乗り遅れた私は
「きゃっ」
後ろの人とぶつかって転んでしまった。
1人が転んだからと言って人の意思の流れは止まらない。邪魔なものを見るような視線を軽く向けながら人々が通り過ぎて行く。
そんな中、
「その、大丈夫ですか?」
1人の男の人が手を差し伸べてくれた。
「あ、ありがとうございます。」
「では、気をつけてくださいね。」
そう言って男の人は去って行ってしまった。
結構イケメンだったなぁ・・・。
身長はそんなに高くないけど、メガネが似合ってて。でも、ちょっと変な髪型、アホ毛みたいなのが立ってたなぁ。て、
ブンブンブンブン
私は葉山先輩狙いなんです、葉山先輩以外は何ともない、そう、モブです。
思いっきり頭を降って雑念を処理する。
ついでに時計を眺めると少し危ない時間になっていた。
私は小走りでキャンパスに向かうのだった。
はあぁ・・・。
今日のガイダンスが無事終わり、新入生は皆帰路につく。私もその流れにいつもなら乗っていたのだが、
今日は葉山先輩のサークルに遊びに行くんです!
それまでの憂鬱な思いなど消え去り、早足で目的地に向かう。
てっきり葉山先輩は大学でもサッカーをやっているものだと思っていたので、辞めている事を知った時は驚きました。
しかも、参加しているサークルが、
散歩同好会
なんてねぇ・・・。私は部室棟の散歩同好会の前でため息を付きながらノックするのを躊躇していた。
5分ほどノックするかしないか迷いな、覚悟を決めて思い切ってノックする。
コンコン
「はいー。」
ガチャ
ドアが開き、私の思い人葉山先輩が出てくる。
「どうぞっていろはじゃないか!そうか、ここの大学だったな。いいよ、上がって上がって。」
「あ、はい。失礼します。」
葉山先輩が私の事覚えてくれていてしかもここの大学だった事も知ってくれてるなんて私なんて幸せなんだろう。少し舞い上がりながら中に入ると、
「おい葉山、このサークルは基本的に人を取らないって何回言っ」
そこにいたのは朝私に手を差し伸ばしてくれた人でした。
「すまない比企谷、いろはは俺の後輩なんだ。見学位はいいだろ?」
「チッ、俺は比企谷八幡、このサークルの会長だ。今朝は大丈夫だったか?」
「あ、え、一色いろはです。今朝はありがとうございました。」
なんだろう、イケメンなんだけどこの人すごい残念な感じが漂ってる・・・。なんか空気感というか、オーラというか。
「なんだ、2人とも知り合いだったのか、なあ比企谷いいだろ?お前の知り合いだったらこのサークルに入っても。もちろん、いろはが望めばだけど。」
「知り合いっていうか、今日転んでたのを起こしてやっただけだ。まあ、そろそろ後輩でも何でもいいから人数増やさなきゃ部室取られる所だったから構わない。んで、どうするんだお前は。」
「な、何ですかお前呼びって、私には一色いろはって立派な名前があってですねー。」
「そんな事は後でいい。入るのか、入らないのか、どっちだ?」
「後でいいって、あ、えーと入ってもいいんですか?」
あれ?なんか流れで入れそうだ。なんか比企谷先輩って意外と優しい?
「じゃあ決まりだな!な、比企谷?」
「チッ、これは今回きりだからな葉山。次やったらお前除名な。」
「本当にそれでいいのか?後々困るのは比企谷だぞ?」
「チッ」
あー、なんかなんとなく2人の関係性がなんとなくわかってきました。比企谷先輩、葉山先輩にかてないんですねー。
「まあ、いい。ようこそ散歩同好会へ。歓迎するぞ、一色いろは。」
私の大学生活はここから確実に狂っていくのでした。