かつての英雄に祝福を!   作:山ぶどう

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第14話 その男、鬼畜

僕、ミツルギキョウヤの人生は同年代の男たちにとってはひどく羨ましく思うものであるらしい。

 

ただ、当の本人である僕はそのことにまるで実感がわかない。

確かに容姿はいいと思う。運動神経も悪くないし、成績だっていつも上位に食い込んでいる。

女の子にいつも囲まれていることから推測できるが、きっと僕はイケメンというやつなんだろう。

バレンタインデーには嫌になるくらいチョコをもらうし、告白されたことも両手両足じゃ足りないほどある。

 

しかし、僕は別にそれを望んでいるわけでもないんだ。自分が恵まれた境遇にいるなんて考えたこともない。

 

嫉妬に駆られた男子には嫌われ、有らぬ誤解を受け、同性で僕と仲良くしてくれる人は皆無だった。

 

学校で友達と呼べる人は一人もいない。

 

教室ではいつも可愛らしい女の子達がしきりに僕に話しかけてくるが、正直女子というのは苦手なんだ。

平等に接していただけなのにいつの間にか複数の女の子が僕を所有物扱いして喧嘩をはじめるし、

クリスマスには家で映画を見ながらのんびりとしている僕の元に女の子達が勝手に押し寄せ、険悪なムードを作り出す。

 

第一、映画や漫画のように女の子を見てときめいた事なんて僕は一度もないんだ。

 

それなら男子の友人がいたほうが100倍楽しいことだろう。

 

周りで好意を寄せてくる女子が全員男子の友人だったらと無意味な妄想に浸ってしまうくらい僕は男子との交流に飢えていた。

友人を作る努力もしてきたつもりだ。だが、いくら僕が友好的に話しかけても相手は僕の目を気まずそうに逸らすだけだった。

恐らく、あの根も葉もない噂を信じてしまっているのだろう・・・

 

そう、あれは昔、僕に友達がいた頃、男子みんなでいやらしい本を鑑賞していたことだった。

友人達がしきりに「このオッパイがたまらん」「いやいやこの太ももの白さが・・」「舐め回したい」「踏まれたい」と気持ち悪い顔で感想を言い合う中、僕だけが真顔で違う意見を言った。

 

「そうかな?これだったらケンちゃんの胸板の方が逞しくて興奮すると思うけど・・・」

 

それを言った瞬間、空気が凍った。

 

ちなみにケンちゃんというのは当時の僕の一番の親友で野球部に所属していた細マッチョである。

 

もちろんその場にもいて、信じられないといった顔で唖然としていた。

 

「も、もしかしてお前、ホモじゃないよな?・・・」

 

 

わけがわからないよ。

 

別に恋愛対象として見ていたわけでもないし、友人の胸板について素直な感想を述べただけなのに。

何に性的興奮を覚えるかなんて個人の自由なのにそれを、ホモなどと呼んで貶めるなんて。

 

僕は憤って持ち前の運動神経で友人たちのズボンを剥ぎ取り、脱がせまくった。

普段なら他愛のない冗談だと受け入れてくれるのに必死で逃げ惑う彼らが悲しかった。

その悲しみのまま、彼らのパンツにまで手をかけたのは、反省している。

 

そうして、その日から僕はホモのレッテルを貼られてしまったのだ。

 

あの時、自分の意見を曲げて、興味のない女性の乳房でも褒めておけば、今でも僕らは親友でいられたのだろうか?

 

そうして僕の走馬灯は終わった。

 

意識が暗くなり、暴れまわっていた心臓の音が徐々に静かになっていく・・・・・

 

僕は、トラックに跳ねられたのだ。

 

目の前の女性が落とした大切なものを守るため、赤信号の車道に飛び出してしまった。

 

無意識の行動だった。純粋な善意だった。それがトラックに轢かれてボロボロになってしまってはこの目の前の不衛生そうなボサボサ頭の女性はひどく悲しむだろうと想像できたから・・・・

「ありがとう・・・」

女性が涙ながらに言う。手には大切そうにそれを抱えている。

僕の血で汚れてしまわないように咄嗟に彼女の方へ放り投げたのだ。

「いえ、無事でよかったです・・・・」

 

そう言って・・・僕は意識を手放した。

 

暗転する世界で、僕は思う。

 

少しだけでもその中身を見てみたかった・・・・そういうものも、この残酷な世の中にはあったんだな・・・

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

「で?ホモじゃないって言うなら、あなたはなんでBL本を守るために命をかけたんですかぁ?

