S級ヒーローの中にハジケリストたちがいる。   作:にゃもし。

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全宇宙の覇者

 

 

鎧を着た単眼の男は自分の仲間であるゲリュガンシュプが目の前で倒されても、怒るどころか敵であるハズのボーボボたちを褒め称えた。

 

 

「俺は暗黒盗賊団ダークマターの頭目であり全宇宙の覇者ボロスという者だ」

 

 

そしてボロスの口から地球にやって来た目的を聞かされる。要約すると「退屈しのぎ」彼は戦う相手を求めて地球に飛来、特に理由もなく街を一つ壊滅させたのだ。

 

 

「今、確信した。さあ俺の生に刺激を与えてくれ、そのために来たんだ」

 

「許さねぇ…そのためだけに…」

 

 

握り拳を作って怒りで体を震わせる首領パッチ。彼の頭の中ではボロスが不気味な人形をひたすら殴り続ける光景が、同じようにして天の助も「ぬ」の文字でびっしり埋められたハンカチをビリビリに破くボロスの姿が映し出されていた。

 

 

「え? そんなのあったけ?」とサイタマが尋ねるが二人は無視。親の仇でも見るような目付きでボロスを睨む。

 

 

そして例に漏れずボーボボの頭の中でも回想が始まった。壮大な音楽が流れたかと思うとオペラ劇場のような建物が出現。観客の動物たちが見守る中、豪奢な深紅の幕が左右に開いていく。

 

 

学生姿のボロスがひたすら住宅街を駆け抜けていく。曲がり角を曲がったそこへ――――

 

 

「HEY! ボーイ! 余所見をしてると危ねぇぜ?」

 

 

ボーボボが運転する黄色いオープンカーのタクシーに撥ね飛ばされて「完」の文字とともに劇は唐突に終わる。

 

 

撥ねられたボロスは宇宙船内にある柱の一つと激突。大の字になって柱にめり込む。

 

 

「馬鹿か、お前。退屈な人生に刺激が欲しくて他の星を襲うなんてOLでも考えねえぞ」

 

 

タクシーから降りたボーボボがそう言い放った。

 

 

「――――強大すぎる俺の力を封印する役目を持つ鎧が砕かれた…」

 

 

その言葉とともにボロスは柱から抜き出す。身につけていた鎧が剥がれ落ちて、その下に隠されていた昆虫の甲殻のような体と胸部にある大きな目玉がさらけ出され、肉体から漏れだした力の余波が突風となって巻き起こる。

 

 

 

 

 

 

 

 

船内に乱雑に立てられた柱の数々。一本一本が天にまで届きそうな柱の群れ。しかしその殆どが抉られ、折られ、無事な物が少ない。同様に床も戦闘による破壊の跡が刻まれていた。

 

 

「よくも首領パッチと天の助を…!」

 

 

薄汚れたボーボボとサイタマ。彼らの横には白目を剥いて倒れた二人の姿があった。

 

 

「だが止めを刺したのはお前たちだぞ!?」

 

 

片腕を失ったボロスが反論。事実、二人が倒れたのは味方の攻撃のせいである。

 

ボロスが片腕と足を交えて乱打。サイタマは無表情のまま半開きにした両手で次々と受け止め、防いでいく。

 

そこへ気合いを込めた一撃をボロスが放ち、サイタマの脇腹に命中。背中から飛んでいき柱と激突、半ばめり込む。

 

追撃をかけようとするボロスにボーボボは鼻毛を伸ばして腕に巻きつかせるが…逆に鼻毛を引っ張られ、飛ぶように手繰り寄せられ、距離が縮まったところで腹部に鋭い一撃を貰う。

 

苦しそうな声を漏らしながら背中と両足の一部分がスライド、中からロケットのブースターが出てきて点火、ノズルから勢いよく炎が噴き出して…

 

 

「なんてスゴい威力なんだぁぁ――――っ!!!!」

 

 

宇宙船の天井へと飛んでいく。

 

 

「なんて奴だ。一撃でボーボボを吹っ飛ばすなんて…」

 

 

片膝をついた天の助が恐ろしいものでも見るようにボロスを見つめて、サイタマが手をパタパタ振って否定する。

 

 

「イヤイヤ! アイツ、自分から飛んでいってねぇか!?」

 

 

飛んでいったボーボボの跡を追いかけるべく、ボロスも床を両足で蹴って高く跳ぶ。

 

 

「俺たちも跡を追うぞ! ヘイ! タクシー!」

 

 

天の助が片手を上げると、首領パッチが運転しているボーボボが使ってたタクシーが到着。二人が乗り込む。

 

 

「ボーボボの跡を追いかけてくれ!」

 

「それじゃ飛ばしますんで、しっかり掴まってください」

 

 

タクシーがフワリと宙に浮き、後ろのトランクが開いてロケットブースターが現れる。

 

 

「え? 飛ばすって、そういう意味?」

 

 

返事がないままタクシーは垂直で上へと駆け抜けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい動きだ。さすがに強いな!」

 

 

宇宙船の鋼板に躍り出た一同。向かい合って対峙する両者たち。戦闘中にも関わらずボロスは無邪気に笑っていた。

 

甲殻の隙間から光が漏れて全身を輝かせる。胸部の目玉が大きく見開く――――同時にその瞳からエネルギーが放出される。

 

 

「体内にある莫大なエネルギーの放出! 雑魚がこれに触れれば骨すら残らんぞ!?」

 

 

「どうする!?」と言わんばかりに表情を輝かせるボロス。

 

 

「なんのキサマのそれに勝るものは俺たちの友情だ! 喰らえ奥義「友情波」!!!!」

 

 

両手を上下に開いて前に突き出す三人。しかし掌からは何も出ず、力の塊は頭上から出て空へと消えていった。

 

 

「上に出たぞ!?」

 

 

身を守る術を失った三人は炎の奔流に飲み込まれて、さらに炎は宇宙船の上部を焼き尽くす。巨大な建造物を揺らすほどの勢い。やがて炎の勢いが弱まり、爆煙の中から三人の姿が浮き出てくる。

 

 

「ふぅ…助かったぜ…」

 

 

ボーボボは二人を盾にして防いでいた。

 

 

「友情のカケラもね――――!!」

 

 

未だに煙が辺りを覆う中を走る影が一つ。それはサイタマの背後へと回り込み…

 

 

「後ろだ!」

 

 

ボロスの裏拳がサイタマの首に直撃した。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 長くなりそうなので分けた。
 戦闘シーンを文字にするのって難しいね。

しかっり → しっかり
後のトランク → 後ろのトランク …に直したぜ。

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