東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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骨折、治りました。

あと、遅れて申し訳がありません。



51ページ目 封印か、説得か

私は、神社から飛び立ってすぐ。

最高スピードで妖怪の山へと向かった。

 

遠目に移るのは、まるで巨大な怪物のように聳え立つ山。

しかし、その一部がまるでえぐり取られたかのようになっている。

 

霊夢「・・大丈夫、だとは思うんだけど・・・」

こんな景色を見てしまったからか、先に飛び立った友人のことを

つい心配してしまう。

 

霊夢「・・うん、大丈夫。レミリアもついてるし、萃香だっている」

私は、心の中に出現した不安をかき消し。

朝焼けの中、空を切る風を全身で感じていた。

 

 

魔理沙「これは・・・」

レミリア「また派手にやったわねェ」

 

今、立っているその場所から見える惨状は

ある種の美しささえ覚えるほどだった。

 

その惨状の中、誰かがこちらに向けて飛んでくる。

 

魔理沙「・・・ん?射命丸・・?」

文「あ、ああ。魔理沙さん。それにレミリアさんまで」

 

私は、萃香がこちらに向かって来たのかと思ったが

来たのは鴉天狗。射命丸 文。

 

レミリア「あら?・・・あの鬼は?」

私の疑問を代弁するかのように、レミリアは問う。

いつの間にか、しっかり日光を防ぐための日傘を持って来ている。

 

レミリアは、射命丸に答えを急かすように日傘をクルクル回しながら

射命丸をジッと見つめる。

 

その視線に気づいた射命丸は、

文「あ・・・あれ?・・」

魔理沙「?」

 

何か答えにくい理由があるのだろうか?

そう考えつつ、辺りを見回す。

 

倒木・岩・地面・砂埃・薄霧。そして倒れた巨大なポケモン(?)。

 

魔理沙「あれが、これを・・・」

そう考えて、私はついつい油断してしまった。

 

まず、首筋に生暖かい風を感じたと思ったら、両肩に突如として重みが発生する。

魔理沙「なぁ!?」

レミリア「あらま。随分と仲がいいようね」

文「萃香様・・・」

 

萃香「魔理沙ぁ。疲れた。おぶって」

 

首を捻って、肩を見ると、それはもう恐ろしいほどににこやかな鬼の笑顔。

そして、古木の枝のように湾曲した角が微かに見えた。

 

魔理沙「降りろ。てゆうか、どうやって背後に回った」

萃香「能力で、霞みになってちょちょいのちょい、てな感じでね」

魔理沙「霞になって飛べばいいじゃないか」

萃香「やだ疲れるおんぶしてお願い」

魔理沙「背後に回って抱き着く努力はするのにか?」

萃香「背後に回るのと、こっから神社に帰るのとでは労力が違わい」

 

そう言って、腕を首に回す。

萃香「まぁ、妖怪らしく力づくで聞かせる方法も・・・」

魔理沙「だぁーっ、待て待て!分かった!分かったから!降参だ!」

 

そう言うと、萃香は確かにクスリ、と笑って腕を放して私の背後に着地する。

 

萃香「あっはっは!いやぁ、魔理沙は面白いなぁ!」

そう言って高らかに笑う。本当に、楽しそうに。

 

レミリア「それには同意ね。霊夢はつっけんどんなとこあるから。   

     これだけ分かりやすくリアクションしてくれた方が

     いじりがいがあるわよね」

 

レミリアもそれに同調して、クックッと笑い始める。

 

魔理沙「おいおい・・・心配してきたのに、笑いものかよ・・」

 

そう言って、帽子越しに頭を抱えて空を仰ぎ見る。

そして後悔した。

 

紫「ほんと、愉快だわぁ」

魔理沙「!?」

 

 

想像してほしい。

何気なく、空を仰ぎ見たとき。

そこに、ニヤニヤと笑みを浮かべる妖怪が

スキマからこちらを見つめているという事を。

 

考えただけでも不気味だ。

 

 

その不気味が、私の頭上からゆっくりとスキマごと降りてきた。

 

紫「どジャアァァ~~~ん。ごきげんよう皆の衆」

レミリア「まだ2、3日しか経ってないじゃない。

     何しに来たのかしら?」

 

紫「うーんと。まず一つ目、魔理ちゃんをからかいに来ました♬」

魔理沙「恋符『マスタースp(紫「ごめん、やめて。疲れてるの。避けらんない」

 

とりあえず、私は100歩譲って紫の愚行を許し。

八卦炉を帽子の中にしまった。

 

紫は、何処か痛むのか。右手で胸を押さえて深呼吸を繰り返し。

何度か咳払いをして話を続ける。

 

紫「おほん、うぉっほん。えと、二つ目。これはマジメよ。

  その倒れた巨神、名称「レジギガス」を封印しに来たわ」

 

