東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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S・M買ったので、遅れてしまいました。


46ページ目 VS! レジギガス その①

背中の注連縄に装備した、オンバシラを構え。

 

そして渾身の力を込めて撃ち当てる。

ゴンッ、ドン!

 

巨大な木が金属を受けるかのような打撃音と

「ズッ、ズッ!ズッ!」

鉄塊を引きずる様な音が夜空に響いた。

 

手応え・・・なし。

 

神奈子「チィッ!何なんだ、この耐久力は・・・」

余りの手応えのなさに、軽く眩暈を覚える。

 

そこに、キィン、という軽く耳に心地よい金属音が響き

不意に空中から銀色の輪が形成される。

 

諏訪子「神具『洩矢の鉄の輪』。

    そらそら!避けて見ろー」

 

諏訪子もスペルカードによる妨害と攻撃を行ってくれている。

・・・が。

 

奴は避けない。見向きさえすることがない。

 

鉄の輪は、その巨神の腕・足を縛り。

胴体に至っては、鉄の輪を二重三重に重ねて動きを完全にロックする。

 

さらに、追撃で巨大な鉄の輪をこれでもかとぶつける。

その姿は、かつての祟り神の如く熱烈にして狂気的であった。

 

・・・しかし、止まらない。

 

巨神兵はまるで紐でも千切るかのように鉄の輪を引き裂き

体に縛られた輪も、その巨拳で掴んだだけでひしゃげてしまった。

 

早苗「喰らいなさい巨人!秘術『グレイソーマタージ』!」

 

そこに早苗がスペルを詠唱し、弾幕を発生させる。

 

藍色の五条の星と、それに重なるように生成される朱色の星。

それらが分裂、流動、拡散を繰り返して広範囲に広がってゆく。

 

それらの弾幕は、晴れ空の宵闇に火花を散らしながら巨神の足元へ。

 

早苗が放った弾幕の機銃掃射は、その巨神が足をつけている

地面を大きく抉った。

 

「ズズッ・・・!?」

 

踏み込むはずの地を失った巨神は、その自重故に体のバランスを崩す。

 

神奈子「よくやった早苗!あとは私が!」

 

早苗が作ってくれた隙を逃すまいと、私らしくもなく躍起になって

巨神のすぐ傍へと向かった。

 

と、その時。

 

巨神が山から手を放してこちらに攻撃を向ける。

 

神奈子(攻撃してきたってことは・・・随分と消耗しているということ!

    いくら化け物でも一斉攻撃には耐えられなかったと!)

 

私は、その時完全に『油断』していた。

高ぶる『傲慢』を抑えることが出来ず、つい笑ってしまった。

 

そして気付かされた。

 

 

隙を作られたのは『私』の方であったと。

 

「人里 大通り」

 

私、「犬走 椛」は。この日ほど悔しさを味わったことはなかった。

 

もう一週間以上前になるだろうか。

私と、栄・微意・椎。そして白狼天狗団と文さんの手によって

打倒したはずの巨神兵。

 

その巨神兵が悠々と封印を破って私達の山を荒らしている。

 

なのに、戦いに行くことができない。

そのことに対して、「悔しさ」「憤怒」を確かに感じていた。

 

???「どうしたの?椛。急に立ち止まって」

 

不意に気遣うような声が後方から聞こえ、振り向くと

そこには、文さんのライバル(?)記者。

『姫海道 はたて』が、右手に提灯を持ってこちらを見ていた。

 

はたて「どうしたの?山のこと?」

 

椛「あ・・・ああ、いえ。何でもありません・・・」

図星だった。

 

何でもないわけがなかった。

 

戻りたかった。

しかし、今は目の前にある『任務』をこなさなければならない。

 

はたて「ねぇ椛。あんたは、山の神や風守人をどう見ているかは知らないけど。

    そういう約束・・・もとい『契約』をしたんでしょ?

