いろはす・あらかると   作:白猫の左手袋

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せんぱいへの好意と性欲が恥じらいを超越してしまったいろはさんは、ついにあるものを買おうと決意したようです。

※暇つぶしのネタとして書いたものでした。

えっちシーンやキスシーンなどの性描写はありませんが、下ネタ的なものが一部含まれます。苦手な方はご注意ください。


いろはすが買うようです。

 

 いつもの放課後、いつもの生徒会室。

 俺が生徒会室に居ることが()()()になってしまっている現状が、社畜への門を既にくぐってしまっているように思えて怖くて仕方がないが、この入学式へ向けての生徒会手伝いも今月に入って以来すっかり()()()()()()になってしまった。

 いつもどおり一色は頭を悩ませながら、ノートパソコンのキーボードをかたかたして在校生代表挨拶を書いていて、いつもどおり俺は一色に言われるがままに作業を手伝う。

 ……ところで他の役員たちはどうしたんですかねぇ。これも今日に限ったことではないのだが。

 そんないつもどおりの光景の、いつもどおりの空気感の中、もうそろそろ今日の作業も終わろうかという時になって、突如として銃を乱射しはじめたのが、目の前の一色いろはだった。

 

「先輩、援交って興味ありますか?」

 

 ……いや、ある意味これもいつもどおりか。だいたいガソリンをぶん撒いて火を放とうとするのっていつも一色だし。

 

「なにいっちゃってんのこいつ」

「答えてくださいよー。興味ありますか? それとも興味ないんですか?」

 

 どういうわけか目をきらきらと輝かせて、興味津々といった面持ちで俺の顔をじっと見ている。

 

「いや、まず質問の意図がわからないからね? 答えようがないな」

 

 これはアレだな、俺をからかって遊ぼうという魂胆に違いない。

 

 1. 興味あると答える

   →「うっわー、先輩って変態ですね。まさか普段からそういうことしてるんじゃ……」

 2. 興味ないと答える

   →「うっわー、先輩って男なのに興味ないんですか? まさかホモなんじゃ……」

 

 この未来が容易に想像つく。どっちみち下手に答えたら社会的に死ぬ訳だ。ならば、聞かれたからといってたやすく答えるわけにはいかないな。

 さすが俺、失敗を未然に防ぐこの感の良さ! などと自身の危機察知能力に酔っていると、一色はうーんと首を傾げながらなにかを考えているご様子。なんじゃろかと思って見ていると、しばし経ってから口を開いた一色が、より殺傷能力の高いグレネードをころころんと転がしてきた。

 

「わたし、いま援交とか超興味あるんですよねー」

 

 その衝撃的な言葉は、酷く俺を驚かせた。

 一色は確かにビッチだが、そういうことを言うやつだとは思わなかった。俺の見込み違いだったのだろうか……? 内心ちょっと苛立ちはじめている俺がいる。

 

「……お前、身体を売るつもりかよ」

「なに言ってるんですか、違いますよ。わたしが自分を売るわけないじゃないですか~」

「なら、援交に興味あるってどういう意味だよ」

 

 お年ごろの女子が『援交』なんて言ったら、そういう意味合いにしか受け取れないのだが。何が違うと言うのだろうか。

 不審げに視線を送る俺に、一色はくすりと笑いながら、さらに威力の大きい爆弾を炸裂させた。

 

「わたしの身体じゃなくてー……。ほら、先輩って童貞じゃないですか~」

 

 ちょ、一色お前、なに俺が童貞である事実を声に出して言ってくれちゃってんの。

 つか笑うなよ! 童貞をネタにされて笑われるのは童貞風見鶏こと大岡だけで十分なんだよバーカバーカ!

 

「……お、俺が鮮度抜群のさくらんぼであることと援交がどう関係あるんだよ」

「初モノな先輩に値をつけるとしたらいくらくらいなのかなーって」

 

 え、俺が春を売ったらどのくらいの値がつくのかって話なの?

 なにそれ、一銭どころか一厘の値も付かないであろう俺への遠回し的な侮辱かよ。っべー、なんかちょっと傷つくわー。

 だいたいだな、女の子が童貞とか初モノとかそういうことを口にするんじゃありません。

 

「んなもんゼロ円だよ。むしろ逆に請求されるまであるな」

「まあまあそう言わずにですね、ちょっと想像してみてくださいよー。……例えば、例えばですよ? 例えば、わたしが先輩の春を買うとします」

 

 妙に繰り返して念を推した一色は、右手の人差し指を立ててちょいちょいと振りながら、真面目くさった顔で続けた。

 

「えっちはゴム無し・生中○しで、避妊はピル。えっちする日は原則としてわたしが生理の時を除いて毎日で、回数はわたしがやりたいだけやってOKで、わたしがしゃぶりたくなった時はいつでも好きなだけしゃぶってOK。オプションとして、彼氏としてわたしをいっぱい愛してくれる、登下校時には稲毛海岸駅や稲毛駅まで恋人つなぎで送り迎え、放課後の生徒会室で壁ドン頭ポンDキスなどの萌えシチュつき。デートは最低でも週3ですかねー。それと、たまに家とかで大学の受験勉強も教えてくれる感じで。……あ、交際の契約期間は甲乙の書面による同意なき限り無期限を希望します。さてこの場合、1日あたりの値段はいくらくらいになりますか?」

