東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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祝!小説投稿から一周年!


42ページ目 地底の岩 その③

この世には、自分よりも強く。圧倒的な力を備えたものが存在すると、さとり様から

教えられたことがある。

 

なぜ、その言葉を急に思い出したのか。

 

それは、私達の前にいる岩石の姿を目に移し、こう感じたからだった。

 

お燐(鬼に勝てるような奴に、私達が戦って勝てるの・・・?)

それは、疑問であり。焦燥であり。恐怖であり。そして不安でもあった。

 

そしてその疑問は、案外すぐに解ける物であった。

 

 

お空「!、お燐!すぐにシャンデリアから離れて!また何か来るよ!」

 

お燐「く・・・ッ」 ボコォン‼‼

 

まただった。岩石はただ、腕を振り上げて地面に叩きつけているだけ。

ただそれだけで、壁。床。天井。・・・果てはシャンデリアのような家具からも。

 

鋭い岩が飛び出してくる。

 

 

すでに、その攻撃によって逃げ遅れた何匹かのフェアリーゾンビ達は

鋭い岩石に吹き飛ばされ、戦闘不能に陥っていた。

 

 

お空(このままでは・・・まずい‼)

 

そう考えるが、ここは地霊殿一階。玄関ホール。

 

制御・コントロールが難しいお空の能力・・・。

「核融合を操る程度の能力」は、今。ここで使ってしまえばあの岩石は

跡形もなく吹き飛ばして塵に還せるだろう。

 

 

しかし、それと共にお燐やさとり様、果ては無意識状態で見つけることができない

妹様まで吹き飛ばしてしまうことになる。

 

 

そしてお空には、手加減ができる程度のスペルカードを持ち合わせていない。

 

 

この戦いにおいて、お空は既に『戦闘不能』状態にあると言っても

過言ではなかった。

 

 

ならばできることと言ったら・・・。

 

 

お空「お燐。私が陽動を起こして、あいつの注意を引き付ける。

   その間に、あいつにスペルカードとヒ―ドランの技を当ててやって」

 

お燐「!?。そんな・・・」

 

お空「私の能力・スペルカードは共に制御が利かない大技ばっかだからさ。

   使ったらきっと、この屋敷ごと吹っ飛ばしてしまう。

   だから、お燐。今、この状況に置いて。

   貴方は「希望」なの」

 

お燐「お空・・・・・。

   うん。分かった。無理はしないこと。陽動、頼むね‼」

 

 

お空「ああ!任せときなって!」

 

 

「‼」

 

 

お燐(お空が陽動に回ってから・・・・)

 

ドカァン! ズドォン! バキバキッ‼ メキイィ‼‼

 

あの岩石が放つ岩の槍。その攻撃頻度が劇的に落ちた。

 

しかし、それと同時に地上にいるヒ―ドランも攻撃対象に入ってしまい。

なかなか私と一緒に攻撃に回れないでいた。

 

私は、敢えて攻撃はせず。奴が動けなくなるまで隠れつつ移動を続けた。

そうすることによって、奴が私に気付く可能性はグッと下がる。

 

あとはお空の体力と、こいつとの体力との勝負。

 

 

戦闘開始から数分・・・。

 

あの岩石は、間違いなく疲弊していた。

 

 

攻撃の速度は打ち込むたびに、遅くなり。

 

上空からのお空の通常弾幕にかなり打ちひしがれていた。

 

 

お燐(この戦い・・・奴に、勝てるッ‼)

そう思うと、自然と緊張がほどけてきた。

 

そしてついに・・・。

 

「ざざぁ・・・」 ズズウッ・・・

 

奴の体はふらつき、膝を地についた。

そしてついには、死んだかのように動かなくなり、弾幕の雨の中をジッとしていた。

 

その様子に、私は違和感を覚えたが、これはチャンスだった。

 

 

地上のヒ―ドランへの攻撃も止まり、ヒ―ドランは素早く私の方へと

壁を渡って移動をし、私の指示を待った。

 

そして・・・。

 

お燐「行くよ!ヒ―ドラン‼」

 

