東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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お久しぶりです。キョウキでございます。

遅れて申し訳ありません。
あと、今回。アホみたいに話が長いです。すみません。

それでは52ページ目、始まりでございます。



52ページ目 説得 その①

「地霊殿」

 

その日は珍しく、館住人全員がとても慌ただしく動いていた。

それもそのはず。地霊殿に襲撃をかけた岩石の術。

そして、地上で起きたと思われる巨大な地響きと地震で壊れた家具の修理。

それの後片付けがまだ済んでいない。

 

さとり「ほら!早く済ませるわよ!」

そう言って、私は手を鳴らしながらその片づけを監督しつつ手伝っていた。

 

フェアリーゾンビA「さとり様-・・・・」

さとり「・・・そうね。捨てた岩は、ここから少し遠いけど・・・。

    あの岩の爆心地に捨て置きなさい。あそこなら何の問題も無いわ」

 

フェアリーゾンビB「さとり様」

さとり「ああ、終わったのね?ならお燐の方を手伝ってあげて。

    確か、階段の付近にいるわ」

 

フェアリーゾンビC「さと」

さとり「道具はどこかって?それは分からないわ。良く探した?」

 

こいし「さとりさまー!」

さとり「こいし。遊ぶなら外へ行くか、本を読んでいなさい」

 

・・・と、このように数々の指示を出しつつ、私は動き回っていた。

しかし、このように作業を続けて約2時間。

妖怪の体とはいえ、戦闘後の病み上がり。かなり堪えていた。

 

さとり「はぁ・・そろそろ休みたいけど、私だけ休むというのもね・・。

    それに、こういう時に限って新しく仕事が来るのよねー」

そう言ってすぐのことだった。

 

 

 

目の前の空間が立てに裂けたかと思えば、赤黒い空間と無数の目が展開され。

さらにそこから金色の尾を称える妖狐が歩みだしてきた。

 

藍「・・お久しぶりですね。さて、突然で申し訳ないのですが」

さとり「『異変の中心である巨神を捕えたからその翻訳に来てほしい』。

    そういうことね?いいわ、少し待っていなさい」

 

そう言うと、藍は一礼をして「では、外で待っています」。そう言って

スキマを閉じてどこかへと消えて行った。

 

さとり「・・主みたいに、不意打ちのように現れないところに性格の差が出てるわね」

そう呟き、手を二回大きく鳴らす。

 

そうすると、一瞬にして場が静まり。全ての視線が私へ向けられる。

そのことを確認すると

さとり「今、賢者の使者から仕事の依頼が来ました。

    しばらくは、ここを留守にします。その際、現場の監督はお燐に任せるわ」

お燐「あ、はい!任せておいてください!」

お空「私も何とか頑張るよー」

 

 

私は、張り切るペット二匹に微笑みを返し、地霊殿の外へと歩みだした。

 

「地上~妖怪の山~」

 

この日はいつも通りに、騒がしく妖怪達が集まっていた。

しかし、いつも通りでないことが一つ。

 

普段ならば、妖怪が集まる事=宴会なのでそれぞれが酒を持参して

既にわいわいやっている。

 

だが、今日は酒を持って来ている妖怪など一匹もいない。

それどころか、全ての妖怪がかなり重々しい雰囲気で黙りこくっていた。

 

幻想郷創設以来、ここまで妖怪が緊張したことなどあっただろうか。

 

そして、その「中心」。

御柱と鉄の輪で拘束し、結界に寄りかかるようにして何とか立たせた

大陸ポケモン、レジギガスが圧倒的な威圧感と殺気をそのボロボロの巨体で

存分に発し、辺りを飲み込んでいた。

 

その泡を吹き出しそうになるほどの緊張感の中。

彼女らもまた、独特の緊張感を纏いながら「準備」を始めていた。

 

紫「いいかしら?椛・栄・微意・椎。そして文の五人が、さとりを通して説得を試みる。

  それで、説得と交渉が出来たら封印を解いてボールに入れる。

  だけど、説得に失敗したら・・・」

 

