SAO <少年が歩く道>   作:もう何も辛くない

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投稿する作品違くない?と思った方。






本当に申し訳ありません<(_ _)>











銃弾の幻影
第80話 誘いの言葉


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『AGI万能論なんて、単なる幻想なんですよ!いや、確かにAGIは重要なステータスです。ですがそれはもう過去の話。八ヵ月かけてAGIにガン振りしてきた皆さん、ご愁傷さまです』

 

気取った口調に良い笑顔もプライスレス。派手なブルーシルバーの長髪に、サングラスも神経を逆なでる一つの要因になるかもしれない。きっと、この映像を見ているゲームプレイヤー達は怒り狂っている事だろう。何しろまさにこの男が、AGI万能論なるものを謳っていた張本人なのだから。といっても、それは他者から聞いた話だし、第一プレイヤーではない自分には全く関係のない話だが。

 

「あんまり調子に乗らないでくれよ。達也のHPが0を下回ってマイナスになるから」

 

PCデスクに肘を突いてこの映像、ネット放送局<MMOストリーム>を閲覧していた慶介は、頭の中で血の涙を流した友人の顔を思い浮かべながら苦笑を洩らす。その友人もまた、このゼクシードのAGI万能論を信じてしまった者の一人。詳しくは本人のために伏せておくが、学校での落ち込み様は凄まじかった。教師も引くほどだったし。

 

ちなみに、この今やっているコーナーは<今週の勝ち組さん>というもので、<MMOストリーム>の中でもトップの人気を誇るコーナーの一つだ。慶介…、ALOプレイヤーケイも、何度か出演依頼をもらった事がある。全て断ったが。

 

『しかし、全VRMMOの中で最も過酷と言われる<ガンゲイル・オンライン>のトッププレイヤーだけあって、おっしゃる事が過激ですね』

 

『いやあ、<Mスト>に呼ばれるなんてひょっとしたら一生に一度でしょうし。言いたい事は全部言っちゃおうと思って』

 

「…もうやめたげてよぅ」

 

苦笑を通り越し、唇の端が引き攣る。本当に駄目だって。周りからの視線がマジで痛かったんだから。明日奈もすっ、と見捨てて行っちゃったんだから。あれより酷いことになりそう

だからマジ止めて。

 

しかし、友人から聞いただけでもいけ好かなく感じるこのゼクシードという男だが、ガンゲイル・オンライン、通称<GGO>の中でトッププレイヤーという事は、相当の腕の持ち主なのは間違いない。それも、先程司会者の女性が口にした通り、GGOは全VRMMOの中で最も過酷と言われている。その理由は、ゲームの雰囲気もそうだが、プレイヤーの中にプロが混じっているというのが主だ。実際の軍人が訓練のためにログインしたり、あるいは気分転換に大会に出場したりもするのだ。そんな中でトップを張るこの男…を倒そうと、あの馬鹿は慶介をGGOに引っ張り込もうとする。いくら何でも無茶だと言っても全く聞いてくれない。

 

仕方ないので、一度それに付き合って、慶介含めた五人でGGOにログインした事があるのだが。まあ魔法よりも断然速い弾丸が飛び交ってまあ、そのアバターのステータスが低い事もあってあっという間に死んでしまった。そして、もう二度とやらない、と再びフィールドに連れ込もうとする友人に告げてやった。…まだ諦めてくれないが。ていうか、個人の恨みに他人を巻き込まないでくれ。自分の力で頑張ってくれ。頼むから。

 

「兄さん。クッキー焼いたんだけど、食べる?」

 

そこまで考えた時、扉のノック音と共に妹、司の声がした。慶介は突いていた肘を椅子の背もたれに乗せて振り返る。

 

「あぁ、食べる。ちょっと待っててくれ」

 

慶介はブラウザを全て消してから、パソコンをシャットダウンして立ち上がる。扉を開けて部屋から出ると、まだそこには司が立っていた。

 

