東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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祝!(気が付いたら)40話目‼


39ページ目 目覚め

かつ・・・コツ・・・カツ・・・こつ。

 

暗い。暗い闇の中。

 

それこそ何も見えない黒の中。

 

目の前に広がる圧倒的な闇は静かで冷たく、一切の動きを見せない。

私は、その中を歩いていた。

 

AZ「・・・」

私はどうしてしまったのだろう。

 

最後に覚えているのは。

 

 

気絶した射命丸。

空。

暴風。

雨。

落下。

近づく地面。

 

黒い影。

赤い帯。

青い瞳。

 

 

AZ「むぅ・・・」

よく分からない。分からない余りに言葉が漏れる。

 

確かに私と射命丸は空高くより落下した。それは分かる。

問題は今だ。何故私はこんなところを歩いているのだろうか?

 

今一度辺りを見回してみる。

 

闇。闇。闇。

妙なことに見えるのは自分の身体だけ。それもハッキリと。

 

つまりここは普通の世界ではないらしい。

 

しかし・・・私は何故ここに来た?

まさか私は落下した時点で死に絶え、ここは死後の世界ということなのだろうか?

 

そこまで考え、私はもう一度辺りを見回すことにした。

 

AZ「・・・!?」

 

この闇の世界で初めて。自分以外の色のついた者を見た。

 

AZ「阿求・・・・・どうしてここに?」

 

そう。そこにいたのは今現在。

私に宿として自分の家を貸し出してくれている「稗田阿求」であった。

しかし、様子がおかしい。

 

 

問いに答えず。うつむいて、闇に染まった地面をジッと見つめ動かない。

 

AZ「どうしたんだ?・・・何かあったのか?」

私は心配に思い、阿求の方へと足を進め近づいた。

 

阿求は動かず。こちらに気付いているのかどうかも分からない。

また足を進め、詰め寄る。

 

まだ動く気配はない。

 

 

そしてついに腕を伸ばせば頭が撫でられるほどの距離まで近づき、私はいつも以上に

穏やかな口調で問いかけた。

 

AZ「阿求。どうしたんだ?何故うつむいたままなんだ?」

 

阿求?「・・・・・」

阿求は黙ったままうつむいたままだった顔をゆっくりと動かし、私の顔を見た。

 

AZ「!?」

驚愕した。

 

顔を上げて見せた阿求の表情は、今までに見せた表情とはどれとも似通わないものであったからだ。

 

 

阿求は、残酷に嗤っていた。

 

これまでどの人間にも見たことがないほどに。

冷たく。醜く。悪質に。

 

嗤っていた。

 

 

私は動けなかった。

そのあまりにも道から外れた者しか出せぬ表情を前に固まっていた。

 

そのまましばらくの時間が立ち。

 

阿求の口が動く。声は聞こえない。

 

「私のことを」

確かにそう発音した。

「言いたいのなら」

そう発音したように見えた。

「言葉にするのなら」

・・・

 

 

「     」

 

 

 

バシャア!

 

AZ「‼」

 

いきなり水がはじける音と濡れた感覚が体を覆った。

 

風が吹き、体が冷やされる。

それと同時に目が覚め、困惑と倦怠感が頭と体を包んだ。

 

目覚めた視界の中に入ってきたのは、木でできた水の潤い溢れる部屋であった。

 

文「あっ。目が覚めたみたいですね!」

 

目を開ければ、目の前には射命丸が立っていた。

その横には・・・

 

 

阿求?

 

 

AZ「・・・阿求・・・」

 

阿求「え?あ、ハイ。なんですか?」

普通だ。

 

先程のように邪悪な表情を浮かべているでもなく、声が聞こえないこともない。

 

 

普通だ。いつも通りの少女。「稗田阿求」がそこにはいた。

 

AZ「いや・・・なんでもない。それより・・・」

文「申し訳ございません」

 

何だ?