私見ていたんだからね?獲物を狙う鷹のような目で落ちているBL本に突進していくあなたを・・・」

 

アクアが嗜虐心たっぷりの顔でせせら笑う。目の前で脂汗をかくホモ野郎に。

 

 

「ち、違う!僕はあんな低俗な本を守るために命を懸けたんじゃない!目の前の女性が悲しむのを一人の紳士として見過ごせなくてつい、体が勝手に・・・・」

 

「嘘おっしゃい!なぁにが低俗よ白々しい!あなたこっちの世界に持っていくものに魔剣グラムとBL本を天秤に掛けて散々迷っていたじゃない!?というか絶対あなた私がいなかったらBL本の方を持ってきていたでしょ?正直に言ってみなさいよ」

 

「うっ・・・ち、違う!本当に僕はホモじゃないんです!信じてください女神さま!」

 

整った端正な顔を崩して叫ぶホモ野郎。

ああ、下には下がいるもんだな・・・間抜けだがトラクターでショック死した俺の方がマシに思える。

 

「キョウヤー、BL本ってなんなの?」

 

「きっと、魔剣グラムに並ぶ魔道書かなにかだよ」

 

お仲間二人は純真な瞳でミツルギを信じている。

 

「BL本っていうのは・・・」

 

「え!?そんなものが・・・あちらの世界には・・・」

 

「うー・・正直、私の趣味ではないな・・・」

 

なぜか知っている師匠がめぐみんとダクネスに耳打ちをして教えている。

忍者の世界にもあるの?BL本・・・

 

「ゴホン・・・そんなことより、女神さまはどうしてこんなところに?この世界に勇者を派遣するお仕事はどうしたんですか?」

 

「あー・・まぁ、話せば長くなるんですけどー・・・ああダメだ、メンドイ・・カズマバトンタッチ・・・」

 

テンションが下がってしまったせいか、アクアは急に眠そうにして俺の腕を引っ張る。

ええー・・・俺が説明するのー・・・

 

「ん?何だ君は?女神さまと一体どういう関係なんだ?」

 

しかたない・・・ちゃちゃっと、説明しますか。さて、何から話そうか・・・

 

俺も死んだ状況から話すのが礼儀だろうか?

 

などと考えながら何を話すかまとめていたら、あちらの女冒険者二人がなぜか俺をキツイ目で見ていることに気づく。

 

「・・・三人の美少女と老人を引き連れた冒険者・・・服装も噂と一致する・・」

 

「え!?まさか、この男があの噂の!?」

 

ホモの仲間達がなにやらこちらを見てヒソヒソと話し合っている。

 

そしてこちらを指差していう。

 

「「“ヒモのカズマ”!!」」

 

・・・・・・は?・・・なんだって?・・・

 

「まさか、君が!?見目麗しい女性たちに肉体労働を強制して自分は遊び呆けているという街で噂のヒモ男!」

 

正義感に満ち溢れた顔でこちらを睨みつけてくるミツルギ。

 

・・・ちょっとその噂の出処を教えてくださいませんかねぇ・・・・

・・・・明日にでも影分身でリンチを仕掛けてやる!

 

「ま、まさか女神様も彼の毒牙に!?そ、それにこの美しい女性達も・・・」

 

邪推しすぎですよホモ野郎が。この俺がそんな外道に見えるか?

 

 

「ちょっと!変なこと言わないで!」

 

ミツルギの言動に耐え兼ねたように怒鳴りつけるアクア。そうだ、言ってやってくれ!

 

「確かにこの男の策略で美しい女神である私が地上に身を落とすハメになったけど、今ではとても楽しくやっているの!今回のことだって私が望んでやっていることなんだから、あなたがとやかく言うことじゃないわ!」

 

うん、気持ちは嬉しいけどもう少し言い方がないかな?アクアさん・・・

 

「そうですよ!それにカズマはこの一ヶ月間不甲斐ない自分を変えようと必死で頑張ってきたんです!