「ごぼぼぼぼお‼」

 

一気に壁を蹴り、岩石の背後へと回り込む。

 

そして、ポケットからスペルカードを取り出し、名を叫ぼうとする。

ヒ―ドランも技の準備をしている。

 

 

奴は、その段階で攻撃を仕掛けていた。

 

お燐「なっ!?」

 

奴は、動けなくなったのではなく。動かなかったのだろう。

本当は、私の接近に感づいていた。

 

奴は私の上へ、上へと飛び、腕を振り上げて襲い来る。

 

:アームハンマー:

 

お燐「あっ」

 

避ける暇もなかった。

その剛腕は、重力と共に加速され、私の顔近くまで迫った。

 

終わり。終末。人生の終着点。

そのような単語が脳内を一瞬で飛び交い、何もかもが遅く感じた。

 

その遅い感覚の中で確かに見た。

 

 

 

ヒ―ドランが私をかばって、攻撃を受け止めるところを。

 

お燐「え・・・」

 

ヒ―ドランは、岩石の剛腕を防御することなく、ただ私をかばうために動いてくれた。

 

奴の表情は分からない。

しかし、その挙動に動揺があったのは確かに感じ取れた。

 

再びのチャンスだった。

 

 

最初はお空とフェアリーゾンビ達が。

二度目はヒ―ドランが。

 

私に与えてくれた千載一遇のチャンスだった。

 

そして次はない。

 

なぜなら奴の視線と思われる気配が明らかに私の方を向いていたからだった。

 

 

急いで片手に持っていたスペルカードを掲げて、名を言葉にする。

 

 

お燐「贖罪『旧地獄の針山』ァ‼」

 

途端。

 

辺りに細かい針のような弾幕が展開されてゆく。

 

奴は、驚愕の色を表すことはなかった。

 

恐らく勇儀姐さんの弾幕を受けた後だからだろう。

 

 

しかし、この密度。速度。

奴も避けようとするが、避けきれずに被弾する。

 

その度に体から岩が少しづつはがれ、ダメージを受けているのは

誰の目にも明らかだった。

 

 

しかし。次の瞬間気づかされた。

 

 

奴はまだ戦うことを諦めたわけではないということを。

 

 

次の瞬間、突っ込んでくる。

 

お燐「えっ!?」

 

「ごぼぉ!?」

 

お空「え!?動けるの!?」

 

早い。

 

距離的にはさほど離れていないだけに、グングン差を縮められる。

 

ヒ―ドランも動く。若干ヒ―ドランの方が早いが、奴はもう迫ってきている。

 

 

迂闊だった。このスペカで攻撃をする際。動けなくなることをこいつは知っていたのだろうか?

 

そのようなことを考える余裕も、もうなかった。

 

カチリ・・・。

 

ボロボロに崩れゆく奴の体から、何か妙な音がした。

 

コチリ・・・。

 

ヒ―ドランとお空も私へと駆けつけるが、奴の方が近い。

 

カチッ・・・。

 

妙な音が大きく、近くなる。

 

ピー。

 

 

その瞬間。鮮やかな光が奴を削り、戦闘不能へと陥らせた。

 

 

お燐「・・・え?」

 

唖然とした。そして、非常に驚愕した。

 

 

ボロボロに崩れた奴と私の間に、誰かが立っていた。

 

 

その者は私に背を向けていたが、やがて私の方を振り返り。

 

???「危なかったね。お燐」

そう言って、いたずらっぽくはにかんだ。

 

お燐「・・・こいし・・・様」

 

そう。私を助けたのは地霊殿の主。古明地 さとりの実妹。

 

『古明地 こいし』であった。

 

「紅魔館」

夜。

 

その日。時間が止まることはなかった。

如何にどうしようとも、時間は止めることはできず。

ただ時間が流れるだけだった。

 

私。「十六夜 咲夜」はこの紅魔館の自室で、古びた懐中時計を見つめていた。

 

今日は、仕事が無いのである。

 

お嬢様は霊夢と魔理沙が帰宅する際。強引について行ってしまった。

その際。お嬢様は私にこう言い残していた。

 

