SAO <少年が歩く道>   作:もう何も辛くない

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ケイ君ヒロイン化ww








第14話 VSアステリオス・ザ・トーラスキング前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無茶だ!あんな化け物を一人でなんて!」

 

 

レイドリーダー、リンドの叫び声がボス部屋中に響き渡る。

 

そしてアスナもまた、正直な所リンドと同じ心境だった。だから、今もアステリオス王のタゲを取り続けるケイの姿に耐え切れず、駆けだそうとした。

 

 

「っ…!」

 

 

「ダメだアスナ!今はこっちを倒すことに集中しろ!」

 

 

アステリオス王の周りを、タゲが移動しないように立ち回りながら時間を稼ぐケイの元へと向かおうとするアスナを、キリトが呼び止める。

 

 

「でも!」

 

 

「どちらにしても、この状況じゃ誰かが通らなければならない路だ…」

 

 

キリトの言い草に、アスナは目を見開く。確かに、あの状況では誰かが時間を稼がなければどうなっていたことか。ケイが飛び出していかなければ、どれだけのプレイヤーが犠牲になっていただろうか。

 

それは、わかる。

 

 

(何で…、何でそんな言い方するのよ…。それじゃまるで…!)

 

 

理解は、できる。だが…、それではまるで、ケイを捨て駒に使っているようではないか。

 

 

「ともかく今はバラン将軍だ!あいつを倒したら、すぐにケイの援護に行くぞ!」

 

 

キリトはそう言うと、バラン将軍を押さえているレジェンドブレイブスに加勢しに行く。アスナは走るキリトの背中から、アステリオス王の猛攻を凌ぎ続けるケイに視線を向ける。

 

アステリオス王の攻撃は、全くケイに命中していない。ケイはアステリオス王の動きから目を逸らすことなく、最小限の動きで、攻撃のギリギリを立ち回って回避し続けている。

 

 

「…っ」

 

 

ケイは自分に言った。キリトとレジェンドブレイブスと一緒に、バラン将軍を倒せと。そうだ、ケイはその時間を稼ぐためにああして一人で戦っている。

 

それなのに…、パートナーである自分が、こんなとこで燻っていていいのだろうか。

 

答えは、否だ。

 

アスナはレイピアを構え、キリトに続いて駆けだしていく。

早く、こいつを倒そう。こいつを倒して…、ケイを─────

 

 

 

 

 

 

 

 

両腕の振り下ろしをバックステップでかわし、足が床に着いた直後に再度ステップで距離をとる。だが、あまり離れないように気は使う。

 

ここまでの戦いで、アステリオス王はブレス攻撃は繰り出してこなかった。つまり、ある程度クロスレンジを保っていれば遠距離攻撃は使ってこないと考えて間違いはないだろう。

 

しかし、距離を詰めすぎるのも危険だ。アステリオス王はバラン将軍やナト大佐と違って細身のせいか、かなり軽い身のこなしを披露してくる。その上で、バラン将軍を越える破壊力を誇る攻撃。一発でもまともに受ければ、HPはどれだけ削られるだろうか。正直、想像もつかない。

 

 

「っつ…!考えてる暇なんてねぇ!」

 

 

頭の中でダメージを予想し、どれだけ耐えられるかを計算していると、移動を続けるケイの頬をアステリオス王の拳が掠る。直後、ケイのHPが二割ほど持っていかれた。掠っただけで、だ。

 

ケイは頭を振って思考を放棄。ただアステリオス王の動きにだけ意識を集中させる。

 

右手の振り下ろしを、前方へとステップし開きすぎていた距離を縮めながら回避。左腕での薙ぎ払いを跳躍して回避、着地したと同時に左へとステップ。今度はアステリオス王の両腕の振り下ろしが先程までケイが立っていた場所を大きく抉る。

 

 

(アスナ達は…)

 

 

ケイは床に突き刺さった両腕をアステリオス王が抜こうとあがいてる隙に、バラン将軍との交戦するアスナ達の方へ視線を向ける。バラン将軍のHPバーは残り三分の二といったところだろうか。もうそろそろ注意域に達するだろう。

 

 