霊夢「私と紫、そして魔理沙・早苗でそれぞれ封印をかける。

   あとは、もう。テキトーに神社なり建てて奉って結界を創る。

   これでもう・・・えーと・・・レジ、何とかは動けなくなる」

そう言いつつ、霊夢は大体の治療を済ませ。

先程神社から降りてきた早苗を見やる。

 

早苗「あ、あはは・・・正直言ってあんまり期待してほしくないです・・・」

霊夢「期待なんてしてないわよ。ただ、できるだけ封印にかかる人出が欲しかっただけ」

 

霊夢は、早苗のジトーとした目に気付いていないふりをしつつ、最後の確認を取った。

 

 

霊夢「さてと・・・大体の準備も済んだし。頭数も十分。

   方針は、説得か封印。他に提案も無いわね?」

 

萃香「大丈夫だ、問題ない」ドヤァ

魔理沙「お前は何もしないだろう・・・。

    まぁ、私も問題ないな」

 

レミリア「私は封印魔法は使えないから傍観者に徹するわ。

     まぁ、なんかあったらグングニル程度なら投げてあげるわ」

 

紫「大丈夫よ、問題ないわ」ドヤァ

魔理沙「最近ドヤ顔が流行っているのか?」

 

・・・と、このように全くもって緊張感が無いコントをしているように見えている彼女らだが。

 

紫は持っている扇子の裏に数枚のスペルカードを忍ばせ。

萃香は静かながらも肉体に適度のストレスをかけ万全の戦闘態勢。

レミリアも会話には参加しつつもその視線は常にレジギガスを捕えていた。

 

そして。早苗はもちろん、魔理沙。そして霊夢でさえも隠してはいたが明らかに緊張を持っていた。

 

 

しかし、この場において。

最も緊張をしているのが誰かと聞かれれば・・・。

 

「「「「「・・・・・・・」」」」」

巨神を前に立つ天狗五人。

文、椛、栄、微意、椎。

 

彼女らの内、既に3人は緊張のあまり短い気絶を幾度か繰り返していた。

 

なにせ。もし説得に失敗すれば・・・。

 

手負いとはいえ、初戦とは桁違いの戦闘力を持った巨椀が襲い掛かる事になる・・・かもしれない。

 

あくまで、もしも。たられば。想像の範囲内の話だが・・・。

それが現実になる可能性はゼロではない。彼女らはかろうじて立っていた。

 

椛「・・・上手く、やれるでしょうか・・・」

文「やれるかどうかじゃなく、やるの」

 

栄「でも・・・不安が・・」

微意「こ、ここまで来たんだもの・・・逃げないわよ」

椎「・・・・・・・」

 

不安。責任。恐怖。緊張。

様々な負荷が心にかかる。

 

文はその中。大胆不敵に首を回しながら

文「兎に角、やるの。大丈夫よ。相手は全くもって言葉が通じない怪物じゃない。

  そう考えれば、物理的に倒すよりは全然楽でしょ?

  話して、分かりあって、無事に帰るだけの簡単なお仕事。時給2800円」

椛「生命保険なし。命の保証なし。だけどやりがいだけで成り立ってるような仕事ですね」

栄「時給を十倍にしてください・・・」

微意「エリ・エリ・レマ・サバクタニ・・・」

椎「あんたキリシタンじゃないでしょ・・・・」

 

緊張をほぐそうと、文が始めたジョークを繋ぎ始めたときだった。

 

 

藍「お待たせしました。さとり様です」

 

その言葉と共に欄がスキマから現れ、それと共にさとりが姿を見せた。

 

 

妖怪A(あれが古明地 さとりか・・・初めて見た)

妖怪B(嫌われ者のトップ・・・いけね、心を読むんだったな・・)

妖怪C(心が読めるんだってな。気持ち悪いぜ・・・)

妖怪D(早く地底に返ってくれた方がありがたいねぇ)

妖怪E(あとでサイン貰おう・・・)

妖怪F(そんな能力で大丈夫か?)