いきなり謝罪をされた。

 

AZ「・・・何故謝る?」

疑問に思い、問いてみる。

 

すると射命丸はひどく申し訳なさそうに続けた。

 

文「・・・AZさんは。時間にして約12時間眠ったままだったんです。

  その原因が、きっと私が落下した際のショックだろうと思いまして、しばらく側にいた  んですが。なかなか目が覚めなくて・・・・・」

 

AZ「12時間!?・・・眠ったままだったというのか? 」

 

文「はい・・・。もうこのままどうしようもなくて・・・とりあえずAZさんをこのまま

  地面に横たわせるわけにはいかないと思いまして・・・・・・」

 

このままだと長くなりそうだ。

兎に角今は。気になることを一つ一つ聞いていくことにしよう。

 

AZ「ここは?」

 

文「あっ。ここはですね、阿求さんのお宅の、浴場です」

 

AZ「浴場・・・。ここは稗田家なんだな?」

 

文「はい。このままAZさんを横にするわけにもいかず、AZさんを担いで飛ぼうとしたので  すが、残念ながら体力不足で・・・」

 

AZ「・・・仕方がないことだ。射命丸はあの風を止めるのに一役買ってくれたからな。

  ・・・それで。稗田家に到着し、私に水をかけた、と・・・」

 

 

阿求「・・・AZさんに水をかけようと言い出したのは私なんです」

 

何だと。

 

阿求「家に来た射命丸さんが抱えていたAZさんを寝室に寝かしていたのですけど 

   全く起きる気配がなかったもので・・・・」

 

AZ「ふむ・・・」

 

阿求「それで射命丸さんがとても心配してしまい、こちらまで心配して来てしまって」

 

AZ「・・・・・」

 

阿求「それで・・・起こすために・・・その・・・」

 

つまりはこういうことらしい。

 

『あまりにも起きないものだから何とか起こすために水をかけてみよう』と。

 

AZ「・・・成程。阿求も射命丸も正しい判断と行動をしたと思う。何より・・・」

助かった。

 

私はそう二人に言った。

 

阿求「助かった・・・?」

文「えと・・・どうしてです?」

 

AZ「・・・少し・・・気味の悪い夢を見てしまってな。

  その中で、ある人物に出会ったのだが、何かを言われたのだ。

  もしその言葉をそのまままともに聞いていたなら・・・危なかったかもしれない。

  それ程のことを思わせるくらいに、気味の悪い夢だった・・・」

 

文「ははあ・・・そりゃお気の毒に。つまり・・・」

 

AZ「あそこで水をかけてくれなければ。何か悪いことが起きたかもしれなかった。

  感謝する。ありがとう。阿求、射命丸」

 

素直に礼を述べ、私はビショビショになった服ごと立ち上がった。

 

阿求「あ。替えの着替え持ってきます」

射命丸「あっそうだ。阿求さん。台所使いますよ」

阿求「どうぞー」

 

AZ「・・・・・」

普通だ。

 

余りにも普通すぎて恐れすら抱く。

 

 

・・・それにしても。

 

阿求は先程の豪雨や風には何の疑問も持たなかったのだろうか?

いや。あの量の雨と風だ。気にしない方がありえない。

 

 

阿求「AZさん。着替え、持ってきましたよ」

 

AZ「・・・なあ。阿求・・・」

 

阿求「なんですか?」

 

AZ「・・・今から12時間くらい前の暴風雨だったが・・・」

 

阿求「暴風雨?それほど雨降ってましたか?風は強かったですが」

 

文「ここはあの風の中心地から遠いところにあるので被害が少なかったんですよ」

 

 

AZ「そうか・・・・・」

良かった。

 

私は心の中で胸をなでおろし、気づかれないようにため息を吐いた。

 

 

AZ「・・・・・」

 

それにしても・・・・・・・・・・

 

 

 

「     」

 

夢の中で、阿求は何と言ったのだろうか?