    だったら、ちゃんとそれに従わないといけないわよ」

 

椛「・・・はい。分かっています」

 

契約。

 

それは、向こうが持ち掛けてきたことであったが。

こちらにとってはいい条件であった。

 

『こちら側から巨神兵を明け渡し、封印をお願いする』

 

あの時、私達はあの巨神を倒す力はあっても封印する力はなかった。

だから、その話に乗った。

 

それで、文句を言うのは筋違いと言うものだろう。

 

いまや、あの巨神は『守谷神社』の管理下。

 

私達に手出しをする権利はないのである。

 

・・・その際。

神社側が提示したもう一つの条件・・・もとい『お願い』。

 

『仮にもし、巨神が封印を破った際に守谷の巫女の指示の元。

 人里の住民を博麗神社へ避難誘導を行うこと』

 

そのことを指示された。

 

そのために、私達は今。

羽を隠し、尾を隠し。耳は伏せ。提灯を持ち。

あくまでも『妖怪』ではなく『人間』として任務を行っていた。

 

それも、提示された指示のうちの一つだった。

 

はたて「・・・あ、遅れてる人たちがいる。

    椛、行くよ」

椛「あ、はい」

 

私は、まだ心の内に蟠りを抱えていたが。

それ振り払うように両手で頬を打って、気合を入れなおしてから

はたてさんの後を追った。

 

 

 

はたて「博麗神社への道はこちらでございます!

    できる限り焦らず、私達の指示のもと行動してください!」

 

提灯を持った多くの人たちが、私達に避難勧告をし。

まだ眠っている者の家の戸を叩き。

提灯やかがり火で夜道を照らしてくれている。

 

AZ「ふむ・・・彼女たちは・・・里の住人だろうか?」

 

ふとそんな疑問が口から洩れる。

 

小鈴「?、なにか言いましたか?」

 

その疑問を伴った独り言を小鈴に効かれそうになる。

 

AZ「・・・いや、あの山にもポケモン達は既に住んでいるはず。

  と、思うとな・・・」

 

小鈴「ああ、そうですね・・・。急に山が動いたことで山の中でも様々な

   異変が起こっているはずです。心配ですね・・・」

 

この少女は時に、驚くほどこちらの気持ちを代弁してくれることがある。

 

さっき言った言葉は、独り言を間明合わすための言葉だったが嘘ではなかった。

 

 

心配で、不安で堪らない。

その負の気持ちが、心を少しずつ黒へと染めていた。

 

その心に光をさしてくれるのが、小鈴や阿求達だ。

 

このようなあまりにも絶望的な状況にも希望は指す。

 

 

それに向かう先は『博麗神社』だ。

恐らく、あの妙な性格をした巫女も。

割と良心的(?)な魔法使いも。

胡散臭い境界妖怪もいることだろう。

 

恐らくであるが、彼女たちならこの事態に

ただ指をくわえてのんびりしていることはないハズだ。

 

 

・・・そこで私は気が付いた。

 

私は既に、彼女たちを信用しているということに。

 

AZ「・・・・・」

 

私は、意識せずに向けていた信頼に驚きを感じつつも

それを表に出さぬよう抑えて、『希望』を持って神社へと向かった。

 

「やぶれた世界」

 

今いる、所々傾いた感じになっているこの家は

恐らく現実世界の「霧雨魔法店」であろう。

 

この異世界においても変わらず乱雑した床や

本棚・テーブルには、もともと何が何だか分からない魔法グッズやキノコが

さらに歪められて、もはや『何か』になっている。

 

ムゲン「しっかし・・・ここはすごい汚れているなぁ・・・」

    ああ、咲夜・・・ちゃん?でいいかな?

    座りにくかったらこのタオルの上に座るといい」

 

そう言って、コーヒーを淹れている片手間に、バッグから一枚の大きな

バスタオルを取り出して床に広げる。

 

咲夜「・・・では、失礼して」

私は博士に一礼して、ゆっくりと。恐る恐る腰を下ろした。

 

その途端、体に何か違和感を感じた。

まるで、自分の体重が軽くなったかのような奇妙な感じだった。

 

ムゲン「・・・ム?ああ、そこは重力が「軽く」なっている。

    言う事を忘れてしまっていたが、大丈夫かね?」

 

驚き、呆れた。

 

まず重力が軽くなっているという非常識に驚き。

そんなことを伝え忘れていたこの男に対して呆れた。

 

いや、それよりも・・・。

 

咲夜「ムゲン博士・・・」

 

ムゲン「ム?何かな?」

 

咲夜「あなたは・・・ここのことを・・・。

   いえ、あの怪物や神のことも。

   一体、どこまで知っているのですか?」

 

