東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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久しぶりすぎて、文章とか設定とかいろいろ変かもしれません。


50ページ目 異変解決

ああ・・・なんて酷いことを・・・。

 

私は、スキマでここに移動したとき。

真っ先にそう思った。そう思わざるを得なかった。

 

倒れた木々。山から削れた岩。抉れた地面。

そして、混乱した動物。妖怪。・・・ポケモン達。

 

紫「・・・・・」

私は、それらの惨劇に一瞥し、スキマを展開して中へと入る。

 

スキマの中。獣の体内のように赤黒く、無数の目が浮かぶ奇特空間。

私は、その中を歩きながら次の行動を取るべく目を閉じた。

 

 

巨神は鬼神によって下された。

そして、天狗が止めを刺したが死んではいない。瀕死ではあるが、殺せていない。

 

殺せていないのなら、回復をする恐れがある。

それは避けなくてはならない。

 

・・・捕獲。

否、弱ってはいても今の河童の技術では不可能。

殺したいところだが、それも難しい。

 

紫「・・・藍?」

私は、スキマの中。その名を呟く。

すると、赤黒い空に浮かぶ一つの瞳・・・スキマの出入り口から一つの影が出てきた。

 

八雲 藍。

私の式にして、ほぼ雑用を任せてしまっている『最強の妖獣』。

その最強妖獣が、一つの箱を抱えて参じた。

しかし、体中傷だらけだ。頬にも深い傷が刻まれている。切り傷だった。

 

 

藍「お呼びですか?」

紫「お呼びよ。・・・早速だけど、貴女の『成果』を見せてもらえるかしら?」

 

そう言うと、藍は何も言わずに持っていた箱を置き、開ける。

 

紫「あら♥十分!」

 

その箱の中身は、辞典並みに厚い一冊の本。

そして・・・。

 

藍「望み通り、紫様が御所望したポケモン。

  捕獲して参りました」

 

そこにあったのは、二つのモンスターボール。

 

紫「ご苦労さま。もう休んでいいわよ・・・走り回って大変だったでしょう?」

藍「いえいえ・・・これくらいなんてことないですよ」

 

そうは言っているが、息が荒い。それに、箱の中の紅白球を持ってみるとほんのり温かい。

 

恐らくさっきまで、この紅白球の中身・・・ポケモンと戦闘をしていたのだろう。

 

紫「ありがとう藍・・・この本もスゴイ・・・」

そう、藍の仕事はポケモンの捕獲だけではなかった。

 

私の注文・・・「幻想郷分布のポケモン」についてのまとめ。

それを、たった数日間でほぼ完成させてしまった。

 

藍「お褒め頂き恐縮に思います・・・しかし、紫様」

紫「分かってるわよ」

 

そう、「ほぼ」完成しているだけで完全とは言えない。まだ余白がある。

 

紫「なら、私が完成させてあげるわ。貴方の頑張り、私が受け継がないと」

そう言うと、藍は微笑して「かしこまりました」と言ってスキマから姿を消した。

 

紫「さてと・・・このコ達を活躍させてあげなくちゃね・・・それと、巨神」

 

捕獲も不可能。殺し切るにも火力不足。

 

ならば『再封印』をするしかない。

そこで一役買ってもらうのが、あの氷・鋼・岩。

 

あの三体は、守谷が仕掛けた強靭な封印を解いた。

その後は、放浪としているところを見ると巨神との主従関係は薄い。

 

いや、幻想郷に来てから主従関係が薄くなったのかもしれないが・・・。

兎に角、奴らは封印を解く『鍵』の役割をした。

 

ならば、逆に。その封印を再度閉じる『鍵』にもなる。

 

紫「今はぶつけられない、パルキアへの恨み・・・

  奴らにぶつけて遊んでやるわっ!」

 

そう言って、私はスキマの中で走り。目的地へと向かった。

 

 

~玄武の沢~

 

逃げる。兎に角逃げる。

 

名前も知らないポケモン達と一緒に、私はオノノクスが切倒して作る

獣道をさっそうと走った。

 

にとり(・・・あの三体はヤバイ・・・多分だけど、私より断然強い!)