(これなら…、もう少しで援護が期待できるかな)

 

 

ケイは険しい表情を浮かべながらも唇を小さく笑みの形に歪める。

たった一人でボスの周りを立ち回り、さらに一撃愛ければHPのほとんどを持っていかれそうな破壊力を持つ攻撃。そんな化け物を相手にしているというのに、恐怖を全く感じない自分に驚き、思わず笑ってしまった。

 

 

(ま、どうせすぐ来るだろ。あいつらなら)

 

 

これまでMMOをプレイして来たケイだが、こんな感覚は初めてだった。やられるはずがない、すぐに仲間が駆けつけてくれる。何故自分は、こんなに安心感を抱いているのだろう。アステリオス王の背後に回り込みながら、小さく疑問に思った。

 

そしてその感情が、ケイが引き起こす最大のミスへと導く事となる。

 

 

(あいつ…、俺を見失ってる?)

 

 

背後に回り込むと、アステリオス王がきょろきょろと見回してケイの姿を探している様子がわかる。

 

ケイはその様子を見て、足をアステリオス王へと向けて踏み出してしまった。

 

ソードスキルは使わない。それでも、少しでも相手にダメージを与えようという、欲を出してしまった。アステリオス王と向き合った直後、絶対に出さないように胸に刻んだはずの欲が、出てしまった。

 

ケイは跳躍し、アステリオス王に背中に刃を突き立てようと腕を引き絞る。アステリオス王は未だ、ケイの姿を見つけた様子は見られない。

 

 

(もらった…っ!?)

 

 

もうすぐ、剣の攻撃範囲に入ろうとした、その時だった。ケイの視界の端で何かが動き、迫る。

 

 

「なっ…?」

 

 

何が起こったのか、すぐにはわからなかった。だが、ケイは横合いから受けた衝撃で体勢を崩し、床へと落下していく。

 

ケイの視界に入ったのは、ゆらゆらと動くアステリオス王の尾。

 

 

「しまっ…!」

 

 

あの尾にやられたのだと悟ったその時には、アステリオス王はこちらに体を向け、右腕を大きく振りかぶって振り下ろそうとしている。

 

ケイは未だ空中におり、体を自由に動かすことができない。回避は、不可能。

 

 

「ぐぅっ…!」

 

 

アステリオス王の張り手の衝撃がケイの全身を襲い、システムの恩恵で痛みこそ感じないものの、思わず顔を歪めてしまうほどの不快感が全身を奔る。

 

ケイの身体はアステリオス王の張り手によって一気に加速し、床へと叩きつけられる。転がりながら床で何度もバウンドし、ようやく止まった時にはアステリオス王とのクロスレンジからはかなり離れてしまっていた。

 

 

(まず…っ、スタン!?)

 

 

HPはまだ注意域を保っていた。空中で体を翻したことが功を奏したか、クリティカルを避ける事は出来た様だ。だがポーションを飲んでいる暇はない。すぐにアステリオス王との距離を詰めて、ブレス攻撃を防がなければならない。

 

ケイは起き上がろうと両腕両足に力を込めようとするが…、力が入らない。さらにケイの視界の左上には、スタン状態を示すアイコンが浮かんでいた。

 

 

「く…、そっ…」

 

 

ケイは背後に目を向ける。そこには、エギル達が運んでアステリオス王とバラン将軍から距離をとって待機していたプレイヤー達がいた。麻痺からは回復しているものの、まだHPが回復し切っていない。それも、こちらを呆然と見て何が起こったのか飲み込めていない様子だ。

 

 

「すぐにそこから離れろ!ブレスが来るぞぉおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

ケイは背後で腰を下ろすプレイヤー達に向かって叫ぶ。

 

アステリオス王のブレスは貫通型だった。正面にいるプレイヤー達を貫き、その後ろにまで攻撃が及ぶ貫通型。つまり、たとえここでケイがブレスを防ごうとしても、その行為は無駄になる。

 

ケイの叫びを受けて、背後のプレイヤー達が移動を始めるが…遅い。ダメだ。もうアステリオス王はブレスの予備動作を取っている。

 

 

(ここで…、こんな所で終わりかよ…!)