その努力を踏み躙ろうというならこの私の爆裂魔法が火を吹きますよ!」

 

「ああ!カズマは今まで本当に頑張ってきたんだ!この男の生活費を稼ぐために身を粉にして働いてきたのは確かだが、私達はただ頑張るカズマの役に立ちたかったんだ!」

 

うん、超嬉しいよ・・・その気持ちは超嬉しいんだけどね・・・・

 

でも、その言い方だと俺が本当に女頼りのダメ男みたいじゃない・・・

 

御剣が納得いかなそうな顔をして呟く。

 

「努力っと言っても・・・噂では筋肉隆々の妙な男たちと“楽しそうに鬼ごっこ”をして遊んでいたと聞いたのですが・・・」

 

あ・・・今、ちょっと、キレそうになった・・・・

 

誰が・・・楽しそうに・・・遊んでいたって?・・・

 

「だいたい、努力って?何をしていたというのよ?」

 

女戦士が軽蔑した視線をこちらに向けてくる。うっわ、超生意気。

 

「カズマは強くなるために特訓していたのです!決して遊んでいたわけではありません!」

 

めぐみんの今にも爆裂魔法を放ちそうな怒鳴り声に冷や汗をかくが、女戦士はそうとも知らずに生意気な顔でせせら笑う。

 

「特訓ねぇ・・・随分古臭いやり方でステータスの上昇に勤しんでいるのね・・普通にレベルを上げればいいのに」

 

「最弱職の冒険者らしいし、きっとレベルを上げるためのモンスターを倒す地力がなかったんだよ。誰もがキョウヤさんみたいに最初から活躍できるわけじゃないし。」

 

向こうの二人の発言にめぐみんが歯を食いしばり顔を真っ赤にして爆裂魔法の詠唱を始める。

 

俺はそんなめぐみんの手を強く握り、彼女の思い遣りに満ちた攻撃魔法を止める。

 

ダクネスとアクアも怖い目で三人を睨みつけている。

 

仲間はちゃんと俺を理解してくれている。それだけで爆発しそうな俺の心は落ち着いていく。

 

落ち着け俺。今日は楽しいバーベキュー。無闇に争いを起こすべきじゃない・・・

 

「カエル相手にいつもパーティの女性たちを危険に晒していたことも聞いたよ?そんな君が女神様たちを守り切ることができるのか僕は不安だ。よもや、上位職の彼女達に頼りきっているわけではないだろうね?」

 

なんだこいつ・・・なんでろくに俺達のことを知りもしないやつにここまで言われないといけないんだ?

 

「なんなら、僕が稽古を付けてあげようか?もし僕に一撃でも与えることができたなら君のことは認めよう。

ただし、もし僕にカスリ傷一つ負わせることもできないというのなら、君はこのパーティから離れるべきだ。」

 

なんで、そんなに、上から目線なんだよ!何様だてめぇ!なんで無関係のお前に認めてもらわないといけない展開になってんだ!頭湧いてんのか!

 

女を喰いものにするダメ男を改心させる勇者様を気取ってんのか!?

そういう妄想に取り憑かれた中二野郎なのか?

 

あームカつく・・・対人戦に使うことを師匠に禁じられてる術を思わず解放してしまいたくなる。

 

く・・ダメだ、我慢だ・・・耐え忍ぶものこそが真の忍者だと師匠も言っていたし、ここは弟子として俺も・・・・

 

「ヤッちまえってばよ!カズマ!!」

 

あれー?師匠?・・・いいんですか?

 

「ここで引き下がっちまったら、あいつらの中でお前は貧弱なヒモ男で終わっちまうってばよ。

何も知らねぇ奴にあの修行の日々をただのお遊びだと決めつけられることは有ってはならねぇ。

耐え忍ぶことも大事だけど、誇りを守るためには耐えてはイケない時もある。それが今だ。

カズマの強さを見せてやれ。・・・・くれぐれも殺さないようにな・・・」

 

師匠・・・!――――――――――ありがとうございます・・・・!

 

 

「受けてやるよ、お前の提案。ただし、一撃を与えればいいとか人を舐めくさったルールは無しだ!相手が気絶するか降参を宣言するまでとことんやる!それでいいな・・・・?」

 

俺がそう言うと、ミツルギはため息をつき、ヤレヤレと肩をすくめて非常に腹の立つリアクションをする。

こいつのこれって素なの?挑発しているわけでもなさそうだし、素でこれだったらこいつ絶対友達がいないな。

 

「君がいいならそのルールで良しとしよう。ただ、君の勝機は万に一つも無くなるが本当にいいのかい?」」

 

「てめぇは何を根拠に勝機がどうだのと口にしてんだ!いい加減そのケツの穴に割り箸でも突っ込むぞホモ野郎!その驕りきった面を必ず歪めてやるから覚悟しとけや!」

 

舌を出して中指を突き立てる俺にミツルギは顔を引きつらせ肩から魔剣を抜き、構える。

 

そして「僕が剣の手ほどきをしてあげよう」とどこまでも上から目線で告げる。

 

「たたんじゃいなさい!カズマ!例え勢い余って殺っちゃっても私が蘇生させてあげるから遠慮はいらないわ!」

 

「信じてますよカズマ!あのいけ好かないホモ野郎を亡き者にしちゃってください!」

 

「・・・カズマのことだ、あのような言動を繰り返した無礼な男に想像を絶する恥辱を与えることだろう・・!