私は、さっきまでの光景・・・。

 

生物感を感じさせない、奇妙なフォルムの化け物三体。

それが、崖を滑り落ちてくる様・・・。

 

それを思い出し、少し震えた。

 

にとり「・・・追ってきて・・・ないよね?(チラッ」

そう思って、少し立ち止まってから後ろを見る。

 

「・・・・・・」

と、巨大な抹茶色の怪物に睨まれてしまった。

 

にとり「ヒィ!あ、進みます進みます!」

 

私は、自分が立ち止まったせいで後ろがつかえていることに気づいて

そそくさと間を埋めるべく、オノノクスの背中を追いかけた。

 

それ故に、その時は気づけなかった。

 

 

スキマからゆっくりと紫色の結界が、点と点を結ぶように作られ

三体の怪物と一人の大賢者の姿が幻想にかき消された様を。

 

~玄武の沢「結界内」~

 

「じゃああああああきぃぃぃぃ‼」

:冷凍ビーム:

「ざざっ、ざりざりざり、ザッッ‼」

:ストーンエッジ:

「じじじじじっ、ぜぜっ、じっ、ぞぞ‼」

:ラスターカノン:

 

尖岩に、冷凍光線。そして高圧力ビーム。

 

紫「随分と熱い歓迎ね・・・」

私は、スキマから出て、足を地につけた瞬間。

怒涛の攻撃が私一人に向けて放たれた。

 

紫「ふふん・・・」

しかし、そんなことで動じる程落ちぶれてはいない。

私は、スキマの中からカードを一枚取り出して詠唱。

 

紫「結界『光と闇の網目』」

途端、周囲に無数のスキマを展開させてそこからレーザーを放つ。

赤、青、赤、青。一つづつ編むように重ねていき、そこからさらに光弾をばら撒く。

 

しかも、これは結界の中でのこと。

弾幕は、結界で反射し。レーザーは、高密度で重なり合う。

 

怪物たちが放った攻撃は。

全て弾幕に消され。レーザーで切られる等されて掻き消えた。

 

「「「!?」」」

 

三体は、それぞれ驚きいたようだった。表情は当然のことながら分からない。

ただ、思わず後ずさりをしているところを見ると、かなりの衝撃を受けたらしい。

 

紫「・・・あっ、うぅ・・」

・・・私は、頭痛がしたため頭を押さえた。

紫(いけない・・・能力を使いすぎた・・・)

 

パルキアの切断攻撃を受けて早数日。

能力も身体も衰弱しているのを忘れているわけではなかったが・・・。

 

紫「ここまで深刻化していたのかしら・・・?」

思わず、そんな独り言を漏らしてしまう。

 

すると、ドンッ、と大きな音がした。

 

 

その音の出所を探してみると、どうやら岩の怪物がこちらに駆け出してきたらしい。

重心を、前に向けて走ってきているからかなかなかに速い。

 

紫「・・・愚かね・・・私がそのことを考えてないはずがないでしょう・・?」

そう言って、頭を押さえながら立つ。怪物との距離は3mちょい。

 

怪物が、大きく拳を振りかぶる。

と、同時に紅白球から青色の影が飛びだして怪物にぶつかった。

 

 

紫「ダゲキ、『かわらわり』」

私は、その青い影・・・ポケモンに技を命じる。

 

道着のような物に身を包んだ、青い鬼。

鋭く開かれた瞳と、その細く強靭な筋肉感じさせる肉体からは

圧倒的な攻撃力と好戦的な性質が垣間見える。

 

技命令を受けたポケモン、「ダゲキ」は。

捉えた怪物に向けて固めた左拳をぶつけた。

 

「ざざっ・・・」

怪物は、地面を擦る様な鳴き声と共にその場に倒れた。

 

紫「うん、上出来ね」

「ダゲッ」

 

怪物は、まだ動こうとするが。それをダゲキが押さえて確保。

そのままスキマを出現させて、スキマの中へと収納した。

 

紫「・・・さてと、あと二体」

私は、その残された二体へと視線を向けると、二体ともこちらへ向かって来た。

 

紫「あら勇敢・・・でも、そんな攻撃で大丈夫かしら?」

 

怪物たちは、ただ向かってくる。私は、何もせず。仁王立ちで彼らを迎えることにした。

 

 

紫「さ、そろそろフィナーレね・・・」

私はそう言って、もう一つ。紅白球を天空に投げる。

 

紫「ダゲキ、氷の方に『インファイト』!」

「ダァゲェッ‼」

 

 

ダゲキは、さっそうと駆け出して氷の怪物と真っ向から対峙。

しかし、相手も相手。近づけまいと、冷凍光線や電磁砲で応戦する。

 

だが、それすらも『見切られ』ダゲキの右拳が直撃。

それから足刀。肘。掌底。手刀。左拳と右拳のラッシュ。

 

目まぐるしく繰り出される打撃技のオンパレードに、その氷の体は

みるみる砕かれ、削られていった。

 

紫「大爆発・・・だっけ?

