東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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最近いいことが起こらなくて若干萎えてますが、まあまあ元気でございまする。

なるべく更新を早くしたいので、一週間につき一つの作品を投稿、というペースで
やっていきたいです。


12ページ目 かつての王と動き出す巫女

小鈴「ただいまぁー」

 

阿求「あら、お帰り。案外早かったのね」

 

AZ「・・・・・」

 

今しがた、荷物を置きに行った小鈴が阿求の家に戻ってきた。

よっぽど私から話を聞きたいらしく、かなり早い時間で戻ってきた。

 

阿求「・・・さて、AZさん。あなたについての話と外の世界についていろいろと

   教えてください」

 

小鈴「私にも、教えてください!」

 

この少女たちが、なぜ私のことを知りたがるのか。

それは分からなかったが、この少女たちは私に対する警戒心や敵意が無い

ことは明らかだった。

 

なにより彼女からこの世界のことを親切に教えてくれ、昼食をご馳走してもらった

恩がある。それに応えるという意味と、自己紹介のことも兼ねて自分のことと

『ポケモン』達のことを一切合切説明した。

 

 

AZ「・・・改めて、私の名はAZ(エーゼット)

  先程、私の身分について詳しく明かさなかったのは信じてもらえるか

  心配だったからだ。これから私は突拍子もない正気を疑われるようなことを話すが

  信じてもらえるかね?」

 

阿求「それは話してもらわないと」

 

AZ「そうだな・・・では、まずは私の身分からだ。」

 

小鈴「・・・(うずうず)」

 

 

 

AZ「私は、元・カロス地方初代国王、AZ。

  世界で最も愚かな過ちを犯した王だ」

 

阿求「・・・え・・・?」

 

小鈴「・・・え、えっ、ええ・・・?」

 

二人の口から驚愕と唖然に満ちた吐息のような声が漏れ出る。

無理もない。いきなり自分が元・一国の主と言ったのだから。

 

普通は否定され、疑惑の目で見られるのが普通だが、彼女たちは違っていた。

 

阿求「元・国王・・・ということは、昔は王様だったんですか?」

 

小鈴「しかも、なぜ初代の王様が今の時代まで生きているのかしら?」

 

完全に信じてくれているようだった。

 

AZ「・・・信じてくれるのか?」

 

阿求「え?だって、ここは幻想郷ですよ?どんな不思議なことがあっても全然

   珍しくもないんですよ・・・しかし・・・あなたのような『外来人』や『異変』は

   違うけど」

 

AZ「・・・そうか・・・話を続けるが、いいか?」

 

小鈴「その話の続きでAZさんがなぜ今も生きていられるのかが分かるんですね!」

 

AZ「・・・私は・・・・・ある一匹のポケモンを愛していた。

  愛していたがゆえに、過ちを犯してしまったんだ・・・」

 

 

~元・国王説明中~

 

 

こうして私は、すべてを語った。

フラエッテのこと。私のこと。ポケモン達のこと。

破壊の繭のこと。そして、過ちの機械のことを・・・。

 

 

阿求「・・・AZさんにそんな過去が・・・」

 

小鈴「うう・・・気安く昔のことを聞いたりしてすみませんでした!」

 

AZ「いや、謝らなくていい。さっきも言った通りフラエッテとはもうよりを戻している。

  今は幸せだよ・・・」

 

阿求「それで、さっきからどーしても気になるのですが」

 

AZ「なんだ?」

 

阿求「AZさんのポケモンを、ぜひ私たちに見せてください!」

 

小鈴「私からもお願いします!」

 

この二人は、ポケモンのことを見たことも触ったこともなく、

今日私がここを訪れなければこれから一生知ることもなかったのだろう。

 

私としては、毎日のように見かけ、触れ合っているためポケモンのことを知らない

というのは正直言って理解しがたいが、この少女たちに見せてあげてなにも損はないと

思った。

 

 

AZ「・・・分かった。だが外に行くぞ。ここじゃあ狭すぎる」

 

阿求「ありがとうございます!・・・ただ・・・」

そう阿求は少し気まずい表情で小鈴の方を見る。

 

AZ「ん?」

私も阿求の目が向けられている小鈴の方を見てみる。

 

そして、小鈴は申し訳なさげにおずおずと口を開き、

小鈴「・・・今度こそ本当に帰らなければならなくなりまして・・・」

 

そう言ったのを聞き、腕時計に目を通せば、もう夕方という時間帯になり

人々は無意識的に「もうこんな時間、早く家に帰らないと」と思わせる橙色の

夕日が明かり窓から、この広い客間に向かって差し込んできていた。

 

 

阿求「・・・と、いうことですので本当に申し訳ないと思うのですが

   また小鈴のわがままにつきあってもらえないでしょうか?」

 

AZ「まったく構わないぞ。今日はもう遅いだろう。また明日来るといい」

 

小鈴「うう・・・ありがとうございます!」

 

AZ(しかし、宿はどうするか・・・この身なりでも泊めてもらえる宿があればいいが・・)

そう思いながら昼間の里の人々に恐れられた様子を思い出していた。

 

阿求「そうね、それがいいわ。それにAZさん。あなたは、私の家にしばらく泊まっていく

   といいわ。そのほうが小鈴も来やすいし、宿を探す時間も省けるでしょう?」

 

AZ「!・・・まさか、泊めてくれるというのか?」

 

阿求「だってAZさん?明日また小鈴が来るためにも、AZさんの身のためにも。

   間違いなくここに泊まっていったほうがいいわ。」

 

AZ「・・・なにからなにまでお礼を言いたい。本当にすまない。そして有り難う」

 

阿求「そんな深々とお礼を言わなくてもいいのよ。さ、そろそろお風呂ができているはずだ

   から入っていくといいわ」

 

・・・この少女は、どうやら私のことを泊めていくつもりで家に招いたらしい。

この状況。ある意味捕えられているとも考えられるが・・・

 

AZ「・・・お言葉に甘えさせてもらおう」

下手に宿を探して歩き回るよりも、ここに泊めてもらった方が良策だろうと考えた。

 

小鈴「それじゃあ、また明日。抜け駆けは許さないからね!」

そう玄関先で言うと、いそいそと玄関から飛び出していった。

 

 

ポツ、ポツポツ・・・

 

 

小鈴「あら、雨だわ・・・。でもそんなに強くないし、阿求に傘を借りる程でもないかー」

小鈴は、独り言を呟きながら霧雨の仲を小走りで駆けていった。

 

しかし、雨はすぐに止んだ。

小さい黒雲から滴り落ちるように振っていた霧雨は、風に乗り小鈴の方とは逆の方へと

流されていった。

 

このときは、誰も気づかなかった。

 

この小さな黒雲でさえ、『異変』の末端の一つだったことを。

 

このとき雲の中に風神の化身が居座り、どこで暴れようか考えていたことを。

 

このとき地底で、一つの異変を終わらせるべく巫女と魔法使いと大妖怪が

旧都に到着したことを。

 

 

To be continued・・・


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