東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~   作:キョウキ

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実質的10話目。

しかし表記的には9話目なのである。


9ページ目 旅人は空腹を満たしたい その②

腹が減った。

とてつもなく腹が減った。

 

しかし食べ物はあるにある。ただ、持ち合わせているものはこの「木の実」しかないので

これを食べてしまったら、米やパンと交換できなくなる。

それだけは避けたいものである。

 

しかし、どうすればいい。

 

木の実と米を交換してくれる米屋は一人もいなく、料理屋に至っては「怪物」と罵られ

店から追い出されてしまった。

 

 

もうどうしようもない。

腹が減ってしまっては、満足に行動もできない。

 

仕方なく民家の壁に寄り添い、少し休憩をとることにした。

今考えられるのは、空腹のことである。

 

しかし、何も自分だけが空腹を満たそうとしているわけではない。

私には「ポケモン」達がいる。

彼らも腹をすかし、主人が飯を持ってきてくれるのを健気に待ってくれているのである。

 

だが、もうどうしようもない。

私はここで餓死しても、埋葬してくれる人間はいないだろう。

 

だが、ポケモン達だけは、「フラエッテ」だけはなんとしてでも外に逃がして

やらなければ、彼らも自分と同じようにひどい目に合うかもしれない。

それだけは絶対に、なんとしてでも避けなくてはならない。

 

 

腰につけた紅白の球、「モンスターボール」に手を伸ばし、ポケモン達を出そうとした。

だが、その行動は未遂に終わる。

 

気付けば壁に寄り添っている自分を見つめている影が二つ。

少女が。二人の少女が私のことを見つめていた。

 

 

AZ「・・・・・なにか、用かね?」

そう言ってみせると、二人の少女の内一人がにっこりと笑い、こう言ってきた。

 

 

阿求「あなた、おなかがすいているんでしょう?」

その声は、見た目の幼さには似合わない、ひどく落ち着き払った声であった。

 

AZ「・・・そうだ」

違和感を覚えながらも、質問に答えてやる。

いくら空腹で死にそうだからとはいえ、人としての礼儀は忘れてはいない。

 

その質問の答えを聞いた少女はさらに笑い、

阿求「よかったら、私の家に来ないかしら?ご飯、ご馳走してあげるわよ?」

 

 

驚いた。

 

まさかこんな幼い子供に、しかも少女に食事をごちそうしてもらえるとは。

 

AZにとっても、今までにない経験であった。

しかし・・・・・

 

AZ「有り難いが、遠慮しておこう。少女に食事をごちそうしてもらうなど

  失礼極まりない行為だ。気持ちだけ受け取っておこう」

 

そう助けを伸べてくれた少女に礼を言い、立ち去ろうと立ち上がったときに

少女の姿が目に入る。

 

 

それは、振り袖姿の可愛らしい少女であった。

来ている美しい着物、整えられた髪型、そして・・・

 

 

その小さい右手には自分のモンスターボールの一つが握られていた。

 

 

AZ「ぬッ!それはっ!」

私のボールだぞっ!、と言いかけたところで目の前の少女がいやらしい笑みを浮かべ

話しかけてくる。

 

 

阿求「この紅白球。なにか、大切なものなのね?返してほしいかしら?」

 

AZ「ああっそうだ!すぐに返すんだ!」

 

 

 

 

 

 

そう、すぐにでも返してほしいのだ。

なぜなら、あのボールはフラエッテのボール。

 

二度と失いたくない。

二度と離れたくない。

 

その思いが、稲妻のごとく脳を駆け巡り、必死で返してくれと懇願した。

すると少女は、

 

阿求「返してほしいのなら、家まで来てください。いろいろと話したいことがあるので。

   ちゃんと家まで来てくれれば、この紅白球は返してあげますよ」

 

AZ「・・・分かった、すぐに向かおう・・・」

 

フラエッテを返してくれるのならば、どんな拷問や 罰でも受けるつもりだ。

この少女は信用できない。

油断してはならないぞ。

 

自分にそう戒め、少女の後を歩いて行った。

 

 

一方、阿求と共に来たもう一人の少女、小鈴は。

AZの後ろをおどおどしながら歩いていた。

 

なにせ周囲の目が痛いし、お使いの途中に阿求と出会ってしまったので、買い物袋はまだ

腕に下げたままである。

 

小鈴(早く帰りたい・・・)

そんなことを小鈴は思っていた。

 

 

 

 

 

「稗田家~客間」

 

 

 

阿求「さ、ど~ぞー」

阿求が調理が乗った盆を持って来てくれた。

いつもなら彼女の付き人が運んでくれるのだが、阿求が運んできたのには理由がある。

 

まず、こちらのことを信用してほしいということ。

そして、警戒心を薄くすること。

 

この二つが目的であり理由である。

こちらのことを信用し、警戒心も薄くしてくれれば、いろいろなことを容易く聞き出せるからである。

 

そのためにも付き人には頼まず、自らの手で料理を運んできたのだ。

 

その料理は、焼き魚とたくあん、そしてご飯ががついているだけのごく簡単なものであったが、このようなものの方が食べやすいと思ったまでである。

 

AZ「・・・すまない」

大男はそう謝り、慣れない手つきで箸を持ち上げ、食事を始めた。

 

 

 

「~大男食事中~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AZ「・・・すまないな、ごちそうしてもらって」

信用できない、油断はしないと自分自身に戒めたはずなのに、料理が目の前に置かれたとき

にはもう、考えることを放棄していた。

ただ飢えを満たすために食事をしてしまった。

 

これではいけないと思い、気を引き締め、何気に目の前に座った少女の目を見据える。

 

阿求「さて、えーと・・・名前をお聞きしてませんでしたね」

 

AZ「・・・まず自分から名乗ってくれないか?」

まずは情報を探る。

ここがどこなのか。聞きたいことはかなりある。

まずは、この少女の名前からである。

 

阿求「あら、失礼。私の名前は「稗田 阿求」(ひえだの あきゅう)と申します」

 

AZ「・・・AZだ」

 

阿求「そうですか。ではエーゼットさん。いくつか質問に答えてもらいますよ」

 

まさかこの少女も、私から情報を聞き出そうとしているとは。

だが、それはそれで好都合。

 

AZ「・・・ならば、私からも質問をさせてもらうが、構わないな?」

と言い、相手の返答を待つ。

 

すると、少し興奮したような声で

阿求「いいですよ、それでは早速質問させてもらいますがいいですか?」

 

私は口の周りを薄汚れたハンカチで拭きながら、「構わない」と言い、相手の質問を待つ。

 

阿求「それでは質問させてもらいます」

 

阿求は、ゆっくり深呼吸をし、質問をぶつける。

 

 

 

 

 

 

 

阿求「その紅白のボールはいったい何ですか?」

 

 

To be continuede・・・

 

 


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