SAO <少年が歩く道>   作:もう何も辛くない

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第48話 法を見守る無法者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじまりの街に来たのは、実に数か月ぶりの事だ。転移門を出ると、巨大な広場とその向こうに広がる街並みが。アインクラッド最大の街であり、冒険に必要な物資はどこよりも充実している。

 

物価も安く、宿屋なども多く存在しているため、ここを拠点にするプレイヤーは多くいる。だが、前線を中心にして活動するプレイヤーに関してはまた別の話だが。それでも、物資の調達にここを利用する攻略組プレイヤーは数多くいる。

 

ほら、現に今そこに、キリトとサチが────

 

 

「え、キリト…」

 

 

「サチ!?」

 

 

並んで手を繋ぎながら歩いているなんて、全く予想ができなかった。

 

 

「ケイ?」

 

 

「アスナも…」

 

 

転移門へと向かっていくキリトとサチの二人と遭遇したケイとアスナ。目を丸くして、ぽかんとしながら目を見合わせる四人。だがその時、キリトとサチがケイに抱っこされる少女に目を向ける。

 

 

「なぁ、ケイ。その子は…」

 

 

「あ、あぁ。この子はな…」

 

 

キリトが問いかけてきた。サチも聞きたそうにケイに視線を向けている。ケイはキリトの問いに答えようとする。だが────

 

 

「ねぇパパ、ママ。このひとたち、だれ?」

 

 

「「「「!!!?」」」」

 

 

ピシリ、と何かが凍り付いたような、そんな音が聞こえた気がした。

キリトもサチも、勿論ケイもアスナも固まってしまい、身動きがとれなくなってしまう。

 

 

「パパ?ママ?」

 

 

「っ…、あ…」

 

 

凍り付いた空気の中、再びユイが口を開く。その声で我を取り戻したケイが再び口を開こうとするが、その前に我に返っていた者達がいた。

 

 

「えっと…、二人はいつの間に結婚してたの…?」

 

 

「ていうか、SAOで子供ができるんだな」

 

 

「「違う!!」」

 

 

サチの結婚してたのかという問いかけに違うと答えたのか、それともSAOで子供ができると言ったキリトに違うと答えたのか。無論、どちらにもである。

 

 

 

 

 

 

「そんな事があったのか…」

 

 

少々時間がかかったが、キリトとサチの誤解は何とか解けたらしい。しかし、確かに男女間で行為ができる機能はSAOには搭載されているが…。

 

 

「普通に考えたら、そんな訳ないって分かるだろ…」

 

 

「い、いや…。でも、万が一って可能性が…」

 

 

「ねぇよ」

 

 

呆れながら言うケイに苦笑を浮かべたサチが返すが、ケイは即座にその返事を一蹴した。

 

いや、普通に考えてゲームの中で子供ができるなんてあり得ないだろう。…あり得ない、だろう?

 

 

「ねぇねぇ、あなたのお名前は何ていうの?」

 

 

「…ゆい」

 

 

「そっか、ゆいちゃんていうのか。俺はキリトだ」

 

 

「私はサチ。よろしくね?」

 

 

「…きぃと…、あち…」

 

 

ケイがアスナ、ユイと三人ではじまりの街に来た簡単な経緯は、今はケイが抱っこしているユイに話しかけているキリトとサチに説明した。だが、あのユイのステータスで見たバグについては言っていない。

 

別にキリトとサチの人柄を疑っているわけではないのだ。二人は信用できるし、言わないでほしいと頼めば、きっと誰にも言わないでいてくれる。それでも、あまり広めたくないのが本音だ。特にキリトとサチは、思いが繋がったばかりだ。そんな時に、こちらの都合に巻き込みたくない。

 

 

「にぃに!ねぇね!」

 

 

「おぉ、にぃにだぞー」

 

 

「ねぇねだよー、ユイちゃん」

 

 

「…」

 

 

何か、こっちはすっごく悩んでるのに二人は早速打ち解けてますね。…殴っていいですか?勿論、キリトだけ。

 