萃香「ほう。殺しもせず、捕獲もせず。封印・・・とな?」

 

そう萃香が聞くと、紫は余裕の笑みを浮かべ

紫「そ、封印。それも専用の、ね。

  山を動かし、岩を壊すそのパワー。

  山の神々、鬼との連戦でも殺し切れないほどの体力・スタミナ。

  これらを完全に封印するには、生半可なものではいけない。 

 

  だから、えげつないほどに封印と結界をかけて出られなくする」

 

そう言って、レジギガス(?)の方へ向き、

紫「最も、絶対に暴れることをしない。という約束が出来れば

  封印をせずに、この山の復興に手を貸してほしいとこだけど・・・」

 

紫は、そうやってため息をついて射命丸の方へ向く。

 

紫「」チラッ

文「?・・・え、なんです?」

 

紫「」ニコォ

文「えっ?えっ?・・・え、えへへ・・・」

 

紫「・・私が何を言いたいか、分かるかしら?」

文「え・・・まさか、え?本気ですか?」

 

紫「お察しの通り」

文「・・・誰が必要ですか・・?」

 

紫「まず、貴女。それと犬走・・・下の名前は忘れたわ。

  それと、その犬走と最も近くにいた白狼天狗を三匹。

  大至急で」

 

そう言って、射命丸を急かすように手をひらひらと動かす。

それから数秒後、ブワッと巻き上がる風と共に射命丸の姿が消えていた。

 

 

私は、何の話をしていたんだといった感じで、腕を組んで考えていた。

すると、萃香が私の表情を見て察したのか

萃香「どうやら紫は、捕獲の他に『説得』っていう手段を考えてるんだと。

   まぁ、私も戦っていてアイツに理性やらなんやらがあるのは十分分かってるし。

   どうだかねぇ・・・」

 

そう言って、左腕で右腕を痛そうにさする。

 

魔理沙「『右腕』がどうかしたのか?」

萃香「ああ、さっきまで消滅してたのを文字通りの『気合』で

   治したもんだからね。完治はしたけど痛みがまだ・・・」

 

消滅。右腕が消滅。

私は、今までこの萃香がけがをしたというとこを見たところが無い。

それほどまでに、強力な存在。その存在が、体を一部失調したという。

 

それにしても、右腕が無かったというのに平然としている。

やはり、妖怪と人間には決定的な共通伝と相違点があるらしい。

 

そんなことを考えているうちに、射命丸が帰ってきたらしい。

 

着地と同時に、4人の人影がふらつきながら地面に降り立つ。

 

文「連れてきましたよ・・はぁ、ふぅ・・・」

そう言って、紫の前に一人づつ並んで立たせる。

 

紫「そう。それぞれ、名前を教えて頂戴」

 

その言葉を聞いて、真っ先に答えたのは椛だった。

 

椛「犬走 椛と申します」

栄「え、と・・・秋桜 栄と、申します・・・」

微意「えー、秋海堂 微意です・・」

椎「秋明菊 椎と申します」

 

紫「うん、そう。じゃあ確認するけど。

  今から一週間とちょっと前。あそこの巨神と戦闘行為をした。

  それは確かね?」

 

「「「「はい」」」」

 

紫「よし。じゃあ聞くけど。

  この山が荒らされたこと。自分の仲間が危機にさらされたこと。

  自分の命が脅かされたこと。自分たちのプライドを傷つけられたこと。

  ・・・以上、あの巨神との戦闘によって負った傷。

  それらを許すことができますか・・・?」

 

四人は、それぞれが疑問と困惑の感情を露にした。

 

椛「それは・・どういうことでしょうか?

  私達はいまだ、何故に連れてこられたのかを聞いていないのですけど・・・」

そう言って、射命丸を睨みつけるが、当の本人は上の空だった。

 

紫「よし分かった。じゃあ、最初から。じっくりと説明してあげるわ」

 

~賢者説明中~

 

椛「・・・許すことはできません。

  しかし、相手にも理性と知恵がある以上説得の余地はあるでしょう。

  それに、あの時。相手は急に戦闘態勢に入った。

  そのことについての説明も欲しい所ですし」

 

紫「そう・・・そう言ってくれて有り難いわ。

  貴女も、この子と同じ意見。という事でいいわね?」

 

文「はい。『許すことができない』、のところまで同じです」

 

紫「もぅ。プライドが高いんだから・・・兎に角、これで決まりね。

  まず、会話が可能ならば説得。その際は、『ゲスト』が必要になるわね。

  そして、それが不可能と私が判断したら早々に封印に取り掛かる。

  ・・・これで、いいわね?」

 

レミリア「異議なし。私も貴女と同じ立場なら同じ方法を思いついていたわね」

 

萃香「問題ない。それでいーよ」

 

魔理沙「異論無し」

 

紫「さて、じゃあ・・・」

 

紫は、スキマを出現させてその中に声をかける。

 

