東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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実家に帰省していたので遅れてしまいました。
ごめんなさい。


41ページ目 地底の岩 その②

強い。

堅い。

鋭い。

速い。

賢い。

 

ここの者達は皆そうなのか。

それとも、この者だけがこうなのか。

 

この生物。人間のようで、人間ではない。我々のようで、我々ではない。何か。

 

恐ろしい。

この生物の攻撃力・戦闘意欲は私の力を圧倒的に凌駕する。

 

勇儀「行くぞぉッ!コラァ!」

この生物はなにやら叫ぶ。そして紙を取り出し、また叫ぶ。

 

勇儀「力業『大江山颪』!」

 

この生物・・・。腕力だけが取り柄かと思っていたからこの技には驚いた。

 

壁。山だ。

山のような大きいエネルギー団が大軍を造り迫ってくる。

 

 

勇儀「ホラホラ!避けないと負けるぞ!

   私がここでの振る舞い方と、鬼への接し方を教育(教え)てやるよ‼」

 

「ざざッ」

 

()グワァン‼‼

 

 

被弾した。

 

やはりかなり効く。

まるで拳が形を作って飛んでくるかのような。

 

このままではまずい。

 

しかし。勝つことはできる。

 

 

・・・私も。一度『瀕死』にならざるを得ないが。

勝利することはできる。

 

 

しかし。この弾幕の中。身動きなんて自由にできない。

だが結局。いつかは瀕死になる。

 

 

ならば突っ込んでいこう。

 

 

 

勇儀「!?」

 

急な動き。この弾幕の中。岩山が突っ込んでくるのを勇儀は驚愕の表情で見つめていた。

 

勇儀「突っ込んでくるなんて・・・。

   ・・・ったく。私が律儀に弾幕ごっこをしてるのがバカみたいじゃないか・・・。

  

   そっちがその気なら。こっちも!」

 

そう独り言をこぼした瞬間。勇儀の姿が見えなくなる。

否。見えないほどのスピードで岩山に突っ込んでいったのだった。

右手は拳の形に。左手は開き、掌底の形に。

 

完全な臨戦態勢。いつでも攻撃ができ、防げる構え。

スピードもこちらが上。

 

向こうも奇妙な術を使っては来るが。これが初戦ではない。

何度か向こうから攻めてきていたので。動きは幾分か読みやすい。

 

 

しかし。最後に残していた岩山の「攻撃」だけは避けることも読むこともできなかった。

 

 

あと三歩で間合。

そのところで岩山は跳躍。

 

勇儀の角より上へ、上へと飛び。落ちてくる。

 

:アームハンマー:

 

通常なら地上で使うはずの技だが、空中からの叩きつけ攻撃に利用する。

その今までに見せなかった特殊な攻撃方法には、勇儀も不意を突かれた。

 

その不意が。勇儀を敗北へと導いた。

 

 

ドカン!

 

上から叩きつける剛腕の槌を、こちらもとっさに腕で防ぎ受けるが。

 

勇儀「うぅ・・・‼」

 

ミシミシ。メキメキと嫌な音が腕から聞こえてくる。

この時初めて勇儀は。この生物・・・岩山に「恐怖」を覚えた。

 

 

勇儀(こいつッ!まだこんな攻撃を残していたのかッ!)

腕を思いっきり開いてこいつを吹き飛ばしてやろうか。そう思ったが・・・・・。

 

 

カチリ・・・。

 

勇儀「?・・・」

 

変な音がどこからか鳴った。

 

コチリ・・・。

 

まるで時計の針が動く音のような。

 

カチッ・・・。

 

そして気付いた。その音の正体に。

その音の正体は・・・。

 

ピーッ。

 

 

 

この岩山が、「大爆発」を起こすための起動音だったと。

 

 

 

~旧都~とある酒屋~

 

勇儀「・・・・・・」

お燐「・・・・・・」

 

珍しかった。

酒の席でならよく喋るはずの姐さんが黙ったまま。

 

向かう時は、全く問題ないようにしていたのに。

 

お燐(一体・・・何が?)