 

 

アステリオス王の胸が大きく膨らみ、次の瞬間、こちらにブレスを吐き出そうと体を前方に倒す。直後、ブレスは自分に命中し、そしてHPは失われ命を散らすことになるだろう。

 

たった二層で、死ぬことになるとは…。絶対にゲームをクリアしてやると意気込んでいたあの時の自分が、まるで道化のように感じて情けない。

 

そして、何よりも…

 

 

(お前と一緒に、クリアしたかったなぁ…)

 

 

この世界に来て、初めて知り合い、会話した人。その人と一緒にこの世界の頂に辿り着けなかったことが、どうしても悔しかった。

 

だが、そんな感情はもう無駄だ。もうすぐ、自分は死ぬ。きっとアスナが、キリトやエギル達がこの世界を打ち破り、現実世界への道を切り開くだろう。

 

 

(だから…、もう、良い)

 

 

うつ伏せで倒れ、それでもなおアステリオス王を睨み付けていたケイの目が、ゆっくりと閉じられる。耳には、キリトやエギルが自分を呼ぶ声が聞こえてくる。だけど…、アスナの声だけは聞こえてこなかった。

 

だが、それでよかった。こうして死ぬことに対して納得できたのに、アスナの声を聞いたら揺らぎそうだったから。こんな情けない自分に、もう構ってほしくなかったから─────

 

アステリオス王の口から、ブレスが吐き出される…

 

 

「はぁあああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

「!?」

 

 

と思われた瞬間、聞こえてきた雄叫びにケイは目を開いた。その声は、まだそう長く付き合ってもいないのに、隣にいるのが当たり前のように錯覚してしまうほど濃い時間を過ごしてきた、相棒の声。

 

 

「あす…な?」

 

 

アスナのリニア―が、アステリオス王の顔面を捉える。アステリオス王の顔は大きく横へと動かされ、それによって吐き出されたブレスは狙いから大きく逸れ、誰一人に命中することなく終わる。

 

 

「…ンモ」

 

 

「っ」

 

 

小さく声を漏らしたアステリオス王が、自身の攻撃の邪魔をしたアスナの姿を捉える。

アスナもまた、レイピアの切っ先をアステリオス王に向けて構える。

 

 

「アスナ!」

 

 

ケイが叫んだと同時、アスナは駆けだした。アステリオス王が交互に振り下ろす腕を掻い潜り、的確にアステリオス王にダメージを与えていく。

 

 

「バカ!すぐ戻れ、アスナ!!」

 

 

まだか…、まだ動かないのか!?

 

未だ自由に動かない体に鞭打って立ち上がろうとするケイ。しかし、スタンは長引き、ケイの身体はまだ動かない。

 

 

「ダメだ!お前のパラメーターじゃ、そいつの攻撃が掠っただけで半分くらい持ってかれちまう!…くそっ、キリト!」

 

 

「わかってる!だが…!」

 

 

何を呼びかけても、アスナは返事を返さない。こちらに目も向けない。堪らず、ケイはキリトに呼びかけるが、キリトはたった今、バラン将軍のディレイ攻撃を受け止めている最中でアスナの援護には向かえない。

 

ケイはその状況に苛立ちを抱く。どうして…、どうして自分は何もできない?

 

 

「リンド!すぐに撤退しろ!」

 

 

「え…あっ…」

 

 

「このままじゃもう無理だ!それにアステリオス王の攻撃パターンも十分見れたはずだ!対策を立てて、もう一度挑戦すればいい!アスナもだ!すぐにそこから離れろ!」

 

 

嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。死なせたくない。傷つかせたくない。傷つくところを、見たくない。

 

ただ、アスナのために────ケイはリンドの方へと振り向いて指示を出す。普段の冷静なケイならば、リンドが自分の言葉を聞くはずがないと考え直した行動を、今のケイはすぐに実行する。

 

リンドは両目を恐怖に染め、震えながらただこの状況を眺めているだけだった。だが、ケイの言葉が耳に入った途端、びくりと体を震わせてこちらに目を向ける。…それしか、しない。

 

リンドは駄目だ。キバオウもリンドと同じだ。あれじゃ碌に状況を判断できない。

 