紫「藍。地霊殿へ行って、さっきの話を主にしてきて。

  そして、最速で連れてくること」

 

そう言ってスキマを閉じ、私達の方へ向き直る。

 

紫「・・うん。霊夢も来たわね」

 

その言葉に全員が反応し、東方の空を見てみれば

太陽をバックに少しづつ近づいてくる紅白の影があった。

 

紫「さて、と。異変の後片付けを始めるわよ」

 

私は、館の中を走っていた。

全力で。全速力で。風よりも、音よりも速く。

 

しかし、時を止めて逃げることができない。

さっきから、懐中時計を何度押しても時が止まることがない。

 

後ろから追ってくるのは、青い瞳を持つ闇だった。

 

黄色の照明。真紅の壁・床・天井。

それすらも次々に飲み込んで行く闇。

 

私は、もう既に走るのが限界だった。

いや、走らなければいけない。

 

じゃないと間に合わない。

 

(「逃げる」のではなく、「間に合わない」?)

 

何に間に合わないの?

それを考えた瞬間、突如として床が抜ける。

 

落ちるっ!

 

そう思ったが、体が空中で勝手に捻られて壁に足がつく。

いや、もしかしたら今まで走っていたのが「壁」なのかもしれない。

 

『・・・・・・ビシャーンッ!!』

 

それでも、闇は追ってくる。今度は巨大な竜に姿を変えて。

(・・・闇なのに、姿が見えている?)

 

いや、そんなことを考えてはいられない。

兎に角、時間が無い。ただ走る。

 

そして、その向こうに。誰かが立っているのが見えた。

 

 

蝙蝠の羽をもつ、小さな影・・・。

 

咲夜「お嬢様っ‼」

 

私は、「ああ、やっと守ってもらえる」と思い、その影に向けて走る。

 

(守るべき存在なのに?)

 

ああ、助かった(守らないの?)!

これで安心だ(勝手な妄想)!

 

早く、助けてほしい(本当にみじめ)!

 

見ると、お嬢様の口が何かを言おうと動いている(可哀相とも思わない)。

 

近づこうとすればするほど、離れていくような感じがする(・・私のことを)。

 

見ると、お嬢様の背後に青い瞳の闇が立つ(言いたいならば)

 

咲夜「!?、お嬢様!早くそこから!(言葉にするのなら)」

 

レミリア「     」

 

~霧の湖~

 

「・・ちゃん。・夜ちゃん!咲夜ちゃん!!」

 

咲夜「・・う・・ハッ!?・・・ここは・・・」

 

私は、ゆっくりと瞼を開けると目の前に見知らぬ男性が・・・。

 

咲夜「!?・・・誰で・・・あ、ムゲン、博士・・・」

ムゲン「ああ、よかった。気が付いて・・・。

    下手したら死んでしまったんじゃないかとヒヤヒヤしたよ・・」

 

そう言って、安堵したようにため息を吐く。

 

咲夜「・・・あれ?私、どうして・・・。

   いや、そう・・確かディアルガが空けた穴に吸いこまれて・・」

ムゲン「それで、モンスターボール返し損ねてたから。

    慌てて取り返そうとしたら、ね」

 

そう言って、いつの間に作ったのか。

ポットから、香ばしい匂いを漂わせる黒色の液体。

珈琲を、白いマグカップに注いで渡してくれる。

 

ムゲン「飲みなさい。落ち着くよ」

そう言って少し微笑む。

 

咲夜「ああ、どうも・・・ここは、霧の湖ですか・・」

そう言って見渡すと、今日は珍しく霧が薄い。

 

ムゲン「霧の湖、ねぇ・・・名前の通り、濃霧溢れる

    ところかと思ってたけど・・・今日はそうでもないのかな?」

 

そう言って、湖を見渡し「送りの泉を思い出すなぁ・・・」とか

呟いていたのを確かに聞いていた。

 

咲夜「えと、とりあえず。館に行きましょうか・・」

ムゲン「うん?ああ、言っていた「吸血鬼が住む館」ね。  

    どこにあって、どうやって行くのか気になるところだけど・・」

 

私は、ダメもとで懐中時計を押してみると。

 

咲夜「!、ああ!止まってる・・・」

 

瞬間、時間がまるで切り取られたかのように静止する。

全てが止まり、動けるものは自分だけとなる。

 

咲夜「・・さて、と・・・。

   向こうの世界ではいろいろとお世話になったし。

   迷惑かけちゃいましたからね・・・。

   精一杯の恩返しをさせていただきましょう」

 

時が止まった世界でそう言い、博士を背負って空を飛び、湖を超える。

 

 

その時、咲夜は気づくことはなかった。当然、ムゲン博士も。

波も止まった湖面の上。

 

そこに、感情の創造神が一つの異変の解決を祝って舞っていたことを。

 

To be continued・・・

 


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