 

勇儀「・・・なぁ。お燐?」

そう考えていると急に声をかけられた。

 

お燐「ん?あぁ。はい。なんですか?」

 

勇儀「・・・ただの不安なら良いんだが・・・。

   地上にもさ。そういう・・・あー・・・」

お燐「ヒ―ドランのことですか?」

 

勇儀「そう、それ。

   で、地上にもな。そうゆう奴や、さっき私が戦っていた奴みたいのが

   いたりすんのかな」

 

お燐「はぁ・・・。まぁ。いるらしいですね。現にこうしてここにいるわけですし」

「ごぼ」

 

勇儀「・・・鬼の私があそこまで追い込まれるなんて。

   正直言って、地上のやつらが心配でなんないよ」

 

お燐「はぁ・・・・・」

 

勇儀「・・・・・」

お燐「・・・・・」

 

また沈黙が訪れる。

その沈黙のなかには、いろいろな感情が渦巻いているのを私は確かに感じた。

 

お燐(こんな時、さとり様なら姐さんの心も読めたりするんだろうけどなぁ・・・)

どうしよう。

 

そう考えていたら・・・。

 

勇儀「・・・あ~。なんだ。こんなことにつき合わせちまって悪いね。

   でも、こうしていたら幾分か心が軽くなった気がするよ」

 

お燐「あっ。あー。はい。そうですか。それならよかったです」

 

勇儀「お詫びとしてはなんだが。もう一軒行くか?」

 

お燐「あっ。いえ、私まだお使いの途中なので。遠慮しておきます」

 

勇儀「あぁ。そうかい。そういえばそうだったね。

   まぁ。気をつけることだよ。鬼の私でも、なかなか手こずるくらいだからね。

   見た目は・・・まぁ岩みたいなやつだ。すぐに分かる」

 

お燐「分かりました」

「ごぼぉ」

 

勇儀「そんじゃ。また暇なときあったら一杯付き合ってくれよ!」

 

お燐「分かりましたよー!」

 

 

そう大きく返事をして、私はヒ―ドランと共に酒屋を後にした。

 

 

「ざざりざっ・・・」

 

お燐「?」

 

何か、砂をすりつぶすような音が聞こえたが、周りを見ても少し大きい岩が一つあるだけで

音源になるものは無く、気のせいということにして地霊殿へと戻っていった。

 

 

その時。その瞬間。だれもそのことには気づくことはなかった。

 

お燐が見つけたその岩が、音を立てて地霊殿へと向かったことを・・・。

 

~地霊殿~

 

時は、夕方。

 

しかし、ここは地底なので西の野へと沈みゆく美しい太陽を見ることはできず。

時間を確認するには、時計しか頼りがない。

故に、その時計すら故障してしまうと時間の感覚が狂ってしまう。

 

その事態が、お燐の帰ってきた地霊殿では起きていた。

 

お燐「ただいま帰りましたー」

 

お空「うにゅ。おかえりー。ちょっとお燐もヒ―ドランも手を貸してくんない?」

 

お燐「?・・・どうしたの?」

「ごぼぉ?」

 

帰ってきていきなり。お空に手を貸せと言われた。

周りではフェアリーゾンビ達がせかせかと時計を運んだり、時計を分解したり

時計をハンマーで叩いたりしている。

 

どうやら何かあったらしい。

 

お空「いやね。この地霊殿にある時計が一斉に狂っちゃったらしいんだって」

 

お燐「狂った?一斉に?」

 

お空「そうそう。まったく困るよねー。急にグルグル動いたかと思ったら、

   今度は反対向きに動いたり。普通なら針も何も止まるはずなのに。

   絶えず動き続けているんだよね」

 

お燐「へぇ・・・そりゃ大変だ。時計屋さんは今やってるかな・・・?」

 

お空「そうそう。時計屋さんにも行ってきたんだけど。

   時計屋さんの時計も全部狂ってた」

 

お燐「うっひゃあ・・・。それ本当?てことはこの地底全体の時計が狂ったってこと?

   酒屋では・・・そういえば時計なんて見ていなかった」

 

お空「お燐が帰ってくる少し前に時計屋さんに行って来たけど、時計屋さん家の他は

   どうか分からない」

 

お燐「そっかー・・・。このことはさとり様に報告した?」

 

お空「さとり様から教えてもらったんだよ」

 

お燐「ふ~ん・・・。しかし、困ったねぇ。何が原因だ?