 

「パパ!」

 

 

「ん?どうした?」

 

 

何となくイライラしていると、不意にユイがこちらを見上げてきた。

 

ケイを見上げるたユイは、笑顔を浮かべたまま問いかける。

 

 

「にぃにとねぇねも、パパとママのこどもなの?」

 

 

「「はい!?」」

 

 

「「え?」」

 

 

再びの爆弾投下。だが冷静に考えてみれば、ユイがそう考えるのも当然だ。

にぃにとねぇね、つまりユイはキリトとサチをお兄ちゃんとお姉ちゃんだと思っているのだ。優しい兄姉だと勘違いしてしまったのだ。それはつまり、キリトとサチもケイとアスナの子供と考えるに等しい。

 

 

「え、えっとね?キリト君とサチは私達の子供って訳じゃ…」

 

 

「ちがうの?」

 

 

「う…」

 

 

違う、とアスナはハッキリ答えたかっただろう。だが、ユイの悲しげな眼がそれをさせなかった。アスナは一筋の汗を流して言葉に詰まり、救いを求めるようにケイへ視線を向けた。

 

 

(俺を見ないでくれ)

 

 

何て…何て、自分は無力なのだろうか。

 

ケイは自身の無力さを悔いながら、必死に無情を保ち、アスナから視線を逸らした。その瞬間のアスナの表情は、見ていない。

 

 

「ぷっ…ふふ…」

 

 

「くくっ…、ははははっ」

 

 

「ふ、二人共!笑わないでよぉ!」

 

 

慌てふためくアスナを見ていたキリトとサチが、思わずといった感じで笑みを噴き出す。それに対し、羞恥で頬を染めたアスナが憤慨し、飛び掛かろうとした時だった。

 

 

「子供たちを放してください!!」

 

 

どこからか聞こえてきた声に、全員が振り向いた。声が聞こえてきた方にあったのは、路地裏へと繋がる小さな道。ケイ達は目を見合わせ、一度だけ頷いてから一斉に駆けだした。

 

 

「ギン!ケイン!ミナ!そこにいるの!?」

 

 

「先生!助けて!」

 

 

声が聞こえてくる場所にはだんだん近づいている。裏通りを何度も曲がっていき、東六区のエリアまで来た時、青色のショートヘアーの女性の背中が見えた。さらにその向こうには、黒鉄色で統一された装備をした一団が。

 

 

「お金なんていいから、全部渡してしまいなさい!」

 

 

「先生…、ダメなんだ!」

 

 

さらに、その一団の後ろには子供がいるらしい。それも、今聞こえてきた声は先程聞こえた声と違う事を考えると、間違いなく複数。

 

 

「くひひっ。あんたら随分税金を滞納してるからなぁ。金だけじゃあ足りねぇなぁ…」

 

 

「あぁ。装備も置いてってもらおうか。防具も全部…何から何もな」

 

 

ショートヘアーの女性に下卑た笑みを浮かべながら言う軍のプレイヤー二人。その二人以外も、同類の笑みを浮かべて女性を舐めるようにねめつけていた。

 

 

「…そこをどきなさい。さもないと…」

 

 

「さもないと…、何だ?あんたが代わりに税金を払うってか?」

 

 

声を震わせながら女性が強がるが、男達には全く通用しない。この女性のレベルは恐らく低いのだろう。だがそれよりも、この街の中でHPは絶対に減らないという原則が、あそこまで男達を強気にさせる一番の要因だろう。

 

 

「…アスナ、少しユイを頼む」

 

 

「え…、ケイ君?」

 

 

このやり取りを見る限り、どちらが加害者でどちらが被害者なのかは明白だ。

 

 

(軍…。話には聞いてたが、ここまで堕ちてたか)

 

 

あの厭らしい笑みを浮かべた男達の防具は、軍に所属したプレイヤーに配布されるものだ。どうってことはない、使い続けるには中層程度で限界が来る、その程度の装備。

 

しかしそれでも、初層でしか活動できないプレイヤーに脅威を抱かせるには過ぎるくらいの代物。

 