 

「止めろ…!アスナ、やめ…」

 

 

「私は!」

 

 

ケイが再び叫ぼうとすると、これまで何も言葉を返さなかったアスナが口を開いた。アステリオス王の攻撃を掻い潜りながら、アスナはケイに言葉を向ける。

 

 

「私はあなたのパートナーだから!」

 

 

アスナが口にしてから始まり、何度も言いあった言葉。

 

 

「だから私はあなたを見捨てない!絶対に死なせない!ここに置いて行ったりもしない!」

 

 

「っ…」

 

 

ぶるり、と体が震える。悲しみにも、苦しみにも、それでいて感動にも似た複雑な感情が全身を奔る。自分は…、こんなにも相棒から思われていたのか。

 

しかし、その感情に浸る暇もなかった。ケイはアスナが起こそうとした行動を見て目を見開き、慌てて口を開く。

 

 

「…っ!ダメだアスナ!背後からは攻めるなぁ!!!」

 

 

「え…」

 

 

背後からアステリオス王に迫ろうとするアスナの、呆然とした目がケイの姿を捉える。だが、すでにアスナは跳躍し、アステリオス王の背中に向けてリニア―を放とうとしていた。

 

そのアスナを、アステリオス王の尾が弾き飛ばす。その姿は、つい先程同じ目に遭った自分と重なる。

 

だが、ケイの時とは違った行動を、次の瞬間アステリオス王は見せる。ケイにはその後、空中に浮いている間に追撃を仕掛けていたアステリオス王。だが、アスナの身体はアステリオス王の追撃を受けることなく床に叩き付けられた。

 

その瞬間、アステリオス王が動き出す。まだ立ち上がっていないアスナに迫り、長い腕を振り下ろそうと振りかぶる。

 

 

「っ!!」

 

 

歯を食い縛る。身を挺して自分を助けてくれたアスナを、自分だって見捨てるわけにはいかない。見捨てられない。見捨てたくない。

 

ケイが再び起き上がろうと力を込めた瞬間…、スタンの縛りから解き放たれる。

 

ケイは弾丸のごとく飛び出していく。行先はもちろん、アステリオス王に狙われるアスナ。

 

 

「けいく…」

 

 

自身の前に躍り出たケイの背中を、呆然と見上げるアスナ。その目の前で、ケイは腰を下ろし、曲刀を横に倒して両手で支える。次の瞬間、鞭の様にしなりながら振り下ろされたアステリオス王の腕がケイの曲刀に激突する。

 

 

「ぐっ!?がぁっ…!!」

 

 

両腕だけじゃアステリオス王の力は押さえられない。ケイは刀身の腹に頭を添え、頂点の一点に全身の力を込める。アステリオス王の力に、両腕の力と頭頂部に込めた全身の力で対抗する。

 

 

「ケイ君!ダメよ、そこから離れて!今のあなたのHPじゃ…!」

 

 

背後からかけられるアスナの言葉は、先程ケイがアスナにかけた言葉と全く同じものだった。

 

…そうか。あの時のアスナは、こんな気持ちだったのか。

パートナーを見捨てろ?ふざけるな、そんなの御免だ。見捨ててなるものか。

 

 

「おれは…、おまえの、ぱーと…なーなんだろ?だから…おれは、おまえをみすてないし…、しなせない…。ここにお前を置いて行ったりもしない!」

 

 

途切れ途切れに言いながら、それでも最後はしっかりと言い切ってやる。

 

しかし、このままではまずいのも事実。どれだけ今拮抗しているとしても、まだアステリオス王は────

 

 

「っ!」

 

 

もう一方の腕を残している。

アステリオス王はだらりと下げていたもう片方の腕を振りかぶる。こちらに向かって、振り下ろそうとしているのだ。

 

 

「くっ…そが…!」

 

 

ケイは目だけをアスナの方に向けて、口を開こうとした。

 

アスナに、お前だけでも逃げろと、言おうとした。

 

だが、その言葉は喉奥へと仕舞い込まれることになる。

 

 

「アスナ…?」

 

 

「逃げない。あなたを、一人にさせない」

 