   地上に時を止められる人間がいるとは聞いたことがあるけど・・・」

 

お空「多分、そいつのせいじゃないかな?」

 

お燐「そうなのかなぁ・・・」

 

お空「う~ん・・・・・・・・・・!?。お燐!そこを離れて!」

 

お燐「えっ」   ドカァン‼‼

 

 

急にお空に腕を引っ張られて、上空に連れてこられる。

 

とりあえず屋敷のシャンデリアに捕まって下を見る。

見れば、さっきまで私達が立ち話をしていたところに尖った岩が突きだしている。

 

あそこに立ったままだったら・・・。そう考えると冷や汗が頬を滑った。

 

 

お空「大丈夫?お燐」

 

お燐「ああ。大丈夫だよ。なんともない。それよりも・・・」

 

気付けばフェアリーゾンビ達も臨戦態勢をとっている。

その視線は一様に地霊殿正面玄関へと向けられ、その瞳には恐怖と緊張の色があった。

 

 

バカァッ!

 

その玄関の扉が派手に吹っ飛び、扉を失った玄関口から何かが歩いてくる。

 

 

人?

 

いや、人に見えたが全く違う。

近いものを上げるなら・・・「石像」。それも低クオリティな。

 

ごつごつした岩のような・・・いや、岩の体。

頭に当たる部分には「H」の形の点が散りばめられ、目のようになっている。

 

そして、その中でも目を引いたのは。

 

身体の色。

 

それらはどれも黒ずみ、この地底の岩と同じ色をしている。

 

まるで、そこら辺の岩で体を作り上げたかのような。いびつな石像。

ゴーレムがこの地霊殿に攻め込んできた。

 

「ざ ざ ざ り ざ ・ ・ ・」

 

その点字のような眼がまるで機械のように光り、そこから砂を混ぜるような。

 

お燐「!?・・・まさか・・・!」

 

そう。酒屋帰りに聞いたあの音。

 

勇儀『鬼の私でもなかなか手こずる相手だからね。

   見た目は・・・岩みたいなやつだ。すぐに分かる』

 

勇儀の姐さんから聞いた通りの姿。

 

 

お燐「あいつが・・・」

 

それを理解した途端。体が急に冷えるのを感じた。

 

そして考えた。

 

 

「鬼に勝てるような奴に、私達が敵うだろうか?」

 

その疑問は。戦闘が始まって数分で解けることになった。

 

~紅魔館~夕方~

 

霊夢「帰るわ」

レミリア「待ちなさいよ。

     あなた一日寝てたじゃない。せっかく寝床を提供してあげていたというのに

     礼の一つも無しかしら?」

 

魔理沙「無いな。別に『寝床を提供してくれ』なんて一言も言ってないからな」

レミリア「ぐぬぬ・・・。咲夜!何としてでもこいつらを帰さないで!

     ポケモンの捕まえ方やらなんやら教えてもらわなくちゃ・・・!」

 

咲夜「分かりました」カチッ

 

・・・・・・?

 

レミリア「・・・?咲夜、なにやっているの?」

 

咲夜「あっ、えっ。あ、はい。すぐに」カチッ

 

・・・・・・?

 

魔理沙「どうしたんだ?『時を止めて』私達を捕まえるんじゃないのか?」

 

咲夜「えっ?えっ!?・・・どうして・・・」

 

霊夢「なに?なんかあった?」

 

レミリア「・・・咲夜。あなたまさか・・・」

 

 

咲夜「・・・時間が・・・止められない・・・!?」

 

 

西の野へと沈む陽光と。

東の野から登りゆく月光と。

 

時は進めど時間は止まらず。

 

狂う時計と、狂わずの時間。

 

 

時の咆哮が、何処より響く・・・。

 

To be continued・・・




この小説のロックさんの色はオリジナルになる(のかな?)

イメージで言うと、ロックさんの色違いをもっと黒くしたらこんな感じの色になります。
図鑑説明で「岩くっつけて体直す」と言っていたので地底カラーをイメージしました。

こんなところでオリジナル持って来てしまってごめんなさい。
またやるかもしれねぇです・・・。ご了承ください・・・。

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