粋がり、他者をいびり、搾取する。<アインクラッド解放軍>を作った者と、そのきっかけとなった者の志とは程遠い。今、彼らがこの光景を見ていたらどう感じるだろうか。

 

…どういう行動を、とるだろうか。

 

 

(わからない…、けど)

 

 

ケイは筋力値と敏捷値のありったけを込めて跳躍する。そのまま前にいた女性と、軍の集団を飛び越えると、恐怖に怯えていた子供たちの前に着地する。

 

 

「な、何だぁ!?」

 

 

軍の誰かが驚愕に声を上げる。しかしケイはその声に振り向きもせず、戸惑いながらこちらを見上げる子供たちの視線にしゃがんで合わせ、微笑んだ。

 

 

「もう大丈夫だ。装備を戻していいぞ」

 

 

男達が邪魔で目視できなかった子供達の姿を、ようやく見ることができた。空地の片隅に追い込まれるように、十代前半の少年二人と少女一人が固まって縮こまっていた。

 

彼らの足下に防具が散らばったのを見て、ケイは装備を直しても大丈夫と声をかけた。

 

 

「お、おい…。おいおいおいおいおいおい!!」

 

 

子供達がウィンドウを操作し始めた時、我を取り戻した軍のプレイヤーが喚きはじめた。

 

 

「何だお前は!まさか、俺達の任務を邪魔しようってのかぁ!?」

 

 

「まぁ、待て」

 

 

喚いたプレイヤーがケイに詰め寄ろうとすると、その肩に誰かの手がかけられた。すると、背後から一際重武装なプレイヤーが前へ出てくる。先程、女性に対して先頭に立って恐喝していたプレイヤーだ。どうやらこの集団のリーダー格らしい。

 

 

「あんたと後ろにいる奴ら、見ない顔だけどよぉ。解放軍に盾突く意味が分かってんだろうな?何なら、本部でじっくり話を聞いてやってもいいんだぜ?」

 

 

「盾突く、ね」

 

 

リーダーの目が鋭く光り、同時に腰に収めたブロードソードを抜くとその切っ先をケイに向けてきた。と思うと、剣を立てて刃の腹をぺちぺち叩き始めた。

 

 

「それとも圏外行くか?け・ん・が・い。おぉ?」

 

 

正直にいうと、ケイは今、ここまで見事なチンピラを初めて見れた事で感動を覚えていた。そういう世界で生きてこなかったケイは、こういう相手と対面する事もなかったのだ。

 

だが、感動以上の怒りもまた、ケイの中で燃え上がっていた。

 

ケイは腰元に愛刀を実体化させ、そのままリーダー格の男に正面から歩み寄っていく。

 

 

「あ…、お…?」

 

 

状況が呑み込めず、狼狽える男の背後にいるアスナと視線が合う。途端、アスナは呆れたようにため息を吐いてから、目を閉じて一度、こくりと頷いた。

 

それが合図だったかのように、ケイは直後に鞘から刀を抜き放った。

 

 

「ブフォッ!!?」

 

 

リーダー格の顔面に赤に染まったケイの斬撃が命中する。男は仰け反ったまま後方へと吹き飛び、後ろで固まっていた軍の集団に突っ込んでいく。

 

 

「う、うわぁっ!?なんだぁ!?」

 

 

「た、隊長!」

 

 

吹き飛んだリーダー格の男は、軍の集団に受け止められる。だが、目をぱちくりと開閉させながらケイを見つめる。戸惑いと驚愕を、全く隠せていない。

 

 

「いいぞ、戦ってやっても。それに、わざわざフィールドに出る手間も取らせない」

 

 

立ち上がった男に再び斬撃。今度は左薙ぎに飛ばされ、壁に背中を打ちつける。

 

 

「心配すんな、HPは減らねぇ。…永遠に蹂躙が続くだけだ」

 

 