「今日はログインしてないんだね」

 

「あぁ。見たい番組があってな」

 

見たい番組、それが<MMOストリーム>というのは言うまでもないだろう。というのも、慶介はあまりそういった情報番組は見ていない。自分がやっているゲームの、興味を引く情報が取り扱われる場合は別だが。それが何故今日は、というのは…、まあ、察してほしい。見ておかなければうるさくなる奴がいるのだ。

 

「で、何でお前は得意げな顔してるの」

 

「ふふん、今日のクッキー焼いたのは誰でしょう?」

 

「…毒とか生成してないだろうな」

 

「どういう意味よそれ」

 

この時、慶介は知らなかった。知るべき事を、見ておかなければいけないモノを、見逃している事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬の刺すような風を、コートの襟に顔を埋めることでやり過ごしながら、規則正しく敷き詰められた石材の歩道を歩く。天気予報士曰く、明日には大きい低気圧が関東周辺を襲うらしい。この風もその影響なのだろうか、鬱陶しい。周りを歩く子供も大人も等しく、風を受けた頬を赤くしている。

 

それは慶介も同じで、駅から歩いてきた十分の間にその頬は赤に染まっている。吐く息は白い煙となって消えていき、時に吹き荒ぶ風にぶるりと体を震わせる。目の前に見える校門、その奥にある校舎が目に入り、歩む足を速めたその時、背後から駆け足の音が耳に入り直後、誰かが慶介の隣に立つ。

 

「ケイ君、おはよう」

 

慶介のペースに合わせて隣で歩きながら、微笑みを浮かべて挨拶したのは、他の人と同じように寒さで頬を赤くする明日奈だった。慶介も明日奈に視線を向けて、笑みを浮かべる。

 

「おはよう、アスナ。…顔真っ赤だな」

 

「ケイ君もでしょ?今日寒いもんねー。息も真っ白だよ」

 

「天気予報でも記録的寒波、とか言ってたからなー。…寒いから今日は学校休み、とかなればいいのに」

 

「ははは。それはないよー」

 

「んー…。雪でも降ればなー。北海道だと大雪で学校休みとかあるのに」

 

「ケイ君…。そんなに学校休みたいの…」

 

「いや、別に」

 

「さっきまでの会話は何だったの!?」

 

良いツッコみだ。これならお笑いの頂点狙えるかもしれない。そんなつもりは毛頭ないが。

もぉ~、と可愛らしく頬を膨らませる明日奈を見て、つい笑みが零れる。

 

校舎に入り、一度別れてから上履きに履き替え、合流して再び並んで歩き出す。明日奈とはクラスが違うため、とりあえず一緒にいられるのは教室の前までだ。手を振って明日奈と別の教室に入り、自分の席に腰を下ろす。鞄からタブレットや教材を出し、机の中に入れる。

 

「慶介―、ちょっと聞いてくれよー」

 

「…」

 

一息つく慶介に話しかける一人の生徒。その生徒は歩み寄ってくると、両掌を慶介の机に突いて、こちらを覗き込む。

 

「…何だよ達也。また愚痴か?」

 

「またって何だよ!…まあいつも愚痴ってるけどさ」

 

そう、この生徒こそ達也。慶介に<ガンゲイル・オンライン>で起きた事を望んでもないのに事細かく話し、時に愚痴り、さらには特段興味のないGGOからのゲストが登場した<今週の勝ち組さん>を見ろと命令してきた張本人だ。といってもその時は、慶介は途中から視聴をやめたのだが。

 

それにしても、自覚があるならいい加減、少しは自重してほしいのだが。

 

「で、何だよ」

 

「あぁ、ゼクシードの事なんだけどさ」

 

「…やっぱ愚痴か」

 

「違ぇよ!今回は!」

 

その口から出てきたゼクシードという名に、また愚痴なのか、と予想してげんなりする慶介。

だが、今回は少しいつもと様子が違う。

 