 

・・・封印場所に到着した途端。多くの妖怪がこちらに意識を向けてくる。

その妖怪一匹一匹の精神がよく見え、聞こえてくる。

 

そのほとんどが嫌悪と畏怖。若干おかしなモノも混じってるように聞えたが

それは多分、病み上がりによる幻聴だろう。

 

紫「待っていたわ」

さとり「待たせてしまい、申し訳ありません。

    早速取り掛かりますが・・・準備はもう済んでいるようですね」

 

紫「話が早くて助かるわ。じゃあ、お願いね・・・」

 

私は、その言葉を聞いてゆっくりと頷き。

巨神の前、五人の天狗の下へ近づいた。

 

文「あや、貴女が・・・」

さとり「古明地 さとりよ・・・あなたはは射命丸 文ね。

    そして白狼天狗の椛、栄、微意、椎ね。よろしく」

私はそう言って、早速巨神の前に歩み出た。

 

正直言って、皆がそんなに恐怖するほどの印象を受けない。

まぁ、実際に動いている姿を見たわけでもないし。

地底への被害も甚大と言う程ではなかった。

 

しかし、この巨体から発される威圧感は末恐ろしいものを感じさせた。

 

さとり「とりあえず。今、彼?でいいのかしら・・・。

    兎に角、彼がちゃんと会話に応じることができる状態か確認します」

紫「じゃ、お願いね」

 

私は、胸のあたりにぶら下がる第三の目(サードアイ)を彼に向け。

その心の表情と声を読み取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・帰る。早く、帰らねば。

 

こんなところで、こんな者達と戯れる暇はない。

 

ここは、島の奥地?とにかく、私は囚われている。

 

敗北した。人形を使い、情勢や動向を探った。

 

一度は敗れたが、今回は本気で相手をした。

 

しかし、負けた。何故?何故?何故?何故?

 

何故、このような者達に負けるのだ。

 

 

・・・・・・そう言えば、あの「わるいおうさま」・・・。

 

その親族の姿が見えない。どういうことだ・・・?

 

それに・・・波の音が聞こえない?島国だぞ、あり得ない。

 

私は負けた。失敗したのか?あれから何年経った?ここはどこなのだ?

 

こいつらは私を取り囲んで、どうする気なのだ?

 

今一度相手をすればいいのか?

 

この少女は・・・何を見ているのだ・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとり「・・・少し混乱はしていますが、落ち着いた状態ですね。

    ただ、こちらの数が多いせいで高い警戒状態です。

    ・・・そして、疑問に捕われています」

私は、見たままの彼の心を簡単に説明・解説した。

 

紫「ふぅん・・・もう少し、詳しく教えてくれないかしら?

  意味が分からない単語でも、何でも。聞いたこと全てを答えて頂戴」

 

さとり「分かりました・・・まず・・・」

 

 

~読心妖怪説明中~

 

 

紫「『わるいおうさま』・・・そして、島国の山・・・。

  彼の疑問も気になるけど・・・どこかで見た、のよね・・・藍」

藍「はい。なんでしょうか?」

 

 

紫「今すぐ、私がここ最近読書をした場所を洗いざらい調べてきなさい。

  それと、今ここにいる妖怪達を最低限何処かへどかせておきなさい。

  1時間以内よ。必要なら、私のポケモンを使ってもいいし。

  財力と腕力で、そこら辺の妖怪を手伝わせることも許可するわ」

 

紫がそう言った瞬間、藍は流石に戸惑ったような仕草を見せたが。

場の全員に一礼をして、周りを囲む妖怪たちの下へ歩みだした。

 

 

それから数分後には、妖怪達はほとんど蜘蛛の子を散らすように何処かへ行っていた。

残りの妖怪は、恐怖で動くことができないというような風情だった。

まがいなりにも、最強の妖獣ということだけはあるだろう。

 

それから10分後。藍は戻ってきた。妖怪に手伝わせることも無く。一人で。

藍の手には、1冊の本が握られていた。

 

紫「ひゅぅ・・・本気出したわねー・・・。

  まぁいいわ。当分休んでおいて・・・」

藍「はぁ・・・ですが、仮にこの巨神が暴れたとき。 

  誰が紫様の身を・・・むぐ」

 

藍はそう言った。しかし、その言葉の続きは紫の手で口を抑えられたため出ることはなかった。

 

紫「・・私が負けるはずがないでしょう?」

その言葉だけで十分だった。

 