言いながら地面に座り込んだ男の腹に踵を突き、ぐりぐりと抉らせる。

男は両手に力を込めて立ち上がろうとするが、僅かに体が震えるだけで全く立ち上がれる気配がない。

 

<圏内戦闘>というものがある。決闘システムを使わず、HPを減らない性質を利用して圏内でプレイヤー同士戦うというものだ。本来、訓練での模擬戦で利用されるのだが、攻撃者のパラメータとスキルが上昇するにつれ、対象への衝撃とノックバックが増大する。

 

慣れない者にとっては、HPが減らないと分かっていても耐えられないらしい。

 

 

「や、やめ…」

 

 

ケイの意図を悟ったのか、踵で押し込まれる男の目に初めて恐怖が浮かぶ。そんな男を冷たい眼で見下ろしながら、ゆっくりと刀を振りかぶる。

 

 

「お、お前ら!見てないで、さっさと助けやがれ!」

 

 

不意に男ははっ、と目を見開くと、ケイと男のやり取りを見ているだけだった軍のプレイヤーに向けて怒鳴りかける。その声で目が覚めたように軍のメンバー達は動き出すと、それぞれの武器を抜く。

 

初めからいた者だけではない。いつの間にやら、異常事態を察したメンバー達がこの場に集結し、ケイを包囲していた。

 

 

「…任務、か」

 

 

これも任務なのだろう。軍に攻撃するプレイヤーに対抗するため増援する。

ほとんどの場合、グリーンプレイヤーを攻撃するのは犯罪者プレイヤーなので理には叶っている。

 

なら、子供を脅迫し、女性に身ぐるみ全て脱ぎ捨てろと恐喝するのは?…それも、任務?

 

 

「っ…!」

 

 

歯を食い縛り、鋭い目でこちらを睨む軍のプレイヤー達を見据えながら、ケイは柄に手を添えて突っ込んでいった。

 

それから起きたのは、ケイの宣言通りの蹂躙だった。まるでギャグマンガの様に、人の体が宙高く吹き飛び、地面へと落下していく。それが間を置かず、時には同時に起こるため、何も知らぬ者には笑える光景として結晶に記録されていただろう。

 

だが、それを起こす本人たちは至って真面目である。

 

煌めく刃を身を翻し、しゃがみ、時に跳躍し、軍の集団全ての斬撃を回避し、防ぐ。ケイの体に剣を届かせた者は、ゼロだった。

ケイの斬撃が炸裂する轟音と、斬撃を受けた者の悲鳴が続いておよそ二分。すっかり静かになった空き地には、地面に倒れ伏す数人の軍のプレイヤーとそれを見下ろすケイの姿があった。ちなみに、他の軍のプレイヤーは逃げていったらしい。

 

 

「…」

 

 

もう、これ以上の戦闘は必要ないだろう。倒れてる彼らも、気を失っているのか全く動かない。ケイは一度、短く息を吐いてから刀を鞘に収めて振り返った。

 

 

「あ」

 

 

直後、ケイは一歩、後退る。振り返ったケイの目に映ったのは、三人固まって呆然とこちらを見上げる三人の子供達だった。

 

あの蹂躙を見て、怖がらせてしまっただろうか。思わず、今すぐにこの場から逃げ出したいという焦燥に駆られるケイ。

 

 

「す…、すげぇ…」

 

 

「え?」

 

 

「すげぇよ兄ちゃん!すっげぇ強ぇ!!」

 

 

だが、そんなケイを襲ったのは穢れない子供たちの尊敬の念だった。二人の少年だけでなく、少女もまた目を輝かせながらケイを見上げており、どうやら先程の戦闘で怖がっているという様子はないらしい。

 

 

「お、おい…」

 

 

三人はケイに詰め寄りながら一斉に質問を始める。だが、言葉が混じってしまい、何を喋っているのか全く聞き取る事ができない。

 

 

「わ、わかった。わかったから…」

 

 

何を分かったというのか。ケイ自身もさっぱりだが、それでもそう言うしかなかった。

だが、この状況でひたすら困るばかりだったが、不思議にも嫌だという思いは沸いてこなかった。

 