 

 つらつらと並べられた内容が濃すぎる上にやけに具体的すぎて、さすがの俺もドン引きである。

 うわー……。なに、いまの発言だと一色が俺を買いたがっているように聞こえちゃうんですがそれは……。まあ、ありえないけど。

 だいたい、なんで一色はそんな堂々平然と男子に向かってエロ発言してるの? おかしくない? あくまで()()()の話だから、本人的には恥ずかしくもなんともないのかもしれんが、少しは恥じらいを持つべきじゃありませんかね……。

 

「せーんーぱーいー! 答えてくださいよ~」

 

 いつまでも黙り込んでいる俺の態度が気に入らなかったのか、少しむーっと頬を膨らませて一色は言葉を急かしてくる。

 ……しゃあない。なんのつもりか知らんが適当に答えておくか。下手にはぐらかすと余計に面倒なことになりそうだし。

 

「例えその内容でもゼロ円だろうな。なぜなら、俺なんかの青春を買ってくれる人間などこの世には居ないから、値段がつけようがない」

 

 そんな都合良く居るわけがない。居たらとっくに俺はリア充してるっつうの。というかそもそも、確かに俺は専業主夫志望だが、身を売ろうとも買ってもらおうとも思っていない。

 まあ、俺を買うなんて言い出す人間が居たとしたら、そんな物好きの顔を拝んでみたいものだが。

 

「……なら、ほんとにゼロ円でいいんですか?」

「だってお前、一日千円で月額三万円ほどになりますって言ったところで、絶対俺のこと白い目で見るだろ」

 

 うっわーこの人自意識過剰すぎてキモいんですけどーとか言いそう。すごく言いそう。

 

「月額三万であの内容ならむしろ安すぎじゃないですかねー。五万でも喜んで買う人居ますよ、絶対」

「アホか、居ねえよ。……あー、じゃあアレだな。金は要らんから、昼休みの弁当とマッ缶だな」

 

 毎日美味い弁当とマッ缶がついてくるなら、それを代金と考えてもいいだろうな。

 

「なるほど。お弁当とマッ缶ですか。そうですか。……参考になりました」

 

 口元に手を当てて、なにやら思慮深い様子でふむふむと頷いている。

 参考ってなんの参考になったんだ? ほんと、何がなんだかさっぱりわからんな、こいつは。

 

「じゃあ先輩、もし本当に先輩の青春を買うって名乗り出る人が居たとしたら、その人に売ろうって思いますか……? もっと具体的に言うと、さっきの条件で先輩の春を買いますってわたしが本気で言ったとしたら、わたしに売ってくれますか?」

「あー……、なんつうの? 確かに魅力的ではあるかもしれんな。というかむしろ、本気でそんなことを言われたら魅力的すぎて売るわ」

 

 まあ、そんなことが現実として起こることなどありえないわけがないんだが。

 

「っしゃ! ……いま、売るって言いましたね? 言いましたよね!?」

「え、言った……けど」

 

 言質を取るかのようなその問いを疑問に思っていると、一色はブレザーとカーディガンを机の上にばさりと脱ぎ捨てた。そして、スクールシャツのボタンをひとつひとつと外しながらずいと俺のほうへと近づいてきて、薄桃色のブラジャーを露出した状態でぎゅっと抱きついてきた。

 小ぶりながらしっかりと存在を主張する幼げなふくらみ、そのハーフカップらしい布地に収まっていない上部の肌が直に顔へむにむにとやわらかく押し付けられ、先日一色がほくほく顔で買ってきていた新作のフレグランスがふわりと香り、俺の性欲をやたらと刺激する。早い話がぶっちゃけ勃った。

 ……え、ま、待った。なにこれ。待って。

 

「な、なに?」

「買います。本気で買います。……というわけで、さっそく今からお願いします。わたし処女なんで上手くできるかわかりませんけど、先輩と一緒に気持ちよくなれるように頑張るんで、よろしくです」

 

 言いながら、一色は俺の足元にしゃがみ込むと、俺のベルトをカチャカチャと外し、スラックスとトランクスを開はだけ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このシーンは内容が過激であるため、削除されました。

 

               千葉市立総武高等学校 生徒会本部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――乱れた制服姿のまま俺の上からゆっくりと立ち上がると、一色はぺろりと舌を出して、満足そうに蠱惑的な笑顔を見せた。

 

「ごちそうさまでした、先輩。明日からも毎日、いっぱいしましょうね?」

 

 

 

 

 

 おわれ。

 

 

 




もうこれ誰だよという感じですね。ただ書きたかったんです。


次は真面目に短編、3分割となります。

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