楽しみだ・・・!私はとても楽しみだぞカズマ!!騎士としてカズマの鬼畜の所業を目に焼き付けておくから頑張ってくれ!」

 

仲間たちの声援が俺に戦いの活力を与える。

 

「キョウヤー!最弱の冒険者なんて三秒で沈めちゃえー!」

 

「ちゃんと、手加減してあげてくださいねー!」

 

敵側の声援が俺の殺意を増幅させる。

 

「相手はソードマスターらしいけど大丈夫かなぁ・・・」

 

「怪我をしなければいいのですけど・・・」

 

「ぐぅ~~~~~」

 

いきなりの決闘騒ぎに置いてけぼりをくらった影の薄い者たち。というかクラマはいつまで寝ているの?

 

余裕そうな顔で剣を構えるミツルギ。正直油断しすぎて隙だらけなんだよなぁ。

 

「さぁ、どこからでもかかってきたまえ、大丈夫だ、ちゃんと怪我をさせないように―――」

 

「じゃ、遠慮なく!」

 

腰の忍具入れから素早くクナイを取り出し、容赦なく投擲する。

 

「!?」

 

突然、高速で飛来してくるクナイにミツルギは反応できず、頬を掠め、浅い傷を付ける。

 

そして、そのままミツルギの遥か後方に飛んでいくかのように思われたクナイは“ボン”と音を立て本来の姿を現した。俺の影分身だ。背後を取り、勢いよくミツルギの背中を蹴りつける。

たまらず前のめりで倒れこむミツルギの顔面に前から走り込んできた俺の膝蹴りが襲う。鼻血が出たのか鮮血が空中を舞う。よろつきながらも剣を離さないミツルギを見て油断することなく忍具袋を漁り、煙玉を取り出す。

直ぐさまそれを炸裂させると同時に影分身で取り囲み、集団で襲いかかった。

 

白い煙の中で暴力の鈍い音が絶え間なく響く。

 

その煙が晴れた頃にはボコボコのミツルギとそれを踏みつけている俺の集団の姿があった。

 

それはまるでいけ好かないエリートお坊ちゃまをリンチにかけているヤンキー達のような図だった。

 

「うん、見事だってばよ。変化と影分身の応用技で奇襲を仕掛けて、隙を作り煙玉で相手の視界を奪った上での集団リンチ。理にかなった戦法だってばよ」

 

師匠が嬉しそうに頷き、褒めてくれる。

 

「え、もう、終わったの?」

 

「秒殺でしたね・・・この有様であの人はどうしてあんなにも偉そうにしていたんでしょうね?」

 

「煙がなければ・・・・もう少し楽しめたのに・・・・」

 

仲間たちは微妙そうな顔だ。まぁ見ていて楽しめる戦いではなかったかな?

 

「つ、つっよー・・・あれぇ?一ヶ月前はカエルに苦戦してたって話じゃなかったっけ・・・」

 

「修行ってすごいんですね・・・10以上のレベル差があるのに・・・」

 

「ふわ~~~~~よく寝た・・・・ん?何事だ?」

 

唖然としているウィズ&クリス。その膝に抱えられたクラマはようやくお目覚めのようだ。

 

「「~~~~~~~~っっ・・」」

 

あちらのお仲間二人はワナワナと肩を震わせている。今にでも爆発しそうだ。

 

足元のミツルギがうめき声を上げる。それを聞きつけた彼女たちは果敢に俺の方に向かってくる。

 

「卑怯者!!卑怯者卑怯者卑怯者~~~!正々堂々と戦いなさいよ!この卑怯者!!」

 

「卑劣!外道!!ゲスの極み!!あんな勝ち方をして恥ずかしくないんですか!?」

 

「そんなの全然恥ずかしくないよ~。俺が勝ってコイツが負けた。それが全てだろ?」

 

「黙れ外道!この私達がキョウヤに変わって天誅を下してやる!」

 

「キョウヤさんの敵は絶対に取る!覚悟しなさい!」

 

武器を構える二人。めんどくさいな~・・・俺は全然そんなつもりないんだけどな~・・

 