 

 

 

 

 

「ほら。彼なら大丈夫と言ったでしょう?」

 

 

「あ…、ありがとうございます…!本当に、ありがとございます!」

 

 

一方、女性を保護していたアスナ達。子供に囲まれて困ってるという何とも珍しいケイの姿に微笑ましさを感じながら、女性のお礼を受けていた。

 

 

「いえ…。軍のプレイヤーを撃退したのはケイ君ですし、お礼はあっちに言ってください」

 

 

「あ…。でも…、ありがとうございました」

 

 

ここへやって来た軍のプレイヤーの内、何人かはアスナ達が相手をしたが、ほとんどを屠ったのはケイだ。女性は最後に、アスナ達に一礼してからケイへと駆け寄っていった。

 

 

「それにしても…、珍しいな。ケイが自分からあんな風に突っ込んでくなんて」

 

 

ケイへ駆け寄って言った女性がぺこぺこお辞儀をして、そしてお辞儀をされるケイが困ったように両手を振る姿を眺めていた。そこで不意に、キリトがそんな事を口にした。

 

いつものケイは、本当にギリギリになるまであまり自分が出張ろうとはしない。出張った時の無茶のしかたはとんでもないが、そうでない時のケイは相手が向かってこない限り手を出そうとはしない。

 

 

「…多分、許せなかったんだと思う」

 

 

「許せないって…、何を?」

 

 

まだケイは割り切れていないのだ。それを悟ったアスナは、どこか悲し気に染まった笑顔を浮かべてケイを見つめる。

 

ケイと軍は切ろうとしても絶対に切れない縁がある。それが、ケイを苦しくさせているのは分かっているのに…、アスナ自身は何もできない。

 

 

(ケイ君…)

 

 

ケイ自身が何とかするしかない。他が何をしてもどうにもならない。

それは分かっているのに、どうしてもケイの助けになりたい。だけど────

 

そんな葛藤がアスナの頭の中でぐるぐる回る。

 

 

「こころが…、みんなの、こころが…」

 

 

「ユイちゃん?」

 

 

その時だった。アスナの腕の中にいたユイが、宙に視線を向け、右手を伸ばしていた。

すぐに、アスナはユイが手を伸ばす方へと視線を向ける。だが、どれだけそこを見つめても、何も見つからない。

 

 

「みんなのこころ…が…」

 

 

「ユイちゃん!どうしたの、ユイちゃん!?」

 

 

女性と子供の対応に困っていたケイも、こちらの異常に気付き、こちらに駆け寄ってきた。

 

 

「ユイ、何か思い出したのか?」

 

 

こちらへ来たケイが、ユイの手を握りながら問いかける。

 

 

「あたし…あたし…っ」

 

 

初め、きょとんとした表情を浮かべていたユイだったが、突如表情を歪め、両手で頭を抱える。

 

 

「あたし、ここにはいなかった…。ずっと、ひとりで…くらいところに…、いた…」

 

 

苦しげな表情のまま言うユイ。だが突然、ユイの顔が仰け反ったかと思うと高い悲鳴が響き渡った。

 

 

「うあ…あ、ああああああ!!!」

 

 

「!?」

 

 

それと同時に、ユイの悲鳴に混じってノイズに似た音が迸る。さらに、ユイの体の所々がノイズが奔ったようにぶれ始める。

 

 

「ユイちゃん!」

 

 

アスナは叫びながら、強くユイの体を抱き締める。そうしなければ、このままユイがどこかへ行ってしまいそうで、怖かった。

 

 

「ママ…パパ…こわいよ…!」

 

 

激しくも短い以上は収まったが、ユイは震えてアスナの胸に顔をうずめる。しかし、そのすぐ後にユイの体からふっ、と力が抜けた。

 

 

「…今のは、何なんだ」

 

 

アスナの耳に、呆然と呟いたケイの声が届いた。しかし、その声に言葉を返すことはできず、ただ未だ苦しげに表情を歪めたままのユイを、見つめる事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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