「ほら、前に話したろ?ゼクシードがMスト出演中に不自然に落ちたって」

 

「…あぁ、言ってたな」

 

どうやら話はゼクシードがMストに出演した日。一月前にまで遡るらしい。

そう、慶介は途中で視聴をやめたおかげで知らないのだが、ゼクシードが出演中、突然回線落ちしたらしいのだ。しかも、その時の様子があまりに苦しそうに見えたそうで、一部のプレイヤーは心配していたらしい。

 

「で、それがどうしたんだよ」

 

「あれからゼクシード、全くログインしてないんだ」

 

「は?」

 

「いや、それだけって顔するなよ。あのGGOが人生だ、なんて言い出しそうなゼクシードがログインしてこないんだぞ?気にならないか?」

 

気にならないか、と聞かれてもゼクシードの為人なんてほとんど知らないし。しかも、知ってることも全部人から…というより、達也からしか聞いた事だし。そんな奴がゲームにログインしてこないなんて言われても、別段気になるはずもない。

 

…とは、ならなかった。

 

「…<デス・ガン>だっけか。そいつは最近ログインしてんのか?」

 

「あぁ…。一週間前に姿を見たってプレイヤーがいる」

 

「なら探してみろよ。そして聞いてみればいいじゃんか。本当にゼクシードを殺したのか、って」

 

「お、おい!さすがにそれは怖ぇって!」

 

慶介の物言いに慌てふためく達也。しかし、慶介も冗談染みた言い方をしているが、胸の中で引っ掛かりを覚えていた。

 

思い出すのは、一か月前に達也から見せてもらったある映像。

それはGGOにある店の中で起きたものだった。店内にいるプレイヤー全員が、四面ホロパネルに映し出される男、ゼクシードを見上げていた中で起きた騒ぎ。

 

突然、ゼクシードに罵言を掛け始めた一人のプレイヤーは銃を掲げ、パネルに映るゼクシードに向けると発砲。弾丸はパネルを通過。ちょうどゼクシードの左胸の辺りを通過した。

 

その直後だった。突然、胸を抑えて苦しみだしたゼクシードが回線落ちしたのは。呆然とするプレイヤー達の前で、ゼクシードを撃ったプレイヤーは死銃、<デス・ガン>と名乗り、姿を消したという。

 

「なあ、そいつについて特徴とか、何か知ってることはないか?」

 

「おっ、何だよ慶介。この話には喰いついてくるじゃん」

 

「いや、そいつがALOに現れないとも限らないし」

 

さすがに気にならないと言ったら嘘になる。今はGGOでプレイしているようだが、もし死銃が他のゲームに手を出すようになったら。

 

「とはいってもなー、特徴って言ったって…。外見はお前も映像で見ただろ?」

 

「あぁ。てか、外見なんか参考にならんだろ。他のゲームじゃ装備が変わるわけだし」

 

「だよなぁ…。…あぁ、そういや」

 

俯いて考え込んでいた達也が、不意に顔を上げる。

 

「実はな、ゼクシードの他にもう一人、死銃に撃たれたプレイヤーがいてな。<薄塩たらこ>っていうんだけどよ。その現場を見ていたプレイヤーが言ってたんだ」

 

達也がどうしてその現場を見ていたというプレイヤーと関わりを持っているのかは問うまい。それには興味もないし、話がややこしくなるだけだ。

 

「<薄塩たらこ>を撃つ直前、死銃が言ったらしいんだ。気取った口調で、格好つけながら」

 

直後、達也が口にしたその言葉に慶介は驚愕することとなる。

そしてそれは────────

 

 

 

 

 

 

 

 

It’s show time.

 

 

 

 

 

 

 

 

慶介を新たな戦いへと誘う言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前の投稿から二か月が経ちました。






…そんなに時間かけて、この程度の話しか書けなくてごめんなさい。

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