でも相手は二人もいるし最弱職の冒険者として身を守るためにはしょうがないよな~~・・

 

「武器を構えたということは覚悟は出来ているな?」

 

影分身達が一斉に右手のひらを二人に向ける。気圧されたようにジリジリと二人は後ずさるが、その目は依然として怒りに燃えている。

 

「ふ、ふん、最弱職がいくらいたところで・・・・調子にのるなよ!油断をしなければアンタなんて・・・!」

 

「これでも、キョウヤさんの仲間としてレベル20はあるんです!舐めないでください!」

 

ああ、やりたくないな~。男女平等を掲げているとはいえ心苦しいなぁ~。

 

でも普通に殴るとかよりはマシだよな?うん、しょうがないしょうがない。

 

「この技の初の犠牲者になれることを誇りに思うがいい・・・・やれ!我が配下たちよ!」

 

「「「「「「ゲヘヘヘヘ・・パーフェクト・スティール!!!」」」」」」

 

眩い光が辺りを包み込む。

 

それは全てを許す女神の祝福のように神聖な光。

 

それが収まった時、俺は全てを手に入れていた

 

・・・・・・・彼女達の衣服を・・・・・

 

「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!!!!」」

 

もちろん全裸でスッポンポンだ。

 

その場で身を隠すように肩を抱いてしゃがみこみ、可愛らしい悲鳴を上げる少女達。

 

スティールを教えてもらった時に真っ先に思いついた影分身との複合技。

 

いつか試してみたいとは思っていたがまさかこんなに早く使うことができるとは・・・・

 

俺って本当に運がいいな。

 

涙目でこちらを睨みつけてくる美少女二人を見て自分の口角が自然と上がっていることに気づく。

 

あれ?おかしいな何だろうこの胸の奥から湧いてくる愉悦な感情・・・

 

「クックックック・・・・」

 

「うわぁ、悪そうな顔してるわよこの男・・・・アークプリーストとして浄化出来てしまえそうなくらい邪悪さに満ちているわ・・・・」

 

「ああ、なんて・・なんて恐ろしい技ですか!ナル爺とクリスはこの男にとんでもないスキルを伝授してしまいましたね・・・今後はカズマを本気で怒らせないように気をつけないと・・全て剥ぎ取られる・・」

 

 

アクアとめぐみんが何やら言っているが今はそれどころじゃない。

 

「あっれぇ?どうやら余分な物を盗っちまったみたいだなぁ~。俺はこんなばっちいもんいらないんだけどなぁ。お前らは欲しいのか?ん?欲しいよなぁ?そぉ~ら!お仲間のミツルギキョウヤのパンツだぞ!恵んでやるからありがたく思え!」

 

そう言って黒のボクサーパンツを二人に投げかける。恥辱にまみれた顔で男のパンツを取り合う浅ましい女たちを眺めながら、川原で冷やしたクリムゾンビアを一杯やる。美味ぇ。

 

「な、なんたる鬼畜の所業!私の目に狂いはなかった!!カズマは真の鬼畜としていつか必ず覚醒すると思っていたんだ!まさかこれほどとは・・・・くそっ羨ましいな、あの二人。今から私も混ざれないだろうか?」

 

ダクネスが恍惚とした顔でだらしなくヨダレまで垂らしている。

 

「私はこの外道にとんでもないものを教えてしまったみたいだね・・・・」

 

自らの過ちを悔いるかのように重々しく呟くクリス。

 

「一眠りしたら小腹が減ったな・・・何かないのか?」

 

「あ、焼き芋の残りなら・・・」

 

ウィズ&クラマは仲良く焼き芋を頬張っている。

 

さて、もうそろそろ本当に帰る準備をするか・・・・

 

とりあえず散らかっている酒瓶を片付けようとすると隣に師匠がやって来て俺の背中をポンポンと軽く叩く。

 

「カズマよう」

 

「はい?」

 

「油断しすぎだってばよ」

 

「え?」

 

次の瞬間、ミツルギを囲んでいた影分身が一斉に切り伏せられた。

 

「ハァハァ・・・まだ・・勝負は・・・終わっていないぞ!」

 

いつの間にかミツルギが立ち上がり、魔剣を構えてこちらを睨みつけていた。

 

 

 

 

 

 

 




この作品のミツルギは結構、壊変しております。

原作とはだいぶ違うかもしれません。

次回は慢心を無くした本気モードのミツルギとのガチバトルです。

酷いことになりますw

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