東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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43ページ目 それぞれの動き

結論から言おう。

私は。私達はあの岩山に出し抜かれた。

 

 

私はその瞬間、死を覚悟したが、その死の宣告である攻撃が行われることなく

こいし様がその岩山を打倒した。

 

勝った!勝利だ!戦いは終わったんだ!

 

その喜びと達成感が疲労となって私を襲った。

 

こいし「お燐、大丈夫?」

 

お燐「ああ、はい。大丈夫です」

 

私のその言葉にこいし様は安堵したのか、にこりと目を細めて笑った。

 

しかし、そのひと時の安寧はすぐさま崩れることになった。

 

お空「お燐!後ろォ‼」

 

途端。お空の言葉が後ろから響いた。

 

その声に反応して後ろを向いた瞬間、右頬に鋭い衝撃が走った。

 

お燐「ぐうっ‼」

 

うめき声をあげ、吹き飛ばされる。

一瞬、こいし様がとても驚いた顔をしているのが見えた。

 

 

ボロボロの体になっても動いている岩山の怪物の姿も。

 

その視界を脳で処理しようとした瞬間、背中に強い衝撃が走る。

どうやら吹き飛ばされて壁に激突したらしい。

 

意識が霧がかったように朦朧とし、こいし様の声が聞こえる。

 

お燐(いっ・・・意識が・・・ッ!)

 

目がかすんで、何もかもが薄れて見えてくる。

耳もやられたのか、耳鳴りがしている。

頭を打ったのか、頭痛もする。

 

それでも私は、なんとか意識を手放さないように目を見開いていた。

 

お空がかなりのスピードで飛んでくるのが見えた。

こいし様が私の方へと駆け寄ってくるところも見えた。

 

その霞んだ視界の中で、気のせいだと思いたいものが一瞬見えた。

 

 

岩山が、床へともぐっている所である。

 

:あなをほる:

 

お空が岩山の方へと飛ぶ様と、ヒ―ドランが攻撃を仕掛けるところも見える。

 

こいし「お空!私はお燐を担いでここを離れるから、スペルを使ってもいいよ!」

 

お空「ッ‼、いいんですか・・・?」

 

こいし「ほら、早く!ここは任せたよ!」

 

確かにそうこいし様が言ったのが聞こえた。

次の瞬間。私はこいし様に本当に担がれたらしい。

 

また次の瞬間。

 

お空がカードを取り出して、辺りに警告音を響かせたのを聞いた。

 

お空「爆符『メガフレア』‼」

 

「ゴボボボォ‼」 :マグマストーム:

 

 

体の大半が破損。しかし、まだ完全に破壊されたわけではない。

まだ戦える・・・。

 

だが、ここは撤退するほかないようだ。

 

もうこの体力と距離では「爆発」を起こして道連れにも行かない。

 

ならば最善の策。一時撤退。

 

そもそもここには「戦闘力のデータ収集」に来た訳である。

もうここに長居する必要も無いだろう。

 

しかし、相手も既に逃げようとすることに気が付いている。

 

 

ここに残った、戦闘可能な者は二体。

 

どちらの攻撃も当たったら瀕死は免れないだろう。

何とかして穴を掘り、炎から身を守らねばいかない。

 

そうこうしているうちに穴が開いた。この地底から地上へ出るための穴が。

 

しかし、攻撃はすぐさま発射された。

 

 

爆炎の渦と、火炎の大玉が、岩山に向けて発射される。

 

その瞬間の室内気温は一気に80度を超えたと思われる。

そして刹那。辺りは弾幕と溶岩の渦で地獄のような光景となり、周りに強い光が漏れた。

 

その光は、私もヒ―ドランも岩山も包んで。

最後に。

 

ドウゥゥン・・・。

 

という揺れと高熱と炎を残して辺りは焼野原となった。

 

そこに残されたのは、尖った岩の残骸。焼けたカーペットやシャンデリア。

 

 

 

 

そして、奴が逃げたと思われる穴だけだった。

 

その穴は、私達が存在に気が付いたのを察知したかのよに消え去り。

 

その穴が存在していたところだけ、爆炎や弾幕の影響を受けずに綺麗なままの床を

晒した。

 

まるで穴も、岩山もなかったかのように辺りは消炎し、私とヒ―ドランだけが残された。

 

私達は、あの岩山に逃げられた。

 

 

~人間の里~ 慧音・妹紅サイド。

 

地上は、よく晴れた夜となっていた。

雲は一切無く、瞬く星々と輝かしい月はその光を地上へと注いでいた。

 

夜は人間の里の酒屋等を覗いて、出歩く人間が一気に減る時間帯である。

 

その代わり、人ではない者が出歩く時間となっている。

 

 

その白く輝く月光を、鏡のような鋼の体で反射させて、人里の外へと歩み出る

異形の姿がそこにはあった。

 