「咲夜。今日は特別ボーナスの休暇を貴方にあげることにしたわ。

 今日一日。貴方はこの紅魔館のメイドではなく、一人の客人となるの。

 だから、今日一杯は自室で休みなさい」

 

そう言われ、私はこうしておとなしく自室にこもっているのだった。

 

咲夜(・・・とはいってもなぁ・・・)

 

別にやることはなかった。

いつもならまだ仕事をしている時間帯。

 

そして、趣味と言った物もない。

 

咲夜(・・・散歩でもしてこようかしら・・・)

 

お嬢様から自室で休めとは言われたが、これではあまりにも暇すぎる。

 

こんなに暇で退屈なら、休むこともなにもできないだろう。

 

 

咲夜(・・・うん。散歩に行った方が気分が晴れるわ。きっと)

 

そう思い、妖精メイドに見つからない様にコソコソと外へと出た。

 

「紅魔館~庭園」

 

そこに出て、外の空気を一杯肺に入れ、ゆっくりと吐き出す。

しかし、それでも余り気分が晴れることはなかった。

 

『時を止める』。そんな意味不明で常人には理解しがたいことが日常と化している

私にとっては、時が止められないことがこんなにもストレスになるとは思わなかった。

 

咲夜(さて、何をしよう・・・?って、何かするつもりで外へ出たわけじゃないけど)

 

とりあえず、美鈴が丁寧に揃え、庭を彩っている無数の花々を見つめてみる。

しかし、その花は何も言わない。

 

夜はさらに更け、辺りは本格的に暗くなっていた。

 

 

その時。

 

 

ピカッ・・・キラキラッ・・・。

 

咲夜「?・・・何?」何か光った?」

 

一瞬。青色の光が霧の湖の湖岸に映った気がした。

 

しかし、なにが光ったのかは霧で隠され見えなかった。

 

 

咲夜(・・・・・・)

 

私は、その光が気になって仕方が無くなった。

何故か、その光は私が時を止めることができなくなったことと

関連があるような気がしたからだった。

 

 

私は、霊力を対外に放出し、空を飛んで湖岸へと向かった。

 

 

 

 

ドコン・・・ドコン・・・。

 

湖岸についた私は、完全に腰を抜かしてしまった。

 

ドクン・・・ドクン・・・。

 

体中が震えようとしている。しかし、緊張故かダイヤモンドのように体が固まって

動けない。

 

辺りには微かに青色の光が漏れ、「その存在」が現実であることを幻想的に証明していた。

 

ドコン・・・ドコン・・・。

ドクン・・・ドクン・・・。

 

私の耳に、二つの心音が聞こえてくる。

 

一つは私のもの。血液が心臓によって体へ行き渡る音。

 

そしてもう一つは、目の前の存在のもの。

時を刻み、未来永劫途絶えることのない金剛石の心臓。

 

 

その存在は、私のことを見つめていた。

私はただ震えそうになるのをこらえて、ただ恐怖の色を顔に張り付けることしかできなかった。

 

 

その存在・・・。

 

たくましい四本の脚。

群青色の体色と、銀色に輝く装飾らしきもの。

長い尾は、体色と同じ群青色に煌いている。

胸に当たると思われる個所には、また銀色の装飾と藍色の宝石らしきものが埋め込まれている。

 

そして、その長い首にピッタリと会うように備えられた頭部には

赤い瞳が全てを射抜くように、開かれていた。

 

また、その頭部は二対の装飾と共に後方へと伸び、まるで宝石のようなイメージを

醸し出していた。

 

 

その存在が何なのか?

何故、ここに現れたのか?

 

そのようなことは分からないが、一つだけ理解できた。

 

 

この存在には、誰も敵わない。

 

それが恐怖として実感になり、実感は畏れへと変わった。

 

「グギュグバァッ」

 

その鳴き声は、まるで私へと語り掛けるかのようなものであった。

 

To be continued・・・




超・急ぎ足で書いたので。
とてつもなく微妙でしたかね?

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