ムゲン「どこまで・・・と言うのなら。

    100%中30%・・・程度かな」

 

咲夜「では、知っている限りのことを教えてください」

 

ムゲン「・・・いいが、このことは必要以上に他人に語らないことを

    約束してくれ」

 

咲夜「約束します」

これは、半ば嘘だった。

 

お嬢様には、話しておくべきか。

そう思っていた。

 

しかし、そのことを決して表には出さずに博士のことを見つめた。

 

ムゲン「・・・うん。分かった。

    ぞれじゃあ、コーヒーも沸いたことだし。

    これを飲みながら話すとしよう」

 

そう言って、博士は黒い液体が注がれた白いマグカップを渡し

饒舌にこの世界のことについて語り始めた。

 

~博士説明中~

 

ムゲン「・・・と、こんなとこかね」

 

私は、博士が渡したコーヒーを少しづつ飲みながら

手元に残っていた手帳と、博士から借りたペンを使って

大体のことをメモした。

 

まず、

・この世界は、どの世界の常識も通用しない

・重力は信用できず、所々反転したり、軽くなったりと歪んでいる

・時間・空間の概念も狂っている

・目に見える物体が存在するとは限らず。

 逆に目に見えない物体が存在しているという事がある

・この世界の支配者は『ギラティナ』

・先程の生物は時間神『ディアルガ』

 

これらのことを、時に哲学的に、時によく分からない単語も使って

長々と説明していたため。

充分に要約して短めに書いた。

 

咲夜「時間神・・・」

私は、震えた。

通りで、あの時。時間が止められなかったと思った。

 

それに、この世界でも時間が止められないのは

時間の概念が狂っているという事だからとも知らされた。

 

ムゲン「・・・そういえば、君のことをまだ聞かされてなかったな」

 

満足そうにコーヒーを啜りながらムゲン博士が発した。

 

咲夜「私のこと・・・ですか?」

 

ムゲン「そう。君だ。この世界にいると、代り映えのない異常なこと続きで

    現実味が無くなってきてしまってね。

    ちゃんと、君の話を聞いて現実を実感したいんだ」

 

そう言ってきた。

 

咲夜(・・・まぁ、別に減る物でもないし。いいかな)

 

そう思ったため、この現実味を求める博士に。

幻想郷(こっち)での現実を教えた。

 

~従者説明中~    

 

ムゲン「あーちょっと待ちなさい。

    ・・・もう一回言って?」

 

さっきからこの繰り返しだ。

どんなに丁寧に、説明しても分かってもらえないらしい。

 

だったら、これ以上説明するのは無駄と判断して会話を中断した。

 

ムゲン「・・・う~ん・・・ちょっと理解しがたい・・・

    ・・・君の主に合えば、分かるかもしれんが・・・

    吸血鬼かぁ・・・本当だったら実に興味深いがなあ・・・」

 

そんなことをブツブツと呟いている。

 

と、その時。

 

『ギゴガゴーゴーッ‼』

 

空洞に風が吹き込むような音がした。

 

ムゲン「おお!ギラティナが外へ出ようとしている!

    さては、ディアルガを逃がしたな・・・

    ああ、君は危ないからここにいなさい」

 

咲夜「いえ、私も同行します」

 

ムゲン「・・・だったら、こいつを連れていけ」

 

そう言って渡されたのは、いつか見た紅白球。

 

ムゲン「そいつは『タテトプス』。

    防御力に関してはピカ一だから、君のことを守ってくれるはずだ」

 

そう言って、そそくさと外へ出ていく。

 

咲夜「・・・」

 

私は、手に渡された紅白球を眺め、それをポケットに入れてから

ムゲン博士の後を追った。

 

To be continued・・・




うろ覚えキャラクタープロフィール「ムゲン博士」
年齢:推定40代前半
ポケモン:・タテトプス
     ・ズガイドス
     ・???
性格:適当で抜けているところが多いように見えるが
   正義感と探求心と責任感を持つちゃんとした(?)大人。
   変人ではあるが良識人。
博士:れっきとしたポケモン博士であるが
   長い間「やぶれた世界」で生活しているため
   現実世界での認知度は低い。(と思われる)
リュック:多くの機械が取り付けられている上に
     かなり多くの物が入る。重たいらしい。

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