その異形・・・激しい暴風から慧音と妹紅の身を護ったその存在は

ゆっくりした足取りで、人里から森へと出ていこうとしていた。

 

その様子を見ていたのは、ただ一人。

人とは言えぬ、青い目と赤い帯。黒い体に白の頭髪のような物を持つ闇だけであった。

 

その方向の先には、高くそびえる妖怪の山が、巨大な化け物のように

天を支えていた。

 

 

~紅魔館~

 

同時刻。灯りが消え去り、代わりに白い月明かりが館を照らしている頃。

 

スーッ、と。滑るように館の玄関から、尖った多角形のような影が飛び出した。

 

その影は、またすーっと滑るように移動して庭を横切っていく。

 

その影の正体は、一人の妖精のパートナーとして巫女と魔法使いと戦い。

現在はこの館の製氷を任せられる異形であった。

 

その異形は、ゆっくりと館の門を開け、湖を凍らせつつ、森の中へと入っていった。

 

また、その様子を見ている存在が一人。

ボロボロの薄汚れたローブを纏う不気味な者。

 

『・・・・・』

その存在は、何も言うことはなかった。

何も言うことはなく、空を飛んで、また何処かへと離れていった。

 

その飛んでいくものとは逆に行く者。その異形は、巨大な影。

 

妖怪の山へと進む。

 

 

迂闊だった。

 

まさかあそこまで強力な者が青の地下にいるとは思わなかった。

 

なんなのだ、あいつは?

 

気が付いた時からいたのか?

分からない。だが、あそこにいた中ではトップクラスに危険だということを認識した。

 

これからは、あの存在を判断基準に戦闘をしていきたい。

だが、あの存在よりも強い者がいたとしたらどうするか?

 

それは、出会ってみなければ分からない。

 

ひとまずは、この身体が再生するまでジッとしていなければ。

 

 

~人間の里~ 阿求・小鈴・AZサイド

 

変な夢を見た。

 

私がAZさんと阿求と一緒に、何処かへと行く夢だった。

それが『夢』と認識できたのは、何故かは分からない。

しかし、これは夢であるという確固たる自覚があった。

 

その行先は、何なのかよく分からない場所。

 

紫色の桜と、地面から所々突き出た小さい岩が印象に残る荒れ地だった。

空は紺色に染まっているが、地面や桜はハッキリ見える。

 

その荒れ地を、AZさんと阿求はどんどんと進んでいく。

 

 

私は、二人に遅れていることに気が付き、スタスタと足を速めてついて行った。

 

途中。

 

ヌチャ、と変な音が地面からした。

それは、底の部分だけぬかるんでいるようだった。

 

そのぬかるみに私は足を取られ、動けなくなってしまう。

 

二人は私を置いて先へと行ってしまう。

 

 

小鈴「AZさ~ん!待ってくださいよぉー!」

 

返事はない。振り返りもしない。隣にいる阿求も同様に。

 

小鈴「お~い!二人とも―‼」

 

返事はない。振り返ることもなく、ただ歩く。

 

 

途端。

 

ドドドドドドド‼‼

 

何かがのたうち回るような音が聞こえてきた。

 

小鈴「?、何の音だろう・・・・・って、ええ!?」

 

この様子を見て、驚かない人がいるだろうか?いや、いないだろう。

きっとあの霊夢さんや、魔理沙さんですら驚愕してしまうはず。

 

 

それは、水だった。

 

それもただの水ではなく、空と同じ紺色に染まった潮。

 

その潮に、先を歩いていた二人が呑まれる。

 

小鈴「‼‼」

 

もう一度言うが、これは夢である。

 

しかし、いくら夢とはいえその恐怖。実感は現実とそう大差はないと思えた。

 

高波が唸るような音を立てて近づいてくる。

 

ぬかるみにはまった足は抜けそうにない。

 

全てが駄目だと思ったその刹那。

 

 

波の中から青色の巨大な何かが飛び出してきた、

 

その青色をした、大海のようなイメージを持つ何かは私にのしかかり・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと、私は布団から飛び上がって起きていた。

 

小鈴「はあー。はあー。はあー」

私は、起きてすぐ。体に異常が無いか調べた。

 

しかし、それは夢であるため体に何か異変があるわけはなく。

 

無傷。ただし汗でビショビショになった私の体がそこにはあった。

 

小鈴「・・・(なんだったの・・・今の夢は・・・)」

 

私は、何故そのような夢を見たか考えてみたが。

結局は眠気には勝てず。

 

今度はいい夢が見られるように願いながら再び眠りについた。

 

 

翌朝。

 

父親にたたき起こされた。

 

避難するのだという。

 

何故避難するか、父親に聞いたところ。奇妙な回答が返ってきた。

 

「山が動いて人里に迫ってきている。早く避難しなければ」

 

そのようなことが帰ってきた。

 

 

私は、これも夢なのではと思いつつ、父親に手を引かれて外へと出ていった。

 

 

To be continued・・・


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