藍は、それ以上何を言うでもなく。

ただ大きく一礼をして、スキマの闇へと消えて行った。

 

紫「さてさて・・・うん・・・うん・・・」

 

霊夢「何を読んでるのかしら・・・」

魔理沙「小説・・なわけないか・・・」

レミリア「小説なら、『ああ、無情』がおススメよ」

早苗「私は『吾輩は猫である』ですかねー。あ、『羅生門』もいいですよね!」

萃香「何の話じゃい」

 

珍しく萃香がツッコミを入れたところで、その会話はストップした。

 

 

周りの妖怪がいなくなったことと。

説得の希望が見えてきたこと。

そして、「10分」という時間の間。

 

さとりからレジギガスの疑問や気持ちを十分に伝えられたことが。

彼女たちの張り詰めた緊張を少し解いたのだった。

 

そして、それは紫がさとりに密かに頼んでおいたことでもあった。

 

 

さとり(こちらが大きく緊張をしていれば、相手にも何かしらの影響を与えてしまう。

    それを最低限にしたい・・・それはもっともなんだろうけど・・・)

 

霊夢「私、『シャーロックホームズ』が好きだったりするなぁ」

魔理沙「『ゴーストハント』も面白いぜ。幽霊退治の参考になる」

早苗「『舞姫』も面白いんですよ!あ、それとそれと・・・」

レミリア「『罪と罰』もいいわよ。どれだけ人間が愚かか分かるわ」

萃香「もう本の話はやめにしないかえ?・・・さっきから凄い見られているぞ・・・」

 

萃香の言葉で彼女らは「( ゚д゚)ハッ!」としたらしく。

 

封印された彼・・・レジギガスの視線に気づき。

バツが悪そうに少しだけ笑った。

 

そんな時だった。

 

紫「・・・!・・・やっぱり・・・」

 

紫が驚愕とため息が混じった声を漏らして、こちらに近づいてきた。

 

霊夢「何かわかった?」

紫「分かったなんて物じゃないわね、コレ・・・」

 

魔理沙「まさか・・・説得は無理、か?」

紫「いいえ・・・説得はより簡単になったわ・・・。

  ただ・・・さらに厄介なやつを相手にしなくちゃならなくなったかも・・・」

 

そう言って、手に持っている本を見えやすいよう顔の位置に上げた。

 

 

『シンオウ国引き伝説』と書かれた、その本。

紫は、とても信じたくないけど信じるしかないという顔で言った。

 

紫「この本は、いわばリメイク・・・復刻版ね。

  物語を記した前半ページと、後半ページからこの本は成るんだけど・・・。

 

 

  

  この原本が書かれたのは、それこそ大昔。いつかも分からない話ね。

  これが、ただの創作とは思えない。何故なら、ここに。

  その伝説のポケモンは存在してるから。

 

  ここから考えられる可能性は二つ・・・」

 

紫はそこで、息を深く吐き出し、

 

紫「一つ目は、この本が幻想となって入り込んできた。

  でも、それだと物語の怪物がこの世界に入ることは証明できない。

  それに、このレジギガス以外にもポケモンは入りこんでいるから除外」

 

霊夢「あんた・・・何が言いたいの・・?」

 

霊夢がしびれを切らしたように、紫に問いかける。

 

 

紫は少しの間黙り、そして言った。

 

 

紫「つまり、二つ目・・・・。

  

  

  『この本に書いてあるのはすべて真実で、外の世界とは違うところ・・・

   異世界から来たと考えられる。そしてその世界には、二つの神が存在している』

   

   一匹は、空間神パルキア。

   そして、もう一匹が・・・時間神「ディアルガ」。

 

   彼は、古代の王から命を受けた状態でこの遠い世界へ来た。

   

   『空間』を超越し、『時』を超えてやってきたと考えるしかないってワケ・・・」

 

 

その言葉に、場の全員が凍り付いた。

 

 

 

紫「マズイわね・・・どうやら私達は、空間神だけじゃなく。

  時間神ともやり合うことになるらしいわ・・・・」

 

紫のため息とともに、重々しい空気と

夏とは思えないほどの寒風が私達を撫でつけてきた。

 

To be continued・・・

 


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