 

 

カー、クァー・・・

 

暴風後の白昼夢から約12時間後の西の空。

 

鴉とヤミカラスらしき鳥ポケモンが鳴き声を発しながら、夕闇の中を飛んでゆく・・・。

 

 

~地底~地霊殿~

 

 

お燐「あ、ヒ―ドラン。その荷車はこっちに置いて」

 

「ごぼぉ」 がたん

 

お燐「よしよし。賢いね。(足が遅くて少し鈍いけど・・・)。

   十分私やお空の仕事を手伝えるようになってきた」

 

さとり「ああ。お燐」

お燐「あっ。さとり様!もう安静にしてなくて大丈夫なんですか?」

 

さとり「規格外の大火傷だったけど・・・そうね。まだ十分・・・ってわけじゃないけど

    普通に生活できるわ」

「ごぼぉ・・・」

 

さとり「あなたは気にしなくていいのよ。私達が原因なわけだし。

    あなたは、あなたの好きなことをしていればいいのよ」

 

「ごぼぉ!」

 

お燐「あ!そうだ!さとり様。私、今からお使いに行ってきます!」

 

さとり「あら、そう?ならヒ―ドランも連れていくといいわ。

    この子にも、旧都のことをよく教えてあげて」

 

お燐「了解しました!」

 

 

ー旧都ー

 

「地獄」として、日々活発に稼働し続ける施設街・・・だった場所である。

 

今現在、地獄はまた別の場所へと移されており、ここは「旧地獄」と呼ばれる場所。

そこに残された施設や鬼の宿に、地上から逃げてきた妖怪が住み着き、今のように

妖怪だらけの街。

 

外の世界でいう、かつての「江戸」を連想して、誰が言うまでもなくいつの間にか

「旧都」。と呼ばれるようになっていた。

 

また、妖怪の山同様。他より屈強なポケモンが集まりやすく、何度か被害を出しては、

住民らによって倒されては労働力として。または戦闘の練習相手。

または友人として。または従者として扱う者も増えてきた。

 

無論。モンスターボールを使うものは少なく、ほとんどが腕力。能力でねじ伏せた

者が多い。それでも、いつもと変わらないバランスを保っているのだから流石である。

 

さてここに。腕力で岩蛇ポケモン。「イワーク」と鉄鎧ポケモン。「コドラ」の群れを

一掃し、酒を飲みくつろぐ『一本角』の女性が一人。

 

「星熊 勇儀」

 

幻想郷「最強」の腕力の持ち主である。

 

 

しかし、どんなに頑丈な防御力を誇る相手ですら粉砕する怪力乱神の持ち主である彼女

ですら破壊しきれない怪物。「ポケモン」がいる。

 

 

「ざ ざ ざ り ざ 」

 

勇儀「・・・またあんたか。いい加減にしてくれないかい?

   こっちは確かにヒマしてるが、それだけしつこいと流石に頭にくるよ」

 

「ざざ・・・ッ‼」

 

突如として岩肌露出する旧都に現れたその岩石。いや、「岩石のようなポケモン」は

岩でできた腕で地面を叩く。

 

勇儀「よっ・・・と」 ドカァン‼‼

 

怪物が地面を叩いた瞬間。勇儀の居た場所から尖った岩が突き出る。

 

;ストーンエッジ;

 

しかし、勇儀はすでに跳んでそれを避け、拳と蹴り。さらには頭突きの応酬をを一気に

食らわせる。

 

それはまるで、「インファイト」のごとき猛攻だった。が・・・

 

「ざざ ざざ ざざ りり ざざ」 

吹っ飛んだその怪物は何事もなかったかのように起き上がる。

 

勇儀「・・・いい加減しつこいと。嫌われるぞ?

   いいか?ここで嫌われるってことは、それはここでの生活の「終わり」を

   意味するんだ・・・まぁ・・・」

 

そう言いながら勇儀は拳をポキポキ鳴らし、怪物は身構える。

 

勇儀「私はすでにお前のことが「気に入らない」がなッ‼」

 

「ざざざりざッ!」

 

To be continued・・・

 

 




前半の話のポケモン要素がゼロ・・・

40話目なのに・・・

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