 

アスナが、両手をケイの背に添え、さらにこつんと頭を当ててきた。そのまま密着したまま、アスナはその場から動かない。

 

 

「…バカじゃねぇの」

 

 

「…何とでも言いなさい」

 

 

こちらを見上げながら悪戯っぽく浮かぶアスナの笑顔が目に入る。それを見た瞬間…、アスナと一緒に死ぬのも悪くない、と心の奥で感じてしまう。

 

 

「ホントにいいのか?」

 

 

「あなたこそ、私を置いて逃げなくてもいいの?」

 

 

「そんなことするくらいなら、死んだ方がマシだ」

 

 

「…同感」

 

 

もうすぐ、死神の一撃がやってくるというのに、何も怖くない。さっきも怖かったと言えば嘘だったが…、何でだろう、どうしてこんなに安らかな気持ちになるのだろう。誰かが一緒にいるというのは、こんなに安心するものなのだろうか。

 

 

「ケイぃ!!アスナぁ!!」

 

 

────あぁ…、でも、もし一緒に死んだらキリトを一人残すことになるんだよな…。

 

────そうね…。けど、キリト君なら大丈夫でしょ?エギルさんたちもいるんだし。

 

────…そうだな。

 

 

言葉にすることはなかった。だが、何となく相手の思ってる気持ちがわかる。

互いの気持ちを感じながら、心の中で対話をする。これは、ゲームのシステムでできる何かのスキル?それとも────

 

アステリオス王のもう一方の腕がケイとアスナの横合いから迫る。二人はその場から動くことなく、ただ命が尽きるのを待つのみ。

 

 

「やめろ!もう遅い!」

 

 

「ふざけるな!認めるか!こんなの…、認められるかぁ!」

 

 

二人を助けようと駆けだそうとするキリトの肩を掴んで、エギルが止めている。

 

 

「止めてくださいオルランドさん!もう手遅れです!」

 

 

「離せ!戦友や姫君の盾になって斃れるは騎士の本懐…!」

 

 

レジェンドブレイブスの面々が、ケイとアスナの元へ飛び出そうとするオルランドを押さえている。

 

それでも、キリトとオルランドは拘束を抜け出そうとする。仲間を、戦友を、助けたい一心で駆けだそうとする。

 

 

「俺は、あいつらのパーティーの一員なんだ!!!」

 

 

「真の勇者であるならば!ここで征かんでなんとする!!!」

 

 

エギルの拘束を剥がして、仲間を押し退けて、二人が駆けだしていく。しかし、誰からどう見ても間に合うとは思えない。

 

それでも、仲間の死を認められず、真の勇者でありたい一心で、諦められなかった。

 

 

「キリトさん、オルランドさん。二人は、僕が助けます!」

 

 

だから、この言葉が聞こえてきた時、二人はただただ驚愕で目を見開いた。

二人の視線の先には、ボス部屋の照明に反射して輝く何かがアステリオス王の冠に向かって飛んでいく。

 

そして、光る何かがアステリオス王の冠に当たると…、アステリオス王は大きく怯み、ケイとアスナに向かって繰り出した攻撃を中断させる。さらにケイを襲い、込めていた力を収め、一歩二歩後退していく。

 

 

「え?」

 

 

「何が起こった…?」

 

 

突然止められた攻撃に、ケイもアスナも呆然としていた。死を確信していたのだが…、まだ、生きている事に驚いている様子だった。

 

そんな中、アステリオス王を怯ませた何かは急転換してどこかへと向かっていき…、それは持ち主の手へと戻っていった。

 

 

「あれは…、チャクラム!?」

 

 

アステリオス王を襲い、持ち主の手に戻っていったそれは、円形の刃、チャクラム。つまり…そう、その持ち主は。

 

 

「遅くなりました!討伐隊の最後の一人として…、参戦いたします!」

 

 

人差し指でチャクラムを回しながら、アステリオス王を見据え、ネズハ…いや、ナーザがボス討伐戦、参戦を宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ケイ君から湧き出るヒロイン感と、アスナとネズハから出る主人公感ww

…どうしてこうなった?(お前のせいだ)

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