  ふふ、させる訳が無いでしょう?」

 

ダゲキは、フィナーレに長い脚での上段回し蹴りを決め、怪物は倒れ伏した。

 

 

一方、鋼の怪物はそれを気にせずドスドスと進んでくる。

 

紫「さて、これでラストよ」

コツッ。と軽い音がした。

 

結界の中、限りのある天空に、先程投げた紅白球が当たって開く。

 

「・・・・」

そこから落ちるように出現したのは、紺色をした「怪竜」。

 

 

夜か、深い海を思わせる紺色の肉体。

まず目を引くのは、その両腕。

 

手の部分は、真っ白で鋭利な爪を称え

腕部分からは、刃のようなヒレが大きく突き出している。

 

また、腹部に見られる朱色と黄色のマーク。

背中から突き出た大ヒレ。長く伸びた強靭な尾。

金槌のように歪んだ頭部。肘、太ももらしき個所に見られる白い棘。

 

その眼には、静かな殺意がメラメラと燃えていた。

 

紫「戻ってダゲキ」

私はそう呟き、打撃を紅白球に戻してから、氷の怪物をスキマ送りにする。

 

紫「ガブリアス・・・って言うのね?

  よし、ガブリアス。『地震』」

 

私は、ガブリアスに命じてスキマの中へと逃げる。

 

 

そのすぐ後。

スキマの中にも響くような、巨大な振動が辺りに響き、すぐに収まった。

 

私は、恐る恐る隙間から顔を覗かせると・・・。

 

紫「・・・つっよ・・・」

そこにいたのは、倒れ伏した鋼の怪物と。得意顔のガブリアス。

 

勝負は一瞬にしてついたらしい。

 

紫「・・・強いわね・・・まぁ、強くしているんだけど」

 

 

私は、紅白球を開いてガブリアスを中へと入れる。

その紅白球には、一枚の札が巻き付けられていた。

 

紫「藍の作った、『式神増強』の符・・・予想以上ね。

  流石私の式神」

 

私は、倒れた鋼の怪物をスキマへと送る。

 

その時だった。

紫「!?・・・ッ」

 

 

ドクンッ、と心臓が飛び跳ねたかのように動き、キリキリする胸の痛みが

脳天を貫いた。

 

紫「いっ・・・うっ、くっ・・・・・・・」

変な動きをする、左胸の内臓を抑える。

 

 

すると、創りだした結界がぼやけて消えていく。

目の焦点が合わないのか、ちりちりとした変な感覚が脳に広がるのを感じた。

 

紫「・・・ッッッハァ!・・・はぁ・・はぁ・・・」

暫くして、心臓の動きが通常に戻った。

 

紫(・・ヤバいわね・・やっぱり、ポケモンがいるならそれに頼るべきよね)

 

そう思い、今度は慎重にスキマを創りだして中へと入り、博麗神社へと向かった。

 

 

~博麗神社~

 

紫「やっほーぅ。霊夢」

霊夢「うわ、紫。・・・終ったらしいわね」

紫「終わったわよ。勝者は、妖怪の山連合軍」

霊夢「そう・・・」

 

霊夢は、ただそれだけを言って微笑を浮かべた。

私は、隙間から半身乗り出して神社の境内を見回す。

 

紫「大混乱ねぇ・・・さ、早く異変終了の宣言を出してあげなさいよ」

霊夢「そうね・・・私も、不寝番疲れちゃったし」

 

そう言って、スカートをパンパンと叩いて立ち上がる。

 

霊夢「えぇー・・・皆さん!」

そう言うと、境内でざわざわしていた人里の者達は一瞬で静まる。

さすが、博麗の巫女。と、私は思わずノスタルジィを感じた。

 

紫(あったなぁ、こんなこと・・・)

そう思いながら、思わず笑ってしまう。

 

霊夢「・・・妖怪の山の異変は、無事解決いたしました!」

そう宣言すると、それぞれがそれぞれの反応を見せる。

その大半は、驚きと喜び。

 

また先程とは違う意味でざわめきを起こした。

 

 

その時、東の空が白み、橙色の日の球が青空を連れて顔を出した。

 

霊夢「ああ、やっと夜が明けた・・・。

   そういえば、魔理沙とレミリアはどうしたのかしら?」

紫「さぁ?多分、チビ吸血鬼はどうか知らないけど。

  魔理沙は普通に安堵してるんじゃないかしら?」

霊夢「・・・・・心配だし、ちょっと見てくる」

 

そう言って、飛んで行ってしまった。

 

紫「まったく、友人想いはいいけど・・・

  ここに残された人たちはどうするつもりかしら?」

 

見渡せば、それぞれの人がぞれぞれの表情を光の中で浮かべている。

 

 

異変は無事解決した。

 

巨神は、もう倒れて動けない。

 

死んだり、失踪した人。及び妖怪、ポケモンもいない。

 

 

紫「とりあえず、ハッピーエンドってことでいいのかしらね・・・」

 

私はそう思い、その場に座りこんだ。

 

 

太陽は、ゆっくりと音も無く体を出して幻想郷を照らす。

それは、希望にあふれるもののように見えた。

 

しかし、逆に。

その光の中に不穏な影が見えたのは、気のせいだろうか?

 

To be continued・・・


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